北郷一刀視点
曹操たちと別れてから色々あった。まずは典韋さんが曹操の軍に入ることになったようだ。まぁ友達もいるしあの力があれば入るのは必然だったのかもしれない。そして軍に所属するので今働いている店を止める事になり、店の人達が悲しんだり、店長が泣きながら追いすがったりと色々あったが最終的にはみんな笑顔で送り出していた。そして俺も近々やめる事を告げた。そしたら店長の顔が真っ青になって腰にしがみついてきた。すぐに辞めるわけではないので許してほしいと頭を下げて何とか収まった。引き剥がすの大変だったー。・・・まぁそれは置いておいて。店を止めるのにも理由がある、それは曹操に言われた才能についてだ。俺の才能は何なのか探してみようと考えたからだ。
「俺の才能か・・・。」
そんな事を考えていると
「一刀君!次の注文入ったよ!」
「はーい!」
店長さんがそう言ってきた。
俺は今1人で料理を作っている。それは典韋さんが準備があるため今日やめてしまったからだ。急だった為、代わりの人が用意できず、店長が俺に1人で回せないかと言ってきたのでこのような状態になっている。それにしても・・・忙しい!忙しすぎる!お客さんの波は止まらずずっと満席状態なので休んでいる暇がない!典韋さんよくこの作業やってたな。
そんな事を思いながら作業をし、何とかピークを乗り切ることができた。ほっと一息ついていると、
「一刀くんお疲れ様。今のうちに休憩入っちゃって。」
店長がそう言ってきた。ありがたい。
「はい、では休憩に入ります。」
そう言った瞬間、店の入り口から聞き覚えのある声がした。
「すみません、ここに北郷一刀殿という方はいらっしゃいますか?」
この声は・・・
「楽進さん?」
入口の方に行くと楽進さんと
「こんにちはなの!一刀さん!」
于ちゃんがいた。
「于ちゃんも俺に何か用事ですか?」
いきなり来た理由が分からずそう聞くと
「沙和たちはさっきのお礼と服を返すためにきたなの!」
「服・・・ああ!そうでしたね。わざわざありがとうございます。」
そう言い于ちゃんの腕の中にある綺麗に折り畳まれた制服を返してもらった。
そうだった于ちゃんに制服貸してたんだった。しかも返しに来いとも言ってたな。自分で忘れてれば世話ないっての。
そう思いながら制服に袖に通した。
ばさっ。・・・うん、やっぱりこの格好が1番しっくりくる。
改めて制服の着こごちを確かめていると于ちゃんがぼーっとしながら俺をみていた。
「・・・王子様。」
「ん?どうかしましたか于ちゃん?」
「っ!な、なんでもないなの!」
「本当に大丈夫ですか?熱でもあるんでは、・・・少しみさせて下さい。」
そう言い于ちゃんのおでこに手を当て熱を確かめた。
「・・・熱はないようですね。って于ちゃんどうしたんですか!?」
「ぽけ〜。」
于ちゃんがぽけ〜としていた。何があったんだ。
「あ〜一刀殿、放っておいてやって下さい。多分一刀殿に触られると悪化するので。」
「俺のせいなんですか!?」
何をしたんだ俺は!?
