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ALO~妖精郷の黄昏・UW決戦編~ 第38-15話 アバター戦 前編

本郷 刃さん

第15話目になります。
今回含めて三話にかけてみなさんのアバター戦になります、タイトルはいいのが思い浮かびませんでしたw

では、どうぞ・・・。

2016-07-11 13:34:14 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5386   閲覧ユーザー数:4835

 

第38-15話 アバター戦 前編

 

 

 

 

 

 

 

No Side

 

切って落とされた開戦の幕、様々なVRMMOのプレイヤーがコンバートを行い、UWの命を守るために戦っている。

物語の主役達が戦う中で、共に戦うことを選んだ者達もいる。

不正アクセス軍(以降『アクセス軍』)に対し、各々の持てる力をぶつけている。

今回はキリト達が戦う中で同じく戦場を駆ける者達にスポットライトを当ててみよう。

 

 

 

最前線にて大盾を揃えて後ろの部隊を守る壁役(タンク)達、彼らの間からライフルを構えている男がいる。

銃口は盾の間から戦場に向けられており、彼が引き金を引く度に発射される弾丸によって撃ち抜かれていく。

頭や心臓部を撃たれた者は一撃で即死となりログアウトしていき、それ以外の場所を撃っても外していることは一度も無い。

 

「こうも乱戦状態では減っているのか実感し難いな。

 弾倉は可能な限り持ってきているが、使いすぎるのはよくない。だが、倒せるだけ倒しておくか」

 

この男、名を『スネーク』という。

ダイヤモンドドッグス仕様のスニーキングスーツに身を包んで額にバンダナを巻き、左腕の肘から先が義手となっている。

(容姿は『メタルギアシリーズ』の『スネーク』)

 

彼が使用しているのは『M14EBRスナイパーライフル仕様』であり、

本来はアサルトライフルであるがGGO仕様としてスナイパーライフルに改造してある。

元々セミオートでの命中精度が高いところに改造と彼の技術によりフルオート時の命中率も高く、

加えてスナイパーライフル仕様になっているため狙撃距離も通常のものより長い。

隙の多い者を撃ち抜き、苦戦している者へ援護するなど、戦場で狙撃を行っている。

だが、戦場とはなにも味方にばかり傾いている天秤ではない、時には相手に傾く時もある。

 

「しょ、正面が突破されたぞ!?」

「ならば俺が行こう。狙撃ばかりでは体が鈍る」

「アンタGGOのプレイヤーだろ、近接戦闘ができるのか?」

「銃の世界といえども近接戦闘は欠かせないものさ。近接系統のスキルも持っている。

 なに、なるべくここには到達させないさ」

 

こちらに向かって来るアクセス軍に対しスネークはタンク達の上を跳び越えてから敵に向かっていく。

フルオートでライフルを連射し、それさえも全て命中させるなど恐ろしい技術を見せつける。

敵に接近したスネークはライフルから武装を交代し、近接戦闘へと移行する。

 

『M1911A1』、日本では通称『コルト・ガバメント』と呼ばれる拳銃と『高周波ナイフ』を扱い、敵を倒していく。

高周波ナイフで次々と斬りつけるだけでなく、

その振動により圧倒的な切れ味を得ているためアクセス軍の鎧であろうともいとも簡単に斬り裂く。

近距離だから銃が使えないというわけもなく、至近距離の銃撃で頭や心臓など急所を的確に撃ち抜く。

そして、その二つの武器を扱いながら《CQC》スキルによって近接戦闘をこなしていき、

時には《武器奪取》のスキルで相手の武器を奪い取りそれを活用して倒す。

 

「VRMMO歴では日本の方が一日の長だからな、全体的な質でみればやはりこちらが上か。

 おっと、普段ならば逃がしてやるところだが、いまはそういうわけにはいかないな」

 

そう言うとスネークは後退しようとしていた敵に向けて左腕の義手を向けた。

すると、義手の人工皮膚が弾け飛び、機械的な中身がむき出しになり、そのまま肘までの腕部分全体が電気を纏い始める。

 

「これは悪餓鬼共の軽率な行動へのお仕置きだ、食らっておけ」

 

義手を前に突きだした瞬間、電気が放出されて前方の敵達に電撃を浴びせた。

電撃を受けた者達は麻痺状態となり、他のコンバート軍に倒されていく。

さらに距離を開けていた敵達も居たが再びスネークが義手を機動させると先程とは違う電気を放ち始めた。

それは二十メル(20m)も離れた敵達の金属製の装備に反応し、それらを引き寄せていく。

何が起きているのか驚きのあまり見当もつかなくなっているが、実際のところは磁力によって引き寄せているだけに過ぎない。

しかし、それを理解することもなく、引き寄せられた瞬間にスネークが高周波ナイフを振るい斬り裂いて倒してしまう。

 

「すげぇな、アレがゲーム業界でも有名な『伝説の傭兵』に肖った男」

「というかあの男が『伝説の傭兵』だとしても違和感なさそうだぞ……あ、段ボール被った」

「「………まさか、本物か?」」

 

彼の戦いを見ていたGGOのプレイヤー二人が話す先で段ボールを被って移動していくスネーク。

まるで誰も見えていないかのように進んでいくその姿に、二人のプレイヤーは冷や汗を流した。

 

「ふっ、戦場でもバレないとはやはりこれこそが最強の隠形アイテム」

 

今日も伝説の傭兵は段ボールです!

