No.93831

涼州戦記 ”天翔る龍騎兵”2章8話

hiroyukiさん

第2章の最終話です。
今回翠がデレます!

2009-09-06 12:09:27 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:10762   閲覧ユーザー数:8209

第2章.反董卓連合編 8話 連合崩壊

 

馬騰達が掃討戦に移行しようとしていた時、馬超は城門崩落に巻き込まれ混乱している袁術軍先鋒に突撃していた。

 

「っしゃおらぁーーーーーーーーー」

 

馬超は銀閃(槍)を振り回して敵兵を薙ぎ払い袁術軍先鋒を蹂躙していく。

 

袁術軍にとっては自分達を鬼神の如き力で蹂躙していく恐怖の存在であるが味方から見れば圧倒的な力で敵を屠って行く頼もしき存在であり、本人は

 

(一刀…無事で居ろよ。……今行くからな。)

 

とある男の無事を願う一人の少女であった。

 

後ろに居た部下が何かを見つけたようで左方向を指差しながら馬超へと大声で告げる。

 

「馬超様!左手の方に一刀殿達発見。敵と交戦中のようです。」

 

部下の声に目を左の方に向けると城壁を背に3,40名の敵に半包囲され防戦一方になっている一刀達が見えた。

 

「伯(ホウ徳の真名)、後は任せる。50騎ほどあたしについてこい!助けにいくぞ。」

 

「「「応!」」」

 

馬超は左に反転すると50騎を従え、一刀達を半包囲している敵へ突っ込んでいく。

 

「一刀ーーーー!」

 

 

ギリギリ

 

「はっ!」

 

ヒュン、ドス

 

「ぎゃーー」

 

「左からもくるぞ。注意しろ!」

 

一刀は弓を射つつ周りを見回し部下を指揮していた。

 

「(くそー、動くの早かったか?いやもう翠達が来てるはず……んん?あれは)」

 

防戦一方の状態に一刀は後悔の念に囚われつつあったが轟いてくる馬蹄の音に視線を敵後方へと向けるとそこには馬超に率いられた約50騎の姿が見えた。

 

「皆!助けが来たぞ!!もう少しだ。」

 

一刀の檄に士気が上がる部下達。

 

それと反対に後方から接近する約50騎に気づき狼狽する敵兵達。

 

攻守は完全に入れ替わっていた。

 

迫り来る馬超達に狼狽した敵兵は、士気が上がり攻勢に出た部下達に蹴散らされ四散していく。

 

そこへやってきた馬超が馬から飛び降り一刀へと飛びついてきた。

 

「一刀――、一刀一刀一刀一刀!」

 

「うおっと」

 

飛び込んできた馬超をなんとか受け止める。

 

「このバカやろう!危ないまねしやがって、惚れた女に心配かけるんじゃない!うえぇぇんーー。」

 

「げっ、なんでそれを…菖蒲さん喋っちゃったの?まいったなぁ。」

 

泣きじゃくる馬超を胸に抱きながら困った顔で頬をポリポリと掻いていた一刀であるがふと視線を感じ周りを見ると部下達や馬超が引き連れてきた者達がニヤニヤとしながら2人を見ていた。

 

「いやー隊長、うらやましいですな。」

 

「ほんとほんと、俺も言われてみたいぜ。」

 

「はぁーー、馬超様のあんな姿初めて見た。」

 

「う~ん、馬岱殿が聞いたら大喜びしそうだな。」

 

ひやかしの声にあたふたする一刀。

 

「あーあははは、翠?そろそろ皆のところへ戻らないか?」

 

「うっうっ、うん………」

 

やっと泣き止んだ馬超は顔を上げ涙を拭うと後ろを振り返り、固まった。

 

ヒューヒュー

 

「一刀殿無事でよかったですな。」

 

「なっなななななーーー」

 

……………

 

 

その後、袁術軍の蹂躙を終えたホウ徳達と合流した馬超、一刀達は馬騰達の下へと馬を走らせていた。

 

