テオドールは書類に素早く目を通すと言いました。
「なるほど、復活コンサートの余興にもなるから行って来なさい。この有給届けは受理の捺印をして、議長に渡しておくよ?」
「テオドール国王は頭が柔軟なので、話が早く通って助かります。議長殿は頑固なので、時間を取られると思いましたので…」
「開演時間は正午からだろう?間に合わなくなるといけない。楽しみにしている者が多いからな」
アークは城の馬を借りて劇場へ急ぎました。既に並んでいる観客がいます。裏口から劇場の中に入ると、劇団長が怒り頂点に達して、劇団員を怒鳴り散らしていました。
「これだからアカデミーに通っている子供は信用できん!昨日の稽古をサボった時点で公演中止の告知を出すべきだったな…」
「しかし払い戻しになると一枚一万ジェニーのチケットを二千枚ですので、二千万ジェニーの現金が必要になります」
「二千万の違約金をルーク・マルヴェールに請求してやる!保護者の住所はわかるか?」
「ルーク・マルヴェールの保護者のルシファーです。お話があって参りました」
劇団長のいる部屋のドアをノックして、アークは中に呼びかけました。すぐにドアが開いて中に招き入れられます。
「これはこれは…。ちょうど良かった!違約金の件でお話があったのです」
「違約金は支払いません。裁判を起こさない為に条件が二つあります」
「随分と強気な態度ですな?息子に顔に泥を塗られて、失脚するかもしれないと言うのに…」
「困るのはそちらではないですか?復活コンサートのオファーも放棄して良いんだ。ゲイザーも乗り気ではなかったからな。僕が出ないと言えば出るのをやめるはずだ」
「裁判になったら、そっちが不利だろう?金で解決できるなら金で解決した方が利口だぞ!」
「うちの息子の給与明細です。九万九千九百九十九ジェニーしか支払われていない」
「まさか一ジェニー足りないから訴える…。とでも言うのですかな?」
「一ジェニー足りない理由はわかってますよ?十万ジェニーからは公的な文書にサインと捺印が必要になりますからね。わざとこの金額にしたんでしょう?」
「うぐぐ…!やはり議員は法律に詳しいようだな」
「あなたは息子の年齢を知っていながら、公的な文書を作成せずに雇っていました。何か問題が起きても知らぬ存ぜぬで押し通す為にね?」
「だからわしはあの子供を雇う事に反対したのだ!こう言う事になるのは目に見えていた…」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第42話。