翌日、いつものように仕事に行くと天界の者が来ていました。ルシフェルは無視して仕事を片付けています。普段は外回りの仕事ですが、この日はデスクワークの書類が山のように溜まっていました。

「ルシフェル、悪い事は言わないから天界に帰って来なさい？こんな下っ端の仕事をやらされずに済むよ」

「天界には戻りません。この仕事は僕がやりたくてやってるんです。ほっておいてください」

「一体、天界の仕事の何が気に入らないと言うんだ？」

「何もかも気に入りませんね？神の指示通りに弱い者いじめを命じられて、力のない者をいたぶる仕事なんて楽しくもなんともない！」

「天誅を下すのは立派な仕事だよ？愚かな人間たちへの戒めなのだ…」

「リリスの足を切断したのも立派な仕事だと仰るのですかね？」

「その件に関しては…上の者は誰も知らなかったのだよ？」

「なるほど、都合の悪い事は記憶にないで済ませるアレですか？下手な言い訳でよく使われてる手だ」

「ヤマからもなんとか言ってやってくれ！今の天界にはルシフェルの代わりが出来る者がほとんどおらんのだ」

「私は本人の意思を尊重すべきだと思いますがね」

「そんな事を言って…地獄で騒ぎが起きても、ルシフェルに行かせれば、すぐ沈静化出来るからだろう？」

「ルシフェルが見回りを始めてから、騒ぎを起こす者も減りましたがね。最初の頃は少し揉め事が起こりましたが、ルシフェルが行けばあっという間に解決出来る」

「リリスの件は反省しておるから、戻って来てはくれまいか？訪問介護サービスもこちらで手配するから、今より生活はラクになるだろう」

「死んでも嫌です。天界のゴミクズどもの下で働くくらいなら死を選びますよ？まあ仮に死んだとしても僕を罰せられるほど力のある者は、今この地獄には誰もおりませんが…」

「言葉遣いが良くありませんな。リリスの影響だろうか…」

「悪い事は全部リリスのせいにするのをやめてください。僕は元々こんな性格です。心の中で毒づいても言わなかっただけだ」

「なぜあんな女なんかにルシフェルが…。テンプテーションでも使ったのか？」

「テンプテーションごとき僕の精神力があれば跳ね除けられますよ？」

…つづく