No.864779

ALO~妖精郷の黄昏・UW決戦編~ 第38-最終話 新たなる明日へ

本郷 刃さん

最終話になります。
今回は日曜日内に投稿できました、どうぞ・・・。

2016-08-21 17:16:36 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7716   閲覧ユーザー数:7207

 

 

 

 

 

第38-最終話 新たなる明日へ

 

 

 

 

 

 

 

和人(キリト)Side

 

俺とアスナは森の中をゆっくりと進んでいた。

あまり人の手入れがされていない、それでも人が二人ほどは進める木々の間、

そこを歩いていけば広い森の中に珍しい開けた場所に出た。

大き目の木造家屋、というよりかはログハウスだな、これを二人で建てたのだから立派なものだ。

家の左右には小屋があり、片方は倉庫らしいものと馬小屋、もう反対にはこちらで何度か見た二頭の飛竜の姿がある。

彼女達は俺達に気が付き顔を上げたが、鳴き声を上げるとすぐに顔を下ろして休みだした、歓迎されているのかな?

 

そう思いながらもログハウスの入り口に近づくと、扉が開いた。

なるほど、彼女達は鳴くことで家人を呼んだわけか。

 

「どうしたんだい? 氷華、雨縁………あっ…」

 

家人の人物は俺を認識すると呆けてしまったが、まぁそれも仕方の無いことか。

あの事件以来、一度も会っていなかったからな。

 

「どうしたの、ユージ、オ…」

 

もう一人、この家に住む家人が出てきた。

彼女も俺とアスナの姿を確認すると呆けて、というか固まってしまった。

驚くのは解るがもう少し違う反応も欲しいな、似た者夫婦め。

 

「会いに来たぞ。ユージオ、アリス」

「お久しぶり……って、ほどでもないかな。こんにちは、ユージオ君、アリス」

「キリト!」「アスナ!」

 

順に声を掛ければ、この家の家人であるユージオとアリスは同時に返答した。

俺は以前と変わらない桐ヶ谷和人であるキリトとして、アスナは女神ステイシアではなく結城明日奈としてのアスナで、

この『アンダー・ワールド』にやってきた。

 

 

 

驚いたユージオとアリスだったが、俺達との再会を喜ぶと家の中に招いてくれた。

居間のテーブル、そこに用意された椅子に俺とアスナが並んで座り、対面に二人が座った。

 

「本当に驚いたよ、いきなりやってくるんだからさ」

「カーディナル様まで共犯だったなんて…」

「ま、作戦成功ってことだ。言っておくが、この世界ではお前達に最初に会ったんだ」

「わたしもキリトくんもカーディナルさんとは直接会ってないの」

 

驚かせることくらい構わないだろう、俺達もこの近くに降ろしてもらったわけだし。

帰る時に各所を寄っていく予定なのだ、アスナを案内したいし。

 

「今回来たのは再会しに来たっていうのが主な目的だが、他にもあの後のお互いの状況とかそういうのも話しにな」

「なるほど。確かに僕達もキリト達がどうなったのか気になっていたし、丁度良いね」

「じゃあ、手早く話すとするか。まずは俺達からだな…」

 

そうして俺は現実世界に戻り、一時的な戦闘になってからのことを話した。

 

 

 

 

※※※

 

 

逃げ去ったPoHの姿が見えなくなったことで一気に力が抜けてその場に座り込む。

焼けるような非常に強い痛みが右肩を襲い、左手でそこを抑えてみればぬるりとした感触がした。

左手には赤、そうだ、奴に撃たれたんだった…。

 

「くっ…」

「キリト君! 応急処置をする、悪いけど服を破くよ」

 

これまで感じたことのあるものとは別の痛みにより軽く呻いてしまったが、菊岡がすぐに応急処置を行ってくれた。

傷は貫通しているわけではなく、しかし軽く掠めているわけでもない、肉を抉っているとのことだ。

内閣府特殊護衛部隊(特護)』の隊員の人が応急処置用のキットを持っていたので、それを使わせてもらい治療をしてもらった。

当然、いまも痛みは続いているが、処置中に消毒液をぶっかけられた時よりかはマシだな。

 

