ゲイザーはジョルジュの言葉をなるべく正確にナタに伝える事にしました。ゲオルグには適当な嘘をついてごまかしましたが、ナタには真実を知らせるべきだと思ったからです。
「ジョルジュは番犬だから裏庭に繋がれていても苦痛は特になかったようだ。鎖ぐらい本気を出せばいつでも引きちぎれるが、人間が怖がらないように繋がれてるフリをしていたらしい」
「鎖外してあげてって何度も頼んだのに、外さなかったのはそう言われてたからなの?」
「いや、その頃はまだジョルジュと喋れるのは気付いていなくてね、たまに誰かの声が聞こえる気はしたが、空耳だと思っていたんだ」
「オイラの声も聞こえてたのかい?」
「時折、アーク殿を罵る声が聞こえていたが、あれはピーターの声だったのかな?」
「おう!アークの奴、顔がちょっといいからって、調子に乗りすぎなんだよ?」
「てっきり私の心の声かと悩んでいたが、謎が解けたよ…」
「ゲイザー様は私のことを…そんな風に思っておられたのですか?少し傷付きました…」
「いや、そんなことは思ってはいないが、ナターシャを取られてしまったので、私は心の底ではアーク殿を嫌ってしまったのか?と悩んでいただけだよ」
「それで、ジョルジュはなんて言ってるの?」
「ジョルジュは私の父がマルヴェールに来てから周りに馴染めず悩んでいたので、ずっと励まし続けていたらしくてね、父はこっそりジョルジュに会いに来ては散歩に連れ出していたようだ」
「全然気付かなかったわ…」
「大体、ナターシャがいない時間を狙って来ていたようだね。他の使用人からの証言でわかった」
「それであのおじいちゃん、ジョルジュを飼いたいって言ってるの?」
「父は見知らぬ土地に来て友達がいなくなってしまって寂しかったのだろう。ジョルジュだけが友達だと言っていた」
「それでジョルジュはおじいちゃんのところに行きたいって言うの?」
「ああ、ナターシャは他にたくさん使い魔がいて寂しくないだろうから、私の父が亡くなるまでそばにいてやりたいと言っていた」
「わかった…。ジョルジュが行きたいなら行っても良いよ」
ナタは涙を流しながら、アークの胸にしがみついて、ゲイザーとジョルジュを見送りました。
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第116話です。