「そういうわけではなく、沙和は少し夢見がちなところがありまして、その一刀殿をお・・」
「凪ちゃん!それ以上は駄目なの!」
楽進さんが何か言おうとした時、于ちゃんの意識が戻り楽進さんの口を塞いだ。
「どうしたんですか?」
「え、え〜と、そ、そうだったの!まだ一刀さんにお礼を言ってなかったなの!一刀さん、助けてくれてどうもありがとうなの!」
「いえ、そんなお礼だなんて。」
「私からも言わせて下さい。一刀殿この度は本当にありがとうございました。」
「楽進さんも、お礼だなんて別にいいですよ。俺は当たり前のことをしたまでです。それに楽進さんならあんな連中相手なんて楽勝だったでしょう?」
「確かに実力だけで見るのならあの様な連中に負けることなどないでしょう。しかしあの時は私の不注意で、沙和を人質に取られてしまい無力でした。」
そう言い、うつむきながら体が震えていた。相当悔しかったのだろう。
「凪ちゃん・・・」
于ちゃんも楽進さんを心配し見ている。
「ですが。」
すると楽進さんが顔を上げこう言った。
「ですが、そんな時貴方は颯爽と現れ助けて下さった。何回感謝の言葉を述べて足りないほどです。だからこそ少しでもいいので貴方に我々の感謝を受け取って頂きたい。我ががまなのは承知の上です。どうかお願いします!」
「沙和の感謝の気持ちも受け取ってほしいなの!」
そう言い2人が頭を下げた。
「・・・分かりました。お二人のお気持ちは有難く受け取らせていただきます
「ありがとうございます!一刀殿!」
「ありがとうなの!一刀さん!」
俺が2人の感謝の気持ちを受け取ると言うと2人が笑顔でお礼を言ってきた。俺が感謝されて良いのかは分からないけど、2人がこんなに笑顔なんだから今だけは感謝されていいんだと思う。
「じゃあ今度は俺が2人に感謝する番ですね。」
「え?一体何に対しての感謝ですか?」
「服、届けてもらいましたからそのお礼です。」
「しかしそれは、」
「楽進殿は人にお礼を受け取らせておいて自分は受け取らないと?」
「うっ。」
「凪ちゃん、これは受け取るしかなさそうなの。」
「・・・はぁ〜、分かりました。」
「ありがとうございます。それでは食事を出させていただくので席へご案内します。」
「・・・一刀殿はずるいですね。」
「褒め言葉として受け取っておきます。」
そう言い席に案内した。
「ご注文は?」
「沙和は拉麺なの!」
「では自分は麻婆豆腐をお願いします。」
「麻婆豆腐の辛さは?」
「えっと・・・1番辛くお願いします。」
「辛いのお好きなんですか?」
「ええっとまぁそこそこです。」
「嘘なの!凪ちゃんいつもラー油がひたひたの拉麺とか唐辛子が沢山のってる麻婆豆腐とか食べてるの!だから一刀さん凪ちゃんのはうぅんと辛くしてあげてほしいなの!」
「沙和!?」
「・・・わかりました。精一杯辛く作ってきます。」
「す、すみません。」
「構いませんよ。美味しくたべてもらいたいですから。それでは作ってきますね。」
「一刀さんが作るなの?」
「はい、今このお店の厨房は俺1人ですから。」
「楽しみにしてるなの!」
「あまり期待しない方がいいですよ。普通の味ですから。」
そう言い厨房に向かおうとすると
「見つけたで!沙和!凪!」
「真桜ちゃんなの!」
「真桜、待ってろと言っただろう。」
「2人でこそこそ何処かに行きよるから、何か怪しいと思ってつけてみればこれや!ずるいやないか2人だけ美味しいものたべようとして!うちも食べるで!というわけでお兄さん、拉麺一杯追加や!」
「はは、分かりました拉麺追加ですね。」
「真桜!一刀殿すみませんお代はしっかり払いますので。」
「構いませんよ。旅のお仲間ですか?」
「はい、ほら真桜一刀殿に挨拶しないか。」
「ん?何やこのお兄さん、凪の知り合いかい。うちは李典言うんやよろしくなお兄さん。」
「俺の名前は北郷一刀と言います。北郷とでも一刀とでも好きに呼んでください。」
「わかったでよろしくな、カズ。」
「かず、ですか?」
「嫌やったか?」
「いや、あまり呼ばれたことがない呼ばれ方なので驚いただけです。」
「ほな、カズって呼んでいいんやな?」
「はい。っと料理作ってきますね。李典さんも座って待っていてください。」
「ほーい。」
そう言うと李典さんは于ちゃん達と同じ席に着いた。
「さてと、休憩終わるのにも丁度良いし早く料理作んなきゃな。」
休憩終わるのにも丁度良かったのでそのまま厨房に入った。
え〜と確か于ちゃんと李典さんが拉麺で、楽進さんは激辛麻婆豆腐だったな。
まずは拉麺から作るか。湯切りをしっかりしてスープは白湯スープを主体にした濃厚スープを入れて完成!後は楽進さんの麻婆豆腐だけど・・・何とかしてみるか。まずは主体になる麻婆豆腐を中華鍋でさっと作る。そして、唐辛子、山椒、辣油などの香辛料をこれでもかと入れる。するとみるみる麻婆豆腐が赤くなっていく。・・・やりすぎたか?でもこれ以上は拉麺がのびるしな〜。駄目だった時は全力で謝るしかないな。
そう思い、料理を運ぶことにした。
「お待たせしました!拉麺と麻婆豆腐です!」
「「「おぉ〜!」」なの!」
3人が同じ表情で驚いている。
「食べていいのなの!?」
「当たり前ですよ。」
俺がそう言うと3人とも料理を食べた。
「どうですか?」
「美味しいのなの!」
「やるやんかカズ!」
どうやら喜んでもらえたみたいだな。
「楽進さんはどうですか?」
少し心配だったので楽進さんに聞いてみた。
「はい、とても美味しいです。ただもう少し辛い方が美味しいかと。すみません生意気言って!」
「はは、大丈夫ですよ。むしろすみません、ご期待に添えなくて。」
「いえ!そういうことではなく!」
「凪ちゃ〜ん一刀さんを困らせちゃ駄目なの!」
「せやで凪、好意にケチつけるもんやないで!」
「そういう事じゃ!一刀殿本当に申し訳ありません!本当に美味しいです!美味しいんですがどうしても辛さが足りないと思ってしまって!」
「ふふ、構いませんよ。好みの味なんて人それぞれですし、お世辞を言われるよりちゃんと言ってもらえた方が俺は嬉しいですよ。」
そう言い楽進さんの頭を撫でた。
「あっ。」
「っと、それじゃあ俺は仕事に戻るので食事を楽しんでいてください。」
仕事がある事を思い出し厨房に向かったが、ただ楽進さんの顔が真っ赤だった事だが気がかりだった。やっぱり辛かったのかな?
