ゲイザーは更にアークを煽るような事をわざと言いました。
「まだわからないのですか?ナターシャ様は私のものなんです。あなたには渡しません」
「一度、僕に負けた癖に…」
「魔法を使って、ですよね?魔法の使えない私に対して卑怯な奴だ…」
「今日は魔法は使わずに勝つ!」
アークの槍がゲイザーを完全に捉えました。ナタが目を覆い隠して、ミケーラはフラウの腕を掴んで引き留めています。アークの槍はゲイザーの顔の前で寸止めされていました。
「なぜ殺さないんです?いや、あなたは私を殺せないんだ」
「くっ…!なぜ僕の攻撃を躱そうとすらしなかった?お前なら躱せるだろう?」
「躱す必要などないからです。あなたは私を絶対に倒せない…」
「その根拠のない自信はどこから湧いてくるんだ?僕を怒らせて、そこまで冷静でいられる奴は今まで誰もいなかった…」
「簡単な分析ですよ?あなたは以前、私と戦った時、常に私を殺さない程度に手加減していましたよね?最後の一撃も敢えて私に雷を落とさず、槍に落として感電させた。私に直接、雷を落とせば死んでいたと思います」
「それは…あなたを殺してしまったら…ナタが悲しむと思ったから…」
「迷いのある攻撃だったので、あの時は全て躱せたんです。おそらく今のあなたと本気でやりあったら、ほぼ躱す事も出来ずに試合は即終了してしまうでしょうね」
「人間のルールであなたを完膚なきまでに叩きのめすつもりだったのに…」
「この策を名付けるとするならば、キャスリングです。本来ならルークとキングの位置を入れ替えるチェスの技の事ですが、私とあなたの立場を逆転させてやりました」
「キャスリングだって?そんな策があったなんて…。僕は全くあなたの手の内を読めていなかった。リザインします。僕の負けです…」
闘技場で議長から一番人気のアークの棄権が言い渡されて、次の日の第二試合は二番人気のユリアーノが勝ち抜き、決勝戦はゲイザーとユリアーノの試合になりました。
「まさかユリアーノ様とお手合わせ出来る日が来るとは思いもしませんでした」
「ふふ、手加減はしませんよ?魔法しか能がないので剣は使いません」
「ええ、構いません。よろしくお願いします」
接戦でしたが、最後の最後でユリアーノの魔法が決まり、勝利しました。優勝者のインタビューでユリアーノは新議長就任の演説をします。
「この度はトーナメントの組み合わせの妙により、幸運にも優勝する事が出来ましたが、もし第一試合が私とルシファーだったら、私は負けていた事でしょう。ルシファーが次のトーナメントに出れば、優勝確実だと思いますが、今期の議長は私が務めさせてもらいます。ご静聴、ありがとうございました!」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第154話です。