「えへへ、上手に出来た♪」
私の手の中には以前、一刀様に教えてもらった天のお菓子「くっきい」がある。
失敗続きだったけど朱里ちゃんに手伝ってもらってやっと上手に焼き上がった。
「やっぱり朱里ちゃんと一緒だと何でも上手くいく感じ。…そうだよね、もう三国で闘いが起こる事はないんだからこれからは皆で仲良く出来るんだよね…仲良く……」
「一刀様も皆と仲良くするのかなぁ……。桃香さん奇麗だったな、朱里ちゃんも一刀様を見る時ほっぺた赤かったし」
「……愛紗さんも…星さんも……呉の人達はおっぱいおっきい人が多いいし……種馬だもんな、一刀様…はあっ…」
宴の場は皆の笑顔で溢れている、華琳様が、そして一刀様が望んだ平和が此処にある。
これからはこの平和を守る為に闘っていくんだ、一刀様と一緒に……。
「一刀様どこかなあ、早く食べて頂きたいのに」
「どうしたの雛里?」
「あっ、華琳様」
「それは何?何だかいい匂いがするけど」
「あわっ、あわわ、こ、こりぇは、そ、そにょお……」
「うふふ、分かっているわよ。一刀にあげるんでしょ」
「は、はひっ!」
華琳はからかう様にそう言うと雛里は顔を耳まで真っ赤にし、頭からは湯気が立ち上る。
「一刀なら森の方に行ったわよ、火照った体でも冷ましに行ったんでしょう。早く行かないと誰かに先を越されるわよ」
「はひっ!あ、ありぎゃとうごじゃりまっ…ガリッ……うう、噛んじゃいました。そ、それでは華琳様、がんばってきましゅ!」
トテトテトテトテトテトテ………
雛里はそのまま森の中へと掛けて行き、華琳はその後ろ姿を辛そうな眼で見つめ、そして……
「……そうね、雛里…私達の代わりに一刀を……見送って……グスッ…あげて……」
そして、華琳のその瞳からはどこまでも透き通った涙が流れていた。
はっはっはっはっ
トテトテトテトテトテ
「あっ、一刀様見つけた」
一刀は小川のほとりに立っていた、その姿はどことなく幻想的だった。
「ほあぁ~。そうだ、脅かしちゃお♪」
一刀に見とれていた雛里は気づかれない様に木陰から近づいて行き。
そしてすぐ近くにまで来ると一刀の呟きが聞こえて来た。
「これで大陸は一つになった……これで乱世は終わりを告げた…。俺の役目もこれで終わり……後は…俺が消えるだけか……」
「…………えっ?…」
カサッ
「 !! ……雛里…」
カタカタカタカタ
私の体が小刻みに震えている…ウソだ、そんなのウソだ……。
「どういう……事ですか?…」
「…俺の、天の御使いの役目は乱世を収める事。……その役目を終えた今、この世界に俺は居られないみたいなんだ…」
「そんな!…ど、どうして……どうしてですか!?」
私の目からはぽろぽろと涙が零れている。
さっきまでの楽しい気持が嘘のように心の中は悲しみに満ちていて、ぶるぶる震える手からくっきいがぽろりと落ちた。
「これは?」
一刀様がくっきいの入った包みを拾って中身を見ると優しく微笑んだ。
「いい匂い、美味しそうだな。食べてもいいかな?」
私は泣きながらもコクリと頷いた。
「カリッ…モグモグ…うん、旨い。ありがとう、とても美味しいよ」
そう言って一刀様は私に一つ差し出した。私はそのまま食べてみる。
「美味しいだろ?」
「…お、美味しくないでしゅ…しょっぱくて…グスッ…じぇんじぇ…、全然甘くないでしゅ…」
「グスッ…こん…どは…もっとじょ…うう…上手に作りましゅから…。待っててくだしゃい…そして…華琳様や…風ちゃんや、季衣ちゃんや…る…ううっ…流琉ちゃんや……けい……うえええ~ん…桂花ちゃんたちと一緒に…み、みんなで…みんなで一緒に…た、たべ…食べたいでしゅ…。だか…だから何処にもいか、行かないで下しゃい。居なくなっては嫌でしゅ~~」
私は我慢しきれなくなって一刀様に抱きついた。
その拍子に帽子が落ちたけどそのまま一刀様の胸で泣き続けた。