仕事に戻り少し経つと于ちゃん達が食べ終わったようなので皿を下げにいくついでに話した。于ちゃんと楽進さんは料理を食べて暑かったのか顔が真っ赤で、その隣にいた李典さんがずっとこちらをニヤニヤしながら見ていた。一体なんなんだ?そんな事を考えていると、楽進さんが仕事の後に会えないかと言ってきたので仕事が終わった後に、俺が泊まっている宿の前で会う事を約束し別れた。その後は騒動もなく平穏に仕事をし、終えた後すぐに宿に向かった。
宿に向かうと楽進さんたちがすでに待っていた。
「あ!一刀さん来たなの!」
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「大丈夫やで。うちらも今来たところやし。」
「それに自分たちがお呼びしたのですから、自分たちが先に来るのが当たり前ですので。」
「そう言ってもらえると有難いです。それでどんな用事なんですか?」
「はい、今日お呼びしたのは一刀殿にお願いがあるからです。」
「お願いですか?」
「はい。」
そう言うと楽進さんは深呼吸をし始めた。横を見ると于ちゃんも緊張した面持ちでこっちを見ており、李典さんは昼間のようにニヤニヤしながら俺のことを見ている。な、何をお願いされるんだ!?
「一刀殿!」
「は、はい。」
「我々の真名を受け取っていただけませんか!」
「ま、真名ですか?」
「はい、貴方は自分と沙和の恩人です。そんな人に真名を預けずに誰に預けましょうか!」
「で、でもいいんですか?真名は心を許した人にしか預けてはならないのでは?」
「大丈夫なの!沙和はすでに一刀さんを信頼してるなの!」
「あとカズ、うちの真名も預かってな。」
「李典さんもですか!?李典さんとはさっき会ったばかりじゃないですか!?」
「確かにそうやけど友達の恩人やし、何より実際会ってみて気に入ったからな。」
どうやら3人全員が俺に真名を預けようとしてくれてるみたいだ。
「・・・いいんですか?本当に俺が受け取ってしまって。」
「はい、これは3人全員の総意です。」
楽進さんがそう言うと于ちゃんと李典さんが頷いた。
「・・・わかりました。3人の真名、ありがたく受け取らせていただきます。凪、沙和、真桜。」
俺が3人の真名を呼ぶと3人とも驚いたような顔をした。
「俺の考えで真名は呼び捨てにすることにしているんですが、嫌ですか?」
「い、いえそんな事はありません!」
「そうなの!むしろそっちの方がいいなの!」
「そ、それなら良かったです。」
俺が質問をすると、凪と沙和が顔を近づけながらそう言ってきた。
「うちも構わんでカズ。」
真桜もニヤニヤしながらそう言ってきた。だから何故そんなにニヤニヤしている。
「でも良かったです。我々が旅立つ前に真名を預けることが出来て。」
「そう言えば旅をしていると言っていましたね。もう出発するですか?」
「はい、明日の朝には旅立とうと思っています。」
「そうですか。少し寂しいですね。」
「そうですね。ですが我々にはやるべき事がありますし、それに一刀殿とはまた会える気がしますから。」
「・・・そうですね。俺もまた会える気がします。」
この大陸は今から乱世に入る。そしてこの3人は俺の時代でも名が通っている武将たちだ。もしかしたら・・・いや、今は考えないでおこう。
「最後に一刀殿の真名を教えていただけませんか?」
そんな事を考えていると、凪かそんな事を聞いてきたので
「そう言えば言っていませんでした。信じてもらえないかも知れませんが、俺は真名がないんです。」
「そうなのですか、ならこれからも一刀殿と呼ばせていただきます。」
「不審に思わないんですか?」
ここは不審に思われると思ったんだがな?
