No.97455

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第15話

ささっとさん

大陸全土に広がった黄巾の乱も終結し、人々は一時の平穏を取り戻した。
しかし華琳に続いて恋にも一目惚れされ、一刀を取り巻く環境は更なる混沌に陥ってしまう。
そんな中、袁紹から発せられた反董卓連合結成の檄文が各地の諸侯達に届けられ……

2009-09-26 15:48:05 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:31431   閲覧ユーザー数:22398

 

 

※本文中に特定のキャラに対する批判的な表現が含まれている部分が存在していますが、

 物語上の演出である事をあらかじめご了承ください※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各地を騒がせた黄巾の乱が華琳の手によって終結し、大陸は平穏を取り戻したかに見えた。

 

しかし、さしたる間も置かず再び争いの火種が生まれてしまう。

 

反董卓連合。

 

それは仮初とは言え、大陸各地の諸侯達が味方として集う最初で最後の機会だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりお兄さんと一緒に馬に乗ると気持ちいいですね~♪」

 

「風、すぐに私と代わ…こほん、すぐに自分の馬に戻りなさい」

 

「そうですよ、風様。一人占めは…ではなく、一刀様のご迷惑になっています」

 

「いくらジャンケンで勝ったからって、いっつもいっつも風ちゃんばっかりずるいの~」

 

「せやせや、そんなん民主主義の原則に反しとるでー」

 

「ふふん。敗者の戯言など聞こえませんよ~♪」

 

「………なんてまとまりのない俺達。いや、ある意味まとまってるのか?」

 

 

まぁ、各地の諸侯達よりも身内の方が遥かに手強いんだけどな。

 

それと真桜。

 

お前の発言、いろんな意味で間違ってるから。

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第15話 21週目 その7

 

 

「おーっほっほっほっほ! おーっほっほっほっほ!」

 

 

集合場所に張られた陣に到着した俺達を出迎える高笑い。

 

何度ループしてもこの無駄なテンションの高さというか、独特なノリには一向に慣れなかった。

 

別に慣れたいとは思わないけど。

 

 

「華琳さん、よく来てくださいましたわ」

 

 

今回の同盟の発起人である袁紹。

 

正直、仕方のない場合を除けば絶対にお近づきになりたくないタイプの人間である。

 

そのあまりにも凄まじい突き抜け加減を前にして、さすがの華琳も諦めモード。

 

もはや手遅れと言うか何と言うか、きっと今の俺と同じような心境なんだろう。

 

それにしてもこんなのが一勢力のトップだとは……顔良さんの苦労が容易に想像できるな。

 

 

「それでは最初の軍議を始めますわ。知らない顔も多いと思いますから……」

 

 

袁紹の発言を適当に聞き流しながら諸侯達の集まっている天幕へ移動した俺達。

 

全員揃ったところで、まずは簡単な自己紹介を済ませてから軍議に入る事になった。

 

この辺の流れには毎回それほどの差は生じない。

 

強いて挙げるなら、今回は俺だけでなく風も華琳達に同行している点であろうか。

 

 

「典軍校尉の曹操よ。こちらは我が軍の夏候惇と夏候淵。

 それから………天の御遣いである北郷と、天女の程昱」

 

 

華琳が俺と風の名を告げた瞬間、諸侯達の間に驚きとざわめきが広がる。

 

過去のループでも華琳が事前に流しておいた噂のおかげで多少は知られていたが、

今回は風と二人旅をしていた時からの風評もあるため、知名度で言えばこれまでの比ではなかった。

 

 

「………へぇ、貴方が天からの遣いとかいう輩なんですの」

 

 

と、ここで袁紹が不機嫌そうな顔つきで俺達を睨んできた。

 

おそらくこの場で自分よりも目立っている俺達が気に入らないのだろう。

 

そんな事で一々噛みついて来ないで欲しい。

 

 

「ふん、あまりにも貧そ…「麗羽? 一刀が何ですって?」…っ?!」

 

 

続けて俺達を貶める発言をしようとした袁紹だったが、口に出す前に華琳から絶を突きつけられ沈黙。

 

ふん、いい気味……じゃなくて華琳さん貴女なにしてんの?!

