No.92540

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ 第11幕

覇炎さん

皆さん、お久しいです。特に語る事は無いですが…今回、またも新たな武器・型が現れます。

 ですが、皆様に突っ込まれる前に云っておきます。あのセリフと共に。


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2009-08-31 00:55:19 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5632   閲覧ユーザー数:4380

 

 

―――将来の夢?中学校でそんな作文を書くように言われた事があった。

 

―――人を傷つけ、傷つけられた俺に夢などあるか?

 

―――いや、無い。反語。

 

―――昔の“ボク”には道場を継ぐという、夢があったが現実はそんなに甘くないという事を知った。

 

―――だから、書く事なんか出来なかった。それを言えば、教員が『そんな事があるか、さっさと書きなさい』と思いやりの無い言葉を吐き捨て、放課後の教室に一人残し何処かへ消えた。

 

―――どう言われようと、俺には書く事など無い。それでも書かせようというなら実力行使も厭わない。一人で窓ガラス越しに外を眺めていると、扉が開く音が聞こえた。

 

 

―――淡い栗色にボサボサの髪の毛。背は俺と同じくらいでフレームが厚い眼鏡に端整とは言えなくとも、不細工ともいえない顔立ち。

 

―――及川 佑。( Tasuku Oikawa )。九州生まれで、大阪には観光で一度しか行って無いのにも関わらず、好んで関西弁を話す。やたらにテンションが高くて、図々しい性格のくせに成績は優秀ときている。席が俺の前の為に色々と、ちょっかいを出して来る度に無視している。

 

『んっ?あれ、かずピーやないか。どしたん?あぁ、さては……ワイみたいに学校に中学生が知ってはいけないような、あーんな事やこーんな事が載っているH本を持ってきて、先生に扱かれとったんかい!?』

 

『………………………………』

 

 

―――朝の持ち物検査以降、姿が見えんと思ったら今まで説教を喰らっていたのか。余りの沈黙の長さに『無視は関西人にとって、殺しも同じなんやぞッ!?』などと、真っ赤な顔でワザとらしく地団駄を踏みながら俺の机の前までやって来て、机の上にあった作文用紙に気づいた。それで全てを悟ったかような顔で頷き始める。

 

 

『作文用紙、そして放課後の教室でただ一人、黄昏ている思春期の少年。そこから導きだされる答えとは……』

 

 

―――まぁ、それだけの情報があればな。

 

 

『貴様、美少女を落とす気か!?ワイが『北郷は聖フランチェスカ学園の”トラウマ”』…じゃない!『プリンス』という、噂を知らんと思ってんやないやろな!?この聖フランチェスカ学園一の情報通であるワイこと『非公式新聞部の総帥』を舐めたら…』

 

『煩い。いい加減に口を閉じろ』

 

 

―――そのマシンガントークを、いい加減にして貰いたいものだ。つか、誰だ?“トラウマ”だの“プリンス”だのながす輩は!人を目立たせる噂を立てるな。

 

―――俺の暴言が効いたのか、及川は落ち込むように顔を俯け自分の席に座る。最初に言っておくが、俺は謝る気は毛頭ない。俺は、もう他人と必要以上の付き合いなんかしたくはないんだ、最後にどうせ…裏切れる。

 

 

『まぁ、落ち込みはこの位にしてやな』

 

 

―――さっきまでの落ち込みようは消え、俺にニコやかな笑みを俺に向ける。どうしてこいつは?

 

 

『それ、あれやろ?国語の“将来の夢”っていう、作文。しかし、まだ先生とバトル繰り広げてんかい?』

 

『お前に何の関係がある?』

 

 

―――確かにもう、2週間ぐらい教員の命令に否と答え続けている為に授業が遅れているのは知っているが…。

 

 

『?関係があるかと、聞かれれば……無いやろな』

 

 

―――なら、何故?その言葉を遮るように及川が言葉を紡ぐ。

 

 

『けど、興味があるやん!そこまで、拒否した挙句に書かれるかずピーの“未来”ってやつがどんなんかって』

 

『……それだけ?それだけの為に俺に絡んでくるのか?』

 

 

―――コイツ、深く考えていないのか?

 

 

『そうや。かずピーは、何でも深く考えて疑りすぎや!ええか、人は欲望の塊なんや。自分の欲望に忠実な奴が、この世界に君臨できんね』

 

 

―――それは、厭ってほど知ってるよ。見掛けで判断してこいつは駄目だって烙印を押され、次々と辞めていった門下生がそれだ。自分に利益が無ければ、金・時間の無駄。人の…俺の本質、俺は見てくれない。だから、俺も人を見ない。誰も信じない…そうすれば俺は傷つかない。今まで生きてきてそれを培った。

 

 

『せやから…“一刀”』

 

 

―――しかし、及川は俺の考えの斜め上をいっていた。優しい眼で俺を見つめて。

 

 

『我慢せんでいいやで?』

 

 

―――えっ?