尚、合流した際に馬超が顔を真っ赤にし一刀を除く他の者がニヤニヤしていたことにホウ徳は?を浮かべていたがなんでもないと言う馬超に無理やり納得させられ殿を務めていた。

 

馬を疾駆させながら馬超は後ろを向き、後続する一刀の部下や他の50騎を睨み付けた。

 

「いいな、ぜっっっったいに喋るなよ。特に蒲公英にはなにがあろうと絶対に喋るなよ。」

 

プッとかの失笑、苦笑が聞こえてきたが

 

「はいはい、わかりました。」

 

「喋ったら……コロス!」

 

と戦場とは思えないような明るい感じであった。

 

馬超の横で馬を疾駆させながら一刀はこれからのことを考えていた。

 

「(周りを見る限り馬騰さん達はうまく3分の1を殲滅できたらしいな。後は詠がうまくやればけっこうな数が離脱するだろう。さて、曹操はどうするかな?約半分に減ってしまった軍で虎牢関、洛陽…利なしと見て離脱してくれればいいが……)おっ、翠。菖蒲さん達居たぞ。」

 

考え込んでいた一刀がふと視線を上げるとそこに馬騰達全軍が集結していた。

 

それを見た馬超は再度後ろを振り向くと念を押すように言った。

 

「い・い・な。」

 

その後、合流を果たした一刀達はその場に立て札を立てると虎牢関へと帰還していった。

 

 

瓦礫の除去を終え汜水関を越えた袁紹達諸侯連合は目の前の惨状に唖然となった。

 

混成軍は鮑信を除く他の将は討ち取られ壊滅状態、分断された袁術軍も紀霊が討ち取られこちらも

壊滅状態と諸侯連合全軍の3分の1の戦力が霧散してしまっていた。

 

止むを得ず、ここで大休止を取ることにし負傷者の手当てや後送、戦死者の埋葬を行いつつ虎牢関に向けて斥候を送り上層部は軍議を行っていた。

 

だがその間に兵達の間にはいろいろな噂が飛び交っていた。

 

「混成軍は五胡の妖術により一瞬で皆殺しにされた。」

 

「この敗戦を知った静観していた他の諸侯が洛陽にぞくぞくと集結中で既に50万を越えている。」

 

「その内の10万が函谷関を抜けて諸侯連合の領地へと向かっている。」

 

冷静になればおかしいとわかるような噂まで飛び交っており、中にはこんなのもあった。

 

「袁紹は既に董卓に恭順を示しており、諸侯を集めたのは董卓に刃向かいそうな奴をあぶり出す為の罠だった。その証拠に汜水関で袁術は大損害を蒙ったが袁紹は無傷だ。」

 

噂が噂を呼び兵達は疑心暗鬼に陥り不安に駆られていた。

 

その上袁紹の噂を真に受けた混成軍生き残りや袁術軍兵士と袁紹軍兵士の間にイザコザが多発するに至っていた。

 

さすがに曹操や孫策の兵達は噂には微動だにしなかったが、混成軍壊滅の事実には驚愕していた。

 

そこに壊滅した混成軍陣に立てられていた立て札の内容が彼らの背を押した。

 

 

 

 この者達は陛下の勅令と天の忠告を聞かず汜水関を越えた。

 

 よって陛下の御名において懲罰を加えた。

 

 残りの逆賊どもよ。陛下の御威光と天の怒りを恐れぬのならば虎牢関に来るがよい。

 

 再び天罰を加えてやろう。

 

 だが陛下は汝らに最後の慈悲を与えると仰せになられた。

 

 恭順を示しここより汝らの領地に帰るのならば罪一等を減じてもよいと。

 

 忘れる無かれ。これが最後である。

 

 ここより1歩踏み出すならば大逆の罪人として一族郎党処罰されることを覚悟の上でくるがいい。

 

 

 

兵の脱走が相次ぎ、挙句の果てには残っていた小勢力の諸侯が全て離脱していった。

 

 

曹操の陣にて

 

「今、帰ったわ。」

 

「華琳様、お疲れ様です。」

 

天幕に入ってきた曹操が椅子に腰掛けると荀彧が傍に寄ってきた。

 

