No.912104

真恋姫無双 おせっかいが行く 第二十蜂話

びっくりさん

本日2話目の投稿
いよいよ物語が動き出す

2017-06-29 23:27:33 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9511   閲覧ユーザー数:6605

 

 

 

 

 

呂布軍が一刀と合流した直後のこと。

村人の協力の元、村の中心にある広場では大量の炊き出しが用意されていた。思わず喉を鳴らす呂布軍。

 

「さあ、みんな。食べなよ。お腹空いているでしょ?」

 

一刀が促すも、すぐには動こうとはしない呂布軍。今までの道のりで出会った人達との反応があまりに違いすぎる驚きと、優しすぎる対応に何かあるのではという疑惑が合わさって行動に移すことが出来ないのである。ただ一人を除いて。

 

がつがつ!!!むぐむぐ・・・ゴクゴク!!

 

彼女・・・恋は一刀の言葉を聞いて食事に飛びついたのである。

 

「「「「恋(呂布)殿!!」」」」

 

口いっぱいに食べ物を詰め込み、ハムスターのように頬を膨らませて食べる。今まで食べられなかった分を取り返すように次々と胃の中に収めていく恋。そんな恋の様子に驚きの声を上げる呂布軍の面々。

 

「むぐむぐ。みんなも・・・食べる」

「いや、しかし・・・」

「ご主人様は・・・優しい。だから、大丈夫」

「呂布殿・・・」

「音々は・・・・信じられない?」

「!!・・・そうでした。兄上はそういう人でしたね」

 

恋の言葉に音々は彼女に続くように食事に口を付けた。

 

「陳宮殿まで!」

「兄上は・・・優しい。恋殿の言う通りです。皆も食べるのですぞ」

 

音々までが食事を始めたことで、一人、また一人と口をつけていく。数分も立たずに全員が食事に夢中になり、しばらく無言で食事の音だけが響き渡るのであった。これはそんな光景を笑顔で見つめるおせっかいの物語。

 

 

 

 

 

恋達が一刀の配下になると宣言した直後のこと。軍議の間の扉が開いた。それにより、扉に皆の視線が集中する。

 

「おとうさ~ん。おはなしおわった~?」

「おわった~?」

「りりちゃん!きょうちゃん!かってにはいっちゃだめだって!!」

「あらら。仕方ないなぁ・・・みんなおいで」

「「わ~い」」

「ごめんなさいごめんなさい」

 

小さな訪問者に苦笑して招き入れる一刀に、笑顔で駆け寄る璃々と劉協。劉弁は真面目な性格な為、終始謝りながら近寄ってきた。紫苑以外の一刀陣営の面々もやれやれと苦笑している。璃々の母である紫苑は娘の行動に怒り心頭であったが。

 

「こら!大事なお話し合いなんだから邪魔しちゃダメでしょう!」

「まぁまぁ、紫苑。落ち着いて」

「ですが・・・」

「来ちゃったものは仕方ないだろう。さて、璃々ちゃん達。まだ話の途中だから、ここにいてもいいけどちょっと静かにしててね」

「「は~い」」

「ごめんなさいごめんなさい」

 

璃々達を落ち着かせ、紫苑の傍に行かせると、一刀は恋達に向き直り、話を中断させてしまったことを謝罪しようとして、恋を除く呂布軍の面々が茫然としている様子に気が付いた。

 

「どうした「「「「「「「「陛下ぁああああああああ!?!?!?!?」」」」」」」」」

 

董卓軍に所属し、玉座の間で皇帝を見かける機会もあった呂布軍は劉弁や劉協の顔も当然知っている。自分達が戦で敗れた為、どうなったかはわからないが、本来洛陽にいるはずの人物が何故、ここにいるのか。しかも、先ほど一刀のことを父と呼んでいなかったか。あまりに驚愕し、絶叫してしまうのであった。しかし、驚愕することはまだある。それは璃々達に遅れて再び軍議の間の扉が開いたことが始まりであった。

 

「軍議中失礼します。璃々様達がこちらにいらっしゃって「「「「「「「「か、かかか華雄将軍!!!」」」」」」」」って、どうしましたか!?」

 

軍議の間、璃々達の相手を任せていた葉雄が現れたことにより、再び呂布軍の絶叫が木霊した。入室直後の絶叫に面食らう葉雄。皆が皆、驚愕しっぱなしの軍議になってしまった。

 

「なんとまぁ・・・こんなことってあるのですな」

「セキトえらい!」

 

ひとしきり驚いて落ち着いたところ、劉協、劉弁、葉雄がここにきた経緯を説明した一刀。一刀と同居していたことがある恋や音々は普通に受け入れ、高順などは目の前の現実を素直に受け入れた。というか、受け入れざるを得なかった。

 

 

 

 

軍議の間での話し合いの後、知り合いであるようなので少し話をするといいと気を利かせ部屋を後にする一刀達。その言葉に甘え、音々達は華雄と劉協、劉弁と話しをすることにした。陛下と話すのはとても恐れ多いことではあったが。まずは華雄からだ。

 

