No.966958

PokemonSM CosmosEpic 42:ウルトラホールの決戦!

フウイさん

ここの戦いも言葉も、印象に強く残っていますね。

2018-09-12 15:04:32 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:900   閲覧ユーザー数:900

 

 

「・・・ルザミーネ、さん」

「母様・・・」

 

ウルトラホールで、ルザミーネを見つけた。

彼女はウツロイドに囲まれて、恍惚の表情を浮かべている。

 

「・・・あら・・・あなた達は・・・」

 

ルザミーネはリーリエ達に気付くと、ヒステリックな表情と声で叫ぶ。

 

「・・・なんて、しつこいのかしら!

心底ウンザリですわ、誰の許しを得てワタクシとビーストだけの美しい世界にきたのです!」

「当然、自分で決めて・・・そして、伝説のポケモンの力を借りてきたんだよ!

そこに、許しなんていらない!」

「いつまで、自分のことばかりをっ・・・!」

「なにをいまさら」

 

ルザミーネはヒールの音を鳴らしながら立ち上がる。

 

「ワタクシは、ワタクシの好きなものだけが溢れる世界で生きるの!

それのどこが、悪いことなのかしら?」

 

口角をあげてウツロイドの身体をなで回しながら、主張を続ける。

 

「例え、自分の本当の子供でも!

どれだけワタクシを慕っていても!

珍しいとされるポケモンでも!

ワタクシが気に入った・・・愛を注ぐ価値のある、美しいものでなければ、邪魔でしかないのです!」

「・・・だから、今のままがいいってこと・・・!?」

「そう、その通りです!

ワタクシの世界には、ワタクシの望むものだけで溢れていれば、それでいいのです!」

 

ルザミーネが両手を掲げてウツロイド達を従わせ、そう主張した瞬間。

ぱぁん、という音が鳴り響いた。

ルザミーネの頬は赤く染まっており、リーリエは高く手を挙げながら眉をつり上げ頬を膨らませていた。

 

「リッ・・・」

「もう、ウンザリです!

あなたのその、ただのワガママにはっ!」

 

リーリエがここまで感情を露わにするところを初めてみたヨウカは思わず呆気にとられる。

そんなヨウカ達のリアクションなど知らず、リーリエは怒りを全面にだし続けた。

 

「子供は親のものではありません、ポケモンもトレーナーの思うとおりにしていいものじゃありません!

私も、コスモッグも、ポケモンも!

みんな生きてます、道具なんかじゃないし人形でもありません!

全て今を生きている、一つ一つの命なんです!」

 

首を横に振り、リーリエは怒声を浴びせ続けた。

 

「それなのに・・・興味がなくなれば捨てていいだなんて・・・どうなってもいいだなんて・・・ひどいです!

ひどすぎます!」

「・・・リーリエちゃんの、言うとおりだよ!」

 

そこに、ヨウカも加わった。

彼女もルザミーネには言うべきことがたくさんあるのだ。

 

「あなたが今ほしいのは・・・美しいものでも、ウツロイドでも、珍しいポケモンでも、子供でもない!

ただ自分の思い通りに動くマリオネットだ!」

「そう・・・そんなんだから、私は・・・母様の愛を受けないんです!

そこに本当の愛なんて、少しもなかったんですから!」

「・・・アッァァァァァ!!」

「!?」

 

ヨウカとリーリエの声に対しルザミーネはヒステリックに叫ぶと、2人をにらみつける。

 

「こんな不毛な争いは、やめましょう!!

あなた・・・小さい頃はなんでもワタクシの言うことを聞いていてかわいかったのに・・・ワタクシに逆らうようになって・・・そんなに醜く変わったのは、ヨウカのせいね?」

「はっ!?」

「・・・なんて、憎いのかしら・・・!

ワタクシとウツロイドの力で、還付なきまでに叩きのめしてやるわっ!!」

 

そう叫びルザミーネは、どこか特殊めいたボールを投げる。

瞬間、黒い光が現れて視界は真っ暗になった。

 

 

「・・・!?」

 

視界が開けた瞬間、ヨウカ達は言葉を失った。

そこにいたのは黒いウツロイドのような、謎の生命体だった。

何本もの触手が生えたゼリー状の頭部にはルザミーネがいるのだが、はっ金色の髪は黒く染まり、目は濁った金色。

口元は不気味な笑みを浮かべていた。

 

「ホホホホホホ・・・オォッホホホホホホホ!!!」

 

高笑いをしながら触手をうねらせると、ルザミーネのポケモン達が出てきた。

出てきたポケモン達はそれぞれ、オーラをまとっており目つきも悪い。

 

「ゆけっ!」

「頼んだぜ!」

「みんな、お願い!」

 

全員ポケモンを出して、立ち向かうヨウカ達。

ジュナイパーはピクシーにはがねのつばさを、ドデカバシがキテルグマにつばめがえしを放つ。

だが2匹はその攻撃に耐え、ピクシーはジュナイパーにたいしだいもんじを、キテルグマはドデカバシにアームハンマーをそれぞれ食らわせた。

 

