第3話 激闘! スカル団!
ヨウカがククイ博士の助手である少女・リーリエと出会った日の午後。
ポケモンスクールでの一日の授業を終えてヨウカはハウ達とともに、再び島キングであるハラの元を訪れていた
「むぅ・・・これは・・・Zリングのパーツですな」
「Zリングのパーツ?」
「やっぱりそうだったか」
ヨウカはいつの間にかポケットに入っていたという鉱石をハラに見せると、ハラはなにかを思ったのかそれをすぐに調べ、その結果をヨウカに告げた。
「聞いた話によると君は、守り神であられるカプ・コケコに会ったそうですな?」
「はい・・・ほしぐもちゃんをヨウカさんが助けてくれて・・・そしてヨウカさんが危なかったところを助けてくれたんです。
守り神さんの力がなかったら・・・大変どころではなかったです」
「・・・これは、カプ・コケコからの贈り物でしょう」
「えっ!?」
ハラの言葉にヨウカは驚く。
カプ・コケコとは今朝あったばかりで、このアローラにだって最近きたばっかりだ。
贈り物される理由なんて、なにも思いつかない。
「なんで、あたしが貰えたんです?」
「きっと、勇気を持ってポケモンを助けたからでしょうな。
君の勇気と優しさをカプ・コケコは見抜き、そしてZリングを託したいと思ったのだと推測できます」
「・・・」
神様に見込まれた、と聞いてヨウカは照れくさそうにあうーと声を漏らした。
そんなヨウカをみつつ、ハラはもう一度その鉱石をみてふむ、と頷く。
「ヨウカさん、これをしばらくわしに預けてくれますかな?」
「え?」
「これは君にあうZリングに作り上げます、出来上がったらすぐに届けますので完成の時を待っててくだされ」
「それはいいんですけど、Zリングって?」
初めて聞く単語にヨウカが首を傾げると、ハラは微笑みながら言う。
「その話は、この鉱石がZリングに生まれ変わったときにまたしましょう。
是非、楽しみにしていてくだされ」
「・・・はい!」
今回のところはその鉱石をハラに預け、帰ることにしたヨウカ。
帰り道はククイ博士とリーリエと分かれたので、ヨウカはハウと一緒に帰る。
その途中、ヨウカはハウに鉱石のことを聞く。
「ハウくんはあれが何か知ってるの?」
「んー、知ってるけどー・・・ネタバレは人の楽しみを奪うからねー!
おれもじーちゃんが言うまで黙ってるよー!
下手にしゃべって、ヨウカの楽しみ奪いたくないからねー!」
「うーん、それも一理あるねっ!」
ハウの言うことは正論だ、だからヨウカはこれ以上なにも聞かなかった。
ほかにもハウオリシティのおすすめとかカントーの話をしながら、ヨウカはハウとともに家につくと、この日は家の前でハウと別れた。
また明日学校で会おうと、言葉を交わした後で。
翌日もヨウカはトレーナーズスクールに向かった。
するとそこには今日もイリマがおり、彼女とハウにある特別授業をしてほしいと頼まれたと打ち明ける。
「ポケモンゲット?」
「はい、それが今回校長先生に言い渡されたた君達への特別授業です。
そして、その特別講師が僕ですよ」
「そうなんだ、よろしくお願いします!」
「おねがいしまーす!」
ハウもヨウカも人から貰ったポケモンはいるが、まだ自分の力で野生のポケモンをゲットしたことはない。
だから今回の授業は楽しみなものがあった。
「どんなポケモンがいるかな?」
「楽しみだねー!」
早速その授業を開始するためトレーナーズスクールの外にでると、イリマは何かに気づき嬉しそうな表情でそこにいた人物の名前を呼ぶ。
「おや、セイル!」
「え?」
「・・・イリマか」
イリマが声をかけたのは、眼鏡をかけて銀髪黒目を持ったイリマと年の近そうな少年だった。
穏やかに笑うイリマにたいしセイルは無表情だった。
初めて会う人物であることと、無表情故に漂っているのか近寄り難い雰囲気で、ヨウカとハウがぽつんと立ちつくしてしまう。
それに気付いたイリマは失礼しました、と隣にいる人物を彼らに紹介し始める。
「彼はセイル、僕の友人です」
「初めましてだな、俺の名前はセイル。
彼と同じく、このトレーナーズスクールの卒業生だ。
今はアローラの各島を巡り旅しつつ、ポケモンや自然を調査をしている」
「おれも初めて会うよー!
