ヴィッキーとジュリーが結婚して家を出て行ったので、ゲイザー邸はガランとしてしまいました。
「リリムが残ってくれて良かったわ。私一人になると塞ぎ込んでしまってたと思う」
「他に行く宛てもないしぃ。魔界の洞窟に一人ぼっちで暮らすのもやだぁ」
「アークの家に行く気はないの?あなたの実の父親でしょ」
「パパは放任主義だから、あまり構ってくれないのよねぇ」
「ゲイザー様はリリムの事も実の娘みたいに思ってたみたいよ?血の繋がりのないナターシャちゃんの事も我が子同然に扱っていらっしゃったし…」
「なんとなくそれはわかってたのぉ。パパより私を愛してくれてる気がしてたわぁ」
「ゲイザー様は全ての人を平等に愛せる人なのよ。私だけ特別扱いして欲しいって考えた事もあったけど、それはワガママだから」
「あーあ、次に良い男を見つけるのは何百年かかるのかしら?勇者様を見つけるのに二千年もかかったのにぃ」
その頃、天界にいるゲイザーはミカエルの執務室で話をしていました。
「勇者ゲイザー。天界で幹部の座に就く件は考えておいてくれましたか?」
「はい、随分と悩みましたが、漸く決心が付きました。私はもう一度、人間に転生したいのです」
「そうですか…。天界にいてくださればいつでもお話できたのですが、残念ですね」
「ところで質問なのですが転生先は指定できるのでしょうか?」
「ええ、転生先について望みがあるなら聞けますよ?」
「アウローラの子供に転生させてください。アウローラのそばにいたいのです」
「それは良い考えですね。あなたがそばにいれば、ルークが暴走するのを食い止められるかもしれません」
「転生すれば今残っている記憶も、全て消えてなくなるのですよね?」
「ええ、前世の記憶は全て消えます。ルシファーは辛い記憶が残っているようですが、前世の記憶は消えた方が幸せなんですよ…」
「そうですね。私の記憶も消してください。アウローラの子供として、一からやり直します」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第185話。