いつもよりローラが密着して座って来たので、ルークは思わずドキッとします。
「あなた、お名前は?」
「名前はルー…、あっ…!えーと…」
「ルの付く名前?よく聞き取れなかった」
ルークは余計な事を言って正体がバレないか不安になって、黙りこくってしまいました。
「失語症なのかな?何か怖い事があると喋れなくなる事があるって、お母さんが言ってたわ」
「この子も痴漢にあったから、ここに来たのかもねー」
食事休憩が終わって軽く打ち込みをまた始めます。
「あなたもやってみる?入部希望なんでしょ」
「僕は体術は苦手だから…」
「今、僕って言った?」
「あっ…!間違えた…」
「女の子なのに僕って、なんか可愛い!」
バレたかと思いましたが、どうやらまだバレていないようでした。訓練場の更衣室で運動着に着替えさせられて、ローラが手取り足取り教えてくれます。
「あ、あの…。せ、背中に胸が当たってる…」
「最初は恥ずかしいかもしれないけど、すぐに慣れてくるよー」
ルークは隙を見て、ローラの飲んでいたスポーツドリンクの入ったボトルの中に、何かを投入しました。ローラがそれを飲もうと掴みます。
「あっ!やっぱりダメ」
ローラの手から慌ててボトルを奪い返します。
「もしかしてそれ飲みたいの?飲んでも良いよー」
ローラがさっきまで飲んでいたストローが、ボトルに挿さっています。
「飲まないなら、返して?喉がカラカラなの」
ルークはストローを取って、ボトルの中身を一気に飲み干すと、手で目を覆い隠して走り去りました。
「変な子…。そんなにこのスポーツドリンクが美味しかったのかな?」
ルークにも心眼があるので目を隠していても、人とぶつからずに歩けます。
「ううっ…、まずい…。もし目を開けたら、最初に目の合った相手に惚れてしまう」
「どうかしましたか?君、泣いてるの…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第34話。