 

 

『かずピー、自分では気づいてないかも知れへんけど…傍から見てとると、かなり無理しとるように見えんで?』

 

 

―――何処をどうしたらそう見えるんだ?人を嫌って、授業妨害紛いな事して!これのどこがっ!?

 

―――顔に出ていたのか、及川が読み取ったように続ける。

 

 

『確かにかずピーは正直に、生きとるように振舞ってるつもりかも知れへんけど…。それはかずピーの“本当にしたい事”なんか?俺にはそうは見えへんで。“本当はしたい”、でもそれをすれば自分が傷つく。せやから、しない。かずピーよ、甘ってれんなや!』

 

 

―――俺は…甘えていたのか?

 

 

『皆が皆、傷つくのが恐いんや!それでも傷つくんはな、欲しい物を手に入れたいからやッ!!ワイは、かずピーがどんな過去を歩んだかわ知らへんけど、言わせてもらう』

 

 

―――及川が机から立ち上がり、“俺”の机に“足を上げる”。そして俺の鼻を人差し指で押し上げる。……何の為に、そしてシリアスがブチ壊れているのに気づかずに。

 

 

『過去の過ちを怖れていちゃ、欲し物なんか手に入らん。自分に正直になりや』

 

 

―――漢の笑みで、俺を諭す。……正直に…か。簡単に言うな、それがどれだけ大変か、今までそれを貫くのにどれだけ心を殺してきたのか知らないくせに…ほんと…。

 

 

『簡単に言ってくれんな』

 

『おぉっ!!?かずピーが…かずピーが…笑いおった!かずピーが…喋りおった!!』

 

『おい、俺はさっきから喋っていたろ?』

 

『ノリや!気にすんなや』

 

 

―――何年振りだ?自分でも笑ってんのが解る。及川のように正直に生きんのは無理かも知れんが…まぁ、ボチボチやってくか。では、

 

 

『さっそく、正直に生きるとするか…』

 

『おぉ!……なぁ、かずピー?』

 

『なんだ、及川?』

 

『佑でええけど…なんでワイの足、掴んどるん?』

 

『それはなぁ、佑よ。行儀の悪い奴を、窓から投げ捨てる為だ∑d』

 

『冗談!?って、中一のくせになんつう握力と筋力しとんねっ!?』

 

 

―――俺は、机の上にあった佑の足を掴み上げて逆さ吊り状態にする。あと、俺は身体測定の際には手抜きをして、平均の上位に入っているがゲームセンターの身体測定マシーンで測ったら……握力が100の筋力が測定不可であった(“現在”中一)。

 

―――取り敢えず、窓から投げ捨てんのは冗談だ。投げ捨ててもいいけど、殺人犯にはなりたくない。……証拠隠滅すりゃいいかな?

 

 

『かずピー…。不穏な空気が流れとるんやけど?……本当に冗談よな!?』

 

『あぁ、多分な。取り敢えず……佑、受け身とれよ?』

 

『多分っ!?受け身ってなんや!?』

 

 

―――そのまま、足を離して佑を解放。取り敢えず、佑も変な声が出ていたが首が折れていないから大丈夫だ。……余談だが、柔道の科目が中二くらいから習う事を忘れていたのは内緒だぜ?

 

 

――――――将来の夢、北郷 一刀。

 

〈私の将来の夢は世界を“征服”し、この世の御宝及び美女を全て私の支配下に置く事です。以上〉

 

 

――――――将来の夢、及川 佑。

 

〈ワイの将来の夢は、北郷と共に女だらけの世界を創造する事です。北郷が居れば叶わなくないと思います。少なくとも10年以内には出来ると踏んでおり、詳細は……(以下、省略)です。以上〉

 

 

 

―――言わずとも教員“達”の反感を買い、国語教員がキレて剣道で勝負し勝ったらこの課題を受け取ってやると言ってきた。因みに有段者らしいが…ハッキリ言って憐れだ。

 

 

『先生…。俺、これでも自分の道場の免許皆伝どころか、師範代なんですが?』

 

『おまえ、バカにすんのも大概にしろ!剣道の段級位制では、初段でも年齢制限は“中学校2年生以上”。範士ともなれば八段(これを得るにも46歳以上で更に初段から2段に上がるのに1年以上の修行、3段は2年以上の修行。4段は3年と初段から7段まで上がるのに計21年。7段から8段に上がるのに10年以上の修行)受有後8年以上経過し、加盟団体の選考を経て…』