「桂花、茶番は終わり。陳留に帰るわよ。」

 

「連合は解散となりましたか。」

 

「もう解散してるも同然よ。麗羽はまだやるみたいだけどもう付き合ってられないわ。ここいらが潮時でしょう。」

 

曹操といっしょに入ってきた夏候姉妹も傍に寄ってきた。

 

「しかし華琳様。今回の遠征では何も得られていません。」

 

夏侯惇の言に曹操は不敵な笑みを浮かべた。

 

「いいえ、春蘭。得られたものは大きいわ。風評は得られなかったけど、馬騰、董卓、劉備という強敵を得られた、これだけでもこの茶番に参加した甲斐があるわ。」

 

己の覇道に立ち塞がる強敵が現れたというのに歓喜の笑顔でそれを語る剛毅さに部下達は主への忠誠を新たに誓うのだった。

 

 

 

孫策の陣にて

 

「冥琳、帰ったわよ~」

 

「お疲れ様、どうなったの?」

 

天幕に孫策が入ってきたのに気づいた周瑜は見ていた竹簡を置いて孫策の方を向いた。

 

「連合は解散することになったわ。袁紹がごねてたけど。」

 

「やはりそうなったか。しかしそうなると忙しくなるぞ。」

 

2人は顔を合わせるとにやりと笑った。

 

「ようやく孫呉独立に向けて動き出せるわ。師匠の手を借りたのは癪だけど。」

 

「ふふ、独立すれば菖蒲様に借りも返せるさ。」

 

「まあいいわ。それよりすぐ蓮華達に伝令を送って。帰ったらすぐ動くわよ。」

 

「ああ、用意はしてある。誰かある!」

 

周瑜の呼びかけに兵士が1人入ってくる。

 

「はっ、ここに」

 

「この書簡を用意してあった伝令に持たせて出発させろ。」

 

「はっ」

 

兵士は周瑜より書簡を受け取ると急ぎ足で天幕を出て行った。

 

「さあ、いよいよ私達の戦いが始まるわ。」

 

「いよいよね。……ここからはあなたの演技も必要になるわ。頼むわよ!」

 

今、孫呉の若獅子達が動き出そうとしていた。

 

 

虎牢関まで後退し様子を見ていた一刀達だが連合軍を監視させてた斥候が戻り解散しそれぞれの領地へと帰り始めた旨を聞くと汜水関に監視の兵を、そして虎牢関に一部守備兵を置くと洛陽へと全軍帰還することにした。

 

「菖蒲さん、全軍そろいました。」

 

「うん。一刀君、勝ったわね。」

 

「はい!俺達は20万に勝ったんです。」

 

馬騰は馬を少し進ませて振り返る。

 

「皆のもの、我らは勝った。4万で20万に勝ったのだ!」

 

「「「「おおおおぉぉぉ」」」」

 

「さあ、凱旋だ!!」

 

「「「「応!」」」」

 

馬騰は前を向くと馬を進ませた。

 

諸侯連合との戦いは終わった。………

 

 

 

 

 

 

 

 

某所にて

 

「おねえちゃん……お仕事終わったかな……早く帰ってこないかな……」

 

 

 

 

<あとがき>

 

どうも、hiroyukiです。

 

第2章が終わりました。

 

1章と比べるとえらく長くなってしまいました。

 

こうなると3章は対曹操、対孫策のつもりでしたのでより長くなりそうで未熟な私はorzとなってしまいそうです。

 

さて、3章ですが上に書きましたが対曹操、対孫策の章になります。

 

その曹操と孫策についてですが、1つの設定として正史や演義と異なる歴史を歩んでるこの外史では2人とも親に関わる話しで朝廷を恨んでいます。

 

それと劉備、曹操、孫策この3人の親と馬騰は3章の始めで出てきますが皇帝直属常備軍構想の関係者という設定にもなっています。

 

2章では補足説明という感じで作中で設定を書いていましたが、なんか取って付けたようでいやだったので今回はここで言うことにします。

 

3章4章最終章と続くこの物語ですがこれからも宜しくお願いします。

 

 


 
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