No.898684

英雄伝説~光と闇の軌跡~エレボニアカオスルート

soranoさん

第19話

2017-03-25 23:26:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1900   閲覧ユーザー数:1669

12月6日、同日10:00―――

 

~貴族連合軍旗艦・パンダグリュエル・甲板~

 

「ふわああっ……」

貴族連合軍の旗艦―――”パンダグリュエル”の甲板で煙草を吸っていた真紅のコートを纏った男――――結社”身喰らう蛇”の執行者No.Ⅰ”劫炎のマクバーン”はあくびをした。

「―――フフ、随分と暇そうではないか。」

するとその時白いマントを纏った仮面の紳士が艦内への出入り口から現れて男に話しかけた。

「……ブルブランか。暇なのは当たり前だろうが。相手は雑魚ばっかりで、愉しめそうな相手は一人もいないしよ。」

「フフ、”鋼”殿と並ぶ強さを持つと言われている君を愉しませる相手を持ってこいなんて、無茶な注文だよ。まあ、君の気持も理解できるよ。我が好敵手や”有角の若獅子”達も一向に動きを見せないしね。」

マクバーンの言葉に対して仮面の紳士―――結社”身喰らう蛇”の執行者No.Ⅹ”怪盗紳士ブルブラン”は静かな笑みを浮かべて答えた後マクバーンの言葉に同意するかのように若干不満げな表情になった。

「お前はいいよな……ガキ共相手に愉しめる意味不明な頭をしていて……こうなったら、いっそ”蒼の騎士”とやりあえるように”深淵”に掛け合おうかね。”騎神”とやらが相手なら、ちょっとは愉しめそうだしな。」

「ハハ、それは無理な相談だろう。”蒼の騎士”は”幻焔計画”に必要な存在だし、そもそも”深淵”殿が自分の騎士を”鋼”殿と並ぶ”結社最強”である君と戦わせるみたいな計画に支障が出かねない事に絶対に首を縦にふらないだろう。ただでさえユミルの件が失敗した挙句”黒兎(ブラックラビット)”を失った事による想定外の出来事に内心焦っているだろうしね。」

「……メンフィルか。そう言えばアルバレアが雇った猟兵共が襲撃したのはユミルだったな。クク、いっそ”ハーメル”の件のようにユミルの件を盾にしてメンフィルがこの内戦に介入して来たら、愉しめそうなんだがな。メンフィルにはレーヴェの阿呆に加えて”英雄王”を始めとした愉しめそうな連中もゴロゴロいるって話だろう?」

ブルブランの話を聞いてある事を思い出したマクバーンは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「フフ、そうなったらそうなったで私も更に愉しめそうなのだがね。メンフィルが出てくれば、必ず我が麗しの姫君の一人も出てくるだろうしね。」

「――――うふふ、懲りずにまだプリネお姉様とクローゼお姉さんを狙っているなんて、いけないストーカーさんね。」

ある人物を思い浮かべたブルブランが酔いしれた表情で答えると空から少女の声が聞こえてきた。

 

「あん?」

「この声は確か………」

突然聞こえてきた声にマクバーンが首を傾げ、心当たりがあるブルブランが眉を顰めて周囲を見回していると何と片手にレンを乗せた”パテル=マテル”が”パンダグリュエル”の上空から現れて甲板に降り立った!

「クスクス、初めまして、結社の”執行者”――――”劫炎のマクバーン”と”怪盗紳士ブルブラン”。」

レンは小悪魔な笑みを浮かべてスカートを摘み上げて上品に会釈をした後マクバーン達を見下ろしていた。

「その人形は確かノバルティスの爺が騒いでいた”パテル=マテル”……って事はお前が”殲滅天使”か」

「フッ、噂をすれば影、か。何故君がこの場に現れたのかな?」

パテル=マテルを見て何かに気づいたマクバーンは興味ありげな表情でレンを見つめ、ブルブランは口元に笑みを浮かべてレンに問いかけた。

「うふふ、それを答える前に一つだけ訂正しておくわ。この場に現れたのは”レンだけ”じゃないわよ?」

「何……?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたブルブランが眉を顰めたその時、何とペガサスや飛竜を始めとした多くの翼を持つ騎獣達を駆る騎士達がパンダグリュエルの上空から現れ、更にパンダグリュエルと同等かそれ以上の大きさのメンフィル帝国軍の戦艦がパンダグリュエルの全方位から現れ、パンダグリュエルを完全に包囲した!

