<登場人物紹介>
姓名 字 真名 簡単な説明
北郷一刀 なし なし 一応、主人公。未だ天の御遣いとも呼ばれず、ただのお荷物。
甘寧 興覇 思春 主は己。錦帆賊の頭領。まだ誰にもデレてない。
丁奉 承淵 冬灯 言葉使いの荒いニヤニヤ少女。錦帆賊の将。
現在の強さの比較
甘寧 > 丁奉 >>|万里の長城|>> 錦帆賊の兵 > 一刀
あれからどれくらい経ったのだろう…。
一刀は、夕日に映える錦帆賊の由来となった錦の帆を見つめ、膝を抱えていた。
「黄昏れてるところ悪ぃが一日も経ってねぇーぜ、兄ちゃん」
「…スンマシェン」
丁奉のツッコミに一刀からはそんな言葉しか出なかった。
朝食後、とりあえず今の錦帆賊の状況を説明された。
それが終わると一刀の実力が知りたいと言われ…惨劇が…。
甘寧と立ち合ったのだ。
あれは立ち合ったといえるのだろうか。
まあ結果は、言うまでもなく、まさに一蹴された。
そして、ついさっき目が覚めた。
ホント、夕日が眩しいね。
「そういや甘寧は?」
「昼からの誰かさんとの試合があまりにもくだらなかったっつって、兵を鍛えまくってたぞ」
どうやら墓穴を掘ったようです。
「くだらない…か、剣にはちょっと自信があったんだけどな」
部活でも贔屓目に見てそこそこ強かったし、毎日基礎トレーニングは欠かしていないのに。
結果は、分かっていたけど凹む。
「自信なぁ…まあ体力はそこそこあっただろうが、あれじゃあな。
その兄ちゃんの言う自信は粉々に砕けたかい?」
「木っ端微塵だね。もう俺なんか虫以下です」
「にっひひひひ、そこまでじゃねーよ。ちゃんと自分の実力が分かったみたいだしな。
てゆーか砕けてなかったら明日はもっとボロ布のようにしてやったんだがよ」
丁奉さん…ニヤニヤとしながらそんな怖いことを言ってるし。
「まあ、明日から色々教えてやるぜい」
明日、
明日か・・・・・・。
嗚呼、今日の事を色々思い出してきた。
朝食後、船に戻り、船長室に案内された。
隣は、甘寧の自室になっているそうだ。
大陸の地図やら、この辺の地図だろうか―大きな川の地図が無造作に置かれた机を中心に俺達は席に着いた。
「基本的にここで今後の方針やらを決めている。まあ将なんて私たちだけしかいない。
実質、私と冬灯で決めているんだがな」
「だぜい。ウチの奴等は、腕っ節はあるんだがおつむの方がな」
ニヤニヤとそんなことを平然と言っている丁奉の顔は、苦笑に近いのかもしれない。
「北郷。貴様は我ら『錦帆賊』のことをどのくらい知っている」
甘寧の質問に一刀は首を傾げつつ答える。
「えーっと、江賊?というので帆に錦を使ってると…うん、何にも知らないや」
そもそも自分の記憶に錦帆賊という単語があっただけでもすごいと思います。
「我らは賊と名乗っているが基本的に略奪行為はしない」
「へーっ」
そうだったのか。
でも俺の世界の歴史では、かなり無茶なことをしていたとあったような…。
たしか『鈴の甘寧』以外にも『皆殺しの甘寧』っていう通り名があったはずだ。
「基本的には…だがねぇ」
言い放つ丁奉の口元は、ニヤニヤとしていた。
「えっ、それってつまり」
「冬灯…それに北郷も黙って聞け。
そもそも『錦帆賊』という名前は、官軍の奴らが勝手に我らのことをそう呼びだしたまでのこと。
ちょうど良かったからそのまま使っているだけだ」
「元々、俺らは俺らの縄張りを荒らしてくる連中を相手にしていただけだぜ。
中には役人もいたみたいだけどな」
だから丁奉さんニヤニヤと怖いことを言わないで。
「ああ、だから『賊』なんだ」
役人の相手なんかしたら賊にもなるし、民衆の間で噂にもなるだろうさ。
「…話を続ける。主な仕事は4つ。運送、護衛、警備、そして略奪。まあ傭兵団みたいなものだな」
「ふーん、傭兵団ね…略奪?今、略奪って言ったよね。賊だよね。やっぱり賊だよね」
「…五月蝿い、黙れ」
言うが早く、甘寧の手は彼女の愛刀『鈴音』に伸びていた。
「ハイ」
だから刃物を出さないで。
「冬灯も言っただろう。縄張りを荒らしてくる連中の相手をしていると。
つまりは報復だ。我らは聖人君子でもなんでもない。やられて黙っている道理はないだろう」
「…そうなんだ」
略奪、報復…か、死ぬんだろうな…人が。
「北郷、何か言いたそうな顔だな」
やっぱり、顔に出ていたみたいだ。
「略奪って聞くとね」
「甘いな、兄ちゃん。この乱世生きるか死ぬかだぜ。それに俺らはけっこう善良な方なんだぜ。
出来る限り、殺らないようにしてるしな(その方が効果的ってのもあるし)」
「甘い…うん甘いんだろうね、俺は。…俺がいた世界ってさ、もちろん争いがなかったわけじゃないんだ。
でもそういうのってやっぱり他人事、どこか遠い世界でのことって感じでさ。
わかないんだよね、実感って言うのかな」
「…北郷」
俺の話を黙って聞いていてくれた甘寧がポツリと洩らす。
「なんだ?」
「とりあえず走ってこい」
「……はあ?」
今の話の流れから、どうしてそうなるんですか?