 

最近の華琳は公の場においても色々と自重しなくなってきているが、さすがにこれはマズイ。

 

相手は一応同盟の発起人にして現時点での大陸最大勢力のトップ。

 

下手をすれば董卓と戦う前に連合内部で一戦交える可能性だってありえるぞ。

 

 

「口には気をつけなさいね、麗羽」

 

「……わ、解りましたわ」

 

 

しかし、驚くべき事に華琳の放つ殺気がその他もろもろの事情ごと全部抑え込んでしまったらしい。

 

尊大さにかけては右に出る者がいないはずの袁紹が、たった一言で華琳に完全服従してしまっている。

 

まるで日常パート並みの無茶苦茶展開だ。

 

もちろんこれ以降、袁紹の口から俺に対する暴言の類は一切出てこなかったのは言うまでもない。

 

 

「ま、まずはこの私が集めた反董卓連合の目的ですけど……」

 

「都で横暴を働いているという董卓の討伐、でいいのよね。でも私は……」

 

 

その後、場にぎこちない空気を漂わせながらも軍議は再開された。

 

各諸侯達が連携して袁紹の台詞をことごとく遮りながら基本方針を決定。

 

最後に総大将の座を袁紹に押しつけて解散の運びとなった。

 

 

「あ、あの、天の御遣い様!」

 

 

ただ、華琳達と共に皆の所に戻ろうとしたところで意外な人物に声を掛けられてしまう。

 

 

「ん?」

 

 

妙に興奮しているというか上ずった声で呼びかけてきたのは何と劉備だった。

 

少し離れたところでは若干警戒している諸葛亮が控えている。

 

様子を見る限り、俺に話しかけてきたのは諸葛亮の差し金ではなくて劉備の独断か。

 

しかし、それにしても一体なんなんだ?

 

 

「……劉備さん、でしたよね。何か用ですか?」

 

 

理由は不明だが、とりあえず話しかけられた以上はこちらも応じないとマズイ。

 

これまでのループで何度も敵対してきただけあって、俺の劉備に対する印象は悪い。

 

しかしこの世界ではまだ初対面であり、なおかつ同盟を組んでいる今は邪険に扱う訳にいかなかった。

 

俺は内心を隠しながら営業スマイルで応対する。

 

 

「あっ、えっと、別に用事という訳ではなくて……ただ、その、少しお話をしたいと!」

 

 

俺の返事を受けてますます舞い上がった様子の劉備。

 

この反応………まさかとは思うが、劉備にも一目惚れされたのか?

 

いや、それは絶対にありえない。

 

華琳や恋はともかく、前回のループの一体どこに劉備に好かれるような要素があったというのか。

 

 

「私、ずっと天の御遣い様を目標にしてきたんです!」

 

「俺を目標?……ああ、そう言う事か」

 

 

そして勝手に喋り始めた劉備の話を聞き、なるほど納得。

 

どうやらこの世界における『天の御遣い』に憧れているらしい。

 

確かに傍から見れば、旅をしていた時の行動は彼女の戦う理由そのものと言えるかもしれない。

 

なまじ自分自身に大した力がない事を自覚している分、

自らの理想を体現しているかのような俺への憧れも強くなるんだろう。

 

実際は勘違いもいいところなんだがな。

 

 

「あの、これからよろしくお願いいたします!」

 

「うん、こちらこそ」

 

「は、はい! それでは私はこれで失礼させていただきます!! 朱里ちゃん、いこ!」

 

 

それから適当に言葉を交わした後、終始緊張しっぱなしだった劉備は足早に去って行った。

 

こんな風に素直に慕われると悪い気分はしない。

 

だからと言って、20回を超えたループで培われた彼女への印象がひっくり返ったりもしないが。

 

所詮、俺にとっての劉備はどこまでいっても倒すべき敵でしかないのだから。

 

 

 

 

「汜水関か」

 

 

前回のループでは結局目にする事のなかった汜水関。

 

袁術の不手際で攻略失敗した孫策に代わり、現在は劉備・公孫賛の連合軍が攻略に当たっている。

 

 

「一刀様、我々は本当に見ているだけでいいのでしょうか?」

 

「この程度なら劉備達で十分さ。俺達は別命あるまで待機だ」

 

 

どこか腑に落ちないといった様子の凪だが、過去のループと比較しても敵の状況にさしたる違いはない。

 

このままいけば陥落は時間の問題だろう。

 

 

「あれ? 砦から兵士が出てきたの…」

 

「挑発に乗せられたらしいな、守備隊の大将」

 

 

巨大な門が開かれ、一斉に飛び出してくる守備隊の兵士達。

 

その先陣を切って一直線に劉備達の方へ向かっているのは華雄だ。

 

しかし直接彼女の事を知っている訳ではないが、何で董卓は華雄を守備隊の将に任命したんだろう?

