その晩、アラヴェスタ襲撃計画は実行に移されました。見張りがドラゴンを見て大声を張り上げます。
「敵襲!南南西からレッドドラゴンが現れました!!」
ドラゴンは火を吹き、宝物庫の屋根を吹き飛ばします。アークが屋根の上に開いた穴から中に入って、軽くて価値のありそうな宝石を何個か持ち去りました。
「ド、ドラゴンが攻めて来ただと?」
「騎士団全軍招集!ドラゴンの襲撃を食い止めろ!!」
玉座の間で国王は狼狽えていました。神父の周りに大勢いた見張りも、ほとんど出払ってしまいます。
「神父様!お救いに参りました」
「ああ、我らの神はまだ私を見放していなかったか…」
ゲイザーは神父の縄を解いて抱き上げました。
「おいたわしや…。早くマルヴェールで手当てをしなくては!」
「マルヴェールの者だったのか?本当に獣人の国はあったのか…。まさか獣人が私を救いに来るとは思わなかった…」
「シスターと孤児の子供たちは既に救出済みです。皆、マルヴェールで神父様の帰りを待っています」
「随分と手際が良いな…。獣人がこれほど知能の高い生き物だったとは思いもしなかった…」
ゲイザーが神父を連れて逃げようとしたのを騎士団の者が発見します。
「獣人がいたぞ!誰か来てくれ!!」
「まさか…あのドラゴンも獣人の仲間なのか?そんな話、俺は聞いてないぞ!」
ゲイザーに斬りかかろうとした騎士団の者を、フォンが間に入って遮りました。
「貴様の相手はこのわしがしてやろう?」
「ヒィーッ!化け物…」
ゲイザーよりも一回り身体の大きなフォンは、バキバキに割れた腹筋をわざと見せるような、前の開いた服を着ています。フォンと少しやり合うと恐れて逃げ出す騎士団の者を見て、フォンは怒り狂って雄叫びを上げました。
「久々の戦だと言うのに、逃げるとは何事か?もっとわしを楽しませろ!」
フォンには騎士団の者が五人がかりで襲いかかっても、あっさり薙ぎ払われてしまいます。城壁からドラゴンに攻撃を仕掛けていた弓兵も、ドラゴンに睨まれると逃げ出しました。国王はそれを見て激怒します。
「逃げるな!戦わぬ者は首をはねるぞ?」
「弓を撃て!国王陛下をお守りしろ」
「ああ、余の大事な宝物庫が…」
「報告します!ゲイザーの奴が神父を連れ去りました」
「何?これはゲイザーの仕業だったのか」
「現在、城門前で交戦中ですが、敵が強く押されています」
「おのれ、ゲイザーめ!許すまじ…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第95話です。