昼休みになってナタはパンを買うと、一人寂しく食事をしています。ナタの肩に乗っているピーターにちぎったパンを与えました。
「ねぇ、ピーター。どうして前みたいに喋らないの。私の事嫌いになっちゃったから?」
ピーターはパンをもぐもぐしながら、ナタの方を見上げて、こう言います。
「チュウチュウ」
「ネズミみたいな鳴き声…。前みたいに喋ってよ」
「チュチュチューチュー!」
「ピーターがなんて言ってるのか、私にはわからないよ…」
突然、ピーターは猛ダッシュで走り去って行きました。
「ピーター!どこへ行くの?もしかして私の事嫌いになったから、いなくなっちゃったの…」
夕方になってアークが迎えに来ると、しょんぼりしているナタが門前に現れました。
「どうかなさいましたか?ナターシャ様…。まさか!またいじめられて…」
「違うの…。ピーターがいなくなっちゃった」
「ピーターと言うのは使い魔のウェアラットの事ですか?」
「うん、急に走ってどっか行っちゃった」
哀しみを抑えていたはずのナタの瞳から、ポロポロと大粒の涙が溢れ始めます。
「ピーターを探しに行きましょう!」
「ううん、私が嫌になったなら無理やり連れ戻したくないよ…」
「ナターシャ様の事を嫌になるはずがありません」
「ピーターが帰りたくなったら帰って来ると思う」
「では帰って来るのを待ちましょう」
その日の晩の事です。ゲイザー邸に見知らぬ少年が現れました。アークがドアの前で応対します。
「よお!アーク。ナタはいるかい?」
「どちら様でしょうか?ナターシャ様はお勉強中です」
「オイラ、ナタに会いに来たんだよ?中に入れてくれよ!」
「申し訳ありませんが、お引き取りください」
「チッ!てめぇの事は前から気に入らなかったんだよ?オイラの事、魔法屋で売り飛ばそうとしやがって」
「何のことを言っているのか私にはサッパリです。お名前を伺っておきます」
「オイラの名前かい?ピーターだ」
「ピーター?どこかで聞いたことのあるような名前ですね」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第105話です。