No.95549

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第14話

ささっとさん

何故か一刀に一目惚れしてしまった華琳。
色々な意味で華琳に押され気味の風。
その2人の隙をついて漁夫の利を得る三羽烏。
そして彼女達に翻弄されっぱなしの一刀。
そんな彼らがいよいよ、黄巾党との決戦を迎える。

2009-09-15 15:45:22 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:32789   閲覧ユーザー数:22562

 

 

今や大陸全土を巻き込んだ騒動に発展した黄巾の乱。

 

各地の諸侯達が独自に奮戦するも結果は空しく、連中は日に日にその勢力を増していった。

 

そんな折、俺達はこの泥沼の戦いを制するための切り札を手に入れる。

 

これまでのループ世界と同じく、俺と情報収集の任務に就いていた凪が敵の伝令を捕えたのだ。

 

これによって得られた敵本隊に関する情報を基に華琳はすぐさま決断。

 

長かった黄巾党との戦いに終止符を打つべく、最後の決戦に踏み切ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄さんの部隊が先発隊に割り当てられるのなら、隊長であるお兄さん自身も当然先発隊に加わるべきです」

 

「貴女の指揮なら先発隊は現状の戦力で十分でしょう? 一刀には本隊で私の護衛をして貰うわ」

 

「……もっともらしい理由を付けたところで、ただお兄さんと一緒にいたいだけなのではないのですか~?」

 

「……その言葉、そっくりそのまま返させてもらうわ」

 

「………はぁ」

 

 

もっとも、戦う以前に内部分裂して自滅するのではないかという不安は尽きなかったが……

 

 

「一刀様。一刀様にそのような暗い表情は似合いませんよ」

 

「沙和達は最後の最後まで一刀さんの味方なの~」

 

「せやから一刀はんはど~んと構えとったらええ。何も心配せんとウチらに任しとき!」

 

「凪、沙和、真桜………こんなにも良い部下、いや仲間を持った俺は幸せ者だよ」

 

 

うん、マジで俺は幸せ者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(((………ニヤリ)))

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第14話 21週目 その6

 

 

「それでは各自所定の場所に移動してください。作戦開始です」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

偵察を終えて一時合流した先発隊の面々は先発隊指揮官である風の号令を受けて再び散会。

 

敵を撹乱するための策を実行するべく、割り振られたポイントにそれぞれが向かっていく。

 

 

「それでは風達も移動するとしましょうか、お兄さん」

 

「そうだな」

 

 

敵に気取られぬよう隠密行動を心掛けながら、俺達の部隊も移動を開始。

 

結局俺はこれまでのループと同じように先発隊に加わり、風と共に行動する事となっていた。

 

もちろんすんなりと決定した訳ではないが、説明すると長くなるので経緯は割愛しておく。

 

 

「それにしてもあの時の華琳様の顔と言ったら……ふふっ、気分爽快ですね~♪」

 

「あのな風、頼むから決戦前に余計な火種を持ちこまないでくれ」

 

「そんな事よりお兄さん、そろそろ目標地点に到着しますよ」

 

「そんな事ってお前………まぁ、いい」

 

 

色々と言いたい事はあるが、今は目の前の戦いに集中しよう。

 

 

「作戦開始だ、火を放て!」

 

「「「ハッ!!!」」」

 

 

俺の号令を合図にして次々と打ち込まれる火矢。

 

それは瞬く間に天幕や防壁柵に刺さって燃え広がり、一気に敵陣を炎で包み込む。

 

直後にわらわらと黄巾党の兵が中から這い出してくるが、

突然上がった火の手を前に右往左往するだけでまとまりのある行動が全く取れていない。

 

何度か目にした光景ではあるが、さすがにこうまであっさり崩れると拍子抜けである。

 

とは言え、この機を見逃しては何の意味もない。

 

混乱する敵を前にして士気上がる部隊の面々に次の指示を飛ばす。

 

 

「火責めは成功だ。直ちに敵陣に奇襲を掛ける!」

 

「「「了解ッ!!!」」」

 

 

風の護衛もあるため、俺自身が単騎で敵陣深く斬り込むような真似は出来ない。

 

だけど日頃のストレス発散の意味を込めて、暴れれるだけ暴れさせて貰うぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来この時点では仲間になっていない風や、過去のループ以上に強くなっている凪達と北郷隊の存在。

 

風と華琳の間で若干…の不和はあるものの、それを補って余りある程に強化されている戦力。

 

