No.964639

恋姫OROCHI(仮) 伍章・弐ノ玖 ~謎~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、98本目です。

またしても間が空いてしまいました…orz

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2018-08-24 01:10:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6276   閲覧ユーザー数:5510

 

 

「お、来た来……た?」

 

雑賀庄には、先に捕らえられた猪々子や斗詩、そして彼女らを捕まえた娘たち、加えて元々残っていた剣丞ら全員が集合していた。

小波の先触れで、麗羽たちが間もなく来る事は知っていたが、剣丞の目に飛び込んだ光景は驚くべきものだった。

 

「ほら、キリキリ歩く!」

 

簀巻きと荒縄で縛られ、数珠繋ぎにされた麗羽と美羽と七乃が、蒲公英に引っ張られている。

まるで罪人の引き回しのようだ。

 

「くっ…屈辱ですわ……でも、お二人が掴まっているのなら、ここは耐え忍んで…」

「麗羽さま~~!」

「ご無事だったんですねー」

「うん?」

 

麗羽が声のした方へ視線をやると、猪々子が元気よく手を振って、斗詩は心配そうな面持ちで駆け寄ってくる。

 

「あ、あら…?猪々子さん、斗詩さん?あなたたち捕まっていたのでは…」

「はい…申し訳ありません…」

「まんまとやられちゃいましたよー」

 

斗詩はしょぼんと肩を落とし、猪々子はバツの悪そうに髪をボリボリと掻く。

 

「捕まえられて、あーんなことやこーんなことまでされてるって…」

「は?別にあたいら何もされてませんよ?」

「はい。皆さんとても良くしてくれて、先ほどもお昼ご飯をご馳走に…」

「こ~む~す~め~~!!」

「わ、バレた」

 

蒲公英の悪戯でこんな格好をさせられたと分かると、麗羽は烈火の如く怒り、背を向け逃げる蒲公英を追いかける。

痛いのじゃー!と叫ぶ美羽と七乃ごと引っ張って走る姿は、なかなかに迫るものがある。

 

「どうしてこんなことになったの…」

「…申し訳ございません」

 

剣丞の後ろに音もなく小波が現れる。

 

「その…タンポポさまの、その…冗談に、真桜さまと雀さんも乗っかってしまい……」

「…そうなると、小波さんと烏さんでは止められませんね」

 

剣丞の隣で詩乃は、はぁと溜息を付きながら頭を押さえる。

 

「しかし主様、何とかせんとあの女はいつまでもあぁしておるぞ?」

「…だね」

 

一葉の言葉に剣丞が同調する。

周りを見渡しても、調停する気のある者がいないのを見て、剣丞はため息を付きながら追いかけっこをしている二人(四人?)の間に割って入った。

 

「はいはい二人とも、ストップストーップ!」

 

突然の闖入者にたたらを踏む麗羽。

急に止まった麗羽にぶつかる美羽と七乃。

美羽は二人に挟まれ、蛙のような声を上げて頭に星を飛ばしてしまった。

 

「なんですの!?って誰ですの貴方……随分と貧相な顔立ちですわね。一体どこの馬の骨ですの?」

「…貧相」

 

いきなり浴びせられる雑言に、剣丞は一瞬呆気に取られる。

なんだかんだと言って世話を焼いてくれた姉だけに、ショックが大きいようだ。

 

「剣丞、オバサンの前に立ったら食べられちゃうよー」

 

ちゃっかり剣丞の背に隠れながら、なおも野次を飛ばす蒲公英。

 

「食べませんわよっ!というかなんですの?この貧相な男は。小娘の新しい愛人ですの?品のない所などお似合いですわね」

「違うよっ!この子は新田剣丞。ご主人様の甥っ子だよ!」

「………一刀さんの?」

 

パチパチと目をしばたかせた後、今度は目を細めながら剣丞のギリギリに近づいて値踏みをする。

剣丞にとっては久々の感覚だ。

 

「そういえば……どことなく一刀さんに似てなくもないですわね…」

「貧相な男とか言ってたくせにー」

「ぐっ…」

「麗羽さまは、ご主人様のことも最初はそう言ってましたからね…」

 

麗羽の後ろで美羽たちの縄を解いていた斗詩が注釈を挿れる。

 

「そうなんですかー?酷いですねー」

「ぐぐっ……」

 

蒲公英と七乃の追い込みに、ぐぅの音しか出ない麗羽。

 

