息が上がる。
吸って、吐き、と無意識的に起こる呼吸の加速を意識的であると錯覚が起きてしまう。徐々に命の重りが軽くなっているようにも感じる。
それは、まるで風船のようになった頭を首から下の体が重りのようになり、宙へと飛び立つのを押さえいるかのように。
迸るイメージに押しつぶされそうなりながら手を置くひざに懐かしさと後ろめたさを感じながら目を閉じた。
その傷は大したものじゃなかった。
すねにあるそれは決して、少なくとも人生を生きていく上で大きな障害にはならない、そんなこと小学生の頃の自分でさえわかっていた。
でも、起き上がることができなかった。
泣くこともできず、無様に石灰が混ざった薄茶色の砂をなめていた。
「おい、大丈夫か?」
聞きたくなかった、そんな言葉、かけてほしくなかった。
「あ、すねにけがしてるじゃん」
そんなの、痛くもかゆくもない。
「保健室に行こう。な、立てるか?」
その光を握っていれば、今の気持ちは変わっていたのだろうか。
その光を握ることもなく、立ち上がってしまった自分を責めるべきなのか。
自分の持つ、決して渡したくないものを渡してしまいそうで怖かった。
「おい、大丈夫か?」
項垂れる頭を上げ、変わらない声の主人へと向ける。
「おう、大丈夫」
「そっか」
「それより、タイム伸びてたな。やったな」
走馬灯のように流れた過去の自分、その影はいつもある。思い出したくなくても思い出してしまう。すねのけがはとっくの昔に完治している。でも、同時にけがをした“向こうすねのけが”は徐々に悪化している。
「やっぱり、お前には勝てねえよ。すげえな。」
こんな、心にもない言葉を吐くほどには。
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続きです。更新はおそらくしばらくはないと思います。
すみません。
主人公は二人の少年たちです。