復活コンサートは劇場の特別席からテオドール夫妻とサルバドール夫妻、ナタとフラウとグロリアとローラとジュリーが観ていました。
「こんな大きな劇場でコンサートを開ける日が来るなんて、夢にも思っていませんでした。五十を過ぎた自分には厳しいのではないか?と思いましたが、皆さんの期待に応えられるように頑張ります」
ダークのコスプレをしたゲイザーの挨拶が済むとアークが挨拶をします。ルークはコーラス隊の中に参加していました。可愛いコーラス隊の服を着て舞台の後ろの方に置かれた席に座っています。
「久しぶりにみんなの前で歌えるのが楽しみです。僕の息子がまさか俳優になるとは思っていませんでしたが、それがきっかけでこんな機会が巡って来て、人生は本当にどう転ぶのかわからないなと思いました」
「それでは一曲目、自分が初作曲した『素敵なステーキ』を歌います」
引退ライブで初演奏した曲なので、ファンにとっては最後に聴いたメサイアのダークの曲がこれに当たります。
「引退ライブで最後に演奏した曲を復活コンサートで最初に持ってくるとは…。曲順の構成も凝っているな?」
特別席のテオドールが曲と曲の合間に、隣の席から話しかけて来ます。
「ゲイザー様はこの曲に一番思い入れがあるそうで、声が出なくなる後半ではなく前半に入れたいと希望されてたんです」
ゲイザーとアークは演奏後ステージ上で水分補給をしてから、今の曲の解説と次の曲の紹介を始めました。
「この曲は妻の友人のグロリアさんからファンレターをもらって、初めて作詞に挑戦した曲でしたので、グロリアさんに捧げます」
「それでは次の曲に行きます。僕の作詞で瓶詰めのカタツムリ」
グロリアは特別席で感激しています。アークはサビまで来るとわざと歌うのをやめて、こう叫びます。
「みんな!歌えるー?」
「焼かれて悶えて、エスカルゴー!」
テオドールまで特別席で一緒になって歌っています。カタツムリの唄はテオドールのお気に入りの曲でした。ミッシェルも一緒にサビを歌っていました。
「最後の曲はデビュー曲でもあるこの曲です。聞いてください」
最後の締めくくりはアップルパイの唄で終わりました。アンコールの声と拍手が巻き起こります。アークはコーラス隊のルークの手を引いて舞台の中央に連れて来ます。
「それじゃアンコールはこの子に一緒に歌ってもらおうかな?」
特別席でテオドールは首を傾げています。
「ん?あの子は誰だ…」
「あれは…アークの息子さんですね」
「私の耳が遠くなったのかな?よく聞こえなかった…」
アップルパイの唄をアンコールでアークとルークが一緒に歌うと、ファンはルークの可愛い歌声の虜にされてしまいました。ゲイザーはほとんど口パクでリュートを弾いてるだけでした。
「あの美少女は一体、誰なんだ?あの子なら新しいアイドルになれるぞ…」
テオドールが呟くのをフラウは苦笑いしながら聞いていました。
「すごく素敵なコンサートでした。私の為にありがとうございます!テオドール様」
「ミッシェルの為と言うより私も楽しませてもらっていたのだがね?」
「つまらないコンサートだった」
しかしサルバドールだけ楽しんでいない様子です。
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第47話。