一方、その頃……。
「兄さん……一体どこにいるんだろう……」
「こんな遠くにいたら、分からないね」
マリオの双子の弟ルイージと、彼の従兄弟のドクターはどこかの荒野を彷徨っていた。
「まぁ、回復役の僕がいるから魔物が襲い掛かってきてもある程度は大丈夫だと思うんだけどさ」
「二人、しかも兄さんの身内だけだと、ねぇ……」
「はぁ……」
溜息をつくルイージとドクター。
「せめて、他に仲間がいてくれればいいんだけど、そんなのがいるわけがないよねぇ」
こんな世界では、仲間も水も食糧も見つかる確率は非常に低い。
それでも、0ではないと信じて、ルイージとドクターは荒野を歩き回った。
「あれは……!」
「ルイージ君!?」
すると、ルイージは廃墟を見つけたようでそこに向かって走っていった。
ドクターも何とか、ルイージにギリギリ追いつく速度で走り出した。
「ここに何かあるかな……?」
ルイージが廃墟を一生懸命調べてみると、なんと携行食糧が見つかった。
「こ、これは……食糧じゃないか……!」
「数は3つ……。この世界では貴重だからね、持って行かなくちゃ」
ドクターはポケットの中にルイージが見つけた携行食糧をいくつか入れた。
その後、廃墟を調べてみたが、特に何もなかったので、二人はそこを後にするのだった。
「おーい、マリオくーん、どこにいるんだーい?」
「兄さーん、兄さーん」
ルイージとドクターは、大声で行方不明のマリオを呼んでいた。
だが、いくら呼んでも彼が来る気配はなく、ただ時間だけが空しく過ぎていた。
「やっぱりいないか……」
「ああ、今はもう、誰でもいいから仲間がほしいよ……」
ルイージが何歩か歩いた、次の瞬間。
「ひゃぁっ!」
突然、ルイージの顔ギリギリに針が飛び、頬を掠って軽い出血をした。
「ど、どうしたんだいルイージ君!?」
「だ、誰かが針を飛ばしてきた……」
「そうか、君は僕達に敵意を向けてるんだね。さあ、僕達の前に姿を現すんだ!」
そう言ってドクターは針を飛ばしてきた方に顔を向けてみた。
すると、彼の前にはまるで異国の戦士のような容貌の人物がいた。
その人物の目は鋭く、まるで獲物を見ているかのようだった。
「シーク君! どうしてこんなところに?」
「……敵か……?」
「シーク、僕達は敵じゃないよ! ルイージとドクターだよ!」
「果たしてそれは真か? 敵が姿を変えたものではないな?」
どうやらシークは、ルイージとドクターが偽者かもしれないと疑っているらしい。
「だからっ、僕は本物のルイージで」
「僕は本物のドクターだよ!」
「騙されはしない……必ず、正体を暴く!」
そう言ってシークはルイージに襲い掛かってきた。
「ああ、もう! どうしてこうなるんだ!」
「どっちにしろ、やるしかないみたいだね!」
「フッ」
「速い!」
シークが素早い蹴りを放ってルイージを攻撃する。
そのスピードは速く、ルイージは避けられずにダメージを受けてしまう。
「シーク君、目を覚ますんだ! カプセル!」
ドクターはカプセルをシークに向けて投げ、正気に戻そうとするが、
シークが正気に戻る気配はなかった。
「はぁ……まったく、暴走ってのは恐ろしいね」
「味方までも敵とみなし襲い掛かる……ぐぅっ!」
さらにシークの二度蹴りがルイージを正確に捉え打ち据えていく。
「ルイージ君、大丈夫かい?」
「か、かなり痛いよ。でも、僕だってやられっぱなしじゃないよ! ファイアボール!」
ルイージは手から緑の火炎弾を放つ。
シークはそれを飛び上がってかわすが、ルイージの狙いはそれであり、
シークは下にいたドクターのスーパージャンプパンチを受けてしまう。
「やっぱり、シークを元に戻すには、シークと戦わなくちゃいけないのかな?」
「ちょっと辛いけど、仕方のない事だ」
ルイージもドクターも争いを好まない性格であり、シークと戦うのも辛そうな様子だった。
しかし、今のシークは「暴走」しており、まずは一度、戦闘不能にしなければならなかった。