そんな私を一刀様は優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。
「ゴメン…俺も雛里達と、雛里と離れ…たくない。ずっと一緒に…居たい、此処で……みん…なといつま……でも…皆が…好きな…んだ…ひな……りが……雛里が…だい…大好きなんだ……此処に…居た…いよ」
一刀様は私を抱きしめ泣きながらそう言ってくれた。
目を開き顔を見上げてみると淡い光に包まれた一刀様がだんだんと消えていく。
「そ、そんな…嫌です、こんなの嫌です~。消えないで、消えては嫌でしゅ~」
抱きしめた一刀様の体から温もりが消えて行く。
そしてその体は光の粒になって空へと昇って行く。
「たとえ…ここ…からいなくな……ても、何時までもみん…なのことを…想ってる…雛里の…事を、想って…るよ。いつ…まで…も…………
そして一刀様の体は消えて行った…。
私の腕の中から…この世界から……。
「…これから…これからだったのに……。これからみんなで…一刀様と…ううっ……うええ…うえええ~~ん!」
空には物言わぬ月がただ、光っていた。
~時は流れて~
「雛里ちゃ~ん」
「あ、朱里ちゃん、久しぶり」
今日は一年ぶりの三国同盟記念日。
今年は蜀の国に魏と呉の皆が集まる年だ。
「お久しぶり雛里ちゃん。
「うん、元気だったよ。朱里おばちゃんは?」
「おっ、おば……ねえ、雛里ちゃん。後でゆっくりお話しようね♪」
「あわわっ…あ、あはは」
彼女は天里、一刀と雛里の娘である。
「それより朱里ちゃん達はまだ結婚しないの?」
「…さすがに勝利者は余裕だね。あれだけ立派な男性を知っちゃうと他の男の人じゃちょっとその気になれないというか」
「知っちゃうって、まさか!」
「はわわ、違うよ。まだそんな事はしてないし」
「まだってどういう事?いずれするってこt……まだ?」
まだって何だろう?おかしな言い回しだよね。まるでそんな事が出来るみたいに。
「お母さん知らないの?管輅の占いの事」
「管輅の占い……それってまさか…」
「天より再び光舞い降り、乱収まりし大地の新たなる道しるべとならん。白き衣に身を包み、柔らかな光で世を照らす」
「……天里ちゃん?」
「はあ、ホントに知らなかったんだ。城にこもって本ばかり読んでるから」
朱里ちゃんを見ると嬉しそうに微笑んでいた。
「だから『まだ』なんだよ♪」
「あ、あわわっ。そ、しょんな…天里ちゃんはそれでいいの?」
「それでも何も、あれだけ姉妹がいて、今更蜀や呉に増えたところで構わないというか」
「そういう事♪」
「はうわーっ!」
ワアアアアーーーーーーーーーッ
「はわわっ、な、何?」
「あわわっ、何かな?」
「占いって結構当たるのね」
「「えっ?」」
聞き返すと天里はすでに走り出していた、あの森に向かって。
「…あ、ああ」
「雛里ちゃん!」
「う、うん…うんっ!」
「行こう!雛里ちゃん」
そして二人も走り出した、あの森に向かって……
天より光が舞い降りる、あの森に向かって……
~終劇~
Sieg Heil HINARIN!!( ゚∀゚)o彡°Sieg Heil HINARIN!!( ゚∀゚)o彡°
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(`・ω・)……失礼、という訳でひなりん編でした。
彼女の娘の天里のセリフが鞘花達の様にひらがなでは無いのは基本スペックの差です。
母親譲りで本が好きなんです、もっとも八百一にだけは手は出して無いですが。
ちなみに4歳にして母親よりも大きいです。何が?そこは空気を読んで上げて下さい。
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この雛里は魏に下った訳ではなく朱里とは別に
華琳と一刀を主に選んだという設定です。
では、どうぞ。
4月10日/少し、修正をしました。