「幸い出血はまだ酷くないから一先ずはこれでいいだろうけど、すぐにでも病院で確りと治療した方がいい」

「すまない、ありがとう…」

 

UWで慣れてしまった本物の戦闘の空気と奪ってしまった三つの命、

そして俺をまともな状態にしてくれる明日奈という存在と離れ離れになってしまっていたこと、

それらが影響したのか俺を抑える枷は外れてしまっている。

否、これは俺自身が未熟な証だ、そうでなければ枷が外れることも、PoHに後れを取ることもなかっただろう。

だが、いまはどうしようもない、既に俺は足手纏いだからな。

 

「菊さん、僕は作業を済ませてきます」

「すまない、タケル。結局手伝えそうもない…」

「仕方がないッスよ。それにキリト君にはUWで十分頑張ってもらったッスから、あとは大人に任せてほしいッス」

 

タケルは胸を張って答え、メインコントロールルームのコンピュータで操作を始めた。

相手に奪われていた間に弄くられたコンピュータそのもののデータを修復し、

それでもこれ以上の敵との遭遇の可能性を配慮して、

メインシステムのアクセス権はサブコントロールルームに残したままにしているとのこと。

 

タケルが作業を進めている間に師匠達は倒した敵部隊を拘束し、手錠と鎖と縄で素巻にしている、シュールな光景だ。

そこで大師匠(だいせんせい)の不動善十郎さんが傍にきて、俺の頭に手を置くと乱暴にだが撫で始めた。

 

「枷が外れてしまうほどの戦いに身を置いていたのか。大分、苦労したようだな…いまはゆっくり休め」

「はい…」

 

そう言われると一気に力が抜けた、気を張っていたがそれが解けたからだろう。

そこへ師匠も俺の傍に来ると大師匠とは違い、優しい手付きで頭を撫でてきた。

 

「無茶をしないでほしかったのですが、枷のことばかりは仕方がないことですからね。

 とにかく、よく頑張りましたね」

「ありがとう、ございます……あと、お願い、します…」

 

俺はそこで本当に気が抜けて、安心しきったことで意識が遠のいていった。

 

 

 

目が覚めたことに気付いた俺は瞼を開いて周囲を確認した。

場所は以前にも訪れたことのあるオーシャン・タートル内の医務室であることを悟った。

腕の傍に明日奈が座ったまま寝ている、彼女も張り詰めていただろう糸が切れて眠ってしまったのだろう。

起き上がるために身動ぎすると肩に痛みが奔り、力が抜けて再びベッドに身を委ねた。

 

「んっ…かず、とくん…? わたし、寝ちゃってた…」

 

あぁ、起こしてしまった。

可愛い寝顔だったからもう少し堪能したかったが、やや寝惚けている明日奈も可愛い、というかいつも可愛いから良しとしよう。

 

「うん、寝ちゃっていたみたいだな」

「っ、和人くん! 良かったぁ…」

 

声を掛けたことで俺が起きていることに気が付いた明日奈はすぐに抱きついてきたが、怪我の場所なので右肩が痛い。

しかし、これも自業自得なので甘んじて受けておく。

 

「すまない、無茶をしてしまった…」

「そうだよ…! 本当は、怪我もしてほしくなかったけど……でも、命が、一番だから…」

「あぁ…」

「良かった、良かったよぉ…」

 

また泣かせてしまった、泣かせたくないのに。

怪我のある場所に縋りついてくるのはせめて死なないでという願いを込めているのが伝わってくる。

いつも泣かせてしまい、きっと次も泣かせしまう、

それでもそんな俺の傍に居てくれる明日奈が愛おしくて、嬉しいと思ってしまうのは不謹慎なのだろう。

 

