仮面騒動の翌日、一人の兵士が医務室へとやってきた。
「失礼します。一刀様。城門に一刀様の知り合いだと名乗る者たちが参っておりますが」
「俺の知り合い?どんなやつらだ?」
「はぁ・・・・・・一刀様とそっくりな服装の華陀と名乗る若い男と、貂蝉様のような筋骨隆々の卑弥呼と言う大男です。ひどく急いでいるようでしたが・・・・・・」
「ああ、それは確かに俺の知り合いだ。しかし、急いでるだと?とにかくすぐに連れてきてくれ」
「はっ!」
足早に医務室を出て行く兵士。
「何かあったのか・・・・・・」
不吉な予感を抱きつつ、一刀は二人が来るのを待った・・・・・・
医務室にやってきた華陀と卑弥呼はすぐさま今は亡き先輩に聞いた話と、いままでにあった事を一刀に伝えた。
「・・・・・・」
そのあまりの内容に、一刀は絶句する他無かった。
「呆けている場合じゃないぞ一刀。今こうしている間にも、奴らは行動を起こしているかもしれない。事は一刻を争うんだ」
「・・・・・・ああ、そうだな」
華陀の言葉で一刀は少し冷静さを取り戻した。
「まずはこの事を華琳に話しておこう。外出許可も貰わなければならないしな」
「協力を仰ぐ事はできぬのか?」
「俺達に協力したら奴らの標的になるのは明白だろう。既に標的になっているのならいざ知らず、わざわざ虎の尾を踏ませる事もない」
そう言って肩を竦める一刀。
その後、隣の部屋で待機していた貂蝉にも事情を伝えてお供に加えた後、四人は華琳の部屋へと向かったのだった・・・・・・
華琳の部屋へとやってきた一刀、華陀は華琳に事情を説明していた(貂蝉、卑弥呼は華琳にむさ苦しいと言われて部屋の外で待機中)
「そういう訳だから、外出許可を貰いたい」
「事情は分かったけど、行くあてはあるの?」
「一つ心当たりがある・・・・・・華琳も分かってるんだろ?」
「愚問ね。貴方が行く事は、先方には私から連絡しておいてあげるわ」
「助かる」
「このくらい大した事じゃないわ」
「それじゃあ今から準備して、明日の早朝にでも立つとしよう。華陀。お前はどうする?」
「俺たちは一度、五斗米道の本部へ寄るつもりだ」
「・・・・・・そうか」
表情に一瞬影が差した一刀だったが、すぐにいつもどおりの一刀に戻った。
「華琳、俺たちはこれで失礼する。華琳も警戒はしておいてくれ」
「言われなくても分かってるわ」
「だろうな」
苦笑いを浮かべて一刀は華陀と共に部屋を出て行った・・・・・・
その夜、中庭に二つの人影があった。
一人は一刀、もう一人は貂蝉である。
「せやあ!」
気合と共に貂蝉に突っ込む一刀。
「ご主人様甘いわよぉん!うっふぅぅん!!」
しかしあまりにも直線的な突撃はいともあっさり貂蝉にカウンターで返される。
「がふっ・・・・・・まだまだ!」
吹き飛ばされながらも受身を取り、立ち上がると一刀は再び貂蝉に向かっていく。
幾度それが繰り返されただろうか?
