ゲイザーは眠気覚ましの紅茶を飲みながら言いました。
「話すと長くなるのでしょうか。朝まで付き合いますよ?」
「二千年前、私はミカエル様と同じセラフィムの地位に就いていました。神の次に偉い地位です」
「セラフィム?」
「はい、六枚の翼を持つ天界のヒエラルキーの上から二番目がセラフィムです」
「と言うことは…アーク殿は私より遥かに地位が上、と言うことになるのでしょうか?」
「いえ、現在の私の地位はアークエンジェル、天界のヒエラルキーの下から二番目です。ゲイザー様は勇者なので私より地位は上であられます」
「なんとなくですがアーク殿からは高貴な者の持つオーラのようなものを感じていましたが、今の話を聞いて納得しました。今後、私のことはゲイザー様ではなくゲイザーと呼び捨てにしてください」
「ナターシャ様にも呼び捨てにして欲しいと言われたのですが、私は私の意思でナターシャ様の使い魔になりましたので、呼び捨てにすることなどできないのです」
「ずっと違和感を抱いていたのです。なぜアーク殿は人間である私に対して目上の人のように接するのかが…」
「私はナターシャ様の前世であるリリスを不幸にしてしまいました。私のせいでリリスは足を切断されて天界を追放された。あとで知ったことですが、天界ではいじめを受けていたようです」
「足を切り落とすとは…随分と酷い仕打ちをしますね」
「私はゲイザー様の前世であるアダムに嫉妬していました。私の愛するリリスから愛されていたからです」
「えっ…私とナターシャは前世で夫婦だったのですか?意外ですね…」
「ええ、でも私が別れるように仕向けました。あの時見ていた小鳥がアダムの密偵なのはわかっていたのに、私はリリスにあんなことを…」
「浮気調査のようなものでしょうか?しかし小鳥が密偵だと私なら気付きませんね」
「私がリリスを誘惑したことは密偵もわかっていたと思います。でもなぜかリリスが私を誘惑したと、嘘の密告をしたようでした」
「ふむ、地位の高いセラフィムのゴシップはまずいので、地位の低いリリスになすりつけたわけか…」
「話を現在に戻しますが、ナターシャ様とお付き合いを始めてから、ナターシャ様のお部屋の掃除をしていると、ゴミ箱の中にくしゃくしゃに丸められた手紙を見つけました。開けて見るとナターシャ様の悪口が書かれていたのです」
「悪質なファンの仕業でしょう」
「目も当てられないような罵詈雑言の数々でナターシャ様を罵ってありました。なぜ私ではなくナターシャ様が傷付けられたのでしょうか?私にはわかりません…」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第34話です。