「そういえばユイは?」

「ちょっと、待ってね。ユイちゃん、和人くんが目を覚ましたよ」

 

明日奈が落ち着いたところで愛娘の様子も気になった。

ユイも明日奈に負けず劣らずな心配性、いや元のことを考えると明日奈以上だな。

そんな彼女のことが気がかりになるのは親心と思ってほしい。

 

『パパ! 無事で、よかった、ですぅ…!』

「ごめんな、心配をかけた。もう大丈夫だから、帰ったらたくさん甘えてくれ」

『はい……パパ、本当にお疲れ様でした…』

「ありがとう。ユイも手伝いありがとう、お疲れ様」

『わたし、皆さんに作戦の成功とパパが無事なことを伝えてきますね!』

「頼むよ」

 

安心して泣いていたユイだったが、言葉を掛け合えたことで俺が無事だと解り少しだが笑顔を見せてくれた。

そしてみんなにも俺のことを報告するために明日奈の端末からALOに戻っていった。

ユイに声を掛けられたことで安心でき、また力が抜けてベッドに沈み込む。

 

「あれから、どうなったか聞いても?」

「うん…聞いた話しだと和人くんが気を失った後、比嘉さんが全部のデータを修復して、

 八雲さん達の部隊の人達が拘束した敵を連行していったらしいの。

 それで八雲さんが和人くんを背負って菊岡さんと比嘉さんとサブコントロールルームにきて、

 そのあとは凛子さんもスタッフさん達も一緒に全員で上層に移動してきたの」

「そうか…」

 

その時の様子が目に浮かぶようだ、恐らく明日奈だけでなくユイも凛子さんも俺の姿に相当焦っただろう。

 

「菊岡さんから和人くんが怪我をしたっていうのは聞いていたから心構えはしていたけど、

 八雲さんに背負われているうえに意識がなくて、右肩の服と包帯は血塗れだなんて…。

 心臓が止まっちゃうかと思ったよ…」

「ホントにごめんな…」

 

ここで大袈裟な、と言えるのであればそれはきっとゲームの時の話しだ。

だがこれは現実だ、どんな些細なことで死んでしまうのか解らないのが現実というものだからな。

空いている左腕で明日奈を強く抱き締め、生きている証明をするのが一番だ。

 

「おや、和人。目が覚めたようですね」

「師匠。はい、こんな様ですが…」

 

医務室の扉が開き、廊下から師匠と菊岡達が入ってきた。

 

「生きているのが一番です。

 それに貴方はまだ若い、こういうことも起こりえて、今回はマシな結果に落ち着いたのならばそれでいいでしょう」

 

そうだ、今回は怪我をしたとはいえ僅かなもので、生き残れたことを考えれば十分な儲けものだ。

それにUWもアリス達も守れたのなら、これ以上を望むこともないか。

 

「キリト君。これからヘリで移動してもらうけど、キミとアスナ君と神代博士には軍病院に飛んでもらうよ。

 僕と比嘉博士はこのまま残って後続の増援組と事後処理や報告の纏めをしていく。

 それで移動する前に聞きたいことは、あるに決まっているか…」

「当然だ。奴は、PoHはどうなったか、いまはそれが知りたい」

「PoH、本名はヴァサゴ・カザルス。

 いくつかの監視カメラに姿が映っていて、その移動先にあるはずの脱出艇の一つが消えていたことから、逃亡した可能性が高い。

 行方を追ってはいるが、手数が少ないから見つけるのは難しいだろうね」

「なるほど……いや、それだけ解れば十分だ、ありがとう。あとは後日聞かせてもらう」

 

ヴァサゴ・カザルス、それがSAOにおけるPoHであり、GGOにおけるフィンズの正体。

いまはそれで十分だ、決着はまたいずれということになったが、果たしてどうなるか。

 

 

 

