「…一刀、一刀どこ?……」
曹魏と蜀呉連合との決戦は曹魏の勝利に終わった。
そして、華琳は蜀呉を吸収するのではなく三国同盟という形をとることにした。
恋は嬉しかった、闘いが終わっただけでは無く、さっきまで敵だった相手と仲良くできる。
皆で美味しいご飯を食べて皆で笑って皆と笑顔で一緒に居られる事が。
だから恋は一刀を探した、この平和を一番待ち望んでいた大好きな一刀を。
しかし、一刀は何処にも居なかった。皆と一緒に笑っている筈なのに……
途端に恋は不安に駆られた、今まで感じた事がない様な不安に……
「一刀、一刀、一刀どこ?どこにいるの?」
「ワンッワンッワンッ」
「セキト?……セキトも一刀を探しているの?」
「キュ~ン、キュ~ン」
クン、クン、クン
「 !! ワンッワンッワンッ」
タタタタタタタタタタタッ
一刀の匂いを嗅ぎ取ったのか、セキトが行き成り走り出した。
「待ってセキト、恋も行く!」
セキトの後を追って恋も走り出した。
タタタタタタタタタタタ……
走りながらも恋の胸には一刀との思い出が湧き上がって来た。
初めて一刀に会ったのは月の代わりに華琳の城に行った時だった……。
(あの時はねねが説明は自分が全部するから恋は立っていればいいと言ってた、だから立ったままねねの話が終わるのを待っていた。そして前を見てみたら一刀が不思議そうな顔をして恋を見ていた)
『君が呂布かい?』
『だれ?』
『あ、俺は一刀。北郷一刀』
『かずと…?』
ねねと霞が帰る準備をしてる間に一刀と簡単な話をした。
一刀とのおしゃべりは不思議と楽しかった、だから帰る時に真名を教えた。
タタタタタタタタタタタタ……
「一刀、一刀、一刀……」
次に一刀と会ったのは袁紹が連合を組んで責めて来た時だった……。
その中に一刀が居るのを恋は信じられなかった、一刀が自分たちをいじめに来るなんて。
虎牢関で春蘭と闘っているとそこに一刀が来た。
『…何しに来た……一刀…』
『恋、俺達は別に董卓を倒しに来たんじゃない。どのみち朝廷はもう終わりなんだ、だからこそ俺達は力をつけなきゃいけない。朝廷が守ろうとしなかった庶人達を守る為にも。董卓は悪くない事を俺達は知っている、董卓も助けて見せる。だから恋も力を貸してくれ、俺達の仲間になってくれ!』
一刀の目はどこまでもまっすぐだった。だから恋は一刀を信じられた。
約束どおり一刀達は月や詠、そしてねねも助けてくれた。
霞と華雄は劉備の所に行っちゃったけど。
タタタタタタタタタタタタ……
「…一刀、一刀、グスッ、一刀…」
あれからいろんな事があったけど、いつでも一刀は恋の傍にいてくれた。
肉まんをいっぱい買ってくれた、頭をなでてくれた、手を握ってくれた。
いっしょにお昼寝してくれた、いっしょに笑ってくれた、抱きしめてくれた。
愛してくれた………。
「一刀、一刀ぉ……ぐしゅっ…、かずとぉ……」
恋はすぐに一刀に会いたかった、その胸に飛び込みたかった、温もりを感じたかった。
いっしょに一刀を探していたセキトはずいぶんと先に走って行っていた。
「ワンッワンッワンッ」
セキトは焦っていた、一刀の匂いを辿りながら進めば進むほどに一刀の匂いがだんだんと薄れていくのだ。
このままでは一刀に会えなくなる、それは嫌だった。
セキトは一刀のお日さまの匂いが好きだった、なでてくれる温かな手が好きだった、自分を包み込んでくれる大きな胸板が好きだった。
「キュ~ン、キュ~ン」
そしてセキトはついに一刀を見つけた、小川のほとりに立っている一刀を。
「!! キャンキャンキャンキャン!」
「…セキト」
セキトの声はもうほとんど悲鳴に近かった、一刀の周りを吠えながらグルグル回り、ズボンの裾に噛み付いてグイグイ引っ張る。
こんな処にいちゃダメだ皆の所に行くんだと。
「キュ~ン、キュ~ン、キュ~ン」
「セキト……お前…わかるんだな……」
サクッ
「……恋…」
恋はやっと見つけた一刀を見て愕然とした。
一刀は間違い無く目の前に居るのにその気配がまったく感じられないのだ、まるで幻の様に……。
「…やだ……一刀…ここにいて。…ぐすっ…、どこにもいっちゃやだ…」
「キャンキャンキャン!」
「恋、セキト……ゴメンな」
「いやだ!やだ、やだ、一刀はここにいるの!ずっと恋たちといっしょにいるの、どこかに行くなんてぜったいダメ!」
恋は泣きながら一刀に抱きついた。
「恋、俺も何処にも行きたくない、ずっと恋達の傍にいたい。でもどうしようもないみたいなんだ。ゴメン、ほんとにゴメン」
一刀は抱きしめた恋の頭を撫でながらそう言った。
「やだぁ…ぐす、ぐしゅ、そんなのいやだぁ…ううう…」
恋の腕の中で一刀は淡い光に包まれ、そこから光の粒が空に昇って行き、それと同時に一刀の姿はだんだんと薄れていく。
「キャン!キャンキャンキャン、ワオーン!」
「いやだ!いやだ!ううう、ぐしゅぐしゅ、うわあぁぁぁん」
