亜麻色の三つ編みのお下げ髪の少女が丘の上の小さなログハウスに一人で住んでいました。ハーフエルフなので耳が少しだけ尖っています。人間の街にある市場に出かける事にしました。フードの付いた上着を羽織ります。フードを被れば人間の街でも耳を隠せるからです。
「今日は天気も良いし、お出かけ日和ね」
買い物を終えた帰り道、普通の人間なら方向感覚を失ってしまう迷いの森を、迷うことなく歩いていましたが、森の奥深くにある大きな樹のそばを通り過ぎた時でした。何かがポンと頭の上に当たって、フードの中に落っこちました。
「えっ、今のはもしかして鳥のフンかしら…」
亜麻色の髪の少女は急いで家に帰ると、衣服を脱いでかごに入れると、シャワーを浴びに風呂場に入ってしまいました。フードからもぞもぞと体長十五センチほどの小人の少年が出て来ました。檜で出来た風呂場を覗き込みます。
「うひゃあ!とびっきりの美人じゃないか…」
少女が脱衣所に出て来るとタオルを体に巻きます。小人は少女の足をよじ登り始めました。少女は何かが這い上がって来るのを感じて、タオルをガバッと開きました。少女の胸の谷間に小人が小さな手で掴まっています。
「あなたはだぁれ?小人みたいだけど…」
「やあ!僕は小人のショーン。君の名前は?」
「私はアプリコット。アプリィって呼んで?」
アプリィは体を拭いて服を着替えると、ショーンをてのひらに乗せて、キッチンのテーブルの上に置きました。
「小人って一体、何を食べるのかしら?」
「何でも食べられるよ?虫でも葉っぱでも木の実でも」
「虫も食べるのね。木の実ならあるわ。ちょっと待ってて」
アプリィはパンプキンシードやピーナッツやクコの実の入ったボトルを持って来ました。
「わお!ご馳走だねー」
「スプーン一杯くらいで良さそうね」
ボトルのコルクのキャップを取ると木製のカトラリーで掬い出します。
「この緑色の種みたいなの美味しい」
「それはカボチャの種を乾燥させたものなの」
「こっちの赤い実みたいなのは何?」
「それはウルフベリーと言う実なの」
「初めて食べる物ばかりだよ!」
「気に入ってくれたのなら嬉しいわ」
「僕、ここに住んじゃおうっかなぁ」
…つづく
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昔、初投稿して落選した黒歴史の作品、第1話。