その後、俺は師匠に背負われながら明日奈と凛子さんと共にヘリに乗せられ、そのまま軍病院に入院した。

また、防衛省管轄の施設で保護という形で一週間を過ごし、明日奈は朝霧財閥の護衛を受けながら自宅で過ごすことになった。

用意されたアミュスフィアにてALOで会えるのが唯一の救いだった。

 

そこで今回の一件『オーシャン・タートル襲撃事件』の報道を見ることになり、自分がその渦中に居たんだなぁと改めて思った。

また、戻ってきた菊岡から技術提供や成果報告を国連と世界に行い、

不正アクセスプレイヤーが続出した三国から賠償が行われる形で主に決着がつくことを聞かされた。

実行犯達については終身刑、依頼を行った『アメリカ国家安全保障局』のメンバーにもなんらかの沙汰が下されるとのこと。

そこら辺は世論に明かされないだろうことは、国家間の事情という奴だろう。

 

さらにその後、STLの調整時に俺と明日奈が並行世界にダイブしてしまった一件が起こり、

ALOでは『神々の黄昏』も発生してALOの崩壊を防ぐなど、色々と大変だったわけだ。

 

 

 

 

※※※

 

 

「………と、いう感じだ。ま、簡単にまとめると肝心の敵に逃げられるという事態があったが概ね上手くいったよ」

「いやいや、何が上手くいっただよ!? キミ怪我したんだよね!?」

「それにALOという世界も救ったのよね!? 簡単にまとめすぎよ!

 ねぇ、アスナ。わたし達の反応って間違っているかしら?」

「ううん、合ってるよ…」

 

失敬だな、確かに色々と簡単にまとめる為に端折ったが、長々と話し過ぎないようにしたことを察してほしい。

とはいえ、そうツッコミたくなるようにまとめたのも事実だが(笑)

 

「細かいことに関してはまた時間がある時にしよう。

 それよりもこれからかなり先のことになるんだが、

 ユージオとアリスには俺達の世界で行われる発表に同席してもらうことになるから気構えをよろしく」

「それに関してはカーディナルさんから想定されているからってことで聞いているよ。

 キリト達の世界の道具を使って僕達がそこに行く、だったよね?」

「ああ。そうか、凛子さんと比嘉がカーディナルと話をしたっていっていたなぁ、そういうことだったのか」

 

どうやら二人が予め軽く話しておいてくれたようだ、予定では年末か来年の三月末辺りを予定しているそうだ。

それまでにこちらの準備も整えられるようにしないとな、

俺は大学受験があるからそちらに集中しないといけないから中々時間が割けないかもしれないが。

 

「でも、本当にそういうことができるのかしら…?」

「ん~、だけどわたし達も手段は違うけどこうやって別の世界に来てるわけだからね」

「そういえばそうね、なんだか楽しみな気もしてきたわ」

「その時が来たら案内してあげたいなぁ」

 

アリスとアスナも言葉を交わして楽しそうにしている。

 

「さて、それじゃあユージオとアリス達はどうだった? 俺達が去った後、詳しいことは知らないからさ」

「そうだったね。僕達の方は……」

 

 

 

「キリトとアスナさんが黒天で去った後、残ったキリトの仲間の人達が他の人達を纏めて、

 一時したらみんなの姿が粒子になって消えていったんだ。

 こっちのみんなでお礼もして、見送らせてもらったよ」

「その少しあとで黒天が戻ってきて、キリトとアスナも無事に戻れたのは解ったわ」

 

一応ハクヤ達からも聞いたが、何事もなく戻れたのでよかった。

コンバートで協力してくれたプレイヤー達にはそれぞれのゲーム内でのサービスやゲーム内通貨を提供することで区切りがついた。

最初にリスクも提示していたこともあり、多少の揉め事はあったようだが全て政府の方で対処してくれたらしい。

 

