「ん・・うう・・」
心地よいまどろみから白蓮は目覚めた。隣には昨夜激しく愛し合った夫が歳不相応のあどけない寝顔を彼女の前にさらしている。
「一刀・・・はまだ寝ているのか」
一糸まとわぬ姿をいつまでも晒す訳にはいかないので、椅子にかけてある着物を身にまとう。
「ふふっ。可愛いな、一刀は」
頬を突くと、身じろぎして彼女の指から逃れようともがいている夫に笑みを残して湯浴みをすべく、部屋を出た。
この日の白蓮の朝は早かった。湯浴みを済ませるといつもの服に着替えて厨房へ。そこにはすでに先客がいた。
「あ、おはようございます白蓮様」
「ああ、おはよう。今日の当番は私と斗詩か」
顔良―――真名を斗詩がエプロン姿で朝食の調理をしていた。食事作りを当番制にしている蜀の王宮では桃香をはじめ愛紗を筆頭とする将軍たちや軍師達も仕事で忙しくない限り食事作りの為に厨房に立つ。一刀も厨房に立ち、ハンバーグなどの洋食を作ったりすることもある。
「斗詩、お腹の子は順調か?」
「はい。たまーに蹴ったりしてくるんですよ~♪」
嬉しそうに話す斗詩のお腹は、エプロンの上からでもわかるくらい大きくなっている。余談だが、彼女の妊娠が発覚したその夜、一刀は麗羽と猪々子にさんざん搾り取られたとか・・・
「白蓮様、最近続ちゃんの調子はどうです?」
「最近『ハイハイ』が出来るようになったよ。あっちこっち歩きまわっておしめ換えるのも一苦労だ。ほんとに璃々がいてくれて助かるよ」
自分で動けるようになったらしい白蓮の愛娘・公孫続は赤ん坊特有の冒険心を発揮して部屋をうろうろと動き回って、たまに廊下にも探検に出かけているというのは斗詩も聞いた事があった。
「おはようございます。斗詩さん、白蓮さん」
噂をすればなんとやら。将軍・軍師達から頼りにされるスーパーお姉ちゃん璃々が割烹着姿で現れた。
「おはよう、璃々ちゃん・・・って背中にくっつき虫さんがいるね」
「ほんとだな、大きなくっつき虫だ」
2人がクスクスと笑う視線の先には璃々の背中にへばりつくようにして寝ている張苞の姿が。
「ここに来る途中、廊下で寝ているのを見つけて・・・多分張苞ちゃんが寝台から転がり落ちてきたんでしょうけど、おんぶして鈴々ちゃんの部屋に戻そうかと思ったんですけど手を放してくれなかったからここまで連れてきたんです」
起こすのも可哀想ですし、と張苞を背負いなおした直後
「んにゃ~?おいしそうな匂いがするのだぁ~」
目を覚ました張苞の寝ぼけた声に厨房は笑いに包まれた。
白蓮の最近のマイブームは釣りである。
天気の良い事も手伝って、今日の昼は成都城近くの湖に焔耶の娘・魏長と一緒に来ていた。
「♪~♪~♪~♪」
魏長の心地よい歌声が白蓮の心を和ませる。
「いい歌だな、魏長。なんて言う歌なんだ?」
「これは私が作った曲なんだ。曲名は募集中!」
テヘヘ、と照れたように笑う魏長。彼女のマイブームは作詞および作曲である。最近は部屋の机で詩を書いては中庭の大樹の下で歌っている姿が皆の眼に入っている。
結局魚は一匹も釣れなかったが、魏長のコンサートを独り占めできてそれはそれでまぁいいか、とも思えた。
「ふぅ~!気持ちいいなぁ」
満月を見上げながらの露天風呂のなんと気持ちのいい事!
公孫続を寝かしつけた白蓮は、一人で露天風呂を占拠するという贅沢を味わっていた。
「白蓮ちゃ~ん!」
その支配も主君であり親友である女性の登場により打ち破られた。桃香は白蓮の2~3倍はある胸をギューッと押し付けてきた。
「桃香・・・酔っぱらってるのか?」
彼女の巨乳に少しだけ嫉妬しながら桃香に冷たく話しかける。
「む~!酔ってなんかいないもん!そんな事言う白蓮ちゃんには、こうだ!」
バシャッ!
「あっ!なにすんだ、この!」
「あははっ♪」
バシャバシャとまるで童子のようにお湯をかけあった2人は、更衣室の外に控えていた侍女長に「お2人ともいい加減になさいませ!大人気ない!」と怒られて大人しく湯船に浸かった。
「・・・ねぇ、白蓮ちゃん」
「んー?」
「私達、ご主人様に逢えてよかったね。ご主人様に出会えたから禅ちゃんや永君、続ちゃんっていう掛け替えのない宝物に出会えた」
「そうだな・・・。すごい奴だよ、あいつは」
微笑みあう2人を月が優しく見下ろしていた。
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名付けて白蓮救済作品です!
ど、どうでしょうか(ビクビク)