「町の外れまで行って戻って来い。誤魔化すなよ」
冗談ではないようだ。
甘寧は真剣な目でじっとこちらを見つめ…いや、睨んでいる。
怖い。
めっちゃ怖いんです。
「行ってきま~す」
有無を言わさぬ迫力に負け、町外れに向かって走り出す。
side:甘寧
「どう思う」
自分の傍らにいる丁奉に尋ねる。
「どう思うとは、どういう事ですかい、お頭」
丁奉のニヤニヤとした表情を貼り付けた顔に苛立つ。
長い間、自分の側にいる丁奉には、少しの言葉だけで十分に伝わる。
私を苛立たせるように、分かっててやっているのだろう。
だからこそ私は丁奉の言い方を無視して、話を進める。
「やっていけると思うか…一つの旗として」
我らの御旗…とまでは言わない、並び立つくらいにはなって欲しいと望んでしまう。
「少々優しすぎるところもあるが、まあ兄ちゃんならどうにかなるんじゃねーかい。
というより俺らがどうにかさせるんだけどな」
「フフッ、違いない」
果たして自分達の思惑通りにことは進むのか
side end
一刀が町外れから帰ってくると、二人とも船を降りてすぐにある広場で待っていた。
「おう、お疲れ、兄ちゃん」
「ふぅ、疲れたー。結構距離あったけど、何でこんなことを?」
走って熱くなった身体を、クールダウンさせる為に、軽いストレッチをしながら聞いてみる。
「準備運動だ」
事も無げに何を言っているのだろう。
「何の?」
「北郷…貴様の実力が知りたい。剣を取れ」
そう言うと甘寧は剣を放り投げてきた。
いや、危ないから。
普通に手渡しでくれても良いんじゃないか。
そう思いながらも、剣を取る。
…あれっ?
「甘寧、これ、刃潰してあるよね?」
「何故そのようなことをしなくてわいけないのだ?
刃をつぶしてしまったら訓練にならんだろう。早く構えろ」
甘寧は本当に何故だ?という顔をしている。
そうですね、俺の常識は通じないんですね。
「それじゃ、…行くかな」
俺は、甘寧の出方を知るため正眼の構えをとった。
「兄ちゃん、死ぬなよー」
丁奉さん、ニヤニヤしながら言うことじゃないですよ。
「?妙な構えだな…来ないならこちらから行くぞ」
その言葉と微かな鈴の音だけが耳に聞こえた瞬間、意識が途絶えた。
「兄ちゃん…想像以上に弱ぇ」
side:甘寧
時間は、少し戻る。
走っていった一刀を待つ二人は未来を想う。
「このまま乱世が続けば、龍が現われる…か。本当にそんな時代が来るのか?」
「お頭も分かってるだろ。今の世の中は乱れきってる。もうこの国には抑えられねぇよ。
一匹や二匹じゃねぇよ。何匹もの龍が覇権を争いやがる。
それはそう遠い未来じゃねぇさ。そんなもんに巻き込まれんのは嫌だが、喰われるより喰う方が良いってもんさ」
机の上に置かれた大陸の地図―
そこから何匹もの龍が出で、最後の一匹になるまで争い、頂に昇る。
そんな想像が頭をよぎる。
「だからこそ、旗か」
「別にこのまま名が広まれば、お頭だけでも良かったんだがね。
使えるものは何でも使わねーとな。どっちにしろこのままじゃ俺らみたいな弱小に未来はねーよ…。
弱小は言い過ぎだな、極小だ、極小」
ニヤニヤとよくもそんなことを言ってくれる。
だがそれも事実だった。
実際に兵の数は八百人程度しかおらず、未来を語る資格すらないのかもしれない。
でも、
それでも―
自分は昇ってみたい、頂に。
甘寧はそれがどんな意味かも知らない。
王になるとは、
民を統べるとは、
そんなことは未だに考えていない。
ただ、登りつめたい。
それだけのこと。
甘寧、王に在らず。ただ一匹の獣也。
<あとがき>
三話目ですね。
MuUです。
今回は、錦帆賊の仕事内容を軽く説明した内容ですか。
前回の話のコメントで土台がしっかりしてる的なことを書いて貰ってましたが、
そんなことはありません。
土台?
スポンジで出来てそうですね。
とりあえずスポンジにセメント塗ります。
しかし、こんな眠たい作品を読んでもらい、さらにコメントまで頂けるとは恐悦至極にございます。
甘寧は、仕える君主がいないとこんな感じで突っ走るかなという雰囲気で書いてます。
キャラ破綻・・・まだギリ大丈夫かな。
獣が王になるか、はたまた飼い馴らされるか
いずれにしてもまだまだ遠い
2/12 改定
少しづつ改定しています
…ここに書くことも特になくなってきましたね
ノシ
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まだまだのんびりが続きます
一刀くん
この世界に来て・・・・あれ二、三日しか経ってない
ヤバイ
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