「でも、そこからが大忙しだよ。

 まずは正式に和平を結ぶことになったから、

 人界の代表をカーディナルさん、暗黒界の代表を暗黒騎士団長のビクスルが務めて協定を結んだよ。

 暗黒騎士団や拳闘士団、亜人種の中ではオーク族は問題無かったんだけど、

 暗黒術師達や暗殺者ギルド、その他の亜人種が揉めてね…」

「人界側もいきなり受け入れろと言われても、民衆や暗黒界と戦うために強くなってきた人達は反対したわ。

 それでも、それぞれで良い知らせがあったの」

 

ユージオとアリスが微笑み、俺とアスナは顔を見合わせてなんだろうと首を傾げる。

 

「人界側ではベルクーリさんとファナティオさんの結婚が発表されたんだ。

 暗黒界側ではビクスルと彼の補佐で暗黒騎士第十一位のリビア・ザンゲールの二人が結婚だね」

「それに副長がご懐妊していることをも発表されたのよ。

 他にも、拳闘士団チャンピオンのイスカーンと整合騎士のシェータ殿が婚約することを発表したわ」

「凄い、おめでたいね!」

「そうか、ベルクーリとファナティオに子供が……イスカーンとシェータも、意外と早いものだな」

 

もしかしたら、戦争が終わった今だからこそ、和平の象徴で掛け橋としても見えるようにいまを狙ったのかもしれない。

勿論、純粋に彼ら彼女らの幸せを願っているからこそ、敢えて表立たせているのだろう。

カーディナルが考えたのかもしれないな。

 

「暗黒界の環境に関してはカーディナルさんがキリト達の世界の人に協力してもらって、少しずつ良くなっている感じだね。

 聞いたけど、キリトが提案したんでしょ?」

「ああ。結局のところ大半の部族が資源を問題としていたからな。

 過去の戦争が原因とはいえ、手助けくらいはしてもいいだろう」

「これから生きていく人達も、生まれてくる命達にも、罪はないからね…」

「わたし達が頑張っていかないといけないことだわ」

 

暗黒界の資源が少ない理由は過去の暗黒界での戦争にある。

そこで俺は僅かな環境操作を比嘉に願い、あとは人の手で良くしていけるようにしてもらった。

あとはこの世界で生きている者達次第ということだ。

 

「資源の再生は勿論だけど、亡くなった人達の家族への手当、人界と暗黒界両方の意識の改革、

 人界側だと公理教会の教えや帝国法の改定、人族の亜人族への差別撤廃、他にもやらないといけないことはたくさんあるよ」

「わたしとユージオはキリト達の世界にも向かわないといけないし、それでも遣り甲斐があるとは思っているわ」

 

ユージオとアリスは俺やアスナよりも先に将来へ進んでいくんだ。

この二人にはもっと別のこれ以外の道もあっただろう、このルーリッドで静かに暮らすことも出来たはず。

それでもこの道を選んだのは自分達が持つ力や意志を自覚しているからだ。

 

「もっと忙しくなる前の休暇、それが今回からだったんだよな。いきなり押しかけて悪かった」

「そんなことないよ。むしろ忙しくなる前に会えてよかったくらいさ」

「それもそうか」

 

一通りのことを話し終えて少しばかり静かな空気が流れるが、アリスが何かを思い立ったように椅子から立ちあがった。

 

「暗い話も真面目な話も終わったなら、お昼ご飯は外で食べましょう! わたしがお弁当を作るわ!」

「いいね、わたしも手伝うよ! アリス、一緒に作りましょう!」

「ええ、アスナ!」

 

俺とユージオの答えを聞くまでもなくアリスの提案にアスナが乗って二人で料理を始めた。

俺達は顔を見合わせて苦笑するが魅力的な提案に断る理由もなく、

女性陣二人の準備が終わる前に俺達も必要なことを手伝うことにした。

 

 

 

 

※※※

 

 