 

~パーティーホール~

 

「な―――あの紋章は……メンフィル帝国……!?何故メンフィル帝国がこの艦に襲撃を……――――!まさか……ユミルの件か!?バカな……被害も軽微で死者も出ていないのに、メンフィル帝国はエレボニア帝国との戦争に踏み切ったというのか!?」

一方メンフィル軍の登場を艦内のVIP達が休む区画にあるパーティーホールから見ていた貴族連合軍の”総参謀”にしてユーシスの兄―――ルーファス・アルバレアはメンフィル帝国軍の登場に困惑していたが、すぐに心当たりを思い出して信じられない表情で声を上げた。

「クッ……―――ブリッジ、私だ。何故今までメンフィル帝国軍の接近に気づかなかった!?」

すぐに気を取り直して現状を把握する為にルーファスはブリッジに通信をした。

「う、うわあああああっ!?い、一体どうなっているんだ!?」

「メ、メンフィル軍だと!?」

すると通信の外から混乱している様子の貴族連合軍の兵士達の声が聞こえてきた。

「こちら、ブリッジ!我々もその事に驚き、今観測に確認する所です!おい、何故今まで気付かな……え。な、何を……ギャアアアアアアッ!?」

「ヒッ!?お前もどうし―――グアアアアアッ!?」

そしてルーファスの通信に応答した貴族連合軍の兵士はルーファスの指示に答えようとしたが、通信機からは兵士達の悲鳴や断末魔が聞こえてきた。

「!!パンダグリュエルの乗組員達の一部とメンフィル兵達がすり替わっていたというのか……!クッ……まずは迎撃態勢を……いや、乗組員達の中にメンフィル兵がいる以上、メンフィル軍に兵達の配置が筒抜けだ……!―――やむを得ん。裏の協力者達に時間を稼いでもらい、殿下と少数の部下達と共に艦から脱出するしかないな……裏の協力者達――――”劫炎のマクバーン”を始めとした結社の使い手達ならば、メンフィル兵が相手でも時間を稼ぎ、自力で脱出する事も可能だろう。」

通信機から聞こえてきた異常事態を耳にしてすぐに状況を悟ったルーファスは焦りの表情で考え込み、やがて答えが出るとある人物達に連絡する為に再び通信機を取り、通信相手を変えようとしたその時

「―――リウイ陛下!ブリッジの制圧は完了しました!」

通信機からルーファス達貴族連合軍にとって更なる凶報となる声が聞こえてきた。

 

~メンフィル帝国軍旗艦・”始まりの方舟”モルテニア・ブリッジ~

 

一方その頃メンフィル帝国軍の旗艦のブリッジに仲間達と共に待機していたリウイはパンダグリュエルの潜入していた兵士からの連絡を受け取り、指示を出していた。

「よし―――誇り高きメンフィルの戦士達よ!雌伏の時は終わりだ!これより”パンダグリュエル制圧作戦”を開始する!今こそ武器を取り、メンフィルの”怒り”、エレボニア帝国に思い知らせろっ!」

「御意ッ!!」

「オォォォォオ―――――ッ!!」

「ペテレーネ、エヴリーヌ!」

メンフィル兵達への指示を終えたリウイは自分達と共にいるペテレーネとエヴリーヌに視線を向け

「はいっ!」

「は~い♪」

「御武運を!」

視線を向けられた二人はそれぞれ返事をして、ブリッジにいるメンフィル兵達に見守られながら転移魔術を発動してリウイ達と共にその場から消えた。

 

~パンダグリュエル・パーティーホール~

 

「バカな……”英雄王”までもが直々に出陣しているだと……!?クッ……一刻も早く殿下をお連れして、パンダグリュエルから脱出をしなければ……!私はこんな所で終わる訳にはいかない……!」

通信機から聞こえてきたメンフィル兵のリウイへの報告を聞いていたルーファスは信じられない表情をした後血相を変えて部屋から飛び出した――――

 

 


 
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