No.904548

ちょっとだけ予告編! 第3回「女神様からの電話」

Studio OSさん

電話の主は“時の女神様”だった。何?どうなってるの?!

2017-05-07 12:39:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:348   閲覧ユーザー数:348

 あたしは部屋を見回す。ベルの音はテレビの脇の床の上からだった。

 電話機は変わっていない。聞き慣れたベルの音はあたしに受話器を

 無意識に取らせた。

 

 「もしもし…」

 

 と、自分の名前を言いかけて大変なことに気がついた。

 そう。あたしは今、記憶喪失なのだ。まともな受け答えができるかどうか怪しい。

 おろおろしていると、受話器の向こうから明るい女の人の声が飛んできた。

 

 「やほー!元気?」

 「あ、あの…、どちら様でしょうか?」

 

 あたしはどぎまぎしながら、やっとそう一言。

 

 「あ。あたし、神様よ。か・み・さ・ま」

 「はぁ?」

 

 クエッションマークが羽をはやしてあたしの周りを飛び回る。

 

 「あなた、今、『ごめんなさい~』ってベソかいてたでしょ。だから電話したの」

 「あ、あの…ちょっと待ってください」

 「あなた今、あたしのこと変な人のいたずら電話じゃないかって思ったでしょ~」

 

 ぎくっ。

 

 「あなた今、自分が記憶喪失だなんて思ってるでしょ~。うふふふふふふ」

 

 ぎくぎくぎくっ。すべて見通されてる!

 

 「ど、どうして…」

 「言ったじゃない。あたしは神様。あなたが『人生めんどくさい』なんて

  ふざけたこと言ってたから、ちょっとバチを当てたって訳。5年ほど

  タイムスリップさせてあげたのよ」

 

 くらくら。

 あたしはめまいがした。次から次へと分からない変なことばかり。

 せっかく自分が記憶喪失だと納得させたのに、すぐさまそれをぶちこわされる。

 

 「そ、それじゃぁ…」

 「そう。あたしは”時の女神様”」

 「こ、この時代は天国まで電話回線つながってるんですか?」

 

 あたしが尋ねると、ちょっと間をおいて吹き出す先方。

 

 「ぷはははは!ん。ま~、そんなとこね。んなわけであなたには少しこちらの

  世界で反省してもらうから覚悟しなさい。んじゃね」

 「あ、待ってください、待ってくださいぃ!」

 

 ぷち

 

 切れた。

 

 「ああああああああ!」

 あたしはパニックに陥りかける。

 と、再び電話が鳴る。あわてて取るあたし。

 

 「あはははははは。焦ってる焦ってる」

 女神様の声。

 

 「い、意地悪しないでくださいよぉ、あたし、どうしたらいいんですか?

  あたし、あたし…」

 声が詰まる。

 

 女神様は急に優しい声になり、諭すように話し始めた。

 

 「いいこと?この世界であなたは学ばなければならないことがたくさんあるわ。

  十分学んだら、ひとりでに元の時間に戻れることになってるの。

  それから、あなた名前を聞き忘れたさっきの男の人。名前は青木幸秀(アオキユキヒデ)

  っていうの。あなたのことよく知ってるいい人だから、困ったことは相談してね。

  このゴールデンウィーク中、ずっとあなたにつきあってくれるでしょうから

  彼の言うとおりに行動すること。いいわね?」

 

 「は、はい…」

 

 「テレビの上に携帯電話があるわ。あたしの助けが必要なときは

  あたしから電話するから、いつも身につけておくこと」

 

 「はい」

 

 テレビの上を見るとピンクのスマフォがある。

 「それから、大事なことが一つ。あたしのことは誰にも言っちゃダメよ。

  元の時間に戻れなくなるからね」

 

 「わ、分かりました」

 

 「あ、そろそろ切るわね。彼、あなたが電話番号忘れてるかも

  しれないって連絡入れようとしてるから。じゃね。がんばるのよ」

 

 

 受話器を置いて、ちょっとの間のぼせたようにぼーっとするあたし。

 胸がどぎんどぎんいっている。自分の呼吸する音がやけに大きく聞こえる。

 どうしよう。どうしよう。

 (そうだ、青木さん!)

 と、思ったとき電話が鳴った。

 

 「もしもし」

 

 彼の声!

 

 「あ、青木さん!すぐ来てください!お願い!!」

 

              次回「男の人の背中」につづく

 


 
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