ジャンヌ達は、異変が起きているワクノニの森の中を進んでいました。
普段は、この中にはたくさんの動物がいるはずでしたが、
それらが石化している今、代わりに魔物で溢れかえっていました。
「あっ、これは」
ジャンヌは、数少ない石化していない木の実を拾いました。
投げると相手を混乱させる事ができる、フララの実です。
「よかった……石になっていませんね。使えそうです」
ジャンヌは、その木の実をバッグの中に入れました。
ちなみに、フララの実は、パニックドラッグの原料になっています。
「ここにも道具があったよ!」
ゲールは、投げると相手を麻痺させられるパラライズボールを拾いました。
「じゃあ、あたしも道具を……」
バイオレットも道具を見つけようとした瞬間。
―ガサガサッ
「うわ!?」
突然、草むらから音が聞こえたと思うと、大量の魔物が現れました。
犬のような容貌を持つ鬼人族、コボルドです。
「弱い……でも、数が多い!?」
しかも、コボルドはなんと10体で襲いかかってきました。
コボルドは力は弱いのですが、群れを成して襲いかかってくるのですが、
あまりにも数が多いために簡単には捌き切れないようです。
「こうなったら……行きます! えいっ!」
ジャンヌはフララの実をコボルドのところに投げつけた後、
風の能力を使ってフララの実を爆発させて効力を広がせました。
それによってコボルド達は同士討ちを始めました。
「先を急ぎましょう!」
「ああ!」
こうして、三女神とトールは、コボルドとの戦闘を回避するのでした。
「きゃっ! またコボルドです!」
「エアリアルブラスト!」
道中、襲いかかってくるコボルドは、能力によって楽に倒しました。
大量に現れても、神々の敵ではないのです。
「このくらいの敵など、大した事ではありません」
「それよりも、石化した森を元に戻さなければ!」
そう、三女神とトールの目的は、石にされた森を元に戻す事です。
しかも、時間がかかるにつれて、全てが石にされてしまう可能性も十分あります。
なので、早めに森を元に戻さなければなりません。
「だったらとっとと急がなきゃなうぉあっ!?」
トールが急ごうと足を速めた瞬間、トールは転んでしまいました。
「前は見てくださいね」
「……はいはい」
三女神とトールは、森の中を進んでいきました。
この森は今、奥に進むにつれて、石化しているもの達も増えてきています。
森に異変を起こした犯人が、近くにいる証でしょう。
「ああ……綺麗な森を……見たいです……」
「元に戻れば見る事ができるさ」
「そう、ですね……」
そして、三女神とトールは、森の奥にやってきました。
異変を起こした犯人を求めて。
「ここに、森を石化させた犯人がいるのですね」
「多分な」
ジャンヌはいつ、敵が来てもいいように、戦闘態勢を取りました。
「気を付けて……みんな。敵が来るかもしれません」
「あっ! ゆ、油断禁物だったね。うん!」
「だけどオレ達の敵じゃあないさ!」
「……」
皆が戦闘態勢を取る中、ゲールだけが何もしていませんでした。
すると……。
―ガシャン
「なっ!?」
突然、ゲールの上に、檻が落下してきました。
「ゲール!? 今、助け……」
「その檻に触れるな!」
「きゃあっ!?」
ジャンヌが檻に触れた瞬間、彼女の体に電撃が走りました。
彼女は思わず、檻から手を放してしまいました。
「誰です! こんなものを出したのは……!」
ジャンヌが怒りながら拳を握りしめた、次の瞬間。
―シュン
「!?」
突然、彼女達の目の前に、黒いローブを纏った青い髪の男が現れました。
「おやおや……かかった獲物は一匹でしたか」
「あなたは……!」
「私はマザー教団四使徒が一人。水のナッツォと申します」
男―水のナッツォは丁寧な口調で話しかけましたが、それに相手を敬う心は一切ありませんでした。
所謂、慇懃無礼な人物と言えるでしょう。
「ゲルダを解放しなさい!」
「おや? 今捕まっている獲物が、ゲルダという女ですか。
しかし私もただで解放するつもりはありませんよ」
「何っ!」
「この檻を破壊できたら、にしましょう。無論、貴女達にはできないと思いますがね」
ナッツォの他者を見下す態度に、流石のトールもキレているようです。
「この野郎! もっと正々堂々と戦いやがれ!」
「残念ながら私にはできませんよ? 何故なら、私の仕事はそれですから」
「汚い奴ね……!」
「それでは、立ち去りましょう。このまま飢えて死になさい!」
そう言い、ナッツォは煙玉を地面に叩き付けました。
「あっ! 待ちやがれ!」
トールは慌ててナッツォを追おうとしましたが、煙が晴れた時には、既にナッツォはいませんでした。
「畜生! 逃げられちまったか!」
「うっ……ううっ……!」
ゲールが囚われている鉄格子には、高圧電流が流れていました。
「……ゲール! 今、助けますよ!」
「おうっ!」
「待っててね、ゲールお姉ちゃん!」
ジャンヌ、バイオレット、トールは、鉄格子を破壊するために戦いを挑みました。
「そぉれっ!」
バイオレットは影の能力を使い、ゲールを傷つけないように鉄格子を攻撃しました。
「力よ……ウィンドフォース!」
ジャンヌは風の能力で全員の能力を上げ、手早く鉄格子を壊せるようにしました。
―バヒュン!
鉄格子は波動を放ち、ジャンヌ達にダメージを与えました。
どうやら、鉄格子も壊されないように抵抗しているようです。
「そらよぉ!」
トールは負けじとミョルニルを振るって鉄格子に叩き付けました。
彼の剛腕により、鉄格子に傷が少しついたようです。
「いよっしゃ!」
「当たって!」
「風よ……ウィンドカッター!」
その後、バイオレットが影の能力を使って不可知の一撃を放ち、鉄格子を攻撃しました。
ジャンヌも風の能力によって無数の風の刃を飛ばして攻撃しました。
―バリバリバリバリ!
鉄格子は電撃のレーザーでトールを攻撃しましたが、雷神である彼には痛くも痒くもありませんでした。
「雷に雷なんてアホじゃねえか?」
しかも、エネルギーを吸収してさらに力を得たトールは、ミョルニルにさらなる力を込めました。
そして、力強く振り下ろすと、鉄格子にひびが入りました。
「おし! このまま攻めるぜ!」
「ええ!」
ジャンヌ、バイオレット、トールは、ひびに向かって何度も攻撃を繰り出しました。
風、影、そしてミョルニルの一撃が次々と入っていきます。
「食らえぇぇぇぇぇぇ!!」
そして、ミョルニルの一撃が入った瞬間、檻は砕け散りました。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ようやく、ゲールは檻から脱出する事ができました。
「こんな場所、早く出ましょうよ……」
「駄目! 森を元に戻すのが優先!」
「……はぁ……」
ワクノニの森を元に戻すのは、時間がかかりそうです。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
8月は物凄く暑いですね……。でもこの物語はやめませんよ。