 

『先生。特例と例外…どちらが御好みですか?』

 

 

―――その後、身を持って教えてあげるよ。“異例”というものを。しかし、負けたあとの言葉が……。

 

 

『くそ~。北郷!』

 

『なんです、まだやりますか?次に44回目で』

 

『その楽園、私も住まわして下さい』

 

『見事な土下座ですね…威厳が無いですよ?』

 

『威厳よりも女がほしいッ!』

 

『先生!ズリ~~ッ!!北郷!いえ、北郷様!この私も。この根津も…』

 

『俺も!』

 

 

―――それからしばらく、そのネタが引きずられ男性が俺と佑が通過する度に頭を下げ、女性からはパッシングを受けると思っていたが、何故か頬を紅く染め、潤んだ瞳で此方を見ていた。何でだろう?

 

∸――それから他校では、『聖フランチェスカ学園・中等部は仮の名で本当の名は“北郷帝国”で帝王・北郷と司令官・及川が全ての女性を侍らしている』だの、俺と佑が『聖フランチェスカ学園の二天と言えば、“情報屋の悪魔”と“武力行使と策士の魔物”』という噂が流れていた。リークした者どもは始末(拷問)したが。それがトラウマの北郷の始まりだったような。

 

 

――――まぁ、脱線したがこれが今の俺がある理由だ。………ありがとよ、佑。

 

―――礼なんか、いらんわ。かずピー。

 

 

 

 

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

第11幕「大事なモノを護る事(前篇)」

 

 

――――街の外―――

 

 

 現在、一刀は華琳の指令を受けてあの場所より北に位置する街に着き、秋蘭達の援護をする為に中に入ろうとしたがその前には数千という数の黄巾党が立塞がっていた。

 

 しかし、それを倒さずして何の為に此処に来たというのだろう?現在、曹操軍・北郷隊は黄巾党と戦闘を行っていた。

 

 そして、その隊長…基、血畏怖、北郷 一刀はというと……最前線で兵の指揮を執りつつ、兵たちの道を作っていた。

 

 しかし、その顔は難しい事を考えているようで補佐をしている兵が不安そうに隊長の具合を尋ねるが、『別に何ともねぇよ、ただな…』と言いつつ愛刀である宝刀『朔夜』を『望月』から引き抜き、声をあら上げる。

 

 

「毎度言っている気がしないでもないが、敵が多いんだよっ!?俺、人混みが嫌いなんだ……」

 

 

∸――天衣無縫流、火の型。

 

 

 敵が陣形も何も無く押し寄せて来る。正直、こんなバカな敵にグレネードランチャーをぶっ放したい、と危ない事を考える一刀。しかし、この時代にも『亜門』にもそのような物は入って無いので、その代わりとなる天衣無法流、“2番目”に強い破壊力を兼ね備えている型…“火の型”を使おうとする。

 

 『朔夜』の切っ先を敵に、刃を空に向け眼の高さまで持ち上げる。そして、眼を瞑り正史でも行った精神集中を行う。

 

 

「(―――全神経を刀と一つに…。この刀、止めれぬ者無し。この突き、貫けぬ物無し)」

 

 

 “今までと同じく”行っていた精神集中をし、身体に力を入れる。腰を低く、足は肩幅に。前に出した足に全体重を掛け、走り出す状態になる。

 

 同時に周りから驚きの声が上がるが、それすら気づかないほどに集中していた為に聞こえない。

 

 

「―――我、前に人は無し。我、道を創る者!」

 

 

 集中が終わり、体重を掛けた足を踏み込み、前へ突撃しようとして眼を開けて気づく。

 

 

「烈火爆走!―――突[トツ]……ありゃ?」

 

 

 『朔夜』の刀身が紅の天我連邪―剱形態―のように紅くなり所々、太陽のプロミネンスのように“火”が噴き出していた。

 

 気づけば、身体に『稲妻の氣』が纏わり付いていた。そして、これから使う技…『烈火爆走―突―』は文字道理、突撃技。本来は間近で敵の身体を突き、その部分の生命活動を一時的に低下させるという、余り人に対しては使ってはいけない技である。

 

 更に一刀が使うと遠く離れていても、一瞬で接近して木刀で行なっても、大木に綺麗な穴が明くほどの威力で木刀自身も傷まない。それほどに鋭い一撃だが、“火の型”共通のデメリットとして攻撃動作・攻撃に持っていくまでが遅く当たり難い。

 

 さて、通常でこれだけの威力。では、『朔夜』の刀身が紅くなっているのは一刀も解らないが、『稲妻の氣』で身体を強化している以上どうなるかは素人でも解る。その証拠に一刀の副官である兵〈女性〉も油汗をかいている。

 

 取り敢えず、一刀はニヒルに笑い『司馬懿[しばい]、後は頼むぜ』というと、女性…司馬懿も『おきを付けて』と敬礼して言い返した。

 

 瞬間、強風が吹き治まった時には一刀の姿は消えており、遠くの方で爆撃音が響いた。

 

 

 

 

∸―――ダッダッダッダッ!!