「相性はいいはずなのに・・・!」

「サンくん、ドレディアにつららばり!」

 

ヨウカもサンくんに指示を出して、つららばりでドレディアを攻撃しようとしたが、ドレディアははなびらのまいで相殺しそのままサンくんを攻撃した。

 

「そんなっ・・・!?」

「おそらくあのオーラで、全ての能力が強化されてしまっているんだ・・・!」

「どうやって、オーラを払えばいいんだろ・・・!?」

 

そのオーラを払うすべはないのか、とヨウカが思い詰めていると、彼女に向かってミロカロスがれいとうビームを放ってきた。

 

「ニャーくん、だいもんじ!」

 

その一撃は何とかだいもんじで相殺できたが、相手側の攻撃は止まない。

その後ろでは、グズマがうずくまっていた。

 

「・・・」

 

グズマはヨウカ達が駆けつける前に、ルザミーネに言われたことを思い出していた。

自分はもう用済みだと、飽きたからいらないのだと。

付け入る隙が多かったから利用しやすい、だから利用しただけなのだと。

ずっと慕っていた彼女に言われたその言葉にグズマはショックを受け、意気消沈してしまったのだ。

やや自暴自棄になりかけたとき、ウツロイドのパワージェムがグズマに襲いかかろうとした。

 

「なっ!?」

 

だがそのとき、グズマの前にたち、彼をかばったのはツキトとセイルだった。

彼らが自分をかばうなんてことが信じられないグズマは目を丸くした。

 

「ったく、ホンットにトチくるったおばさんだな・・・!」

「全くだ・・・こんな人間がよく、ポケモンの保護活動をしようと思ったな・・・!」

 

立ち上がりながらルザミーネを睨みつける2人。

とんできたミロカロスのハイドロポンプは、ジュナイパーがソーラービームを放つことで相殺した。

 

「オレの叫びなんてどうでもいいだろうから、独り言だと思ったっていいぜ」

 

そう言ってツキトは唯一の家族について語り始めた。

 

「オレにゃ、親なんてもういなくて・・・家族はずーっと独身な姉しかいねーよ。

姉ちゃんは親のこともろくに覚えてねーオレに・・・家族として愛を与えてくれた・・・。

からかってばかりで、大きくいえないけど・・・オレは誰よりも、姉ちゃんには幸せになってほしいと思ってる!

姉ちゃんが親の分までオレに注いでくれた、家族の愛情・・・オレは今夢に向かって頑張ることで、少しずつ返しているんだ!」

 

セイルも、自分の思いを大きな声で語り出す。

 

「・・・俺には家族も友もいる・・・孤独じゃない。

ポケモンも信じることができたから・・・挫折からもこの傷からも、逃げずにいられたんだ・・・!

そんな彼らのためにも・・・俺は目的を果たした上で帰る!」

 

先程の衝撃で傷口が開いたらしい、また左腕が痛み出していたが、その痛みに耐えてセイルは立ち上がる。

 

「・・・」

「グズマ、貴様もつれて帰る。

貴様にはまだ、償いという・・・やるべきことがあるからな」

 

飛んできたシャドーボールを、ヤドキングはサイコキネシスでとめた。

 

「今まで貴様が壊してきた分だけ、働いてもらうぞ」

 

 

 

「さにごっ!」

「らぁらっ!」

「サニちゃん、カリちゃん!」

 

必死にルザミーネと戦い続けるヨウカだが、相手は高笑いをあげながらヨウカのポケモンを払いのける。

オーラによるパワーアップのせいで、まともに戦うことができないでいた。

 

「・・・」

「リーリエちゃん・・・あたしなら・・・大丈夫・・・!」

 

自分の後ろで、彼女が戦う姿を見ていたリーリエは、ただ見守るしかない苦しみに震えていた。

そんなリーリエの苦しみをヨウカは理解しており、彼女に向かって大丈夫と笑いかけながら、彼女を守るようにしてポケモンに指示を出し戦い続ける。

 

「せめて、オーラを消せれば・・・だけど・・・」

「グァア!」

「ニャーくん、かえんほうしゃでむかえうって!」

 

キテルグマのきあいだまをニャーくんはかえんほうしゃでむかえうち、そのまま炎を浴びせてダメージを与えた。

そのとき一本の触覚が光り、それと同じ色の光がポケモンを包み込んだのをみて、ヨウカはあることに気づく。

 

「・・・そうか・・・!」

「ヨウカさん?」

「ツキトくん、セイルさーん!」

「どうした?!」

 

ヨウカに呼ばれて、ツキトとセイルは彼女の元へ駆けつけた。

2人がきたことでヨウカは笑みを浮かべ、思いついた作戦を告げる。

 

「みんなで、あの触手をこわそ!」

「触手を?」

「うん・・・あの触手が光ると、ポケモン達はオーラに包まれるんだ。

つまり、あの触手がポケモン達を強化するオーラを作ってるんだよ!