「すご~い! 素敵な場所!」

「わたし達のお気に入りの場所なの。静かだし、これだけの景色が見られるもの」

「確かに、絶景だな……こっちに居た時に見つけられなかったのが残念だ」

「はは、キリトにとってはそうかもね。次の時はもっと色んな場所を周ろう」

 

湖の近くにある小高い丘、辺りを見渡せるその場所に俺とアスナは案内された。

最高の景色の中で俺達はアスナとアリスが作ってくれた昼食に舌鼓を打つ。

数種類のサンドイッチと温かいスープが絶品だ。

 

「キリトくん。はい、あ~ん」

「あむ……んく、美味いな」

 

偶にというか、いつものようにというか、そんな感じでアスナにされたので応じる。

すると、それを見ていたアリスが行動に出た。

 

「ユージオ。あ、あ~ん///」

「あ、むぐ……ん、ありがとう」

 

二人きりではなく、こうして俺とアスナが居るからかアリスは照れたように行ったが、

ユージオは嬉しそうにしているしあまり抵抗がなさそうだ。

バカップルめ……お前が言うな? 褒めるなよ。

 

「それじゃあ俺からは口移しで「しないよ//////!?」人前だと無理か…」

「口移しって、はぅ…///」

 

この流れなら出来るかなと思ったが無理だったか。

まぁ実際冗談なんだけどな、いくらユージオとアリスとはいえ蕩けた表情のアスナは見せたくないし。

アリスは想像したのか顔を紅くして両頬を両手で覆っている。一方、ユージオは俺に寄ってきた。

 

「なぁキリト、いま人前ではって言ったよな?」

「あぁ、言ったな」

「じゃあ人前じゃなかったらやるんだ」

「やるな。それなりに」

「「なにを話しているのよ//////!?」」

 

なんてことを聞かれたので普通に話したら怒られた。

いいじゃないかこれくらいは、と思うが口には出さない、アスナ絶対に拗ねるだろうし。

そんなこともあったがデザートのパンケーキに俺もユージオも釣られて平謝りしたのは言うまでもない。

 

 

 

食後、冬場にしては温かめな今日の陽射しのお陰か、風が吹くことはあっても穏やかなものだ。

アスナとアリスは丘を下りて湖の傍ではしゃいでいるような感じで話している。

俺達はそれを丘の上から微笑を浮かべて見守り、そうしたらユージオが話しかけてきた。

 

「あの日、キリトと出会えたから僕はアリスと一緒に居られている。

 もしかしたら、いまのこの日常すらなかったかもしれない。

 だから、何度でも言うよ、本当にありがとう」

「元は俺が、俺達が引き起こしたことなんだけどな……だけど、どういたしましてって受け取っておかないと気が済まないよな?」

「その通りだね」

 

俺からすれば元々の原因は俺達にあったが、それでもいまのこの結果を見ればユージオやアリスにとっては俺のお陰になるのだろう。

複雑ではあるが、受け入れておくのがいいことなのは理解している。

 

「これからだぞ、大変なのは…」

「解っているよ。だけどそれはキリトも同じだろ?

 いますぐのことじゃなくても、キミだって将来のためにやらないといけないことがたくさんあるはずだ。

 ならお互い様だよ。僕とアリスは一足先に行動するだけだからね」

「それもそうか……じゃ、俺とアスナも頑張るとするかな」

「そうしてくれ。僕達もALOに行けるように頑張るよ」

 

それも知っているのかと思ったが、カーディナルから間接的に聞いているのだろう。

そう、今度はALOで一緒に冒険、っていうのもアリだな。

 

「キリトく~ん!」「ユージオ~!」

「呼ばれたことだし、いくか?」

「そうだね」

 

アスナとアリスに呼ばれ、俺とユージオは腰を上げて二人の許へ歩み寄る。

いまはただ、この穏やかな時間を噛みしめよう。

 

和人(キリト)Side Out

 

 

END

 

 

 

 

 

 

このままあとがきを投稿します。

 

 

 

 

 


 
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