 

それなりの腕でなおかつ部隊指揮が出来るのは勿論大事なことだけど、

挑発されたからっていきなり飛び出しちゃ駄目だろう。

 

 

「おっ、一騎打ちするみたいやな」

 

「きれいな黒髪なのー」

 

「あれは劉備のところの将軍の関羽だな」

 

 

突出する華雄の前に立ちはだかったのは関羽だった。

 

青龍偃月刀を構えるその姿は本当に凛々しく、それでいて猛将に相応しい強さを兼ね備えている。

 

が、同時に俺にとっては劉備に次いで印象の悪い人物だったりもする。

 

関羽自身はきっと悪い人ではないのだろうけど、あの劉備至上主義はいただけない。

 

 

「あ、馬から落ちた」

 

 

そんな事を考えている間に関羽と華雄の一騎打ちは終了した。

 

斬り合うどころかたったの一合もまともに保たず馬上から落下する華雄。

 

そのまま大した反撃もしないうちにさっさと逃げ去ってしまう。

 

華雄もそれなりの武将とはいえ、やはり関羽相手では分が悪いか。

 

ともかく、後は敵を追撃しつつ汜水関に一番乗りを果たせばこの戦いは終わり……あれ?

 

 

「どうかなさいましたか、一刀様」

 

「あっ、いや、別に……」

 

 

毎回あまりにもあっさりした流れで終わるので特に意識してなかったが、

伝令役に志願しているはずの秋蘭がまだ来ていない。

 

華雄が一騎打ちに負けて撤退していく時にはもう来てたはずだと思ったんだけど、記憶違いじゃないよな?

 

 

「あれ? また砦から兵士が出てくるよー?」

 

「何?」

 

 

沙和の声を聞いて再び戦場に意識を戻すと、汜水関からさらに敵兵士が出てきていた。

 

ここで追加の兵士なんて出てきたっけか?

 

新たに出てきた兵士達はそのまま逃げかえって行く華雄の部隊と交代するように展開して……っ!?

 

 

「なっ、恋?!」

 

 

一瞬見間違いじゃはないかと自分の目を疑ったが、何度見直してもその光景は現実のものだった。

 

華雄の部隊と交代して前線に出た兵達の先頭を駆けているのはなんと恋。

 

方天画戟を馬上で軽々と振り回し、周囲の劉備軍兵士を次々と薙ぎ倒している。

 

突然の呂布登場に動揺したのか、

劉備・公孫賛連合軍はその突進を止める事が出来ず、見る見るうちに陣形を崩されていく。

 

 

「一刀様!」

 

「恋は虎牢関の守備に就いているはずだ。それがどうして汜水関に……」

 

「援軍に来たとか?」

 

「仮に開戦直後に救援要請を出していたとしても、こんなに早く来れるはずがない」

 

「どうするや、一刀はん」

 

「ん………」

 

 

不測の事態ではあるが、華琳からの指示が届いていない以上不用意な行動は避けるべきである。

 

しかし、このまま傍観に徹していれば事態は悪化していくだけだ。

 

なにしろ恋が来ているということは副官の陳宮も来ているはず。

 

彼女の采配によって籠城戦に移行されると正直面倒だ。

 

もちろん物量で押しきれなくはないだろうが、同時にこちらも少なくない被害を被ることになる。

 

 

「あっ、関羽さんが呂布さんの前に出たの~!」

 

「両脇にいるのは、張飛とせ…趙雲か」

 

 

一気に瓦解寸前まで追い込まれた劉備軍は関羽、張飛、星の将軍3人をぶつけて恋を抑えるつもりらしい。

 

しかし悲しいかな、実力差から言えば3対1でも恋の優位は動かない。

 

むしろ将軍3人掛かりで倒せなかったとなれば、全軍の士気に致命的な影響を与えることになってしまう。

 

………仕方ない。

 

 

「凪、部隊の指揮権を一時預ける。華琳からの命令があるまで勝手な行動は取るなよ」

 

「えっ! 一刀様、何を……あっ!」

 

 

俺は隊長の任を凪に押しつけ、彼女の返事を聞かぬまま戦場へと駆け出していった。

 

 

 

 

愛紗、鈴々と共に3人がかりで呂布へと挑み、各々数合ずつ打ち合っただろうか。

 