 

 

 

 この時、一刀は氣を用いた高速移動方法『縮地』で黄巾党の群れの中に突撃をしていた。

 

 

 

∸――ダッダッダッ!!!

 

 

 

 黄巾党の群れも、前方より尋常ではない砂塵を舞わせながら接近する一刀に恐れを抱く。

 

 その一刀はと言うと、もうヤケクソ気味に発狂しながら走っていた。どの位の速さかと言えば、世界を『縮める最速兄貴』並であった。

 

 

「ウオォォオオォ!!!何故、俺が走っているか!!?それは速さを求めているからだ!!!この世の理とは即ち速さだと思わないか、物事を早く成し遂げればその分時間が有効に使える、遅い事なら誰でも出来る! 20年かければ馬鹿でも傑作小説が書ける! 有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家! 週刊よりも日刊ってわけだ! つまり速さこそ有能なのだ! 文化の基本法則ぅ!そして、俺の持論――!!そうだよなっ!!?サキさん!!」

 

〈朔です、自分で付けた名前を間違うなんて何処の最速兄貴なんですかッ!?それよりもスピードを落として下さい!!身体がコゲ、溶けるぅっ!!!〉

 

「あっはっはっ!まだだ!もっと速く~~ウウゥゥゥゥッ(←ドップラー効果)」

 

 

 

 この時、周りにいた兵・黄巾党の気持ちは一つになっていた。

 

 

『今のこの方(こいつ)は危険だ…』

 

 

 

 そうこうしている間に、一刀は前方にいた敵を見つけた。そして、利き脚に力[氣]を込めて踏みこみ、そのまま更に加速し突撃する。

 

 

「―――突。疾[し]っ!」

 

 

 まずは最前列にいた敵を串刺し、その勢いは殺される事無くその後ろにいる敵を突き刺す。同時に肉が焦げる臭いと『朔夜』が刺さっている所から、黒い煙が立っている事に気づく。一刀は先ほどの刀身から、“火”が噴き出していた事から刀身がかなりの高温を持っていると分析する。

 

 敵を一人、二人、刺した所で刀身が埋め尽くされて後は体当たりでドミノ倒しのように敵を乃木倒していった。そして、ある程度の勢いが落ちたところで急停止して『朔夜』を引き抜く。敵はそのまま、数メートル先まで吹き飛んで行った。一刀が『朔夜』を見ると血塗れになっていた為、一度勢いよく薙いで見るが熱で乾燥しているので媚びり付いており、口をへの字になってしまった。

 

 

「…落ちないな。朔、戦が終わったら手入れしてやるから。しばらくは、我慢してくれ」

 

〈グスンッ…。約束ですよ?洗ってくれなかったら……マイスターが寝ている時に念話を使って、ずっと泣きますからね?〉

 

「…………」

 

 

 心で絶対やるな、と思いながら再び『朔夜』を構えて向かってくる敵を迎え撃つ。

 

 

「ふー、今回は殺人許可が出ている。俺はお前らを殺す。だが……その死は俺がしっかりと背負ってやる。それがこの俺が唯一、お前らに出来る事だ」

 

 

 一刀は小さく呟くと、敵を睨みつける。そして、向かってくる敵が剣を振り下げて来るが余りにも遅く見え、当たらないようギリギリで避けて『朔夜』で一閃。

 

 黄巾党は仲間が、真っ二つに斬られて恐れを抱いたのか静まる。そして、一刀は一端『朔夜』を『望月』に納める。そして、人差し指を黄巾党に向けて睨みを利かせ言い放つ。

 

 

「お前らが、引くならこれ以上手荒な真似はしねぇ。とっとと、汚い尻を向けて失せな!!」

 

 

 この言葉にイラつかない物が居ようか?いや、居ない!反語。

 

 一刀もこうは言っても、実際に黄巾党を逃がす気などサラサラない為にこう言って逃げられないようにした。

 

 

「…ふ、ふざけんなっ!?小僧如きに見逃してもらうなどっ!!?」

 