さらにストレス発散の機会を逃すまいと俺が無駄に気合を入れて暴れまわったり、

出陣前の一件によって不機嫌になった華琳がプチ破壊神状態で暴れまわったりもした。

 

元々勝つ事が決まっているも同然なこの戦いにおいて、さらにこれだけのプラス材料が加わったのだ。

 

結果、俺達は過去のどのループよりも短い時間かつ少ない犠牲で黄巾党の本隊を壊滅させる事に成功した。

 

また、戦闘途中で逃げ出した天和達3人の身柄もこれまでのループと同じように凪がキッチリ確保。

 

文句なしで我が軍の完全勝利だった。

 

 

「今回は本当に大手柄だったな、凪」

 

「ホントなの~、華琳様も、すっごく褒めてくれてたし~」

 

「ウチらも鼻が高いわ」

 

「そんな、自分など……」

 

「謙遜するなって。よし、頑張ったご褒美として頭を撫でてしんぜよう」

 

 

ナデナデナデ……

 

 

「あっ…か、一刀、さま……ふぁ……」

 

(……いいなぁ)

 

(……ええなぁ)

 

 

凪の殊勲を称えながら城へと引き返していく俺達。

 

これで黄巾党に関するゴタゴタはたった一つを除いてケリがついた。

 

あとは一番最後に控えている彼女達との出会いを待つだけである。

 

そう、20周目の世界における大きな変化の一つとなった彼女、恋との再会を………

 

 

 

 

城についた直後、俺達は華琳からの呼び出しを受けて広間に集合させられた。

 

俺以外の皆は明らかな不満顔だったが、こればっかりは仕方がない。

 

 

「……すまんな。みんな疲れとるのに集めたりして。すぐ済ますから、堪忍してな」

 

 

こちらの様子を察した霞が申し訳なさそうに言葉を掛けてくれる。

 

この頃の霞って、滅茶苦茶気苦労が多そうだよな。

 

まぁ、それも後少しの辛抱だから我慢してくれ。

 

 

「呂布様のおなりですぞー!」

 

「………………」

 

 

陳宮の声に促され、いよいよ恋が俺達の前に姿を現した。

 

この時点でもうやる気が感じられないというか、全身から眠たいオーラを放っていた。

 

これでも俺を除けば大陸最強の豪傑なのだから、人間解らないものである。

 

 

「曹操どの、こちらへ」

 

「はっ」

 

 

華琳が陳宮に呼ばれ、恋の前に出た。

 

ここからしばらくの間は恋もとい陳宮から名代としての言伝を聞かされるわけだが、

ハッキリ言って俺達がここに居なければならない必要性は無い。

 

かと言って席を外すわけにもいかないため、大人しく話が終わるのを待つしかなかった。

 

 

「!」

 

「えーっと、呂布殿は、此度の黄巾党の討伐、大義であった! と仰せなので……あっ、恋殿!?」

 

「え?」

 

 

そう言えば、この面会が終わった後って華琳が滅茶苦茶不機嫌になるんだよなぁ。

 

ただでさえ風との一件で機嫌を損ねてるってのに、これ以上悪化したら洒落にならんぞ。

 

でも俺がスケープゴートにされるのは目に見えてるし、何か対策を考えといた方がいいかも………ん?

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

至近距離から誰かの視線を感じたのでふと顔を上げると、さっきまで陳宮の隣にいた恋が目の前に立っていた。

 

いや、なんで恋が俺の目の前に立ってるわけ?

 

まだ話始まったばかりですよ?

 

しかも微妙に顔が赤いし、なんか恥ずかしそうにもじもじしてるし………うん、イイね。

 

 

「……名前、教えて?」

 

「………え? あ、俺の名前?」

 

「………(コクッ)」

 

 

元々愛らしさに定評のある恋が見せた可愛らしい姿についつい萌えてしまったが、

どうやら恋は俺の名前が知りたかっただけらしい。

 

いやいや、それで納得出来る訳ないから。

 

なんで初対面の、しかもこの状況でいきなり名前を聞かれてるんだ?

 

明らかにおかしいだろ?

 

他の皆も恋の突然の危行を見せられて呆気にとられてるし。

 

 

「………ダメ?」

 

 

ああっ、そんな悲しそうな顔して俯かないで!

 

いつまでの喋ろうとしない俺の様子から、恋は拒絶されていると感じてしまったらしい。

 

ヤバい、何でかは知らんが前のループの時よりも破壊力が上がってる気がする。

 

俺はそんな彼女の表情に耐えきれず、反射的につい名前を教えてしまう。

 

 

「俺の名前は一刀。北郷 一刀だよ」

 

「ほんごう、かずと………うん、覚えた♪」

 

 

ぐはっ!? ちょ、なにこの可愛い生き物!