「実は一刀殿のような真名が無い者は、ごくたまにいるんです。理由はよく分かっていませんがそのような者もいるという事を知っていたので一刀殿もそのような方々と一緒なのかと思いまして。」
「いえ、少し違うんですが理由は言えないんです。すみません。」
本当の理由は言うに言えないからな。
「いえ、構いません。一刀殿が言えないということは、ちゃんとした理由があると信じていますから。」
「・・・ありがとうございます。そうなると真名以外で何か渡したいんですが何か欲しいものなんかありませんか?ある程度でしたらお金もあるので買えますよ。」
「そんな悪いですよ。」
「いえ、真名を預けてもらったのに何もお返しできないとこちらの気がすまないので遠慮せずに言って下さい。」
まだ星には返してないけど、いつかお返ししなきゃな。
「・・・でしたら1つお願いがあります。」
「お願い?何ですか?」
「それは・・・」
凪はそう言うと真剣な目で俺をみながらこう言ってきた。
「一刀殿!私と手合わせをして頂きたい!」
「手合わせですか?」
「はい、私は今朝の一刀殿の武を見て一度でいいので手合わせをしていただきたいと思っておりました。ですが私たちは明日には旅立たなければなりません。もしこのまま一刀殿と別れてしまったら二度と手合わせ出来る機会がなくなってしまうかもしれません。ですので、今ここで手合わせをしていただけないでしょうか!?」
・・・う〜んなるほど。凪の言いたいことはわかった。確かにまた会えるとしても手合わせ出来るかは分からないからな。でもな、俺の武術は誰かを守る為に鍛えたものであって自分から戦うのはちょっと気が引けるな。どうするか・・・
そう 俺が悩んでいると
「受けて差し上げればいいではないですか。」
そう声が聞こえた。この声は
「星、何故ここに?」
「何故と言われましても宿の前ですしな。何やら面白らそうな声が聞こえたものでつい出てきてしまっただけです。」
そうだったここ、宿の前だった。そりゃあ聞こえるか。それにこの人がこの話題で出てこない訳がないか。
「えっと一刀殿そのお方はどなたですか?」
「ま、まさか!一刀さんの恋人なの!?」
星と話していたら凪とえらく興奮した沙和がそんな事を言ってきた。
「いや、星もはそんな関係じゃなくて」
「おやおや、隠さなくてもいいではないですか。」
「んな!?」
俺がただの旅仲間と言おうとしたら星がそんな事を言ってきた。顔を見ると悪い時によく出るニヤニヤ顔をしていた。
「ちょ、ちょっと星!そんな嘘を!」
「嘘とはなんですか、昨日の夜は二人で熱く燃え上がったではないですか。あれはただの遊びだったのですか?」
「「なっ!」」
「やるやんけカズ〜。」
「違っ!星!」
「ふふ、すみませぬな。一刀の反応が面白くてついやってしまいました。」
「まったく。」
「えっとつまり二人の間には何もないなの?」
「ええ、今の所は」
ニヤッと笑いながら星が沙和達にそう言った。
「全く、また冗談を言って。」
「ふふ、まぁそういう事にしておきましょうか。それよりも手合わせ受けないのですかな?私の時には受けてくれたではありませんか。」
「あれは星がいきなり襲いかかってきたから仕方なく受けたんだよ。」
「ほぅ、その言い方ですと一刀と手合わせするには襲うしかないと。」
「いや、そういうわけではじゃないけど。」
「ではどうすればいいのですかな?」
星にそう言われて少し考えてみる。手合わせか、手合わせということは命の取り合いではなく純粋に武を競い合いたいという事だ。そう思い凪を見る。真っ直ぐこちらを見ていた。そしてその目は武人の目をしていた。こんな相手を自分の勝手な都合で断るのは失礼だな。・・・よし!
