No.937949

占星術師ネタでなにか

紫月紫織さん

2016-08-08 にぷらいべったーに上げたもの転載となります。
占星術師のお話が出てきたので適当に捏造してなんか書いたらこうなった。
オルシュファンの守護神が戦神ハルオーネはありそう。
ヒカセンはメネフィナ信仰のムーンキーパーという設定です、多種族他信仰の人はごめんよ!
いいって人だけどうぞ!

2018-01-18 02:02:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:914   閲覧ユーザー数:914

 くるり、くるりと天球儀を弄ぶ。

 私の手のひらの上でくるくると回り続けているそれは、ある程度以上にエーテル能力を身に着けていなければ扱うことも出来ない代物、シャーレアン様式の占星魔法を扱うためのものだ。

 エーテルのバランスを乱してしまえばすぐに墜ちてしまうそれは、私の手のひらの上で意のままにくるくると、青い光を舞い散らばせながら踊っている。

 

「まるで踊っているようだな」

 

 不意に後ろから声をかけられ、危うく天球儀を取り落としそうになった。

 取り繕うために軌道を大きく変え、彼の後ろをふわりと巡らせ手元へと戻す。

 青銀色の髪に空色の瞳をした、私の愛しの人──オルシュファンはそれを目で追いながら私の側へとやってきた。

 

「踊りというほどだったかしら?」

「ふふ、確かに冒険者達が躍るような躍動的なものでもなく、イシュガルドの貴族たちが好むようなものでもなかったが、お前らしいと、そう感じたのだ」

「……そう」

 

 なんとなく恥ずかしくなり、帽子を少し深めにかぶり直す。

 未だに、この人と恋仲であるというのを実感できない私の気を知らずか、それとも知っているからこそか、彼は私の手を取ると手の甲へと自然な動きで口付けた。

 

「随分と冷えているようだな、夜まではまだ時間があるし、とりあえず私の私室でよいか?」

「……う、うん」

 

 私の手をとったまま歩き出すオルシュファンに合わせてキャンプ・ドラゴンヘッドを歩く。

 ミコッテ族の女性としてはやや大きめの私と、エレゼン族の男性であるオルシュファン、その体格差の割に足早になることもなく私は彼の私室までをエスコートされた。

 

 彼の私室を出たのは、すっかりと夜の帳が下りてからだった。

 今日、私が仕事も入れずに彼を尋ねたのはこの夜のためである。

 

「今夜は殊更に冷えるな……大丈夫か?」

「天気予報士の予測通りだから大丈夫よ、備えはしてあるわ」

「ならよいが、お前は小柄なのだから冷える時も早い。寒くなったらすぐに言うのだぞ?」

「……私これでもミコッテ族の女の中では大きい方なんだけどなぁ」

「そういえばそうだったか、私からしてみれば小柄であることに代わりは無いが」

 

 そんなことを言う彼を連れて、北門から町の外へとしばらく足を進めてみれば、冷えきった夜空を彩る満天の星空を望む事ができた。

 彼が好きだという場所からは、夜のイシュガルドがよく見える。

 彼の話では朝焼けの時が一番綺麗だというが、それはまた次の機会になるだろう。

 今日は夜の時間だ。

 

「そろそろ見えてくる頃ね……」

「どの辺りなのだ?」

「えーっと……あ、あそこ。王都の右側の山からまっすぐ上に」

 

 私の指差す方を追いかけるオルシュファンの顔が、目を凝らすものから何かに気づいたものに変わるまでに少々。

 どうやら、彼にもすぐにわかったらしい。

 

「あれが氷天座月神メネフィナと、戦神ハルオーネの星座よ」

 

 

 

 話は少し前に遡る。

 キャンプ・ドラゴンヘッドの司令室でオルシュファンの休憩中にしていた話。

 嫌いではないものの、星について特に詳しいわけでもないオルシュファンに、習い始めたばかりの占星術の知識を、復習がてらに話して聞かせたのが、事の発端だった。

「なるほど、神々が司る六つの星座か……星を見上げることは少なくは無いが、それは気が付かなかったな」

 自前の天球儀も使っての、私の復習半分のたどたどしい説明を、彼は楽しそうに聞いてくれる。

 それが楽しくて、ついつい話にも熱がこもった。

 レヴェヴァから習ったことや、一緒にいて起きた出来事などもあれこれ話していると、あっという間に時間が経ってしまう。

「時に、氷天座と言うのはクルザスから見えるのか?」

「え? うん、私が見た時はスチールウィジルからだったよ」

「そうか……メネフィナと、ハルオーネなのだな?」

「うん。月神メネフィナが月光で凍らせた氷塊を、戦神ハルオーネが槍で削って荘厳な宮殿を築いたって話だったかな」

「……よければ、一緒に見に行かないか?」

 

 

 

 そんなやり取りがあって、今に至っている。

 氷天座が空に登って行くのを、静かに二人で見つめていた。

 やがて頂点、最も氷天座の輝く瞬間がやってきて、その頃合いを見計らってか、彼は口を開いた。

「私の守護神は、ハルオーネなのだ。もっとも、これはイシュガルドではよくあることなのだがな」

「そうだったんだ……」

「お前は確か……メネフィナだっただろう?」

「……そういえばそうだったわね」

 自分のことなどすっかり放ったらかしにしていたせいで、自分にも守護神が居るのだということをすっかり忘れていた。

 といっても、こちらもムーンキーパー族には珍しくない信仰だが……。

「つまり、あの星座は私達の星座ということだな」

 ……なるほど、確かに互いの守護神が揃っているのなら、そういう見方もできるかもしれない。

 もしかして、彼はこれを思ったからこそ、一緒に見に行きたいと言ったのだろうか?

「あの星座のように、末永く仲睦まじく有りたいものだな」

「……そうね」

 そう言って、オルシュファンに身を預けると、彼は優しく抱き支えてくれた。

 あの空に輝く氷天座のように、私と、オルシュファンとで何かを成せればいいなと、思う。

「やはりお前との出会いは運命だったのだ」

 嬉しそうにするオルシュファンの様子を見ながら、私もそうであってくれればと願っていた。

 

 ところで、一説による所では、月神メネフィナは山神オシュオンの恋人とされているそうなのだけれど、私としてもそれは不愉快だったので、そっと胸の奥にしまい込んだのだった。

 そんな話、今のオルシュファンに話したくもなければ、私だって聞きたくないから……。


 
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