「まあまあ。俺も伯父さんも貧相といえば貧相だし、ね?袁紹さんには、俺が伯父さんの甥っ子だと分かってもらえればそれで充分だから、みんなもうその辺で…」

「まぁ…」

 

自分のことを庇う剣丞に、麗羽は目を細め、今度は目を輝かせる。

大人しくなった麗羽の縄を、斗詩と猪々子が二人掛りで外していく。

 

「まぁまぁ!あなた、なかなか見所がありますわね。私は最初から分かっておりましたけどね。おーっほっほっほっ!!」

 

縄が解けるや否や、麗羽は全身を使って高笑う。

 

「まったく……品のない笑い方をしますのね、あの方」

「…テメェも似たようなもんだろうが」

「なんですってー!?」

「んだコラ!やんのかあぁん!?」

 

何故か離れた場所にいた梅と小夜叉の間で喧嘩が勃発していた。

 

「お主が主様の血族かえ?」

 

高笑い中の麗羽に変わって、トコトコとやってきたのは美羽だった。

麗羽にぶつかったせいか、鼻が少し赤い。

 

「うん…いえ、はい。北郷一刀の甥の新田剣丞と言います。袁術さん、よろしくお願いします」

 

子ども扱いが好きではなかったのを思い出し、ちゃんとした対応をする。

 

「うむうむ!よぅ出来た甥御殿じゃの。さすが主様じゃ!お主と主様は…」

「主様を主様と呼んでよいのは余だけじゃぞっ!!」

「ぴぃっ!?」

 

光の速さで割って入る一葉。

突然現れた一葉に小動物の如くビビる美羽。

 

「はいはい、ややこしくなるから一葉は引っ込んでてねー。幽ー」

「はいはい、申し訳ございません。ほら、公方様はこちらへ…」

「何故じゃ!?余ばかり冷たくはないか!?主様~~~……」

 

幽に引きずられ、段々と一葉の声が小さく、遠くなっていく。

抵抗も出来ずに引っ張られているところを見ると、まだ本調子ではないのだろう。

 

「はぁ…」

 

仲間や姉を助けだせる喜びはあるものの、人が増えれば増えるだけ気苦労も増えるのだと改めて実感した剣丞だった。

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

「――――というわけなんです」

 

麗羽、美羽、七乃、そして先に捕まえていた斗詩と猪々子に詳しい事情を説明した。

 

「つまり…どういうことですの?」

 

だが、平均知力が50を下回る彼女らには理解が追いつかないようだ。

 

「つまりー、我々と剣丞さんたちのお味方をお互いに戦わせようとする勢力がいる、ということですよー」

 

風がこの戦いに限っての要点を絞って伝える。

 

「袁紹殿たちがここへ攻め込んだのは、もしかして田豊の差し金なのではありませんか?」

「そ、それは…」

 

稟の問いに口篭る麗羽。

 

「んまぁ~差し金って言うか、真直に言われてその気になってたんだよね、麗羽さま」

「そうでしたねー。異変内部の民は蛮族に違いない。ここで麗羽さま御自らの指揮でこれを討伐すれば、北郷さんへの覚えも良くなるでしょう、とかなんとか言われてましたねー」

「そうじゃったの」

「ぐぐっ…」

 

七乃のほぼ完全な証言で裏は取れた。

 

「真直ちゃんにしてはおかしなこと言うなぁ、とは思っていたんですけど…」

 

例え斗詩が疑念を抱いたところで、麗羽と猪々子が乗り気になれば止める事は出来なかっただろう。

 

「これで今回の同士討ちは、田豊さんの仕業である事はほぼ確実になりました。次に問題なのは、彼女の単独犯なのか。それとも裏で糸引く者がいたのかどうか、ですね」

 

詩乃が顎に手を当てながらそう言う。

 

「単独ってことはないだろ?あの真直だぞ?でも裏で糸ってのもなぁ~…」

「頭に汚い言葉が付くほど真面目だもんね~。神経質だけど!」

 

真直の人柄について翠と蒲公英が証言する。

 

「主様の見解はどうなんじゃ?その真直とやらは葵や白百合のような手合いなのか?それともそうではないのか?」

 

一葉は剣丞の意見を求める。

 

「それが…知らないんだ。田豊……真直って人は」

「一刀殿の嫁の一人ではないですのかな?」

「北郷の嫁、ということで言うなれば、我々は等しくその立場には無いが、少なくとも我々同様、真直も深い関係である事は間違いないな」

 

秋蘭が付け加える。

ということは…ということであろう。

 

