ワクノニの森を元に戻した三女神達は、
メデューサをけしかけたと思われる水のナッツォを探す事にしました。
「まったく、逃げ足の速い幹部だこと」
「悪い人間はみんなこんな奴だ、地道に探すしかない」
「……そうですよね。でも……」
人間は、神すら生温いと思わせるほど極悪非道になる事があります。
ですが、時に伝説の英雄と称されるほどの人物も生まれるのです。
「今はオレ達でできる事をしようぜ」
「はい。分かりました、トールさん」
三女神達は、町の人達から水のナッツォに関する情報を聞き出しましたが、
情報は何も手に入りませんでした。
「やっぱり、四使徒は陰でこそこそやってるんですね」
「
昔のテンプレムは指導者が名ばかりであったために貴族の権力が強まり、
それに溺れて堕落し、結果テンプレム戦役に発展しましたが、
今は指導者が有能なので表で悪辣な事件が起こる事はほとんどなくなっています。
「表にしろ、裏にしろ、私、犯罪は許せないんです」
「その意気だ!」
「ゲール!」
「と言ったのですが、表にいないのならば、裏を探せばいいという意味なのですね?」
「……まぁ、そういう事になる、な」
そんなわけで、三女神達は水のナッツォがいるかもしれない路地裏に行きました。
路地裏は表と比べ、日光が当たらないために暗く、犯罪者のたまり場となっています。
また、治安も良くないため、普通の人はあまり近寄りません。
「本当に、ここに水のナッツォがいるのですかね?」
「オレの推測が正しかったら、な」
三女神達が歩いていると、ぐちゃりと何かを踏む音が聞こえました。
ひっ、とバイオレットが慌てて足を上げると、そこにあったのは……。
「いやあああああああああああああ!!」
人間の、死体でした。
「ど、どうしたのバイオレット!」
「お、お、お、お姉ちゃん、こ、こ、こ、これ……」
バイオレットは震えながら死体を指差しました。
「死体じゃないですか! どうしてここに……」
ジャンヌがその死体に釘付けになった、その時です。
「きゃあ!?」
「お姉様!」
突然、死体がむくりと起き上がり、彼女に襲いかかりました。
「なるほど……つまりゾンビってわけだな!」
死体に瘴気が入り込んだ事により動くようになったモンスター、それがゾンビです。
ゾンビに知性は全くありませんが、既に死んでいるために限界を超えた怪力を出す事ができます。
また、腐敗臭がするため、普通の人では近付く事すらできないでしょう。
「ターンアンデッド!」
しかし、ゾンビはアンデッドモンスターの中では下級です。
そのため、ゲールの退魔術の前ではあっけなく消滅してしまいました。
「誰ですか、こんなのをけしかけたのは!」
ゲールが叫ぶと、向こうから足音が聞こえてきました。
そして、彼女達の目の前に、怪しげな魔導師――水のナッツォが現れました。
「あなたは、水のナッツォ!」
「……おやおや、私の傀儡の1つに満足しましたか?」
「誰が満足した、ですか! うちの妹がそれを踏んでしまって、しかも私に襲わせたのですよ!」
「まぁ、それが当然の反応ですか……」
「やっと見つけたぜ! さあ、とっととくたばりな!」
「くたばる……? いえ、力技は好みませんのでね」
「ったく、ミリオーネ以上に陰険だな」
「ミリオーネ? ああ……あいつもあいつで陰険でした。ですが、私には及びませんよ」
「随分と自己中心的ですね!」
そう言うと、ゲールはライフドレインで水のナッツォを攻撃しました。
しかし、水のナッツォはそれをかわしました。
「私に挑むというのですか? こんな狭い場所で?」
「……」
「……否定、ですか。仕方ありませんね。あまり外には出たくないのですが……戦場を変えましょう!」
水のナッツォが呪文を唱えると、三女神達は別の空間に飛ばされました。
「こ、ここは!?」
「これは私が作り出した空間です。あなた達はこの中で、死ぬ運命にあるのですよ!」
「死んでたまるものですか! 行きますよ、皆さん!」
「はい、お姉様!」
「こんな奴に負けてたまるか!」
「おうよ! 絶対にボコボコにしてやるぜ!」
ジャンヌ、ゲール、バイオレット、トールと、水のナッツォの戦いが始まりました。
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