おれはハウ、よろしくねセイルさーん」
「初めまして、あたしはヨウカって言います!」
性格は結構違うように見えたので、二人が友人同士というのはちょっとだけではあるが信じられない。
それは口に出したら両者に失礼にほかならないので、黙ったままにしておくが。
だが互いの会話の様子が穏やかだったことから、双方ともに心を許し合っているのが伝わってきた。
「これからどこかに行くのか?」
「ええ、彼らにポケモンゲットの方法を教えようと思って外にでてくんですよ。
彼らはまだトレーナーになって日も浅いので、コーチをしなければなりませんからね」
「そうか、大変だな」
「これくらい、キャプテンとして当然です。
セイルは、先生に調査の報告ですか?」
「まぁな」
さっきセイルは各島を巡りながら調査をしているといっていた。
きっとそのことを先生に報告するのだろう。
そう思っていたらセイルはファイルを取り出した。
「今回はウラウラ島まで飛んでいったからな、はなしたいことが多くあるんだ」
「そうだったんですか。
ああ・・・気付けばもうこんな時間だったんですね、いかなければ。
ではセイル、また」
「ああ、またな」
そう簡単に挨拶を交わしてから、セイルはイリマと別れトレーナーズスクールの中に入っていった。
その様子を見届けてから、イリマはハウとヨウカにこれからのことを告げる。
「では、行きますよ2人とも」
「「はーい」」
そうしてイリマに連れてこられたのは、トレーナーズスクールに近い草むらだった。
草むらの中や木の上にはレディバやイトマル、海をみるとキャモメやヤドン、そしてあちこちにヤングースやツツケラの姿もある。
「おぉぉー!」
「野生ポケモンのゲットには、まずポケモンバトルをして弱らせたところにボールを投げるのが一番ですよ」
「わかってるよー!」
「わかっているのなら結構です、さぁ挑戦していってください。
僕はここでみていますから、あまり遠くへ行きすぎないでくださいね」
「「はーい!」」
「では、はじめ!」
簡単にポケモンをゲットする方法を二人に説明し、イリマは号令をかける。
彼の号令を聞いたハウとヨウカはそれぞれ、野生のポケモンを探すために動き出した。
すると草むらに足を踏み入れたヨウカの前に、ヤングースが姿を現した。
「ヤングースだ!」
「ではヨウカさん、あのヤングースのゲットを狙ってみてください」
「はい!