「記憶喪失ですか・・・」

「はい。そうみたいです。おぼろげにこんなことがあったと思っても具体的に思い出そうとすると頭痛がして思い出せないのです」

「どこまで覚えているのですか?」

「洛陽にいたときのことは憶えてますね。なので、皆さまのことは憶えております。ただ、私の名前は・・・」

「なるほど。比較的近い記憶はあるのですな。それはそうと、敬語はやめませぬか?なんだか、貴方に敬語を使われると違和感があるので」

「それがですね。私は以前の自分がわからないのです。今ではこのしゃべり方が普通でして・・・」

「わかりました。慣れることにしますね」

 

華雄・・・ここでは葉雄は自分の記憶については生まれと両親くらいしか覚えていなかった。恋達からすると別人のようではあったが、記憶喪失な上思い出そうとすると、それを拒否するように頭痛が起こる。今はあまり刺激しないで欲しいと一刀達からも言われた為、下手に昔話をすることをやめ、今の葉雄に慣れるようにする呂布軍の面々であった。

 

「久しぶり」

「おねえちゃんもね!わたしたちはもちろん、せきとたちもげんきだよ」

「れんおねえちゃんたちがぶじでなによりです」

「しかし、驚きました。まさか、兄上のところにいらっしゃるとは」

 

ここにいる経緯は一刀達から説明されたが、陛下本人達はどう思っているのか気になったので聞いてみることに。まぁ、一刀のことは信頼しているので心配はしていないが。

 

「ととさまはとってもやさしいの」

「おとうさまはわたしたちのことをたいせつにしてくれてます」

「「ととさま?おとうさま?」」

 

陛下の一刀への呼び方が気になる一同。本人達に聴いてみるとなんてことない、音々と同じである。恋と当事者だった音々はすぐに納得出来た。が、まだ一刀と出会ったばかりの恋の部下達はそうはいかない。

 

「白士とは何者だ?」

 

そんな彼女達もすぐに気づくだろう。一刀という男がどういう人物なのかを。

 

 

 

 

所変わってここは徐州の彰城。反董卓連合として戦に参加し、見事一番槍の武勲を上げた劉備軍は徐州の太守に任命されていた。劉備はここを拠点として初めて任命された太守の仕事をこなしながら、自分の理想を叶える為に日々頑張って・・・。

 

「桃香様、次はこっちの書類の確認をお願いします」

「ね、ねぇ・・・愛紗ちゃん。そろそろ休憩したいなぁって・・・」

「桃香様。次はこっちの書類を確認してくだしゃい!」

「えっと・・・・次はこっちの書類でしゅ!」

「まだまだあるわよ。休んでる暇なんてないの」

「ひぃいいん!!」

 

次々と舞い込んでくる書類に泣きながら取かかっていた。うん、まぁ・・・頑張っていた。新しく赴任したことでやらなければならない手続き、治安が悪化し盗賊等が増加していることへの対策、不作による飢饉などやらなければならないことが満載なのである。あまりに膨大な為、保護した董卓や賈駆にも協力してもらって。

今、執務室では桃香、愛紗、諸葛亮、鳳統、董卓、賈苦の6人である。ここにいない武将は兵の調練に出ている。その最中、諸葛亮からこんな話題が飛び出た。

 

「そういえば・・・桃香様。隣の豫洲が平定されたらしいですよ」

「え?あのあたりって有力な人っていたっけ?もしかして、劉表さんか曹操さんが

しちゃったの?」

 

桃香も太守になって仕事をしている内に周囲の状況が頭に叩き込まれている。彼女の言うう通り豫洲に有力な諸侯はいなかった。そして、言葉通りの人物が平定したとなると、すぐ隣であるここ徐州にいつ攻め込んできてもおかしくない。今はまだ赴任したばかりで戦力が整っていない状態な為、大国を相手に出来る余裕がない。ただでさえ、北に袁紹という巨大な勢力がいつ攻めてくるかわからないのだ。だが、返ってきた返事は全く予想していなかった答えであった。

 

「いえ・・・私は全く聞いたことがない名前なんですが。白士という名前らしいですよ」

「「え?」」

 

全く予想できなかった名前に思わず声を上げてしまった桃香と愛紗。

 

「白士・・・だと?」

「ええ。聞いたことがない名前でしたが、ここ最近で急激に力をつけてきた人物のようです。周辺の街を次々と傘下に加えており、ついに豫洲を平定するまでになったと・・・あわわ。どうかされましたか?」

 

補足説明を入れた鳳統だったが、桃香と愛紗の強い反応に異変を感じて思わず疑問が口に出ていた。しかし、二人の頭には一人の人物が浮かび上がっており、それに気づくことなくさらに詳しい説明を求める。

 

「その白士という者はどういう人物なのだ?」

「そうですね。そこまで情報は入ってきていないのですが・・・白く輝く衣を纏い、虫を操り、彼の支配する土地は不作知らずだとか・・・すごい怪しい話なんですがね」

「「やっぱり間違いない」」

 

諸葛亮が話した内容は事情を知らない人が聞いたら怪しい術師か何かではないかと思ってしまうものだった。しかし、桃香と愛紗には心当たりがありすぎる話である。二人は確信した。諸葛亮のいう白士とは二人の考えてる人物と同一であると。

