「女性の隊員さんも良いなあ」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
:第7話<軍用車で出発>(改2)
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私たちは玄関ドアを開けて外に出た。
夕立が玄関から見える家並みを見て言う。
「ここは小さな町っぽい」
「ああ、境港の旧市街だよ」
少し考えた彼女はチラッと振り返る。
「そっかぁ、ここって司令の故郷っぽい?」
「そうだ」
ちゃんと覚えていたか。
私の実家は表通りから少し入り込んだ場所にある。家の前は舗装されているが小さな路地で、そこに鎮守府の軍用車が停車していた。
もともと境港市には空軍の基地があるから市内では、ちょくちょく軍用車を見掛けることがあった。だから街の人にとって珍しいもの
ではないだろう。
しかし、さすがに細い路地で軍用車は場違いな印象を受ける。近くの住民や通行人が珍しそうにチラ見している。
私たちが近づくと直ぐに日向が降車して敬礼をした。
「待機中、異常ありませんでした」
「ご苦労」
私も敬礼を返す。
「ほぉ」
背後から声がした。
私と夕立が振り返ると花束を持った母親だった。
「なんだ、すごい車だな。へぇ……こっちも女の隊員さんか」
やはりそこに関心が行くか。
「日向と申します」
軽く会釈をする日向。母親も頭を下げている。軍人に対する市民の尊敬は大きい。それが女性であってもだ。
やや軽い感じの夕立では女学生に見られたかも知れないが日向は落ち着きがあるし品性と貫禄がある。まさか祥高さん、こうなることも見越していたのかな?
「で、どこに乗ぉだ?」
母が言う。
「あ、後ろに。寛代」
私が言いかけると寛代が直ぐに車を降りて座席をずらした。
「……」
無言だが機敏だ。
続けて夕立が、さっと皆の前に出て言った。
「お母様は後ろの座席の真ん中がいいと思いますので私、先に乗りますね」
素早く気を利かせる夕立。「済みません」と軽く頭を下げながら先に乗り込む。ポイント高いぞ。
これは些細なことだが母親は感心している。
「女性の隊員さんも良いなあ」
……『ぽい』は何処へ消えたんだ? と、私はどうでもいい点が気になった。この期に及んで私も、のん気だ。
母親は軽く会釈しながら
「お世話になります」
と、夕立の後に続いて後部座席に乗り込んだ。
「では」
「ああ」
私は日向と軽く敬礼をした。私が後部座席に乗り込むと助手席側の寛代が座席を元の位置に戻して乗車した。
周りを確認してから日向が最後に乗り込んで言った。
「よろしいですか?」
振り返りつつ彼女はエンジンを始動させる。
ドルルウ! ……と、軍用車のデカい音がする。そして遠慮なく真っ黒い排気ガスが出てディーゼル特有の香りが漂う。
もちろん軍関係者は慣れている。ただ一般人の母親は実際に乗ってみて想像以上の雰囲気に驚いたようだ。目を丸くしてキョロキョロと見回している。
「すごいな」
「うん、ちっちゃいダンプみたいなものだから」
すると夕立が言う。
「乗り心地は良くないと思いますから、何かあったら私にしがみ付いてもイイですよ」
また気の利いたことを言う。ポイント加算。
ふと気付くと軍用車の音で近所の人が窓や通りから顔を出していた。そこには私も知った顔も見える。
「さすがに、ちょっとこれは恥ずかしいな」
私はさり気なく制帽を深くかぶった。
「出発します」
日向はシフトレバーを操作して、ゆっくり車を発進させた。
ガルルと猛獣のような雄たけびを上げながら軍用車は走り出す。音もすごいが振動もすごい。いつもは気にしなかったけど民間人(家族)を乗せるのは初めてだ。改めて気を遣ってしまう。
もしかして母親をこれに乗せたのは失敗だったか? ちょっと後悔した。でも母親は意外に「ほう、ほう」と言いながら半オープン式の軍用車内を珍しがっている。
車は路地から幹線道路へ出る。道行く人の何割かの人は、こちらを注目する。やはり軍用車なのに私以外は女性ばかり、というのが珍しいのだろう。
そんな街の雰囲気を見ながら母は言った。
「面白いな、この車」
「そう?」
意外な言葉。
「軍用車なんて滅多に乗れるモンじゃないけんな。みんなに自慢できるわ」
母親のその言葉に私は苦笑した。なるほど彼女らしい……昔から好奇心は人一倍強かったから私が心配するほどでもなかったようだ。
すると急に夕立が首を傾げながら、いつもの決め台詞を炸裂させた。
「ぽい?」
これは軍用車の騒音と風を切る音のお陰で母親には、まったく聞こえていないようだ。やれやれ、動いてしまえは何とかなるものだな。
軍用車はガルガルと唸りながら表通りを疾走し続けた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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艦娘たちの意外な気遣いに感銘を受ける司令と母親だった。そして彼らは軍用車に乗って出発する。