いっけー、ニャーくん!」
ヨウカはボールを投げてニャビーをだし、早速技を命じる。
「ニャーくん、ひっかく!」
「にゃあ!」
「ヤァン!?」
そのひっかく攻撃はヤングースにヒットさせることはできたが、直後に反撃のたいあたりを受けてしまった。
「もういちど、ひっかくだよ!」
「にゃ!」
めげずにまた、同じ技をあててヤングースの体力を一気に削る。
これはチャンスだ、と思ったヨウカは空のモンスターボールを一個手にとりそれを投げる体制に入る。
「いっけ、モンスターボール!」
モンスターボールを勢いよく投げて、それがヤングースにヒットしてヤングースはモンスターボールに入っていった。
やった、と喜んだ次の瞬間、数回揺れた後でモンスターボールが開きそこからヤングースが出てきてしまった。
「あらっ!?」
ヤングースはボールからでると草むらの中に逃げて行ってしまった。
つまりこれは、ゲット失敗である。
「・・・あうぅ」
「まだポケモンはたくさんいますよ」
「うぅ、はーい・・・」
初めてのゲット失敗に少しへこむヨウカだったが、イリマに励まされ今度はツツケラをゲットしようと挑む。
だがそれも、失敗してしまった。
「うぅーん・・・ハウくーん、そっちはどう?」
「おれねー、キャモメゲットできたよー!」
「まじーっ!?」
ハウがもうポケモンをゲットしたと聞いて、ヨウカは負けられないと思い再び草むらに足を踏み入れる。
だが足元を見ていなかったので、草むらの奥の方で転んでしまう。
「ふぎゃ!」
「あ、ヨウカさん!」
「ヨウカー!」
慌ててハウとイリマがヨウカに駆け寄り無事を確認する。
「ヨウカ、大丈夫ー!?」
「けがはありませんか?!」
「うん、へいきー・・・って、ん?」
起きあがると同時にヨウカは何かを発見しそれを凝視する。
「どうかしました?」
「なんやろ、あれ?」
ヨウカが指さす先には、黒いタンクトップに白いバンダナをつけた、いかにもガラが悪そうな集団。
それを見たハウはげ、と声を漏らしつつヨウカに集団の正体を語る。
「あれは、スカル団だよー!」
「スカル団?」
「・・・人に喧嘩をふっかけては喜んだり、人のポケモンや物を盗んだり。
人が困っている様子を見て快楽を得ているならず者です」
「ようはチンピラやね」
「ええ、そして恐らく・・・ここでは野生のポケモンの乱獲でもしているのでしょうね」
心なしか、スカル団を見るイリマの目が、その言葉と声と同じくらいに厳しいような気がした。
なにをしているんだ、とその様子を見つめていたら、一人のスカル団が空色のポケモンを脇に抱えながら姿を見せた。
「あれは・・・!?」
「タツベイですね・・・!
この近くにすんでいるという話は聞いたことがありますけど、まさか本当にいたとは・・・!」
よく見るとタツベイは手足をばたつかせてスカル団に抵抗しているようだ。
だが力が弱いのかスカル団はびくともせず、タツベイを地面に投げ捨てるとどっと笑い声をあげた。
「こんなとこにタツベイがいるなんてなぁ!」
「こいつを連れてったらボスも喜ぶよな!」
「いいぜぇ、連れてこうぜ!」
そう話をしてスカル団はタツベイを連れて行こうとしたが、タツベイは口からひのこを吐いて抵抗し、スカル団を拒絶する。
「てめぇ、ポケモンの分際で人間様に逆らうのかよ!」
「生意気な奴だ、やっちまえお前等!」
それに対しスカル団はズバットやスリープを出してタツベイを攻撃しようとした。
「あぶなぁぁぁい!
ニャーくん、ひのこだよ!」
「うあっちぃぃぃぃ!!!」
そのタツベイを守ろうとして、ヨウカは一気に立ち上がりニャーくんに技の指示をしてスカル団達を攻撃した。
そのままヨウカはスカル団につっこんでいき、タツベイの前にでた。
「ヨウカ!」
「ヨウカさん!」
ヨウカの突然の行動に驚くハウとイリマ。
「なんだてめぇは!?」
「オレ達にボコられたいのか、あぁん!?」
「そんな弱いもの虐めして楽しむような奴に、あたしはまけんよ!」
「なんだとゴルァ!」
スカル団とヨウカの間に火花が散る中、イリマはヨウカのそばにたつ。
「待ちなさい、手出しはさせませんよ」
「げ、キャプテンがいやがる・・・!」
「おれもー手伝うよー!」
イリマの登場にスカル団は一瞬苦い顔をすると、ハウも合流してきた。
「えぇぇぇい!
