『彼は彼なりに艦娘のことを考えているのだ』
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マイ「艦これ」「みほちん」
:43話<お母さんと天職>(改)
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鳳翔さんを見た参謀たちは皆、一様に初めて彼女を見たような顔をしている。でも確か昼食のときにも給仕する彼女の姿は見ていたはずだけど……まあ無理もないか。あの本省の青年将校の前では全員が緊張していた。
(いや半分以上はボーっとしていたようだけど)
だから艦娘(女性)の顔なんか落ち着いて見ていられなかっただろう。もう印象に残らないくらい。
(もっとも居眠りしていれば結局は一緒だけど)
午後のコーヒーを配り終えた鳳翔さんは参謀たちの視線に気づいたようだ。
「あの……何か?」
さすがに困った顔をして「一時停止(ポーズ)」状態になった。鳳翔さん、ちょっと表情がこわばっている。可哀想に。
「失礼ですが」
口火を切ったのは呉。
「ひょっとして……あンたも艦娘?」
「す、すみません」
鳳翔さんは、ますます困ったような顔をした。
「よく他の子たちからも『お母さん』なんて言われますけど……私は主に訓練を担当している軽空母の鳳翔と申します」
最後の方は聞き取れないくらい小声になった。
「や、これは失礼」
さすがに呉も、ちょっとバツが悪そうに頭を下げている。
「し、失礼します」
鳳翔さんは、少し顔を赤らめて逃げるように出て行った。
その場を取り繕うように冷汗(?)を拭きながら呉は言い訳をする。
「いや……そのぉ、ワシのとこでも、日々こんな調子のやり取りが多くてねぇ。艦娘の部署へ行くといろんな意味で緊張すンのや」
「そうでしたか……それじゃ私もきっとこの先が思いやられますね」
私の言葉に一同、苦笑いをした。
ちょっと考えて私は続けた。
「でも確かに他の鎮守府では通常の艦隊と、艦娘の混合部隊ですよね」
一同は頷く。
「そう考えると、ここ(美保)のように純粋に艦娘だけの方が気分を切り替える必要がないから、まだ楽かも知れませんね」
すると呉も言う。
「軍人なんてタダでさえ不器用な人間の集まりだから……戦況分析ならまだしも艦娘への対応の切り替えってのは、かなり大変だと思うなぁ」
今度は神戸も応える。
「そうですね……艦娘って普通の人間よりも、はるかに純粋ですから」
その時、舞鶴の参謀が珍しく口を開いた。
「一途に戦って一途に散っていく……」
ボソボソとした口調ながら、彼以外の全員がその発言にハッとさせられた。彼も、れっきとした帝国海軍の作戦参謀だ。決して『ただいるだけ』の無能な参謀ではない筈だな。
その発言で私は改めて思った……『彼は彼なりに艦娘のことを考えているのだ』と。
舞鶴の言葉を引き継ぐように私も言った。
「彼女たちは外見の如く精神構造も少女ですから、むしろ私たちは変に構えずとも表裏無く、ただ真っ直ぐ接すれば良い……そう、それだけで良いんじゃないかな? って思います」
一同は改めて頷く。意外にも、あの舞鶴までが同意していた。
……ふと『天職』という単語が思い浮かんできた。もちろんここが私にとって真実にそうだとは、まだ私自身、確信は持てないが。
その後、お茶を入れ替えに執務室に祥高さんが顔を出した。
「司令、残った時間は如何(いかが)致しましょうか?」
彼女は、お茶を注ぎながらチラッと参謀たちを見回している。
「そうだな……」
私が腕を組んで考えていると呉が助け舟を出した。
「せっかくですから、ここ美保鎮守府内の簡単な案内をして頂くと嬉しいナ、と思いますわ」
すると神戸も相槌(あいづち)を打つ。
「それは私個人的にも是非お願いしたいところです」
「そうですね」
私はチラッと舞鶴を見た。彼は無表情に近いが反対でも無さそうだ。
改めて私は祥高さんに言った。
「では君でも大淀さんでも良いから後で案内を、お願いしても良いかな?」
彼女は少し考えて言う。
「内容は、どのように致しましょうか?」
「そうだな……ここは艦娘だけの鎮守府だから通常の海軍基地とは違う部分を主に説明をして貰ったら良いかな?」
「了解しました」
彼女は軽く敬礼をして退出した。
今日は神戸の新人参謀も居る。それに実は私もまだ、あまり美保鎮守府については詳しく見ていなかったから一石二鳥か。そんなことを考えていた。
午後の美保湾は既に穏やかな海色(みいろ)を取り戻していた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
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鳳翔さんを見た参謀たちは彼女が普通の女性かと勘違いしてしまう。そのくらい艦娘は「普通」の女性に見えた。