結局、日が暮れる前に街に辿り着けず、二人と一匹は野宿をする事になりました。
「アウトドアなら得意なので任せてください」
イノンドは食べられる野草を歩いてる途中で摘んでおり、木の枝で釣竿のようなものをこしらえて、ミミズを餌に付けると釣り糸を垂らします。ルリは面白そうにそれを見ていました。魚が釣れるとバタフライナイフで裂いてハラワタを取り出し、木の枝を突き刺すと焚き火のそばで焼きます。
「うまそうな匂いがして来たなー。イノンドがいなかったら、マジでヤバかった…」
「こちらの野草でサラダを作ります」
手荷物の中からオリーブオイルと岩塩を取り出してパッパと味付けを済ませました。魚が焼ける前に前菜として食べます。
「うめぇ!イノンドは騎士を辞めてもシェフになれるんじゃないか?」
「料理は趣味でしたので独り身が長いと自然に身に付いてしまいます」
魚が焼けたので丸かじりします。
「うますぎる…」
「ジンジャー殿は美味しそうに食べてくださるので作り甲斐がありますね」
「ルリが生きてる頃に一回だけ、俺の為に作ってくれた料理もうまかったなぁ。もう一度食べたかった…」
「ボクも料理が作れるように特訓しようかな?お嫁さんになった時の為に」
「私のお嫁さんになってくださるなら、料理は私がお作りしますよ?」
「イノンドさんの方が料理上手だからボクは作る必要ないかー」
「人間のルリは女医になる勉強ばっかりしてっから、料理とかはあまりやってなかったっぽいけどな」
「最近は男でも料理くらいできないと女性にモテませんからね」
「うっ…俺も少しは作れるようになった方が良いか…」
「ジンジャー殿ならお強くて顔も良いですし、さぞかしおモテになられる事でしょう?」
「それが…好きな女にだけモテなかった…。どうでも良い女は寄ってくるんだけど…。絡んで来られてもうっとおしいだけだし…」
「うーむ。モテた事のない私からすると、贅沢な悩みのように感じますね。羨ましい限りですよ」
「俺はむしろクレスやイノンドが羨ましい…」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第31話です。