アークは教会の上空を旋回しながら、騎士団の者がいないか見張っていました。フラウは森まで子供たちを送ると、獣人化して猛スピードで丘を駆け上がり、次の班を案内します。森から洞穴まではフォンが護衛して、洞穴の前でゲイザーが子供たちを任され、マルヴェールへ案内しました。マルヴェールの中に入るとサラが待機していて、子供たちの為に大鍋で炊き出しした料理を配っています。
「お代わりもたくさんありますよ?」
「サラお姉さん、僕もお代わりー!」
最後の班まで無事にマルヴェールに避難を終えました。
「何事もなく終わりましたね。拍子抜けしてしまいます…」
「敵の軍師に私の手を読める者がいなくてホッとしました」
「優秀な部下がいても、次々に首をはねていては、ロクな軍師は残らなかったのでしょう…」
「部下を大事にしない者には、いずれ己の身にもそのツケが返って来ると言うのに…。今回の件は国王の無能さが救いでした。私が軍師ならこの程度の事は先読み出来ます」
「オズワルド様がそうですね。私はオズワルド様が首を締め上げられている時、助ける事が出来たにも関わらず、わざと何もせず見ていましたから」
「あの時、呪いの魔法の詠唱は止まっていましたからね。それにしてもあの激痛は…思い出すだけで寒気がします…」
「オズワルド様を助けたいと思う気持ちが、あの時の私には僅か一片たりとも起こりませんでした…」
「部下との信頼関係が築けていない者は、いずれ部下に見放されます」
「ナターシャ様がピンチの時は例えこの命を懸けてでも、お救いする所存ですが…」
「ナタの為にアークが死んじゃやだー。ちゃんと生きててね?」
「ナターシャ様が死ぬまで、私は死にません。天使の方が人間より寿命は長いですから」
「アークは何歳なの?」
「二千歳ほどでしょうか…。天使には歳を数える癖がないもので」
「そんなにお年寄りだったの?」
「いえ、天使の二千歳は人間の二十歳くらいですよ?」
「すごーい!百倍長生きするんだね」
「ドラゴンはもっと長生きですよ?」
「あのドラゴンのお爺さんは何歳なんだろ?」
「あとで聞いてみてはいかがでしょう?」
「今、召喚して聞いてみるー!」
ナタはレッドドラゴンを召喚しました。子供たちがそれを見て驚いて声をあげます。
「ドラゴンだー!カッコいい…」
「わしに何の用だ?子供よ」
「えっとね、お爺さんは何歳なの?」
「ん?歳など忘れてしまった…」
「アークみたいに大体で良いよー?」
「わしは何億年も前から生きておる」
「えーっ!じゃあアークの十倍くらい?」
「この世界が誕生してすぐ、人間がまだ猿だった頃も生きておった…」
「人間は昔、お猿さんだったのー?」
「猿が人間に進化しおって、面白いからずっと見ておったが戦争ばかりしおるな。愚かな猿どもだ…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第93話です。