たったそれだけのやり取りで、

これまで自負してきた己の武に対する誇りを完膚なきまでに打ち崩されてしまった。

 

おそらく他の2人も同じように感じている事だろう。

 

 

「………もう、終わり?」

 

「くっ、舐めるなぁ!!!」

 

 

呂布の挑発じみた言葉に感情を荒立てた愛紗が正面から斬りかかる。

 

しかし呂布は余裕すら感じさせる戟捌きで愛紗の斬撃を軽々いなすと、そのまま返しの刃を一閃。

 

辛うじて受けの体勢を取った愛紗は致命傷こそ逃れたものの、

斬撃の勢いに押され地面に叩きつけられてしまう。

 

 

「今度は鈴々が相手なのだ!!!」

 

 

その愛紗と入れ替わるように呂布へと斬りかかる鈴々。

 

愛紗や私に比べればまだまだ荒削りではあるが、純粋な力では確実に我らを超えている。

 

その力を余すところなく注ぎ込んだ剛撃を呂布へと見舞った。

 

 

「……誰が来ても、同じ」

 

 

それでも呂布は一切引く様子を見せず、逆に真正面から鈴々を迎え撃った。

 

双方の刃がぶつかり合い、激しい剣戟音を周囲に響かせる。

 

 

「にゃにゃ?!」

 

 

その激突を制したのは呂布だった。

 

鈴々の剛撃をさらに上回っているだろう超剛撃でもって鈴々を弾き飛ばす。

 

何より驚いたのは、激突による衝撃を受けてなおその場から一歩たりとも動いていないという事実。

 

天下の飛将軍、人中の呂布とはこれほどのものなのか。

 

 

「……次は、お前?」

 

「っ! 言われずとも、そのつもりだ!!!」

 

 

無意識に震える身体を奮い立たせると、私は得物を振りかざし突貫する。

 

純粋な速さのみならば、例え呂布が相手だろうとも引けは取らんッ!!!

 

 

「……けっこう速い。でも、怖くはない」

 

 

だが、私の繰り出した必殺の連撃も呂布には届かない。

 

野生の獣を思わせるような身のこなしで私の槍を紙一重、それも絶対の余裕を持ちながら回避する呂布。

 

どれだけ得物を振るおうとも全てが無駄。

 

たった一撃、掠らせる事さえ叶わないのか。

 

 

「この、化け物め!」

 

「っ……恋は、化け物じゃない」

 

 

私が思わず発した言葉が癪に障ったのか、呂布の表情に怒気が宿った。

 

刹那、私はかつてないほどの恐怖に襲われ身体の自由を奪われてしまう。

 

私以上の速さを備え、愛紗以上の技を備え、鈴々以上の力を備えた正真正銘の怪物。

 

その怪物が今、本気で私に襲いかかろうとしている。

 

 

「……死ね!」

 

「っ!?」

 

 

奪われた自由が戻った時、もう既に勝敗は決していた。

 

私の最速の一撃をも上回る速度で迫り来る呂布の刃。

 

もはや防御も回避も間に合わない。

 

数瞬もせぬうちに私の首は刎ね飛ばされる事になるだろう。

 

………申し訳ありません、桃香様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こらこら、そんな台詞を軽々しく口にしちゃダメだぞ、恋」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、覚悟を決めた私の元に死の瞬間は訪れなかった。

 

代わりに訪れたのは軽薄な言葉と共に呂布の一撃を受け止めた青年の、眩い後ろ姿だった。

 

 

 

 

間一髪で乱入に成功した俺は、背後に星を庇う形で恋と対峙。

 

にしても、毎度の事ながら恋の攻撃は破壊力あり過ぎだ。

 

もし真桜に特注で作って貰った武具じゃなかったら、手甲ごと真っ二つにされてたかも。

 

 

「かずと……やっぱり、いた」

 

 

いきなり現れた俺に多少面喰っていた様子の恋だったが、すぐに表情を緩めて嬉しそうに微笑む。

 

それはここが戦場である事を忘れそうになるくらいの穏やかな笑顔。

 

ただしそれはあくまでも表情のみであり、戦いにおいての集中は一切途切れていない。

 

迂闊に隙を見せたら即座にバッサリといかれてしまう。

 

 

「久しぶりだな、恋。でも驚いたよ。恋はてっきり虎牢関の方にいるものとばかり思ってたからさ」

 

「最初はそっちにいた。でも、かずとがここにいるような気がしたから」

 

「……まさか、それだけの理由でこっちに来たのかい?」

 

