ナタはリンゴをたくさん買って帰りました。マルヴェールに帰って、ゲオルグの邸にリンゴを持って来ると、ロレインが玄関に出て来ます。
「おじさんにお釣りはナタの好きなもの買って良いって言われてたから、リンゴをいっぱい買って来たのー。アップルパイ作ってー?」
「あらあら、アップルパイ?ゲイザーが子供の頃に大好物だったのよー。久しぶりに作ろうかしら?」
台所に行くと瓶口をガーゼで蓋をしてある瓶の中で、オレンジやグリーンのカラフルなカタツムリが飼育されていました。
「このカタツムリ、可愛いー!」
「すごいでしょ?ニンジンを食べさせるとオレンジ、ほうれん草を食べさせるとグリーンになるのよ」
「面白ーい!なんで台所で飼ってるの?」
「あとでエスカルゴを作って食べようと思って育ててるのよー」
「こんな可愛いのに食べちゃうの?」
「本当はリンゴを食べさせたかったのだけど、マルヴェールではリンゴは高価なのね…」
「そうなの?ナタのリンゴ、余ったらカタツムリに食べさせても良いよー」
「リンゴを食べさせると甘いマイマイになるそうよ?でもリンゴは貴重だから、なかなか使えないみたいね…」
「またおじさんにお使いを頼まれたら、リンゴいっぱい買って来るねー」
「それじゃあ、リンゴの甘露煮を作るわ。シナモンとお砂糖で煮詰めるのよ」
ナタはリンゴの皮むきをお手伝いしました。十個買って来たリンゴは、甘露煮になって瓶詰めされました。
「甘露煮にすれば長持ちするわ。半分だけ使ってアップルパイを作るわね」
アップルパイを持ってゲイザーの邸に帰ると、ゲイザーの描いたフラウの絵が飾られていました。
「完成したのですね!」
アークはフラウの肖像画をマジマジと鑑賞します。
「あまり出来は良くないですが…。なんとか完成しました。フラウが絵を描く時間も勤務時間扱いにしてくださったので、仕事を休んで描き続けてましたよ」
「そんな事ありません。とても素敵です。美人に描いてくださって、ありがとうございます」
「本物の方が美人ですよ?私の画力ではフラウの美しさは表現しきれませんでした」
「おじさん、アップルパイ食べよーよ!」
「良い匂いですね。アラヴェスタで買って来たのですか?」
「ううん、リンゴを買って来て、おばちゃんに作ってもらったのー!」
「私の母の手作りアップルパイですか?十年ぶりに食します…」
アークが切り分けて、みんなでアップルパイを食べました。
「美味しー!売ってるやつより美味しいよ?」
「私も売っているアップルパイは甘過ぎて好まないのですが、母の作ったアップルパイだけは好物でした」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第79話です。