受付嬢はアークが来たので、嬉しそうにニコニコしながら応対します。
「トレントの討伐は破棄しますので、他のオススメ討伐はありませんか?」
「えーっ!トレントより簡単なのはないかな?トレントも倒せないようじゃ無理かも…」
「トレントは弱い魔物ではないです。あまり好戦的ではない種族のようでした」
「どう言う事ですか?倒せなくて戻って来たんじゃ…」
「人間が荒らしに来なければ危害は加えないと仰ってたので討伐は断念したのです」
「えっ!トレントって魔物の癖に喋れるの?」
若い受付嬢は仕事を忘れて、まるで友達と話すかのように、タメ口になっています。
「テレパシーを使って話しかけて来ました。彼らは知的な印象を受けます」
「そうですか、そう言えば前にもスライムの討伐失敗する人が続出してて変だなぁと思ってたんです」
「あれって第一級魔術師が絡んでたんでしょ?今、最高額の手配書になってるゲイザーって言うヤバイ奴が倒したらしいわよ」
「しっ!それは絶対に人に言うなって所長から釘刺されてたでしょ?」
「人の口には戸は立てられませんね。どうやらゲイザー様は有名人のようですが…」
「もう今はその話で持ちきりよ?第一級魔術師なんて普通の剣士には倒せないもん」
「獣人化も出来るんでしょ?怖いわぁ…」
「剣士が魔術師と戦って勝ったなんて話、聞いた時点でヤバイって所長も気付けば良いのに」
「あのダメ所長じゃ、そんな事もわからなかったんじゃない?ハゲてるし、うだつの上がらない男だし…」
「それではどうやって所長に昇進なさったんでしょうね?」
アークは素朴な疑問を投げかけました。受付嬢の話はいい加減でツッコミどころ満載でした。
「偉い人に媚び売るのだけは上手いの!」
「なるほど、合点が行きました」
「とりあえず誰にも話さないように、って言ってゲイザーに三十万も払ったらしいよー」
「バカじゃない?三十万も最弱モンスターのスライムの討伐に払うとかありえなーい!」
「スライムは強いよー?戦った事ない人にはわかんないと思う」
ナタもとうとう耐えきれずツッコミを入れてしまいました。
「何か他に良い仕事はありませんか?報酬は問いません。一番オススメをお願いします」
「ドラゴンの討伐とか報酬は高額ですけど…」
「ドラゴンですか…。手強そうですね?」
「報酬はゲイザーの次くらいに高いですよ?」
「ゲイザー様は無理なので、ドラゴンの討伐に行って参ります」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第84話です。