だからあれを一個ずつでも壊すことができれば・・・どこかで弱点が出てくるかも!」

「・・・そういうことか・・・よし、やろう」

「やってみようぜ!」

 

ヨウカの提案に2人は頷くと、まずはツキトが動き出す。

突っ込んできたキテルグマをカイリキーが阻止し、ドデカバシは飛び回りながらタネマシンガンを乱射する。

 

「ジュナイパーははっぱカッター、ムーランドはかみなりのキバ!」

 

続けてセイルが、ジュナイパーやムーランドに指示を出して触手を攻撃していく。

 

「ウオォアッァ!!」

 

そのときルザミーネは悲鳴ににた声を上げたので、効果があるとにらむ。

ピクシーがムーンフォースを放ってきても、ヤドキングのひかりのかべをはったおかげで大したことはない。

 

「そこだサンくん、メタルクロー!

 

襲いかかってきた触手に対しサンくんの技が炸裂し、その触手を落とした。

 

「ミミちゃんはシャドークロー、さらにタツくんはドラゴンダイブ!」

「ムァァムッ!」

「ディィアァ!」

 

そして、ムウマージとドレディアを同時に倒した。

オーラがまともに使えなくなっていたので、徐々に弱点が露わになっていったのだ。

それにより、ポケモンが倒しやすくなった。

 

「アシレーヌ、そこでバブルこうせん!」

「ジュナイパー、リーフブレードッ!」

 

同時に、大きな触手を切り裂く。

その影響でポケモン達のオーラは完全に消滅した。

 

「そこだ・・・いくよっ!

ニャーくん!」

「がぁおっ!」

 

ヨウカはニャーくんに呼びかけて目の前にいるピクシーとキテルグマにたいし、ほのおのZワザの構えに入る。

 

「あたしとポケモン達のゼンリョク・・・このZ技にすべて、かける!

ダイナミック・フルフレイム!」

「グァァァァッ!」

 

Zワザのエネルギーがニャーくんに集まっていき、放たれたのはほのおのZワザ、ダイナミックフルフレイム。

その技はピクシーとキテルグマにヒットし、さらにルザミーネのすべての触手を焼き払った。

 

 

「アウグゥォァアアア・・・!」

 

ルザミーネは苦しそうに呻きながらも、触手を無理矢理一本はやしそれでヨウカをつかむ。

 

「うわっ!」

「ヨウカさん!」

「・・・あ・・・ぁぅ・・・ぐっ・・・!」

 

触手はヨウカの身体・・・特に首を強く締め付けてくる。

なんとか解放したいツキト達だが、ルザミーネは彼女を人質にするかのようにつきだして彼らの動きを封じる。

ポケモン達も、ヨウカのピンチになにもできずあわててしまう。

 

「くっ・・・なんてことを・・・!」

「汚いぞ、オバサン!」

 

その非道な行為に対しツキトとセイルが悔しげに歯ぎしりをたててる後ろでリーリエは目をつぶり、つぶやく。

 

「・・・私が今度は、ヨウカさんを助ける・・・!」

 

いつもヨウカには助けられている、今は自分が助ける番だ。

そう思ったリーリエは、自分のそばにいたポケモン達に願いを託した。

 

「・・・お願い、助けて!

ルナアーラさんっ!」

「マヒナペーアッ!!」

 

彼女の声に応えてルナアーラは姿を見せ、その体を満月のように輝かせてその光をルザミーネに当てる。

 

「アァァァ!!!」

「きゃぁ!」

 

その衝撃でルザミーネは弾き飛ばされ触手からヨウカは離され、それをニャーくんが受け止めた。

 

「グゥゥゥ・・・」

「がは、ごほ・・・!」

「ヨウカさん・・・!」

 

ヨウカはニャーくんの腕の中で呼吸を整えようと何度もせきごみつつ、ルザミーネをみた。

ルザミーネは再び浮かび上がろうとしたが、ポツポツと淡い光の粒が舞い上がっていき、その光は徐々に強くなっていく。

 

「アァァァアーッ!」

 

そう叫び声をあげたとたん、ルザミーネの体は強い光に包まれ、なにかが弾け飛んでいった。

光が散っていって、ウツロイドが離れていき、そこには白金色の髪の女性が立っていた。

その女性はゆっくりと地面に倒れていく。

 

「もとに・・・もどった?」

「・・・お母様!」

 

本来の姿に戻ったルザミーネに、リーリエはかけより母の顔をのぞき込む。

すると、リーリエがきたことに気付いたルザミーネはゆっくり目を開けて、彼女と同じ翡翠色の瞳に娘の顔を見つめた。

 

「・・・リーリエ・・・」

「お・・・かあ、さ・・・ま・・・」

 

ルザミーネは娘の頬に手をのばして、リーリエの顔の輪郭をなぞる。

だがルザミーネ自身には力は残っていないらしく、すぐに手は滑り落ちようとしていた。

その手を受け止めたリーリエの手からぬけて、ルザミーネは彼女の唇に指をちょんと当てながら笑みをこぼす。

 

「あなた・・・少しは、きれいになった・・・のね・・・」

「・・・お母様・・・!」

 

ルザミーネの手を握り返しながら、リーリエは目から一筋の涙を流して、ほほえみを浮かべたのだった。

 

 


 
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