一刀はボロボロの状態で仰向けに倒れ、天を見上げていた。
空には満天の星空が広がっている。
「付き合ってもらって悪かったな」
「いいのよん。ご主人様の頼みだもの。でも、一つ聞いていいかしら?何で無造作に突っ込んでばかり?わざと殴られてたように思えたけど」
「・・・・・・ぶちのめしてほしかったから」
「あらん♪ご主人様そっちの趣味が?」
「・・・・・・」
「冗談よ。自責の念を拭い去る為・・・・・・と言ったところかしら?」
「ああ」
一刀は空を見上げたまま語りだす。
「おれの行為がこんな大事を引き起こしていたなんて思いもしなかった。正直こたえたよ」
「ご主人様・・・・・・」
「分かってはいるんだ。全部が全部俺の責任だと考えるのは間違いだと。でもそう簡単に割り切れるものでもない」
「それはそうねん」
「とりあえず、体動かして肉体と精神のバランスを取ろうと思ったわけだ。わざと殴られてた事に関してはお前の言うとおり、自責の念に対しての自己満足のためだな」
「効果はあったかしら?」
「おかげさまでな。とりあえず気持ちを切り替えて動けそうだ。ありがとうよ」
「どういたしまして」
体を起こし、立ち上がる一刀。
「さて、明日は早いし寝るとするか」
「明日は当然アタシもついていくわよん♪」
「まあ、それは問題ないけどな」
「・・・・・・」
そんな二人の様子を柱の影から眺めている者がいた・・・・・・
翌朝、一刀は貂蝉と共に馬車で出立した。
華陀と卑弥呼は既に出発している。
「それでご主人様。行き先はどこなのかしらん?」
「洛陽だ。あいつらがいの一番に排除対象にしそうな人間がいそうな所だからな」
「確かにそうねん。それにご主人様は帝の恩人だから入り込むのも楽でしょうね」
「ああ。後は奴らの出方次第なんだが・・・・・・ん?」
「どうかしたの?ご主人様」
「いや・・・・・・こんな物積んでたかな?」
一刀の視線の先には、馬車の奥に置かれている大きな袋が・・・・・・その時だった。
「ん!?」
一刀は目を疑った。
袋がもぞもぞ動いたかと思うと、中から人の腕が出てきたのだ。
更にもう一つ腕が出てきて、次に出てきたのは見覚えのある帽子。
「ぷはあっ!」
そして大きく息を吐きつつ、星が顔を出した。
「・・・・・・お前、何やってるんだ?」
「いえ、一刀殿を驚かせて差し上げようと思いまして・・・・・・」
ゴソゴソと袋から出て来る星。
「それはいいが、何故ここに?」
「おや?私がついてきては迷惑と言われるので?」
「それ以前に華琳に許可は取ったのか?」
「置手紙はしてきましたから問題ないでしょう」
「・・・・・・」
「やはり迷惑のようで。貂蝉と二人きりが良かったと?」
「あらん。照れるわねん♪」
「遊びに行くわけじゃないんだぞ」
「ではどこへどういう用件で行かれるのか説明してはいただけませぬか?」
「・・・・・・仕方無いな」
一刀は星に出来る限り簡潔に事情を説明した。
「ほうほう、それは危険な旅になるかも知れませぬな。用心棒が一人でも多くいたほうがよろしいのでは?」
「しかしなあ、俺や貂蝉はともかく、軍の要人が関わっているとなると・・・・・・」
「一刀殿も今までの功績からすれば立派な要人。優秀な護衛が複数ついていても不思議はないと思いますが?」
「そう言われればそうなんだが・・・・・・」
いまだに渋っている一刀。
「・・・・・・そこまで嫌がられては仕方ありませぬな。分かりました。貂蝉と二人仲良く行って来てくださればよろしい。やれやれ、また私は置いてきぼり・・・・・・」
明らかに拗ねた様子で馬車の下にのの字を書き始める星。
「・・・・・・分かったよ。もうついてきたらいい」
「嫌そうですな。よろしいのですよ?無理しなくとも」
「別に無理してるわけじゃない。確かに何が起こるか分からない以上、優秀な護衛がいるに越した事はないからな・・・・・・一人くらいなんとかなるだろ」
「それだけですかな?」
「星とは付き合いも長いし、一緒なら道中でも退屈しないしな。いやあ、星が来てくれてよかった」
「そこまで言われては仕方ありませぬな。同行して差し上げるとしましょう」
今までの態度は何処へやら、立ち上がって胸を張る星。
「・・・・・・」
そしてその様子を何かいいたげな視線で見つめる一刀。
「何か?」
「別に・・・・・・ただ、帰ったら華琳に対してどう釈明するか考えておくんだな」
「・・・・・・」
一刀のささやかな反抗に口を噤む星。
「うふふ・・・・・・楽しくなりそうねん♪」
こうして三人を乗せた馬車は一路洛陽へと向かうのであった・・・・・・
どうも、アキナスです。
再び星が日の目を見るときが来たようです。
そして洛陽で一刀達を待ち受けるものとは?
次回に続きます・・・・・・
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旅立ちの刻は来た・・・・・・