 

名前教えただけでなんでそんな嬉しそうな顔する訳?!

 

はにかみながら笑うなんてちょとsYレならんしょこれは………って、何言ってるんだ俺。

 

 

「貴様! 恋殿に対して…「ねね、うるさい」…ヒィ?!」

 

 

恋の猛攻に晒された俺が軽いパニック状態に陥った間に正気を取り戻したらしい陳宮。

 

しかし言い終わらぬうちに恋本人によって強制的に黙らされる。

 

ていうか恋、ただ黙らすためだけに全力で殺気をぶつけるのは止めた方がいいぞ。

 

陳宮の奴、黙るを通り越して気絶してるじゃないか。

 

 

「………黙らせた。ごめんなさい」

 

 

しかし恋は気絶した陳宮の事など全くお構いなしで、

逆に今の陳宮の発言で俺が気分を害したのではないかと心配しているようだ。

 

哀れ陳宮。

 

別に同情はしないけど、強く生きてくれ。

 

 

「別に怒ってないから、大丈夫だよ」

 

「………よかった」

 

 

そして再び炸裂する100万ドルの笑顔。

 

いかん、このままでは一向に話が進まないどころか物理的な意味でも精神的な意味でも危険だ。

 

 

「と、ところで呂布さ…「恋、でいい」…えっと、恋?」

 

 

話の流れを変えるために話題を振ってみるが、ここで前回同様いきなり真名を許されてしまう。

 

今ツッコミを入れても意味がないのでスルーしておこう。

 

もはや律義に反応して驚いていられるほど余裕はない。

 

 

「なに?」

 

「あのさ、恋は将軍の名代としてここに来てるんだよね?」

 

「………?」

 

 

お願いだからそこで首をかしげないでくれ。

 

 

「と、とにかく、仕事でここに来てる訳だからいつまでも俺と話してちゃいけないと思うんだ」

 

「………かずと、恋と話すの嫌?」

 

「うっ……」

 

 

ここで恋の悲しそうな表情に屈する訳にはいかない!

 

物凄い罪悪感に苛まれるからなんだっていうんだ!!

 

頑張れ俺、超頑張れ!!!

 

 

「い、嫌ではないけど、やっぱり仕事はキチンとした方がいいと思うな」

 

「………でも、かずとと一緒がいい」

 

 

す、捨てられた子犬のような目………えぇい、負けるか!!!

 

 

「っ……そ、それでも仕事を優先しないとダメだよ?」

 

「………かずとが言うなら、そうする」

 

 

かなり不満そうな表情ではあったが、どうにか俺の言う事を聞き入れてくれたらしい。

 

恋は陳宮達の所へ戻ると、気絶したままの陳宮を文字通り叩き起こす。

 

そして混乱する陳宮を今度は気絶しない程度に黙らせ、名代としての役割を再開した。

 

しかし喋るのは相変わらず全て陳宮であり、当の恋自身は華琳の方を見てもいない。

 

ただひたすら俺の方に視線を送り続けていた。

 

 

「……では、用件だけではあるが、これで失礼させてもらう。と仰せなので…あっ、恋殿?!」

 

「……終わった。お話し、しよ?」

 

 

さらに陳宮が終了を告げた瞬間こちらに駆け寄って来て、話の続きをおねだりされてしまう。

 

こうなってしまったらもう恋のお願いを突っぱねるのは不可能だ。

 

俺は大多数の人間が未だ茫然と立ち尽くしている中、恋の手を取る。

 

 

「ああ、解った。それじゃあ中庭にでも行ってゆっくりお話ししようか」

 

「……♪」

 

 

どうせ待ち受けているのが地獄なら、せめて最後に楽しい思い出を作って逝くとしよう。

 

 

 

 

黄巾党との決戦から一夜明けた今日、俺は瀕死の状態で自室のベッドに転がっていた。

 

 

「………さすがに、堪えた」

 

 

指一本動かすのですら億劫に感じてしまうほど疲弊しきっている俺は、ぼんやりと天井を見ながら呟く。

 

破壊神化するどころか幼子のように感情を爆発させて泣きじゃくりながら俺の罪悪感を煽りたてる華琳。

 

戦場での恋をも凌ぐ覇気を放ちながら笑顔を崩さず、淡々と言葉の刃で斬りつけてくる風。

 

