テオは恋人の住む路地裏の集合住宅までたった一人で迎えに来ました。
「国王陛下が護衛も付けずに、こんなところに来ても良いの?」
「プロポーズに来たんだ。私と結婚してくれ」
「花屋の娘がファーストレディになるなんて、聞いた事もないわよ?」
「お前と結婚できないなら、私は国王などやめて別の国に行く。私と一緒に逃げるか?」
「国王が逃げたら困るんじゃない?」
「だったらお前が王妃になってくれ」
「全くもう…。むちゃくちゃなプロポーズね?もう少しロマンチックにして欲しかったわ!」
テオの婚礼の儀は城内で盛大に行われました。ユリアーノとミネルヴァの挙式も同じ日に丘の上の教会で行われています。マルヴェールに避難していた神父は教会に戻って来ていました。
「新郎ユリアーノよ、健やかなる時も病める時も、新婦ミネルヴァを愛すると誓いますか?」
「はい!誓います」
「新婦ミネルヴァよ、健やかなる時も病める時も、新郎ユリアーノを愛すると誓いますか?」
「はい…。誓います…」
「では、誓いの口付けを…」
ステンドグラスは破壊されていましたが、丘の先端の岬と綺麗な景色が見えました。マルヴェールからアラヴェスタに戻った者も少しいましたが、ほとんどはマルヴェールに残ると言って残ったようです。ユリアーノはアラヴェスタの補佐官になったので、城の近くの豪邸に住む事にしました。
「何、サボってんだ?キビキビ働けや!」
「なぜ元国王の余が、こんな事をせねばならんのだ…」
元国王が重たい巨体を引きずるように農作業をさせられています。たるんだ腹が邪魔で上手く耕せません。
「ああ、腹が減った…。何か食わせてくれ?」
「働かざる者食うべからず!ちゃんと働かねぇと、あとで飯食わせてやんねぇぞ?」
元国王は強制労働で農家に雇われて、死ぬまでこき使われる事になりましたが、あまりにも役に立たないので農家の者も呆れています。
「うーん、ゲイザー様に頼まれたから仕方なく雇ってるけど、さっさとクビにしちまいてぇなぁ」
「けどさ、こいつを雇ったら税金を免除にしてもらえっから我慢して使うしかないべ?」
噴水広場にはメサイアの像が建設中でした。なぜが上半身が裸で、アークの翼とゲイザーの胸の焼印の見える銅像です。彫刻家がアークとゲイザーをモデルにして、描いた完成予想図を見ながら銅像を作っています。
「みんな!今日も来てくれてありがとう」
「きゃー!アーク様ー!!」
アークとゲイザーは噴水広場でまだ路上ライブを続けています。おひねりがやっと三十万貯まったので魔法屋に来ました。
「呪いの魔導書をください」
「アーク殿は呪いの魔導書が欲しくて、路上ライブをしていたのですか?」
「ええ、ナターシャ様がこれを欲しがっておられたので…」
「てっきり路上ライブが趣味なのかと思っていました」
「半分、趣味になってましたね。みんなの前で歌うのは気持ち良いですし」
ナタに呪いの魔導書を渡します。
「わーい!これで呪いで苦しんでる子がいたら助けてあげられるねー」
「ナターシャ様は本当にお優しいお方ですね」
おしまい
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昔、書いていたオリジナル小説の最終話です。