「・・・分かりました。その手合わせ受けましょう。」
「ありがとうございます!」
「おや、急な心変わりですな。」
「いや、よく考えてみたら失礼かなって思ってね。」
「なるほど、そういう事ですか。」
星がうんうんと頷きながらそう言った。さてと、
「手合わせの相手は凪だけでいいんですか?」
「あの実は」
「うちらの相手もして欲しいんよ」
俺の質問に真桜と沙和もそう言った。
「分かりました。じゃあ3人同時に来て下さい。」
「・・・カズ、それはいくら何でもうちらを舐めすぎ」
「わかりました。3人同時でいかせていただきます。」
俺の提案に真桜が不満げに何かを言おうとしていたが凪が途中で止めた。
「真桜、一刀殿は我ら3人で掛かっても勝てるかわからないほど強いぞ。」
「ホンマかいな!?」
「本当なの、気を抜いたら一瞬でやられるなの!」
そう言うと3人の雰囲気が変わり、臨戦態勢に入ったようだ。
3人の武器は手甲と双剣とあれは、ドリル!?ドリルなのか!?回るのあれ!?
「来ないのならこちらから行かせていただきます!」
っとそんな事を考えいたら凪たちが襲いかかってきた。
「はぁ!」
「よっと」
「やぁー!」
「ほっ」
「これでどうや!」
「おっと」
凪、沙和、真桜が交互に攻撃してきたので攻撃を受け流しつつ観察してみた。・・・なるほど動きは悪くない。
「えらいうまく避けられるな。」
「簡単に避けられるなの〜。」
「流石ですね。」
3人が1度下がった。態勢を立て直すようだな。
「ほぉ〜、いい動きをしますな。」
俺が状況を確認していると、後ろで星がそんな事を言っていた。
「おい星、見てるんなら審判でもしてくれよ。」
「ん?審判とは?」
「ああ〜この世界で言う立会人かな?」
「今更ですな。・・・まぁいいでしょう、この趙子龍が立会人となりましょう。」
そう言い引き受けてくれた。
「星、引き受けてくれてありがとう。」
「ふふ、いえいえこちらも一刀の動きを間近でみられますからおあいこです。」
ふふ、と笑いながらそんな事を言った。・・・怖ぇ!着々とリベンジの準備を整えてるって事か。
「・・・そろそろ再開しても?」
「っと、すみません。それじゃあ続けましょうか。」
相手の力量も分かったのでこちらも構えをとった。
「行きます!」
そう言うとまた3人が一斉にきた。
「うりゃ!」
キュイィーン。バァン!
真桜がドリルを回転させ、地面突き刺しすなを巻きあげた。
「目潰しか。」
さてどの方向から来るか。そう考えていると前と後ろから足音が聞こえてきた。
「そこ!」
足音に集中していると足元の方から凪が攻撃してきた。
「もろたで!」 「とったなの!」
そして凪に意識を向けると今度は他の2人が左右から攻撃してきた。
いいコンビネーションだな。真面目に対処しないと捌き切れない。
そう考え行動に移した。
まず脱力によって凪より更に下に潜りこんだ。
「な!?」
次に凪の脇に手を入れ、すくい上げるように沙和の方に投げ飛ばした。
「くっ、避けろ沙和!」
「え、凪ちゃん!?」
ドカァーン!
沙和は避けられず凪とぶつかった。あとは
「おりゃー!」
真桜の攻撃を横に避け、ガラ空きになっている顔面にハイキックをした。もちろん寸止めだよ、手合わせだし、女の子の顔面を蹴るのは流石な〜。
「ま、まいった。」
そう言うと真桜はその場にへたり込んだ。さてあの2人は?
「くっ、沙和すまん!私のせいでこんな事に」
見ると沙和が目を回していた。・・・ちょっと強く投げすぎたかな。
そんな事を考えていると凪がこちらに向き直した。
「やはり強いですね。まさかあの状態から2人がやられるとは。」
「いえいえ俺なんてまだまだです。ただ、少しだけ3人の攻撃に間があったのでそこを突かせていただいたまでです。」
「・・・その間を突ける事がすでにおかしいんですが。」
「相変わらず出鱈目な動きをしますな一刀は。」
2人からそんな事を言われてしまった。まぁその事は置いておいて
「凪、まだ続けますか?」
凪にまだ手合わせするか聞いてみた。
「はい!お願いします!」
元気いっぱいにお願いされた。
「わかりました。それで続けますか。」
俺はまた構えなおした。すると凪が正拳突きのような構えをとった。
「ほぅ、あれは。」
星が何か言おうとしたその瞬間、
「はぁー!」
掛け声とともに何かが飛んできた。
「な!?」
ドカァーン!