普段の癒し的立場からは想像もしたくないほどの絶対零度な視線を向けてくる凪達三人。

 

何故か誰からも直接的な暴行もとい制裁は加えられなかったが、

正直ボロ雑巾の如くボコボコにされた方が100万倍はマシだった。

 

 

「目が覚めたようですね、お兄さん」

 

「………風か」

 

 

そんな死にかけの俺の元へやって来たのは風。

 

何とか顔だけ動かして彼女の様子を窺ってみるが、どうやらもう気は済んでいるらしい。

 

 

「………なんというか、昨日はゴメンな」

 

「お兄さんが謝る必要はありませんよ。誰に非があるという訳でもありませんから」

 

「………なら、なんで俺はこんな状態になってるんだ?」

 

「それはそれ、です。乙女心を傷つけた罪は何よりも重いのですよ~」

 

「………そうか」

 

 

今更ながら、この世は理不尽で満ち溢れている事を確信した。

 

 

「それにしても、華琳様どころか恋ちゃんまでお兄さんに一目惚れしてしまうとは……さすがに驚きました」

 

「………やっぱり恋も一目惚れか。まぁ、あの反応だとそれ以外ないか」

 

 

前の世界でも仲間になった後はあんな感じ……いや、それでもいきなりあそこまではなかったか。

 

とにかくこの世界の恋も華琳と同じ状態だというのは間違いない。

 

 

「でも、何で恋までそんな事になってるんだろうな」

 

「逆ですよ、お兄さん」

 

「ん?」

 

「どうして恋ちゃんと華琳様だけがこのような状態になっているのか、です」

 

「………………」

 

 

風は別として、これまでの世界と明らかに違うのは恋と華琳だけだ。

 

凪達3人は出会いの経緯こそ違うものの、性格とかそっち方面での違いはほとんど見られなかったし。

 

 

「これは風の推測ですが、華琳様と恋ちゃんは前の世界の影響を受けていると思われます。

 ただ、風のように記憶の全てを引き継いでいる訳ではありません。

 おそらく引き継がれているのはお兄さんに対する想い。

 だからこそ初対面のはずのお兄さんを見て一目惚れしてしまったのでしょう」

 

「………そうか」

 

 

20周目のループで起きた変化。

 

原因が何だったのかは知らないが、結果として風が今俺と同じようにループしている。

 

その事実を考えればあり得ない話ではない。

 

推測とは言え本来驚くべきはずの内容を、俺は自分でも不思議なくらい素直に受け入れていた。

 

 

「でも、じゃあどうして風だけは記憶まで全部引き継いでるんだ?」

 

 

風と華琳達の、そして他の皆との違いは何なんだろう?

 

 

「ああ、それについては簡単です」

 

「解るのか!?」

 

「勿論、"愛"の差に決まってるじゃありませんか~」

 

「………あ、そう」

 

 

ある意味予想通りの答えに一気に力が抜けてしまう。

 

………でも、案外本当にそうなのかもしれない。

 

俺は再び天井を見上げながらポツリと呟いた。

 

 

「えっ? お兄さん?」

 

 

皆への想いに優劣なんてつけられない。

 

風も、華琳も、恋も、凪達もみんな俺にとって大切な存在だ。

 

でも、もしその中で誰か一人を選ばなければならないとしたら、その時は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………愛してるよ、風」

 

「っ! きゅ、急に何を言い出すんですか、お兄さん!!!」

 

 

気付けばそんな言葉が自然と口から零れていた。

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうも、お久しぶりの『ささっと』です。

 

いろいろ忙しかったので2週間ほど空いてしまいました。

 

べ、別にciv4ばっかりやってた訳じゃないんだからね! 勘違いしないでよ!………反省してます。

 

 

恋の出ているシーンだけ妙に尺が長いのはお約束。

 

それはさておき、その6にしてようやく黄巾党の乱が終結しました。

 

当初の予定ではもっとあっさり進むはずだったのに……まぁ、いいか。

 

とりあえず一刀の事を名前で呼ぶ恋は貴重。

 

しかし恋の一人勝ちかと思いきや、やはり最後は風です。

 

俺の嫁にしてメインヒロインの座は伊達ではありません!

 

 

次回はお馴染日常編……を挟む事無く、そのまま反董卓連合編に突入です。

 

 

コメント、および支援ありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

友達登録もお気軽にどうぞ。

 

 

P.S.先日PSPで『らき☆すた』のゲームが発売される事を知りました。えっ、嫁? こなたですが何か?

 

 

 


 
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