ナタとアークはトレントを探して森の奥深くまでやって来ました。フォンも召喚します。
「この辺りにトレントは出るようですね」
「トレントだと?わしはトレントの長とは、三十年ほど前から親しくしておるのだが…」
「フォン様はおいくつなのですか?」
「わしは生まれて五十年ほど経つかな?」
「もっとお若いのかと思っておりました」
「まだまだわしは若いもんには負けん!」
「と言うことはマルヴェール王国は、建国五十年にも満たない新しい国だったのですね」
「マルヴェールを作って三十年ほどになるか?トレントの長とは国を治める為にどうすべきかで色々とアドバイスをもらった」
「なるほど、トレントは知的な生命体なのですね」
すると目の前に樹の魔物が現れました。頭の中に直接、語りかけてきます。
「人間よ…、ここは我々のテリトリーだ。立ち去れ!」
「わしはフォンと言う名の獣人で、トレントの長の親友だ」
「ん?確かにお主の顔は見覚えがある…」
「お前たちのテリトリーを荒らす気はない。なぜ人間を襲っている?」
「人間どもが荒らしに来るのでな、こうやって脅して追い払っていたのだ」
「では、別に誰かを襲った…と言うわけではないのだな?」
「我々は人間の侵入を拒んだだけだ。手を出してくるのはいつも向こうからである」
「ふむ、人間側に非があるようだな」
「人間は愚かでくだらぬ生き物だ。自然を破壊し、暴利を貪っておる」
「わしも同じ意見だ。人間に味方する気なぞ全くないが、わしの嫁が人間なのでな。人間に害をなすなら容赦はせぬぞ?」
「人間の嫁を娶るとは…。気でも触れたか?」
「これがなかなか良い女でな。わしも焼きが回った。嫁が出来ると人生が楽しいものだよ?」
「ククク…、面白い奴。今すぐ立ち去るなら見逃してやろう」
「わかった。しかし人間を襲ったと聞いたら、わしもお前たちを倒さねばならん…」
「我々から手は出さぬ。人間が火を放ったり、自然を破壊しようとしたら、襲う事もあるだろうが…」
「人間に非がある場合は、わしも人間はかばわぬ。好きに暴れるがよかろう。無抵抗な人間を襲うでないぞ?」
フォンがトレントを説得したので、アークはトレントを討伐できず、役所へ帰りました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第83話です。