「……(コクッ)」

 

 

無邪気と言うべきか純粋と言うべきか、はたまたフリーダムと言うべきなのか……

 

とりあえず一目惚れの影響でさらにパワーアップされているのは間違いない。

 

うん、陳宮や霞が慌ててる様子が容易に想像できるよ。

 

まぁ、華琳からの命令を待つことなく勝手に飛び出してきた俺も似たようなもんだけど。

 

今頃凪達がてんやわんやの大騒ぎをしてそうだ。

 

 

「………だめだった?」

 

「いや、それを俺に聞かれても困るから」

 

 

男としては嬉しいが、立場的には喜べないという複雑な心境だ。

 

どっちにしても俺の前で悲しそうな顔をするのはやめて欲しい。

 

こんなシチュエーションで申し訳ないが、非常に心が痛む。

 

 

「それより、今回は前会った時みたいに楽しくお話ってわけにはいかないよ?」

 

「………(コクッ)」

 

 

俺の言葉に小さく頷いて方天画戟を引くと、少し距離を取って構え直す恋。

 

途端に引き締まったその表情からは確固たる意志がありありと浮かんでいて、

 

 

「かずとが相手でも………恋は、戦う!」

 

 

瞬間、さっき戦っていた時とは比べものにならないほどの濃密な殺気が場を支配する。

 

 

「ッ…!!!」

 

 

意識するよりも先に身体が反応。

 

文字通り目にも留まらぬ速さで打ち込まれた恋の一撃をしゃがんで回避。

 

その体勢から起き上がりつつ恋の顔面目掛けて上段蹴り。

 

女の子相手だから顔は狙わない、なんてくだらないフェミニスト気取りしてられる余裕はない。

 

もっとも、直撃はしないだろうという半ば確信めいた予感の上で放った攻撃ではあるがね。

 

 

「………手、痺れた」

 

 

戟の柄の部分で俺の蹴りを受け止めた恋は、ちょっぴり怒ったような様子で呟いた。

 

うん、可愛い。

 

しかし、これだけリーチのある武器で攻撃していながら何故今のが防げるんだろう?

 

 

「ふふっ……つくづく大したもんだな、恋は」

 

 

実は地味に痛かったりする蹴り足を下ろし、少しだけ間合いを取って構え直す。

 

前のように覇気で圧倒するような真似はしない。

 

そしてウォーミングアップと挨拶代わりの牽制もこれでおしまい。

 

ここからは正真正銘、俺も本気で戦わせて貰うとしよう!

 

 

「……かずと」

 

「ん、何かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋はかずとが好き。だから、もし恋が勝ったら……かずと、恋のモノになって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ!!!!!

 

 

 

 

結論から言うと、恋との一騎打ちは俺の勝利で幕を閉じた。

 

その後、勢いに乗った連合側が籠城寸前のところで汜水関突入に成功。

 

乱戦の最中に華雄や陳宮ら主だった将には逃げられてしまったものの、

それほど大きな被害を出すことなく攻略することが出来た。

 

ちなみに命令を待たず単独行動を取った俺への処分だが、

信賞必罰がモットーの華琳にしては珍しく何のお咎めもなかった。

 

単騎で呂布を打ち倒し、連合瓦解の危機を救ったからというのが理由らしい。

 

ただ、それが建前上の理由でしかない事は明らかだった。

 

 

「私の許可なく死ぬなんて、絶対に許さないわよ!」

 

「一刀様、お気を確かに!!」

 

「一刀さ~ん、死んじゃやなのー!!!」

 

「ウチらを残して逝かんといてーな、一刀はん!!!」

 

 

天幕の中で響き渡る華琳と北郷隊三羽烏の悲鳴。

 

そう、俺は一騎打ちの勝利と引き換えに傷を負ってしまったのである。

 

 

「いや、別に死ぬような怪我じゃないから」

 

 

と言っても、怪我の程度が酷いのは骨折してしまった左腕くらい。

 

後は浅い切り傷や打撲が全身に数か所ずつというところ。

 

なので実際、4人が騒ぎたてているような命にかかわる程の重症ではなかったりするのだ。

 

それだけ心配してくれているという事なのだろうけど、さすがに大げさすぎる。

 

ちなみに怪我をしてしまったのは恋の告白紛いの台詞に動揺したからでは断じてない。

 

断じてない。

 

大事なことなので2回言いました。

 

 

「皆さん。あまり騒ぐとお兄さんの傷に障りますよ~」

 

 

そんな感じで賑やか?になっている天幕に風が戻って来る。

 

 

「お帰り、風」

 

「はい。ただ今戻りました、お兄さん」

 

 

俺が治療を受けている間はずっとそばにいてくれた風だが、

一通りの処置が終わった後は自分の仕事をこなす為に一旦この場から離れていたのだ。

 

そう言えば華琳達は風がいなかった間もずっとここにいたけど、仕事はいいのか?