「その通りだ!」

 

「ここまで言われて、引き下がれっか!?」

 

 

そうとも知らずに、黄巾党は怒り狂い一刀に向かい始める。同時に一刀は思いついたような顔をして朔に念話を送る。

 

 

 

 

「(なぁ、朔。『亜門』って俺の部屋とかに有った物が入っているんだよな?)」

 

〈(?はい、土蔵や倉。マイスターに関係する物は大体は……。まさか。あれを…?)〉

 

 

朔もこの状況で、一刀が何を使おうとしているのか解ったのか何やら焦っているように声を引き攣っている。

 

その一刀は『朔夜』を腰の後ろに回す。そして、『亜門』に手を入れて何か“長い柄”を引き出す。そして一端、深呼吸し一気に“それ”を引き出す!

 

 

「火の型兼、対爺さん専用武器!!」

 

 

 敵が群れを成し、一刀を取り囲む。しかし、一刀は気にする事無くそれどころか、引き出していた“それ”を身体を捻りながら引き出した。

 

 

∸――ズシャァァァ!ドスンッ!!

 

 

 何かが取り囲んだ敵の全てを一閃した。最初は何が起きたかが解らなかった黄巾党だったか一刀の手に握られていた物を見て納得した。

 

 

 

∸―――小僧(一刀)の手に自分の背と同じ、いやそれ以上に長い。鉞[まさかり]の様な大刀を握り、

 

 

 

∸――ズズッ。

 

 

 周りにいた黄巾党達の視界が揺らぐ。

 

 

 

∸―――それで自分たちが斬られた事を。

 

 

 

∸――ズッズッ、ドシャ。

 

 

 黄巾党達は上半身と下半身に切断され、上半身が下半身から滑り落ちて、ショック死して絶命した。

 

 

 

 

 

 一刀の手に握られているのは、狼の形が掘られた長い真鍮の棍に、鎌を連想させるような幅が大きくかなり厚みのある赤みがかった曲刀が付いていた。しかし、必要ない所は肉抜きされており刀身中間辺りは、棍が見えており掴めるようにグリップテープが巻かれていた。棍の上部には突刺す事が出来るように、槍の刃の様な物が付いており下部には赤い紐のような物が付いていた。

 

 もし、想像しにくいというのであれば、ハルバート[戦斧]の斧の部分が大きくなった物と考えてもらえればいい。

 

 

その鉞のような大刀を“片手”で重そうに担ぎ、残りの敵を獲物を狙った鷹のような眼に見つめる。

 

 

「…爺さんに勝つ為に自作した大刀…『狼襲[ろうしゅう]』。しかし、使い勝手の悪さと余り使わない事から、見事に土蔵入りになってしまった一品」

 

〈(何故、そのような物を今ここで使われるのですか?)〉

 

 

 呆れ半分、興味半分が篭もっている声で尋ねる朔に返答しながら敵に向かい走り出す。

 

 

「まず一つ目の理由、余りにも重くて小回りが利かない。一対一には向かないし、俊敏な敵にはまるで無意味!」

 

 

 一刀は大刀『狼襲』を“片手で楽々”と振り上げ、背を見せている敵を斬り“飛ばす”。

 

 

〈……それで?(つっこんだら負けだ、つっこんだら負けだ)〉

 

 

 そんな一刀に突っ込まず、次の理由を催促する。一刀は『狼襲』を身体全体を使って、回転するように投げる。敵はそれに巻き込まれないように逃げようとするが、錯乱しているのかその軌道上から外れようとせずに後退した。その為に、『狼襲』が通った後は『“狼”が獲物を“襲”い食い散らかした』後のように、無残な死骸しか残っていなかった。

 

 

「一つ目はデメリット。二つ目はメリットとして、重い分遠心力を利用して振れば大人数の敵を一度に吹き飛ばせるし、防御している上から叩けば相手も押し返すだけの力が必要。さらにうまくいけば……」

 

 

 『狼襲』は勢いが無くなり、その刀身の頭を地面へと埋もれさせる。一刀はそれを見て走り出し、自分の得物に向かい跳躍した。

 

 

 

 

∸――街中―――

 

 

 

「はあああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

∸――ボシュン!

