計画は大成功を納め、マルヴェールで神父は手厚く介抱を受けました。すぐに体調は回復します。
「ではこの宝石を質屋に入れて参ります。いくらで取引すればよろしいでしょう?」
「今回は宝石の数が多いからな。交渉が難航しそうだ。私も一緒に質屋に行きたいのだが…」
「その姿でアラヴェスタに行くと、すぐに騎士団へ通報されてしまいますね…」
「変装をしたいのだが、その前に人間に戻らないと…」
「ナタのお師匠様なら、おじさんを人間に戻せるかもー?」
「確かにユリアーノ様なら何とかしてくれそうだ」
「じゃあ、お師匠様の塔に行くー?」
「ああ、頼むよ?ナターシャ…」
ユリアーノの塔に到着しました。ナタがトラップをサーチして回避します。
「お師匠様ー!ただいまー」
「おお、ナターシャ。一ヶ月ぶりじゃのぉ。逢いたかったぞ?」
「お久しぶりです。ユリアーノ様…」
「記憶は戻られたのかな?ゲイザー殿…」
「記憶は戻りましたが、獣人から人間に戻れなくなりました…」
「ふむ、どうやら完全な獣人になっておるようじゃのぉ。以前より匂いがキツくなっておる」
「そんなに…匂いますか?」
「獣人は嗅覚が優れておるからのぉ。特にお主は独特の匂いがするぞ?悪臭ではないがな…」
「国王は悪臭が酷かったです。鼻がつんざきそうでした…」
「悪い事を考えとる輩は悪臭がプンプン漂っておるじゃろう?」
「はい、私の行き付けのバーのマスターは善人のようでした。非常に良い香りがします」
「この能力を使えば、悪人などすぐに見破れるから便利で良いじゃろう?」
「便利ですが、恋愛には不向きですね。アラヴェスタの女性は悪臭が酷くて、お付き合いする気になれませんでした」
「ふむ、しかし良い女がおれば、すぐわかるじゃろうて?」
「昔の恋人のサラはとても良い匂いがしておりましたので、マルヴェールに連れて行きましたら、フォン様がサラを大層気に入られて、妻にされたようです」
「ほほう、あの男…ついに身を固めおったか!婚礼の儀には呼んで欲しかったのぉ」
「ユリアーノ様はフォン様とお知り合いなのですか?」
「わしはフォンから直接、血の契約を受けたからのぉ」
「ユリアーノ様はフォン様の直系だったのですね」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第96話です。