俺は驚きのあまり動くことができなかった。
凪視点
「はぁはぁはぁ」
しまった。勝つ事を意識するあまり全力で気弾を放ってしまった。一刀殿は大丈夫だろうか。
「一刀殿!」
思わず呼びかけた。次第に砂埃が晴れてきた。
「びっくりした。まさかこんな攻撃をしてくるとは。」
「な!」
「ほぉ〜あの攻撃を受けて無傷ですか。」
「いや、流石に無傷じゃないよ。」
そう言い一刀殿は右手を見せた。確かに手の甲の皮がむけ血が滲んでいるが
「気弾を殴って相殺したというのですか!?」
ありえない!いくら一刀殿が強いからと言って気弾をただ殴っただけで相殺するなんて!
「全く、面白いですな一刀は。」
「それって褒めてる?貶してる?まぁどっちでもいいか。それよりも凪」
「は、はい!」
「凪もとっておきを見せてくれたからこっちも見せるよ。」
そう言うと一刀殿の雰囲気が変わった。
ゾクッ!とんでもない闘気が私を襲った。
「じゃあ、行くよ!」
バンッ!その音が聞こえた瞬間目の前に一刀殿が迫っていた。
「ッ!?」
「ちょっと痛いかもしれないけどごめんね。」
トン、と軽くお腹に手を添えられた。その瞬間私は無意識にお腹に気を溜めていた。
「ッハァ!」
バァン!一刀殿が声を出したと同時にお腹に衝撃が起こった。
「ッ!」
そして私はそのまま地面をすべった。
ザザッ、何とか踏ん張り止まることができた。
「はぁはぁはぁ」
止まれたのはいいが呼吸が落ち着かない。
「いやまさか、あの攻撃を受け切られるとはね・・・俺もまだまだ精進が足りないな。」
「・・・いえ、本当に偶然受け切れただけです。」
受け切った?いや本当に偶然防ぎげただけだ。もし気を溜めていなかったら確実に倒れていただろう。
「それよりも一刀殿今の技は?」
「ああ、今のは発勁と言うものなんだ。こう、簡単に言うと力を一気に爆発させるみたいな感じかな。」
なるほど確かに瞬間的に殴られたように感じた。この大陸ではあまり見かけない武術だ。やはり一刀殿は・・・
「そんな事より!」
ガシ!一刀殿はそう言うと私の手を取った。考え方をしている時に手を掴まれたので驚いてしまった。
「か、一刀殿!?何でしょうか?」
「今の球みたいなの何!?」
球?・・・ああ
「それは多分気弾の事ですね。」
「気?あの体に流れてるって言う気の事か?」
「は、はいその気のことです。」
「初めてみた。あんな感じなんだ・・・ん?」
そう言うと一刀殿は私の手と私の顔を交互に数回見ると、急に顔が赤くなり手を離した。
「ご、ご、ごめん!いきなり手を握ったりなんてして。あ、話し方もかわっちゃってる。すみません急に砕けた話し方をしてしまって!」
そう言い一刀殿は先ほどまでの真剣な顔とは打って変わって、真っ赤な顔であたふたしていた。
「ふふ、いえむしろ砕けた話し方をしていただいた方が嬉しいですし、それに何故かそちらの方がしっくりきますから。」
「そうです・・・いや、そうかな?ならこの話し方でいかせてもらうよ。」
そう言い笑ってくれた。どうやら私の提案を受け入れてくれたようだ。嬉しい、一刀殿との距離が縮まったように感じらる。
「はい!むしろよろしくお願いします。」
そうして2人で笑いあっていると
「・・・何やら2人でいい雰囲気になっていますな。」
「とうとう凪にも春が来たんやな!」
「凪ちゃん!抜け駆けはずるいなの!」
他の3人がそう言ってきた。・・・完全に忘れていた。
一刀視点
凪との手合わせも終わり、話し方も変わった。おかげで凪とさらに仲良くなれたのだが
「一刀さん私も凪ちゃんと同じような話し方がいいなの!」
「いや、あの」
「またその話し方してるなの!もっと砕けた話し方で!」
「わ、わかった!これでいい!?」
「ふむ!満足なの!」
は〜〜〜。こんな感じで沙和が凪と同じように話してほしいと言ってきた。最初は断っていたのだが、あまりにも詰め寄って言ってくるので俺が根負けした。
「あ、カズうちも同じような感じでよろしくな。」
「いや、真桜に至っては今日あったばかりだし流石に・・」
俺がそう言うと真桜は顔を手で覆い
「カズはうちのことが嫌いなんやね。」
なんて上目遣いで言われた。そんなことされたら
「・・・わかった!わかったから!そんな目で見ないで!」
男なら誰しもそうなるよな。
「よっしゃ!泣き落とし成功や。カズは思った以上にうぶやな。」
そう言い真桜が身体を近づけてきた。
違うからね!女の子に縁がなくて慣れてないからとかじゃないからね!
