さて、ここで天師道の実態を簡潔に述べておこう。
現在、その構成員は約八百人。
その大半は重い税などが原因で困窮の極致に立たされたり、反乱に巻き込まれ家族を失ったりして、大きな悲しみと共に今の世のありように不満と怒りを覚える一般人たちであった。
彼らの仕事は大陸の各地に散り、主に商いなどを行いつつ情報を集めること。
そうして集めた情報はときおりやってくる連絡役を介して天師道総帥である張仲景のもとへ送られる。
そして情報をもとに計画は練られ、一般人とは一線を画す実働部隊が動くのである・・・・・・
ここはとある森の山小屋。
天師道の隠れ家の一つであるこの場所に、四人の人間があつまっていた。
天師道の総帥である張仲景、そして三人の最高幹部たちである。
その中には、華陀達を始末しようとした霊亀の姿もあった。
霊亀からも分かるように張仲景を含め、幹部達はそれぞれを古代中国において瑞兆として姿を現すとされる瑞獣、四霊の名を呼び名として使っていた。
「まったく、一人で十分などと大口を叩いておいて任務失敗とは。情けないにもほどがありますね」
霊亀に対して冷淡な視線と共にきつい言葉を浴びせる童顔の青年。
彼の呼び名は鳳凰。
張仲景と共に失踪した医師の一人で、薬学、細菌学に秀でた才を持つ。
張仲景に対して神の如き信仰を抱いており、彼のためならどれほどの犠牲も辞さない危険人物である。
「・・・・・・」
鳳凰に対し、終始無言の霊亀。
彼についても少し触れておこう。
彼は生まれながらの盲目で、心無い両親によって産まれてすぐ山中に捨てられてしまう。
そこを暗殺者の男に拾われ、後継者として育てられた。
そんな彼が現在張仲景に協力している理由は・・・・・・また別の機会に語るとしよう。
「その辺にしておいたら?終わった事をグチグチ言っても仕方無いでしょう?」
ため息をつきつつ鳳凰にそう言ったのは、最後の幹部である応竜だった。
おそらくは女性だと思われるが、頭からすっぽりと外套に覆われ、顔には仮面をつけているためそれも良く分からない。
唯一分かっているのは武道の達人であるということだけの謎に包まれた人物である。
「応竜の言うとおりだ。今回皆を呼んだのはそんな事のためではない」
「しかし、任務の失敗に対しお咎め無しというのは・・・・・・」
「失敗は後の成功で取り戻せばいい。これでこの話は終わりだ。いいな?」
「は、はい」
張仲景、今後は呼び名である麒麟と呼ぶが、流石に彼の言葉では反抗する訳にはいかず、引き下がる鳳凰。
実の所、彼が霊亀に絡むのはこれが初めてではない。
幹部の中で特に重用されている霊亀の存在が彼には面白くないようで、何かにつけては批判しようとするのだ。
「それではまず、現在進行中の計画について話そう。鳳凰」
「はい」
鳳凰は計画について語りだす。
「現在、洛陽の王宮内では二つの派閥が水面下で争っています。十常侍と大将軍何進の派閥です。国政に関しては帝を擁する十常侍が幅を利かせているのが現状ですが、何進も隙あらば十常侍を引き摺り下ろそうとしています。計画ではまず、十常侍の排除が前提となるのですが・・・・・・」
「それだけだと何進が後釜に座ることになるのかしら?」
応竜の言葉に鳳凰は首を縦に振った。
「正確には彼と妹の何皇后ですね。しかしあの女は王美人を毒殺するなど嫉妬深く残忍な人間です。何進にあの女を御せるとも思えませんし、十常侍を排した所で彼女を野放しにしていては、国の正常化は望めないかと・・・・・・」
「ではどうするの?」
「それに関係した話なのですが、実は十常侍がある者達を洛陽へ呼び寄せたそうです」
「ある者達?」
「西涼の董卓。彼女は天下無双の豪傑呂布を擁しています。おそらく何進と直接争う事になった時の為の保険のつもりなのでしょうが・・・・・・」
鳳凰がそこまで言った時点で、麒麟は宣言した。
「率直に言おう。我々は董卓を後釜に据える。そして障害となる者共は我々が排除する」
どうも、長い事ご無沙汰で、あまつさえ師走という忙しい時期に投稿なんぞしているアキナスです。
今回は天師道の紹介といった形になりました。
そして董卓も登場の予定ですが、帝を生かしてしまったために既存の設定が使えず無理矢理ねじこんだといった感じになってしまい、大きな分岐を下手に弄るもんじゃないなと反省しております。
更に天師道幹部の設定も・・・・・・いえ、これ以上愚痴ってもしょうがないですね。
では皆様、また次回でお会いしましょう。
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暗躍するものたち