「大…好きだった、ううん、大好き…だよ恋……今まで…も…これ…からも…ず…と、ずっと……いつ…ま……でも…れ……んが……だ…いす……
一刀の体はすべてが光の粒となり恋の腕から零れ空へと昇っていった。
「キャン!キャン!キャン!キャン!……ワオーーーーーーン!」
「か、ずと?……うそだよね……どこにいるの…ねえ…かずとぉ……」
恋の目の前で最後の光の粒が消えていった…
「ううう、いやだよ…帰ってきてよ…もうわがまま言わないから……ぐすっぐすっ…うわあああーーーーーーん!一刀ー!一刀ー!かずとぉーーーーーーー!」
「キャーン、キャーン、キャーン、キャーーーーン!」
恋とセキトの鳴き声が響く空には……眩く光る月が見守るように浮かんでいた……
~時は流れて~
「此処は?……」
青年は小川のほとりで目を覚ました、日の光を受けて光る白い服を身につけて。
「え~と、俺は何をしてたんだっけ?…あれ、この犬と子供は…誰だ?」
青年の左には首に赤いバンダナをかけた一匹の犬が、そして右には茶色の髪の小さな女の子が青年に寄り添って寝ていた。
「俺は…誰だっけ……、此処は何処だろう?」
「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
ドドドドドドドドドドドド
「何だ、この地響きは…それに物凄く命が危険な感じがするぞ」
「ぅぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド
「だ、だめだ、早く逃げないとねねのキックが…って…ねね?」
「すーぱーいなずまちんきゅーきっくぅーーーーーーーっ!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!
「そげぶうぅぅぅぅぅぅっ!」
一刀に渾身のキックを加えたねねは息を切らせながら一刀に畳み掛ける。
「はあ、はあ、はあ、今まで何処に居やがったですか、このチ○コ隊長!はあ、はあ。今までどれだけねねが…げふんげふん…もとい、今までどれだけ恋殿が悲しんだと思ってやがるのです!」
「いててて…相変わらずだなねね。(消えていた記憶を一撃で呼び戻すとは…侮りがたし、ちんきゅーきっく)」
「ワフ?…!ワンワンワンッ!!」
その騒ぎで目を覚ましたセキトは一刀に飛び付き、その顔を嘗め回す。
ペロペロペロッ
「こら、やめろ、セキト、ははははは」
「ワンワンワンワンッ!」
「うにゅ~~、どうしたセキト?」
一刀の隣で寝ていた女の子が目を覚ました。
「そう言えばこの娘は誰?」
「この方は呂刃殿ですぞ」
ねねが名を告げると、其処に彼女が…
恋がやって来た。
「恋と一刀の子供……」
「恋!……ただいま、帰って来れたみたいだ」
「うん……お、おかえり…ぐすっ……。一刀ぉ、会いたかった!」
そう言って恋は一刀の胸に飛び込んだ。
(この匂い、あったかい胸の中、夢じゃない、ほんとの一刀だ)
「あ、あの~~、恋殿。つ、次はぜひとも……」
「かあさま、次はあいの番」
「そ、そうですぞ。次は愛殿に……」
「愛、それがこの娘の真名か。おいで」
「うん、えへへ、とうさまいいにおい」
「そう、一刀はとてもいい匂いがする」
「そ、それではおじゃまして次はね…」
「ワンワンワン、キュ~ンキュ~ン」
「こら、やめないかセキト。くすぐったいぞ」
「セキトも一刀に会えてとても喜んでいる」
「あいもとうさまにあえてとてもうれしい♪」
「ああ、とうさまも愛に会えて嬉しいよ」
「ううう~~」
「お城には華琳や月たちの子供もいる。早く会ってあげて」
「そうだな、早く会いたいな」
「うう、ぐしゅっ」
「さあ、ねね、来いよ」
「えっ?」
「ねねにまた会えてほんとに嬉しいよ」
そう言って一刀は手を広げる。
「うう~、ねねは、ねねは淋しくなんかあったですぞーー!また会えて嬉しくなんかない事はないですぞーー!」
ねねは一刀の胸の中で泣きじゃくりながらそう言った。
(帰ってこれた、何故帰って来れたのかは分からないけどもう何処にも行くもんか。此処からまた始めるんだ、新しい物語を。皆で……)
~終劇~
(`・ω・)という訳でもし恋が魏に下っていたらという設定です。
話の中に書いてるようにこの外史では月と詠も魏にいます。
後、雛里と美羽も……
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恋の魏√風ENDを思いついたけど蜀での消失ENDはもう書かれてるよなと思ったけどそこで私は思いついちゃいました。
だったら魏に下った事にすればいいんじゃねと。
という訳で書いちゃいました。
喜んでもらえたらいいなあ。
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