「お、また顔が赤くなりましたな。」
「一刀さん可愛い〜なの!」
「あ、え〜とそうだ凪!さっきから気になってたんだけど、気って俺でも扱えるの?」
話題をそらすために凪に気になっていた事を聞いてみた。
「逃げましたな。」
「逃げたなの。」
「逃げたな。」
「3人で同じ事言わなくていいから!凪も笑ってないで質問に答えてくれ!「
「ふふ、すみません。そうですね、気を扱えるかどうかは本人の才能次第ですね。」
「才能か・・・それはどうすればあるかわかるの?」
聞き慣れた言葉に少し考え込んでしまった。・・・忘れよ、今は気についてだ!
「そうですね・・・口で言うのは難しいのでやってみましょうか。」
「わかった、どうすればいい?」
「では、楽な姿勢で座ってください。」
気の才能を見てくれるようなので言われた通りに座った。
「そして目をつぶって自分の身体の中に意識を向けてください。意識ができましたら1度頷いてください。」
身体の中に意識?どういう事だ?
疑問に思いながらも自分なりに意識してみた。意識しだして少し経つと、呼吸の音や心臓の音が聞こえてきた。これでいいのかな?
意識ができた事を教えるために頷いた。
「出来たようですね。次に私が一刀殿肩に手を置き、そこに一刀殿の気を集めます。もしここで何も感じられないようですと残念ながら気を扱う才能ないと思われます。」
なるほど、ここが一番重要って事か。・・・絶対感じとってやる。
「それでは集めますね。」
凪はそう言うと先ほど言ったように肩に手を置いた。そして
「・・・お?」
少し経つと凪が手を置いた肩がだんだん暖かくなってきた。
「おぉー、なんか不思議な感覚だな。」
「感じられましたか?」
「うん、なんか暖かい何かが肩に集まってる感じ感じ。」
「いい感じですね。それではその気の感覚を意識しながら手のひらに移動させてみてください。」
移動か、・・・こんな感じか?
体の中を流すように気を移動させた。すると、手に暖かい物が移動した。
「・・・ん、移動できたみたい。」
「もう出来たのですか?・・・それでは最後に移動させた時のように、手から外に気を押し出すような意識をしてください。」
そう言われたので、さっきやったように
「ふんっ!」
外に押し出すようなイメージで力を入れてみた。だが、
「・・・何も出てこない。」
凪のような気弾は出てこなかった。駄目なのか?
そんなことを考えていたら
「一刀殿、手をよく見てください。」
凪がそんな事を言ってきた。言われた通りによくみてみると淡く光っている。
「俺の気、弱くない!?」
あまりの弱さに驚いていると凪が教えてくれた。
「一刀殿、それは貴方の気が弱いからではありません。」
「え、そうなの?」
「はい、肩に触った時に感じたのですが、一刀殿の気の内包量は常人よりもかなり多いと感じられましたし、気の扱いも移動の速さからみて、かなり長けているように思えました。その事から考えるに一刀殿の気は、身体強化に長けている気だと思われます。」
「身体強化に長けた気・・・つまり凪の気とは性質が違うって事?」
「はい、自分の気は外に放出する事に長けている気ですので一刀殿とは真逆の性質ですね。」
そうなのか。気にも色々な種類があるんだな〜。っとそれはそうと気を体感してみるか。
そう思って立ち上がり、近くにあった木の近くで正拳突きの構えをとった。そして、
「ッはぁ!」
バンッ!
木を思いっきり殴った。すると木が大きく揺れ、拳の形に跡がついた。
「・・・すごいな、本気で殴ったのに痛みがほとんどない。」
俺は本気で殴って痛みがないことに驚いた。だが、
「・・・一刀さん、驚くところはそこじゃないなの。」
「?他にどこかある?」
「どこってカズ、木に跡がつく時点でおかしいやろ。」
「?どこが」
「一体」
「おかしいのだ?」
俺が疑問に思っていたことを凪と星も思っていたようだ。やっぱりおかしくないよな?
