家に帰るとアークとナタは一緒にお風呂に入りました。アークがぐずって入りたがらなかったからです。ナタは美容師なので、慣れた手つきでシャンプーを泡立てています。
「ナタと一緒にお風呂に入るなんて二十年ぶりだろうか?」
「アカデミーに入った頃だから大体そのくらいね」
「懐かしいな…。あの頃はよく翼を洗ってもらっていたが、気持ち良かったよ」
「痒いところはない?」
「頭は特に痒くはないよ?」
「あの頃より胸が大きくなったでしょ?」
ナタはアークの翼のなくなった背中に泡をたくさんつけて胸を押し付けました。
「今日はサービスが良いね?どういう風の吹き回しなんだ」
「アークの髪が黒くなってる時って、ストレスが限界に達した時でしょ?」
「流石ナタは僕の事をよくわかっている」
「議長に昇格した時に黒くなってたから」
「書類の山が多過ぎて帰れるのがいつも定時を過ぎて、ナタが先に寝てしまってたからね…」
「最初はイメチェンしたのかな?って思ってたんだけど、違うなって気付いて私も悩んでたもん」
「だから議長の任期が終わった四年後に議長決定トーナメント戦は辞退したからね」
「アークが全員一撃で仕留めて試合終了だったから、つまんなかったってみんな言ってたわ」
「殺さない程度に手加減はしておいたのだが、弱い者いじめは心が痛むよ」
「強過ぎるのも悩みの種よね…」
「下っ端議員になっても僕が仕事が速いからって他の奴らが僕に仕事を押し付けようとするから断ったら、簡単に出来る癖にやらないなんて性格が悪い!と陰口を叩かれた。僕にしてみれば才能のない奴の方が羨ましいよ?」
「才能がない方が羨ましいなんて、贅沢な悩みだわ…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第134話。