「俺の知ってる伯父さんたちでありながら、俺の知らない過去ということなのか?」

 

困惑する剣丞に、水を打ったような静けさが訪れる。

 

「それはひとまず置いておこう、主様」

「何をウジウジしてやがるんだボケが!」

「そうですわね、考えていても始まりません。ハニー、今は出来ることをやりましょう」

「剣丞さま…」

「…うん、そうだね。今は立ち止まってる暇なんかないもんね」

 

嫁たちに背中を押され立ち直る剣丞。

 

「それじゃあ袁紹さん。俺たちを鄴へ案内してくれませんか?あ、もちろん文醜さんや顔良さんたちも原隊復帰して頂いて構いませんので」

「水臭いこと言うなって、剣丞!」

「…はい?」

 

脈絡のない猪々子の言葉に面食らう剣丞。

 

「文醜、なんて他人行儀じゃないか。アニキの親戚なんだから、あたいのことは猪々子でいいって!もちろん、他のみんなも真名でいいぜ!」

「もう、文ちゃんったら…」

 

突拍子のない猪々子に呆れる斗詩。

 

「いや、でも…」

「でも、そうだね。私のことも斗詩って呼んで下さい」

 

「ま、まぁ、わたくしはどちらでもよろしいんですけど…」

 

「妾のことも美羽でいいのじゃ!」

「お嬢様が真名で呼ばせるなら、私も七乃って読んで下さいね♪」

 

猪々子に賛同して、みなが次々と真名を許す。

 

「ありがとう、みんな」

 

感極まる剣丞。

他の娘たちもめいめいに言葉を交し合っている。

 

「え、あ……ちょ」

「よしっ!それじゃ目指せ鄴…」

「ちょーーーっとお待ちなさいっ!!」

 

いい雰囲気を景気良くぶった切る声。

 

「なんすか麗羽さま、これからって所で…」

「剣丞さんっ!」

 

麗羽は剣丞にビシッと人差し指を突きつける。

 

「な…なんでしょう?」

「あなたがどーーしても、どーーーーしてもと仰るのなら、わたくしも真名で呼ばせて差し上げてもよろしくてよ?」

「「「………………」」」

「麗羽さま、さすがにそれは……」

 

斗詩が呆れ半分に言葉を詰まらせる。

しかし、剣丞は神妙な顔で、

 

「うん、そうだね…実はどうしても、袁紹さんの真名を呼びたかったんだ」

 

と返す。

 

「…どーーしても?」

「どうしても」

 

首を傾げる麗羽に首肯する剣丞。

 

「お……おーーーほっほっほ!!そこまで仰るのであれば、仕方がありませんわねぇ!今回は特別に!と・く・べ・つ・に!わたくしの真名を呼ぶことを許して差し上げますわ!」

「うん、ありがとう。麗羽姉ちゃん」

「結構ですのよ。おーっほっほっほ!!」

 

笑顔の剣丞にご機嫌の麗羽。

 

「……麗羽さまの扱い、慣れてんな」

「うん。私たちのこと知ってるの、本当みたいだね」

 

自分たちの主君の扱い方を心得ている剣丞を見て、ある種の確信を得た猪々子と斗詩だった。

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

「なんですって!?真直さんが消えた!?」

 

麗羽たちを伴って鄴へ赴いた剣丞たち。

今回の戦を主導したと思われる田豊、真直に話を聞くために来たのだが…

 

「どういうことですの!?説明なさいっ!」

 

場内は混乱しており帰還した麗羽にもたらされた報告は、

『田豊が消えた』

だった。

 

いま問い詰めているのは、田豊の下に付かせていた者だ。

 

「は…それが私どもにも良く分からないのですが…」

 

最近はいつも執務室で一人閉じこもって執務を行っていたらしい。

警備と雑務用に扉の前には必ず一人立っていたらしいのだが…

 

「袁紹さまご帰還を伝えに室内に入ったところ、お姿が見えず…」

 

扉から外には出ていない。

執務室は高所にあるため、窓から外に出ることも出来ない。

文字通り『消えて』しまったようだ。

 

「どういうことなんだろう?」

 

どんな不思議なことが起こっても驚かないつもりの剣丞だったが、人が一人消えるというのはどうにも解せない。

 

「その辺りに、何か答えがあるのかもしれませんね」

 

とりあえず謎はさておき、田豊の捜索と領地の守備を命じ、麗羽一行も剣丞たちと共に洛陽へと帰るのだった。

 

 

 


 
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