 

 

 少女は駆けていた。

 

地面に着くほど長い灰色に近い銀髪を三網にし、その髪を靡かせて手甲『閻王』を付けた手に赤く煌めく炎…氣を敵に向かって放つ。

 

その氣は弾丸…氣弾として狙いは逸れる事無く、黄巾党に中り吹き飛ぶ。

 

この少女こそ、一刀が街の視察を行った際に出会った少女であった。

 

彼女の性は楽[がく]、名は進[しん]、字は文謙[ぶんけん]。―――後に『引かずの楽進』と呼ばれるほどの武将になる物であった。

 

 

「よし、粗方は片づいたな」

 

 

 呼吸を整え、周りを見渡すが黄巾党らしき者は見えない。しかし、氣を感じ取れる楽進には敵が息を潜めて隠れている事が解っていた。

 

 そして、再び構える。

 

 

「来るなら来い。相手になってやる」

 

 

 本来の目的を見失っている事にも気づかず、敵が居ると思われる所を睨みつける。

 

 

 本来の目的。

 

 それは東側の防壁が一つしかなく、更にその防壁が材料不足で脆いために防御部隊に西側を任せて、残りの全員で東側の侵入を食い止める。というものであった。

 

そこに曹操軍の部隊であり此方の増援部隊、北郷隊が来た為に少しばかり良い方へ転がると思っていた。しかし、それが慢心とない状況は最悪となる。

 

楽進は後ろの方から、何者かが走ってくる音が聞こえ振り向いてみるとそこには、自分の仲間であり一刀が服屋で出会った少女とカゴを買わされた少女がこちらに向かって走っていた。

 

 その顔は楽進の眼がおかしくなければ、かなり怒っている形相に見える。

 

 

「コゥラァ、凪!!先行しすぎや!夏候淵さまと許緒さまが怒っとったで!」

 

「そうなの!沙和たち、早く連れ戻すように言われて来たの。速く戻るよ」

 

 

訂正。怒っていた。菫色のボサボサの髪毛を二房に纏め、己が得物の銀色に輝く巨大なドリルを穂先に付けた槍『螺旋槍』を振り回しながら関西弁を話す童顔少女。

 

性を李[り]、名を典[てん]、字を曼成[まんせい]。

 

もう一人は栗毛色の肩まである髪を、楽進と同じように三網にして端をピンク色のゴム、片側をドクロの髪飾りで止めいる。顔はソバカスがあれど美しさが損なわれる事はなく、視力が悪いのか丸い眼鏡を掛けている少女。

 

性は于[う]、名は禁[きん]、字は文則[ぶんそく]。

 

 

 その二人が息を切らせながら、近寄ってくる。

 

 

「真桜、沙和?…知らない内に出過ぎたか…ふぅ、御小言は確実か」

 

 

 真名らしき名を呼びながら二人の姿を見て、楽進は冷静になったのか自分が勝手な行動を行っている事に気づいた。今、自分のすべき事は現状を維持して曹操軍の到着を待つ事。それを再度認識し、二人の方へ歩き出し于禁の傍で銀色の光る物が目に着いた。

 

同時にそれが動く。

 

 

 

 

 

「っ!?沙和、左だ!!」

 

「―――ふぇ?」

 

 

 楽進がそれは短剣だと気が付いた時には、既に黄巾党が短剣で于吉の胸に突きたてようとしているところだった。楽進は失念していた。敵の氣が小さすぎて感じ取れなかった事、気を抜いて敵の気配を感じ取れなかった事に。瞬時に足に氣を溜めるが。

 

 

「(駄目だ!猛琥襲撃では近くにいる沙和にまで被害が出る!)―――くっ!?」

 

 

 そう思ったやいなか、脚に溜めた氣を放つのではなく一刀と同じ方法で爆発させ、沙和が居る所まで跳ぶ。そこで、やっと于禁と李典が気づき反撃しようと于吉が双剣『二天』を構えようと柄を取るが間に合わず、李典も『螺旋槍』で攻撃しようとするが敵が于禁と重なっている為に半歩前に出るが。

 

 

「クソッ!(間に合あえへん!?)」

 

 

 

∸――ドンッ。

 

∸――グシュ!

 

 

 

 李典が叫びそうなった時、于禁の身体がぶれた。同時に銀色の髪が、李典の前に現れると共に肉が切られるような音が耳に着く。

 

 

「―――……さ、沙和。無事か?」

 

「……凪?」

 

「……凪ちゃん?」

 

 

 それが于禁を突き飛ばし、腕に短剣を刺された友……楽進であった。

 

 

「チッ!あと少しで殺…」

 

「…黙れ!」

 

 

 

∸――ザッ。

 

∸――ドスンッ!!

