手袋にマフラー。上着に上着。着こむ季節がやってきた。こんなに着込むのはこの季節ぐらいだろう。何せ四天王の中で最も日照時間が短い。
少し前まで何でもなかったそよ風が刃物を持ったかのように頬を通り抜ける。その刃は人の肌を裂いたりはしないが、木々の赤く黄色い葉は無残にも切り落とす。残るのは茶色く焦げた芯のみ。その姿がこの風の切れ味を表しているようだ。
地面には赤から茶へと変色した木々の残滓の海が広がっている。乾いたそれを一踏み二踏みすると、しゃくしゃくと泣く。もう一踏み、と誘う心地よい音色に意味もなく両足を上げ下げした。
ふと、空を見上げる。赤と紺の釁隙が見られる。攻防は紺優勢だった。
眠るのに飽きた街灯は重役出勤を決め、頭上の星々を隠した。
「あーあ。見えない。」
ひと気がないせいか思わずこぼれた私の思いの欠片が白い息となって空へと吸い込まれた。
「今日は何鍋にしようか。」
少し温まった体をスーパーへと向けた。
あ、シチューにしよう。決めた。
「おいしいなあ」
フライングご馳走様。温かい炬燵が待っている。
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寒いですね。
凍えそうです。