床に散乱している下書きを拾い集めながらローラは呟きました。
「お父さんって歌も上手いし、絵も描けるから良いなぁ。私はなんにも出来ないのに…」
「うーん、自分ではそれほど上手いとも思えないのだがね」
「おじさん剣士なのに、なんで音楽も絵もできるの?」
「見よう見まねで独学でやっていたから、ちゃんとした教育は受けていない我流だよ?」
「我流なんだ?独学だけでここまでやれるのが逆にすごいよ!てっきり絵の勉強してたんだと思ってたから…」
数日後、ゲイザー邸を訪れて絵を受け取りました。
「どうかな?気に入ってもらえただろうか…」
「おじさん、胸はこんなにちゃんと描いてくれなくて良かったんだけど…」
「ああ、ちょっと胸をしっかり描きすぎてしまったな…と反省してたんだ」
「フラウおばさんの絵も胸が一番最初に目に入って来たんだけど、胸におじさんの気迫を感じたよ?」
「やはりわかってしまったか…。胸を描くのに一番時間をかけている」
「そんな感想は口が裂けてもおばさんには言えなかったけどね」
「私の悪い癖なんだ。綺麗な女性を描く時は胸を描くのに時間を取られ過ぎてしまってな…」
「おじさん、真面目ぶっててもやっぱり男だったんだね…」
「気に入らないようなら返品してくれて構わないよ?私の執務室に飾って置くから」
「ううん、買わせてもらいます。はい、千ジェニー!」
「ハハハ!似顔絵で金をもらったのはこれが初めてだよ?」
「そうなんだ?このクオリティなら普通に売れると思うけど…」
「プロの絵師にはかなわないよ?時間もかかりすぎてしまうから、もっと早く描けないと絵師にはなれないだろうな」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第167話。