 

 

 

「ぐはっ」

 

 

 楽進は友を殺そうとした黄巾党を蹴り飛ばし、物言わぬ屍へ姿を変えさせる。同時に楽進は膝を折り地面に膝待つく。

 

 

「…ハァ、ハァ、脚に氣を溜めすぎたな。脚が言う事いかない上に、外氣功を練る事も出来なかった」

 

 

その姿を見た于禁・李典の二人は楽進に近寄る。于禁の無事の姿をみて柔らかくほほ笑む。

 

 

「良かった。怪我は無いようだな?」

 

「良くなんかないなの!」

 

「せやでっ!!沙和を助けんのに、自分が怪我してどうすんねん!?」

 

 

 そんな楽進に、本気で怒る二人。そんな二人を余所に『そんなこと…』と続けた。

 

 

「私の身体には…既に多くの傷があるが、沙和はそうじゃないだろ?だから…」

 

「あぁ!もう、いい!説教は後や!今はこの剣を抜いて…」

 

「駄目、真桜ちゃん!この剣、かなり刃毀れしているの。そのまま、抜いたら痛いし傷口も広がってしまうの。ここは、応急処置として動脈を縛って止血を…」

 

「……そんな、暇は無い様だぞ」

 

 

 慌てる二人に対し、楽進は後ろを見るように指示する。于禁達が後ろを見ると、建屋の脇からゾロゾロと黄巾党達が現れてきた。

 

 

「……いっそ、黄色から黒か茶色に変えた方がええんとちゃうか?」

 

「それって、厨房とかにいるあれのことなの?」

 

「云い得て妙だな。…あれは私も苦手だ」

 

 

 李典がゾロゾロ現れる黄巾党とみて、厨房の悪魔を連想したのかそう『螺旋槍』を構えつつ宣言した。そして、于禁も『二天』を構えて楽進を護るようにして前に立つ。そして、小声で立てるかと尋ねるが楽進は済まなそうに首を横に振る。

 

 

「…済まない、血を流し過ぎた。氣も残り少ない」

 

 

 楽進が自分を置いて逃げるように言おうとした瞬間、敵が一斉に突出していた。しかし、二人は逃げようともせずに前進した。その姿をみて楽進は止めようと叫ぼうとした。

 

 

 

 

 

∸―――ヒュ、ヒュ、ヒュン。

 

∸―――ブオオォォォオオ!!

 

 

 その瞬間、楽進の頭の横を何かが通り過ぎた。それが矢と棘付きの鉄球だと気づいたのは、目の前の敵が吹き飛んでからだった。それから楽進・于禁・李典の三人は自分たちを助けてくれた人たちを見る為に後ろを向いた。

 

 

「やれやれ、楽進を連れ戻すように言ったはずだが?」

 

「夏候淵さま…」

 

 

亜麻色の短い髪(右目を前髪で隠している)にくすんだ黄色い瞳の武将。夏候淵こと秋蘭が呆れ交じりの溜息を吐くが、別段責めている訳でも無さそうな態度を取る。

 

 

「あっ!?楽進ちゃんが怪我してる!速く手当てを」

 

「許緒さま…」

 

 

桃色の長髪をリボンとゴムで二房にし、薄桃の袖無し上着に活発を意味する短パン。腰と両脇、左肩には軽装な鎧を身に付けた、許緒こと季衣が怪我をしている楽進を心配して近づいてきた。

 

 

 季衣と共に秋蘭も楽進に近づき、李典・于禁に現状を尋ねる。

 

 二人は楽進を心配しつつ、無礼が無いように詳細を伝える。

 

 

「え~と現在、防衛の方は問題が無いですが…」

 

「凪ちゃん…楽進ちゃんが沙和を庇って重傷なの!」

 

「自分はまだ…戦えます」

 

 

 と、楽進は立ち上がろうとするが、うまく力が入らずまたも崩れ落ち、季衣がそれを支える。

 

 

「駄目だよ!無理をしちゃ」

 

「自分は…こうゆう事しか出来ない不器用者ですから」

 

 

 季衣が無理をする楽進を怒ると、楽進は自分を自嘲するかのように話した。そして、どこらかクスクスと笑うような声が聞こえた。その犯人を見つけたのは季衣だった。

 

 

「秋蘭さま?」

 

 

 それは自分の口元を手で隠し、小さく笑う秋蘭であった。場違いで有る事に気づき笑いながら謝る。

 

 

「あぁ、すまない。決して楽進の事を笑った訳ではない。ただ、この場に北郷がいたら何と言うかと思ったらな…自然に笑ってしまった」

 

「…あ、何となく解ります。きっと、『不器用?お前みたいな可愛い娘が?神も可笑しな事しやがる』とか言い出すんじゃないですか?」

 

「北郷?誰です、それ?」

 

 

 李典が楽進に応急処置を行いながら、話の中心人物に興味を持ったのか尋ねて来る。

 

 

「楽進は知っていると思うぞ?私が籠を買った際に、呼びに来た者で今、壁の向こうで指揮を執っている者だ」

 

「……あ。あの光り輝く服を着ていた…」

 

 

 

∸――……ボンっ!!