 

特に華琳。

 

さっきから何処かで袁紹がわめき散らしているような気がするのは俺の思いすごし?

 

 

「そうそう、先程呂布さんが目を覚まされましたよ~」

 

「おっ、そうか」

 

 

怪我をしてしまった俺とは違い、恋はほとんど無傷のまま気絶させていた。

 

そろそろ目を覚ます頃だと思ってたところだし、せっかくだから話でもしてくるかな。

 

 

「そう、目を覚ましたの。ならば直ちに呂布を処断するわ。風、全軍に通達を出しなさい」

 

「華琳様。刑の執行役は是非私にお任せください。一撃であの世に送り届けて見せましょう」

 

「駄目だよ凪ちゃん。まず自分が何をしたのかたっぷりと思い知らせてからじゃないと……ね?」

 

「ふっふっふっ、念のために持ってきといたアレが役に立ちそうやなぁ」

 

「………は?」

 

 

仰向けの体勢から起き上がる途中で硬直。

 

いや、あの、4人ともいきなり何を言いだしてるんだ?

 

発想とか発言とか普通に怖いんですけど、性格変わり過ぎなんてレベルじゃないぞ、おい。

 

って、いつまでも驚いてる場合じゃない。

 

早く止めないと本当に恋が処刑されてしまう。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ、みんな! いきなり処刑するのはどうかと思うけど……」

 

「そうですよ、皆さん。まずは落ち着いてください」

 

 

おっ! よし、ナイスだ風!

 

今までの経験から言えば風も華琳達側になると思ってたが、これは嬉しい誤算。

 

正直俺一人では説得しきれる自信がなかったんだけど、風が一緒なら心強い。

 

 

「呂布さんの処遇を決める前に、どうしてもお兄さんに確認しなければならない事があるんです」

 

「ん? なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『恋、かずとに負けた。だから、恋はかずとのモノ。かずととの約束』って呂布さん言ってたんですけど、

 どういう事なのか説明していただけますか、お兄さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( ゚д゚)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( ゚д゚ )

 

 

 

 

あとがきという名の謝罪

 

 

どうも、『ささっと』です。

 

二日前に一度投稿したこの15話ですが、かなりの修正を加えて再投稿させていただきました。

 

修正の一番大きな理由はあまりにも露骨過ぎる表現の訂正です。

 

基本的にループ一刀君は劉備や袁紹らを快く思っていません。

 

それは毎回敵として接してきたという事以外に、彼女達の王としての資質に問題があります。

 

もちろん一刀君は華琳を完璧な王として妄信している訳ではないのですが

長い時間を華琳の元で過ごし、彼女の苦悩を誰よりも近くで見てきた一刀君にとって、

劉備達の王としての在り方は容易く認められるようなものではありません。

 

…という設定を頭に頭に思い浮かべながら書いたところ、修正前のような出来になってしまったという訳です。

 

修正前の15話をご覧になった方はお分かり頂けると思いますが、あれはやり過ぎたと自分でも反省してます。

 

それなら投稿前に修正しとけ! と言われるのももっともです。

 

今後はこのような事がないように心掛けていきますので、またよろしくお願いいたします。

 

 

再投稿に関するお詫びはこの辺にしといて、普通のあとがきに戻ります。

 

まさかのフライング再登場となった我らがメインヒロ…げふんげふん、ヒロインの一人である恋。

 

ぶっちゃけ、今回の告白台詞と最後の顔文字が書きたかっただけです。

 

でも恋の場合、べた惚れの相手が敵陣にいたら本当にこのくらいは言いそうだしやりそうだから怖い。

 

 

次回は反董卓連合決着編。

 

果たして一刀は無事に虎牢関攻略に参加できるのか?!(ぇ

 

 

コメント、および支援ありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

友達登録もお気軽にどうぞ。

 

 

P.S.最近『らき☆すた』熱が再燃しててちょっと困ってます。風が時折コスプレしたこなたに見えて……orz

 

 

 

 


 
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