そんなある日、ナタはサルバドールをマルヴェールに連れて来ました。ゲイザー邸を訪れると家の中は猫屋敷になっていて驚きます。裏庭にはジョルジュ用の普通の犬が百匹は寝られそうな巨大な犬小屋に、別の犬が何十匹も折り重なって昼寝をしていて、ジョルジュは小屋の外で寝ていて大きな尻尾に戯れてる子犬もいます。
「うわぁ…。家中、動物くちゃいし、散らかりまくってるねー」
「ナターシャちゃん、久しぶりねぇ。元気にしてた?ところで、この男の子はどうしたの?」
ロレインがナタを迎え入れてリビングで話していました。窓のレースのカーテンは猫の爪でビリビリに破かれていて、机の上に置いてある物もしっちゃかめっちゃかになっています。
「この子はちょっと訳があって、うちで預かってる子なんだけど、フラウおばさまに預かって欲しくて…。もうじきテスト期間に入るのよ」
「フラウさんは忙しいから私が面倒を見る事になると思うけど、ゲオルグの世話だけでも大変なのに大丈夫かしら?」
「それよりもこの家の中の状態は…。いくら猫好きの私でもこれは嫌だわ」
「ゲオルグが次々に拾って来ちゃって…。餌代だけでほとんど生活費が消えてしまってるから貯金も底を尽きかけて悩んでいたところよ?」
「フラウおばさまのお給料、普通の幹部より少ないんでしょ?おじさんが減らしたって言ってた」
「そうね、一般家庭並のお給料しか受け取ってないみたいだけど、今は副業を増やして稼いでるみたいよ」
「ふーん、なんだかすごく家計が火の車でこの家は大変な事になってるんだね。ロレインおばあさまは働きに出ないの?」
「私はもう六十を超えてるし、雇ってくれるところがないわ。だからこうして家の事をやってるの。片付けても片付けてもキリがないから、こんな状態になっているけどね」
「おばさまの副業ってまさか…夜のお仕事じゃないよね?」
「夜遅くまで働いてるのは知ってるけど、何をしてるのかまでは知らないわ…」
ナタはサルバドールを連れてフラウの執務室がある議会場に行きました。フラウは忙しそうに書類に目を通しています。ナタの姿に気付くと手を止めて立ち上がりました。サルバドールに微笑みかけます。
「いらっしゃい、ナターシャちゃん」
「フラウおばさま、ちょっとお願いがあって来たのー」
「この子は…?アークの子供だとしても大き過ぎるわよね」
「いくら天使の子供だからってこんなすぐに大きくなる訳ないじゃん?この子は…リズって人の子供だよ」
「アークなら隠し子がいてもおかしくないかなって思っちゃって…。ごめんなさい」
「確かに…そこら中に子種を撒き散らして、隠し子が軽く百人とかいそうだわ」
「ナターシャちゃんったら…。それはいくらなんでも言い過ぎよ?アークが可哀想」
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第79話。