 

 

 

「楽進ちゃん!?秋蘭さま、顔から湯気が出ている時の処置ってどうするんですか!?」

 

「光り輝く…?」

 

「服なの?……あ、あぁぅ、ぅぁぅ、ぁ!!」

 

 

 

 楽進が一刀と出会った時の事を思い出したのか、顔を真っ赤にして黙りこみ、李典は輝く服で引っ掛かった。于禁はと言うと身体を縮こませ、自分の身を護るかのように両手で肩を抱き、目尻に泪を溜めつつ『ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、モウシマセンナノ』と、震えながら繰り返していた。

 

 

「…っ!?秋蘭さま」

 

「あぁ」

 

 

 そんな事を余所に、季衣の眼つきが変わる。自分の得物、鉄球『岩打武反魔[いわだむはんま]』を構える。秋蘭も気づいたようで弓『餓狼爪[がそうそう]』を構え、李典・于禁に構えるように指示する。

 

 それに合わせるように建屋の間から、現れる黄巾党。そんな奴らを見た李典は『螺旋槍』を、現実に戻ってきた于禁は『二天』を構える。

 

 

「やっぱ改名した方がええんとちゃう?」

 

「特徴が似過ぎなの~。逃げ足が速いところとか」

 

「ふむ、一匹見ると三十匹はいるとかか?」

 

「それって、厨房に出る油蟲(ゴキブリ)の事ですか?そう言われると似てますね」

 

 

 

『チックショーーー!』

 

『俺たちはごみ虫じゃねぇーー!!』

 

 

 

 人としての誇りを捨てた黄巾党でも、流石に油蟲と同類項で結ばれるのは許せないのか吼える。

 

 楽進が立ち上がろうとしたが、秋蘭に『足手纏いだ』と人蹴りされて悔しそうに歯軋りをさせる。しかし、決して馬鹿な訳では無く、それが秋蘭なりの優しさと言う事も解っている為に誰も反論などしない。そんな中で楽進は『もっと、強くなりたい』と願う。

 

 そんな時であった。突然の地響きが皆を襲う。

 

 

 

∸――ドスンッ!

 

 

 黄巾党の者がバランスを崩して倒れる中、秋蘭達のような武人は微響きの中で確りと立っていた。

 

 秋蘭は最初に地震かと思っていたが、何分テンポよく刻まれる震動に懸念する。そして、段々と震動が大きくなって来てふと気づいた。いや、気づかねばならなかった。

 

 

「……なんだ、あれは?」

 

「うそ?」

 

「ありえへんて…」

 

「沙和、夢を見てるの?」

 

「残念だが、私にも見えている」

 

 

 武人である皆の顔が、驚愕の顔に変わる。それもそのはず、今皆の眼には黄巾党の後ろにいる“民家よりも大きな巨体”を揺らしながら、歩いてくる黄巾党が居たのだから。

 

 

 

 

 

 わ~~い!!字数が多すぎて前回同様に前後に分かれた~~!

 

 

 誰か、この空前絶後のバカを漢女ください。あ、変換ミスった…。“お止ください”です、はい。

 

 

 前回に引き続き、新たな武器と型が使用されました。これの説明においては次回と言う事にしておきたいのですが……自分に対して言いたい事が…。

 

 

 スッ~~~。←(息を吸って)

 

 

 前回はFF8みたいな武器って言われてんのに、今度は何処のモンハンの大剣だ~~~!!!?

 

 

 誤字脱字…指摘も受け付けます。

 

 

 

∸――真・恋姫†無双~物語は俺が書く~∸――次回予告(嘘)

 

 

 

「友情?赤の他人の為に戦う?バッカじゃない!?」

 

 

「僕は信じる。兄ちゃんを!」

 

 

「他人なんか、どうでもいいが…仲間くらいは護ってやんねぇとな」

 

 

「どんなに傷つこうが仲間の為に戦える…それが英雄[ヒーロー]の証だ!」

 

 

〈とりあえず、こんな事を言っておきましょう…『Exceed charge』っと♪さぁ、マイスター。思う存分に殺りましょうか?〉

 

 

 

∸―――俺は人の笑顔を護るんだ!

 

 

~~~彼は何の為に戦い、何を求め、その手に何を掴むのか!?~~~

 

 

期待しないで、待たないで!w

 

 

 

 

 


 
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