「そうやった、 ここには出来る人が3人おるんやった。」
「真桜ちゃん・・・」
「沙和・・・」
ガシ。2人は何故か固く握手をしていた。仲良いんだな〜。
そんなことを考えているといきなり力がスッと抜けてしまった。
「あれ?急に力が入らなくなったぞ。」
「気を使い切ってしまうと、今のように力が入らなくなってしまうため注意が必要です。」
「なるほど、万能って訳じゃないのか。」
・・・ でもこの力は応用が利く。上手くすれば更に強くなれるぞ。
「一刀殿?」
そんなことを考えていると凪が話しかけてきた。
「ん、どうかした?」
「いえ、何か思いつめているように見えてので」
・・・ぽん。
「ひゃ!か、一刀殿!?」
「心配ありがとう。でも、俺は大丈夫だから安心して。」
そう言って頭を撫でた。・・・駄目だな、こんな女の子に心配されるなんて。
「か、一刀殿。その、」
「ん?なに?」
なでなで
「・・・はぁ〜一刀、その頭を撫でるのをやめてやれ。でないと爆発してしまいそうだぞ。」
そう言い凪の方に指をさした。言われた通りに見てみると今にも煙が出そうな程真っ赤にになっていた。
「わぁ!ごめん!大丈夫凪!?」
「い、いえ。嫌ではなかったので。」
「ちょっと凪ちゃんだけずるいなの!」
凪が最後の方に何か言ったいるようだが、沙和の声に重なってよく聞こえなかった。
「わ、分かった。」
とりあえず沙和を落ち着かせるために頭を撫でた。う〜ん、こんな事でいいのか?
「お、なんかええなうちも撫でたーな、一刀。趙雲はんもどうや?」
「そうですな。せっかくですので一刀、私もお願いします。」
いつ仲良くなったのか真桜が星を誘いそんなことを言い始めた。
「えーっと、そうだ!凪、気を鍛える方法はあるの!?」
俺は咄嗟に話題を変えた。あれ以上かまっていたらエスカレートしそうだったからな。決して恥ずかしいからじゃないぞ!
「意気地なしやな。」
うるさいわ!
「は、はい。あるにはあるのですが、やはり実戦的に使って扱いに慣れたり鍛えていくしか方法はありませんね。」
「やっぱり使えしか方法はないか。分かったありがとう凪。」
「いえ、こちらも無理を言って手合わせしていただいたのでおあいこです。」
「そういえば手合わせの決着がついてないけどどうする?続ける?」
俺がそう言うと凪が首を横に振った。
「いえ、やめておきます。あれ以上続けても結果は変わらなかったでしょうし、それに一刀殿はまだ本気を出していないようでしたから。」
「いや、本気で相手してたけど?」
「そうなのですか?自分には動きに余裕があるように思えましたが。」
「気のせいだよ。」
「そうですか。」
そう、気のせいだよ。俺は手合わせで出せる全力は出し切ったつもりなんだから。
そんなことを考えていると凪が
「日が暮れてきましたね。明日も早いですしそろそろ我々の宿に帰ろうかと思います。」
「・・・そっか、これで当分は会えなくなるね。」
「はい・・・また会える事を願っています。今日は本当にありがとうございました。」
「お礼を言うのは俺の方だよ、気の事について教えてくれてありがとう凪。また会える日を楽しみにしてるよ。」
そう言いお互いに握手をし、別れた。また会えるのはいつになるか分からないが、楽しみに待っていよう。
「そういえば星、俺たちの出発はいつなの?」
そろそろだとは思うけど。
「おお、そう言えば言っていませんでしたな。我々の出発は2日後です。
「・・・2日後?」
「はい、何でも近くの村に賊が現れるそうなのです。そうと知ったからには世を憂う者として助けに行かなくてはと考えまして、1日準備の時間を設けてから出発しようという話になったのですが、何か不都合が?」
「ううん、何でもない。分かった二日後だね。準備しておくよ。」
「ええ、よろしくお願いします。」
そう言うと星は宿の方に帰って行った。
「・・・ふぅ」
さて俺は、
「店長への言い訳考えておかないと。」
大丈夫かな明日。
こんにちはこんばんはアリアです!
8話目を読んでいただきありがとうございます!さて今回は、気について触れた回となりました。一刀は今でもかなり強いですが、私の考えているある構想では必ず必要になると思ったので覚えていただきました。今後使う機会が多くなってくると思うのでそこら辺も楽しみにしていただけると幸いです。
そして次回、いよいよ本編に入って行きます!長かったですねー。私もびっくりしています。まぁそれは置いておいて、これから盛り上がって行きたいと思うので応援よろしくお願いします!
それでは今回はここまでまた次回会いましょう!再見!
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皆さんのおかげで8話目です!
支援、コメント、読んでくださった皆さんに感謝です!