キャプテンなんかに、負けてたまるか!」
「そうだそうだ!」
「やっちまうぞゴラ!」
一瞬ひるみながらも、スカル団は彼らに喧嘩しにかかってきた。
それを見たイリマとハウはモンスターボールを手に取り、それを投げる。
「お願いライライ!」
「出番ですよ・・・ドーブル!」
ハウが出したのはピチューのライライ、イリマが出したのはドーブルだった。
「スバット、きゅうけつ!」
「スリープ、ねんりき!」
「ライライ、でんきショーック!」
「ドーブル、アイアンテール!」
ズバットにはでんきショックが、スリープにはアイアンテールがそれぞれヒットした。
2匹とも反撃にでようとしたが、ライライとドーブルはそれもまた返り討ちにして相手にダメージを与える。
ニャーくんも、相手のイトマルに対しひのこを放ち牽制し、反撃のナイトヘッドも回避した。
「決めちゃえ、ほのおのキバ攻撃!」
ヨウカの指示したとおり、ニャーくんは口の中に炎をため込んだままイトマルにかみつき、イトマルを戦闘不能にする。
「ぐぅ・・・!」
相手はもう戦えるポケモンがいなくなり、逃げ腰になる。
そんなスカル団にたいし、イリマはスカル団を睨みながら強く前にでる。
「さぁ、さっさと立ち去ってください」
「・・・くっ、お、覚えてやがれーーっ!」
イリマの気迫に押されて、スカル団はそこから逃げるように去っていった。
「・・・?」
さっきの声といい目つきや態度といい、イリマはどこかスカル団に対して厳しい気がする。
それが気になったヨウカとハウだったが、不意にヨウカは足下に違和感を感じて声を上げた。
「・・・わっ!
・・・あれ、タツベイ?」
ヨウカの足下にさっきのタツベイがすりついてきたのだ。
「もしかしてそのタツベイは、ヨウカについて行きたいのかなー?」
「ほえ、そなん!?」
「うん、多分ーさっきのヨウカの戦い方に一目惚れしたんじゃないー?」
「そうかもしれませんね」
「イリマさん」
さっきと違い、いつものような穏やかな態度でハウに同意しヨウカにそう告げるイリマ。
そしてヨウカにタツベイの様子を見た彼は、ヨウカにあるアドバイスを送る。
「折角ですし、今ここでこのタツベイをあなたの仲間にしてあげたらどうですか?」
「えっ!?」
「タツベイは、あなたを気に入っていますし・・・一緒にいきたいようようです。
ポケモンが望んでいることです、だから叶えてあげてください」
「・・・せやね、あたしも、この子気に入ったし。
ねぇタツベイ、あたしときてくれる?」
「たんべぇ!」
ヨウカがそう尋ねるとタツベイは何度も頷く。
それを見たヨウカはうん、と頷くとモンスターボールを一つ手に持ち、それをタツベイに向かって投げた。
タツベイは自らボールに当たりにいき、そのままボールの中に吸い込まれ、地面に落ちたボールはちょっとだけ揺れた後で止まった。
それが示すのは、ポケモンゲット成功。
「やったぁ、タツベイをゲットしちゃったよー!」
「おめでとう、ヨウカー!」
「おめでとうございます」
「ありがと2人とも!
ねぇニャーくん、新しい仲間だよ!」
「にゃ!」
ヨウカはタツベイの入ったモンスターボールをニャーくんと一緒に見つめ、うれしそうな笑みを浮かべる。
その様子を見たハウは彼女と同じように喜び、イリマは意味ありげな笑みを浮かべた後でつぶやく。
「・・・うん、きみになら、できるかもしれませんね」
「ほえ?」
イリマの言葉にヨウカは首を傾げる。
「ヨウカさんもハウくんも、確か今は11歳でしたよね?」
「そうですよ」
「そうだよー!」
2人の年齢を確認したイリマは、2人にあることを提案する。
「ならば、島巡りに挑戦してみてはいかがです?」
「おぉー!」
「島巡り・・・?」
島巡り、昨日イリマが授業で教えてくれたことだ。
今日再びその言葉を聞いたヨウカは、どこか胸の奥が熱くなる感覚をまた、感じたのだった。
「・・・なんかわかんないけど・・・ドキドキしてきた・・・!」
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ハッキリ言って、この小説でのスカル団の扱いは比較的雑です。