 

「ねぇ・・・朱里ちゃん」

「なんですか?桃香様?」

「その噂の白士さんと会談したいんだけど、手配してもらえるかな?」

「え?」

「桃香様?」

「私と愛紗ちゃんは多分、その白士って人と知り合いだと思う。それを確かめたい。それに・・・もしかしたら、仲間になってもらえるかもしれない」

 

桃香の突然の発言に驚く面々。だが、そこは智将揃いの面子だけにすぐに桃香の発言を決行した場合にどういう状況になるかを想定し、その有効性に気付いた。

 

「私達は今、北の袁紹という脅威がある。南の孫策はまだ袁術とのゴタゴタでしばらくはこちらに手を伸ばすことはない」

「だが、西には曹操と劉表という2勢力がいる。袁紹、孫策とは違い豫洲を挟んでいる為、先の2勢力よりかは優先順位が下がるというだけで。言ってしまえば豫洲に手を伸ばされれば、脅威なのは間違いない」

「でも、白士という豫洲を平定した者が現れた。そこで、彼と同盟を結ぶことが出来れば曹操、劉表に対する壁になる。悪くないわね」

「同盟を結べればいいけど。まぁ、結べないにしても、同時に2勢力を警戒しなければならない状況から1勢力に減る分、まだましだわ」

「・・・わかりました。近いうちに会談出来るように手配しておきますね」

「ありがとう。朱里ちゃん」

 

白士なる人物――桃香は一刀だと思っている。との会談の手配をお願いしている最中、慌ただしく執務室の扉が叩かれる。

 

「どうした?」

「報告致します。街の入口に複数の騎兵の姿を確認!」

「敵襲か!!」

「いえ・・・その騎兵は、公孫賛様です!!」

「「「「「「え?」」」」」」

 

後に桃香達は知ることになる。袁紹が公孫賛との戦に勝利し河北を制圧したことを。乱世の時代はもう動き出していることを。

 

 

 

 

 

 

「そう・・・麗羽が動いたのね」

「はっ。幽州を制圧したことにより、次は南に矛先が向くのは確実。となると次に狙われるのは・・・」

「うちか、劉備のところになる・・・か」

 

陳留に拠点を置いている曹操陣営。斥候から入った報告を聞き、袁紹が河北を制圧したことを知る。敵が強大になり、いつ自分のところが狙われてしまうのか、普通ならば焦りが生まれるこの状況に、曹操は不敵に笑っていた。

 

「風」

「はい~」

「軍備を整えておきなさい。時が動き出したわ」

「承知しました~」

 

傍らで政務を行っていた程昱に指示を出す曹操。一刀の村から離れた程昱と郭嘉は無事曹操に仕官することが出来ていた。その智謀を存分に発揮し、曹操の信頼を勝ち得今では荀彧に次ぐ軍師としての地位を確立しつつある。曹操の指示を遂行しようと執務室を出て行こうとする程昱が扉を開けようとすると、程昱より先に扉を開けた者がいた。但し、程昱とは逆に執務室に入ってくる者であったが。

 

「華琳様。新たな情報を手に入れました」

 

曹操軍筆頭軍師のネコミミ軍師こと、荀彧である。曹操は彼女の持つ情報網を使い、大陸中から様々な情報を手に入れている。そんな荀彧から直々に報告とはよほど重要なことだと判断する。普通ならば木簡に記載して報告してくるのだから。

 

「豫洲を平定した者が現れた?」

「はっ。私どもが反董卓連合を組み洛陽攻めを行っている間に、周辺の賊を討伐し勢力を拡大していたようです」

「まぁ、あのあたりには有力な諸侯はいなかったのだけれど。それでも、豫洲を平定するまでとはね。何者なの?」

「それが・・・白士という人物で、それ以外の情報が得られないのです。まるで、突然この世界に現れたように過去の情報がさっぱりわかりませんでした」

「桂花でもわからなかったの?余程厳重に隠蔽してるのかしら?」

 

どんな情報でも手に入れるとは言わないが、荀彧の情報収集能力の高さを知っている曹操はその荀彧をもってしても何も得られなかった人物に興味を抱く。その上、豫洲までも平定している。戦力もそれなりに持っていると考えられる。すぐに曹操は指示を飛ばした。

 

「桂花。その白士という人物を徹底的に調べなさい」

「はっ!それともう一つ。近々、劉備がその件の白士と接触する動きを見せております」

「ふ~ん。面白いじゃない。あの子もこんなに早く動き出すとは・・・予想外だったわ」

 

曹操は笑みを浮かべながら荀彧に劉備のことも調査する指示を飛ばすと、その指示を受けた荀彧は頭を下げ執務室を出て行った。

 

「白士・・・ね。私の障害になるようなら叩き潰して上げるわ」

 

好戦的な笑みを浮かべる曹操。彼女はこのとき気が付かなかった。白士という名前が出たときに反応した人物がいたことを。このとき彼女が気づいていれば、もっと早く欲しい情報が手に入ったことだろう。そして、この後の展開ももしかしたら変わっていたかもしれない。

 

 

 

 

 
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