スーパージャンプパンチを受けたシークはジャンプして斜めに針を投げつけた。
「いった!」
「うわぁっ」
「炸裂丸」
針を受けてよろめいたドクターにシークが見えない爆弾を取りつけ、
爆発した直後に糸でドクターを引き寄せる。
そこからドクターは手刀と蹴りの連続攻撃を食らってダメージを受ける。
「はぁはぁ……僕はあまり体力がないから、少しは手加減してくれるかな」
「そう言われて手加減をする私ではない! 覚悟しろ、偽者め!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
シークはそう言ってドクターに容赦ない一撃を加える。
ドクターはそれを受け、大きな叫び声を上げて倒れた。
「……どうして、どうしてなんだ……」
ドクターと共にシークと戦っていたルイージは、この戦いに疑問を抱いていた。
こんな戦いで、本当に生き残れるのだろうか。
こんな戦いに、本当に意味はあるのだろうか、と。
「……これで、とどめだ」
シークは倒れたドクターのところにゆっくりと近づいてくる。
そして、手刀を振りかざした、その時。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ルイージが頭から突っ込んでいき、それがシークに命中すると大爆発を起こしてシークを吹き飛ばした。
そう、ルイージロケットが暴発したのだ。
「ル、ルイージ君……?」
「僕はこれ以上、仲間同士の戦いを見たくない! だから、今ここで僕は、君を止める!」
「ならばやってみろ!」
「ドクターは、危ないから下がってて」
「……うん」
シークはドクターを下がらせたルイージに立ち向かうが、ルイージはファイアボールを飛ばして牽制し、その隙に足を掴んで地面に叩きつける。
「くっ、よくも……」
「アイスボール!」
何とか立ち上がったシークは蹴りを放とうとするが直後にアイスボールを受けて両足が凍り付く。
「くっ、動けない……」
「まだまだ!」
ルイージは攻撃は最大の防御と言わんばかりにぽこぽこパンチで連続攻撃し、
さらにどんけつとねこパンチをシークに食らわせてダメージを与える。
その戦いぶりは、今までのルイージからは想像できないほどだった。
「これで……終わりだ!」
そして、ルイージが地獄突きを放つと、シークは戦闘不能になるのだった。
「……ん」
しばらくして、シークはゆっくりと起き上がる。
「……僕は一体、何をしていたんだ」
「さっきまでの出来事、覚えてない?」
ルイージがすぐに事情聴取を行うと、シークは静かに口を開いた。
「少しだけだが覚えている。僕の周りには誰もいなかったからな。
何もなく、徐々に不安になっていき……理性を失ってしまったようだ」
どうやら、シークはこの世界に飛ばされた時には単独行動をしていたらしい。
そのせいで、シークは精神的に不安定になり、ルイージ達を攻撃したのだろう。
「君達を偽者だと思い込んでしまって、本当にすまなかった」
シークは二人を攻撃した事を謝った。
「別に、気にしなくても大丈夫だよ」
「もう、済んだ事だし……ね」
理性を失っていたとはいえ、敵となったシークとすっかり仲良くなったルイージとドクター。
「それにほら、少ないけど食糧は持ってきてるし、せっかくだから僕達と一緒に行かないかい?」
ドクターは携行食糧を取り出し、シークに同行を勧めてきた。
「いいのか?」
「うん」
「それに、歩いていればきっと仲間も見つかると思うし……」
こんなところで考えていても何も始まらないと思ったルイージは、シークと同行する事を決めた。
「じゃあ、早速みんなを探そう!」
「ああ!」
シークを仲間に入れたルイージとドクターは、はぐれた仲間と合流するために歩いていった。
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ルイージとドクターマリオ、そしてシーク登場。しかし……。