「鎮守府そのものが観光地のようで」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:42話<居残り参謀>(改)
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昼食の後は、いったん解散となった。ところが将校以外の参謀たちは言う。
まずは呉。
「せっかく遠出してきたのだから、これで解散と言うのは惜しいなあ」
すると追い討ちをかける神戸。
「そうですね、貴重な艦娘だけの鎮守府ですから、もう少し視察出来れば……」
「は?」
一瞬たじろぐ私。
思わず硬そうな舞鶴を見ると……あれ?
「私も……」
彼にしては意外な返答だ。
私は否定的な返答が出ることを期待して将校に聞いた。
「参謀閣下のご意見としては……如何でしょうか?」
私の問い掛けに彼は言う。
「そうだな……それも良いだろう」
まさか……意外にも、その場で許可が出てしまった。
私は心の中で叫んだ。
『やめてくれぇ』
さらに『余計な気』を利かせた鳳翔さんが大淀さんに伝達して各鎮守府へ将校名で視察延長の旨が伝達された。軍令部の将校だから各鎮守府の司令より発令には権威がある。
後でその文書をチラッと見たのだが彼は本省の作戦参謀という立場だった。まあ地方の一人の司令官よりも遥かに格が上なのだな。
仕方が無い。私も腹をくくろう。
午後になると美保鎮守府は夏の日差しと美保湾の潮の香りに包まれていた。午前中の戦闘がウソのように大山が良く見える。
鎮守府南埠頭の岸壁で将校は停泊していた二式大艇に乗り込んだ。エンジンを始動させた機は大勢の艦娘たちに見送られながら大山方向へ向かって離水した。やがて鎮守府上空で大きく旋回したあと大山の向こうへと飛び去っていった。
呉と神戸が言う。
「行きましたな」
「そうですね」
「……」
なぜ残ったのか不思議な舞鶴だ。
また私たちと同じように埠頭で手をかざして見送っていた青葉が言う。
「そのまま東京へ戻るんでしょうね」
「だろうな……」
私は応えた。
朝の戦闘中ずっと弓ヶ浜上空を旋回していた陸攻も三柳の陸軍基地で整備をしたあと無事、帰途についたようだ。ようやく美保鎮守府も落ち着きを取り戻した……はずだ。
そんな美保湾の清々しさとは裏腹に私は午後のことを考えると憂鬱だった。接待なんてガラじゃないし、この地域にはまともな観光地もないが。
その時誰かが足を引っ張った。振り返ると寛代だった。
「どうした?」
私が聞くと彼女は首を左右に振ってる。最初は何のことか分からなかったが不意に悟った。
「あ、そうか……ココは軍隊だよな」
そう、軍人に接待も観光も不要なんだ。私は何を考えていたのだろうか?
少し気持ちが軽くなった私は参謀たちに言った。
「では皆さん、いったん執務室へ上がりましょうか」
そして私は少し身をかがめると寛代に言った。
「お前のお陰で気が楽になったよ……そこで頼みだが祥高さんか鳳翔さんに言って執務室までお茶を持ってきてくれ」
彼女は少し微笑んで敬礼をすると小走りで本館へ入って行った。あの子も不思議な子だな。
「駆逐艦娘って言うのは、どこの鎮守府でも可愛らしいですな」
呉が言う。不思議とその言い方は爺さんが孫娘を語るように自然だった。
「そうですね、あの姿で海軍のどの艦船よりも強いから摩訶不思議ですね」
これは神戸。参謀という位置に立っても彼にとって艦娘は超越した存在なのだろう。
「……」
舞鶴は無言。だが何かは感じているらしい。彼の顔に少し表情らしきものが浮かんでいる。
将校が戻って緊張の解けた参謀たちはリラックスした感じで2階へ向かう。
美保鎮守府の執務室は大山が良く見える。晴天の日に、初めてこの部屋に入った人は必ず感嘆の声を上げる。
「おお、大山(だいせん)ですか!」
「キレイですね!」
「……」
三者三様である。
「えぇですなぁやっぱり。ここは鎮守府そのものが観光地のようで」
「そうですね、風光明媚な……山陰は手付かずの自然が多いですね」
呉と神戸は既にリラックスムードだ。
「呉にも、ぎょうさん艦娘は居るんやけど部隊そのもンが大きいから、まぁ普段は、うまく誤魔化されとるんやなぁ」
そういう呉は将校の前と今では喋る口調が違うな。
少し若い神戸の参謀も言った。
「そういえば神戸の提督が美保の司令に、よろしくと申しておりました。あの……司令と提督は兵学校で同期だと伺いましたが」
旧友の顔を想像しながら私は応えた。
「うむ。同級の頃から、なぜか気があってね。確かあいつ山口出身だったな」
神戸は笑顔になった。
「左様であります。実はうちの提督、ここ美保をとても羨ましがって居りました」
神戸鎮守府もまた普通の艦船と艦娘の混成部隊だ。それに比べたら美保は「ハーレム」なのだろう。
私は言った。
「神戸には既に艦娘部隊もある。べつに改めて君のように視察を送るほどではないと思うが……」
その問いに神戸は答えた。
「実は私、今年の参謀試験に合格したばかりでして……神戸は初の着任先なのです。艦娘の実戦指揮は、まだでして……」
「なるほど」
「はい、やはり知人が指揮をする鎮守府なら……ということで」
その言葉に少し嬉しい気持ちになった。
すると自分のアゴを触りながら呉が問いかけてきた。
「ときに司令は以前、舞鶴に居ったとか?」
「ええ、まあ」
呉は今度は横を向いた。
「舞鶴の参謀殿とも、ご面識があるとか?」
振られた舞鶴は、それまで陰気に黙っていたが
「あ、はい」
……ボソボソと答えた。
そういえば舞鶴も私が相手では居心地も悪いだろうに、なぜ今日は居残ったのか? そこのところは疑問が残った。
そのときコンコンと扉がノックされた。
「失礼いたします。午後のコーヒーを、お持ちいたしました」
控え目な口調で鳳翔さんが静かに入ってきた。時計は、もう14:00を回っていた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
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青年将校を見送った後、司令と参謀たちはリラックスした会話を続けていた。居残った参謀たちの狙いとは?