 

 

 

 

その男は戦場に居る、しかし彼の周囲に味方は一人も居らず、囲んでいるのは敵だけという状況。

だが間違ってはいけない、誰も彼を援護しようとしないのではなく、彼には援護が必要なく、

同時に味方の者達は戦闘に巻き込まれるのを懼れているからだ。

その在り様は戦場においては不似合いともいえるが、彼にとってはこれが最も自然体で居られる。

 

黒みが入った茶髪に緑の瞳、白のカッターシャツのような服を着て黒いズボンを穿き黒いロングコートを纏う。

背中に聖剣と魔剣を背負い、右腰に鉄扇、左腰に鞭、手には僅かに爪部分があるスピナーを装備。

影妖精族(スプリガン)の彼の名は『ディーン』という。

(容姿は『アルシャード・ガイア』の『ディーン・ランダム』)

 

防具の類がほとんどないほどの軽装だが、十分すぎる武装が彼の強さを証明している。

現にここまでで彼によって大多数のアクセス軍が葬られているのだ。

 

「あ~あ~、ホントにお前ら余計なことしてくれやがったよ…キリトの逆鱗に触れちまいやがって、ありゃ止まんねぇぞ」

 

溜息を吐きながらも隙を見せることなどしないディーンは自分を囲む敵達を見てから再び数多の武器を構える。

 

「とりあえず、纏めて逝ってくれや」

 

ウインドウを一瞬で操作して彼の手に現れたのは六個の小さな剣の飾りが付いた錫杖、

それを構えながら敵の攻撃を回避しつつ高速詠唱を行い次々に魔法を発動していく。

発動される魔法は幻惑系統であり、幻覚魔法や分身魔法を合わせるだけでなく、攻撃に属性を付加させる魔法で攻撃を強化する。

 

「この音に惑え」

 

シャンッ! 錫杖を鳴らしたことで出た音に合わせて構えた錫杖がソードスキルの輝きを纏い、それを放った。

杖の先の輝きが伸びるように放たれ、さらに複数に増えることで周囲の敵に襲いかかった、オリジナルソードスキル(OSS)《誘う剣先》だ。

威力自体は大きくないが、中距離系のOSSであるため名の通り相手の攻撃を誘い易いものだ。

 

「近距離でもボーガンは使えるんだぜ」

 

ディーンは武器を錫杖から二丁のボーガン『クロスショットボーガン』に変える。

矢に属性を付加させる弓系のスキル《EFB》を使うことで矢に属性を付け、

さらに弓系の基本系スキルで強力な一撃を与える《バーストショット》を組み合わせることで、

属性を宿した強烈な矢の一撃を命中させる。

そして囲まれた状況を利用し、弓系のスキル《フルブラスト》を使用して全方位に矢を乱れ撃つ。

 

「今度は魔法でいくぞ」

 

武器を再び錫杖に変え、詠唱を行い発動された魔法。

ディーンの周囲のアクセス軍達は同士討ちや何もないところを攻撃していく、一定空間内の対象を幻惑状態にする魔法《幻惑の庭》。

加えて続けて発動する魔法により分身が生み出され、それを攻撃した敵は発生した爆発によって弾け飛んだ。

分身魔法によって作られた分身に紛らせた爆発系アイテムが爆破した、

《ファントム・イグニションボム》と名付けられた技術である。

 

「夢に堕ちたまま逝け!」

 

未だに幻惑状態に囚われたままの敵へ向け、新たに魔法で生み出した複数体の分身と共に突撃を行う。

錫杖だけでなく鉄扇も持ち、両方の武器で分身と共に行う攻撃は《幻覚・死幻曲》。

そこで即座に武器を変える、今度は鞭と手に嵌めているグローブ型の武器スピナー。

自在に振るわれる鞭とスピナーの糸により敵は叩きつけられ、切り刻まれていき、

最後に鞭と糸が同時に襲い来る技《惨劇・幻覚のレクイエム》により囲んでいた大勢が倒された。

 

「それじゃ、止めと行くぜ!」

 

武器を聖剣と魔剣に変え、敵に向けて攻撃を仕掛ける。

一気に駆け抜けていき、重ねた二本の剣により突貫するこのOSSは《突撃鮫(シューティング・スクアーロ)》である。

まだ攻撃は衰えず、今度は伝説級武器の剣『壊剣アロンダイト』と『血剣フルンディング』を振るい、

八連撃の二刀流OSS《聖魔幻狼斬》を使用して敵を斬り捨てる。

そこで終わらず、彼は聖剣と魔剣を取りだして変則的な四刀流となり、

OSS《幻覚・極総集奥義・霧雨月歌》で接近していた敵の全てを薙ぎ払い、斬り払った。

 

「これで、幕引きだ!」

 

自身の持つ全ての武器をその場に取りだし、残っていた敵達を全ての武器を使い打ち倒す。

《幻術・新説極奥義・赫月天武・曇天修羅》は彼の集大成ともいえる力と武器達の技術だ。

ディーンを囲んでいた敵達は全て、彼の奏でる死の楽曲に送られた。

【ミスト・ナイトメア】の異名を持つこの男は伊達ではない。

 

 

 

 

今、果敢にも二人の少年と少女が戦場の真っ只中へと向かおうとしている。

 

「乱戦混戦、俺達にとっては都合がいいな。俺は身軽さを活かし易い」

 

少年の種族は工匠妖精族(レプラコーン)、アバター名は『ヤマト』、現実世界での名前は『直江大和』という。

中華風の拳法着に身を包み、胸元にある大きな丸文字の中には猿の字が書かれており、両手には鉤爪を装備している。

(容姿は『真剣で私に恋しなさい!シリーズ』の主人公『直江大和』)

 

「私にとっては木を隠すなら森の中かな、人が隠れるのなら人ごみの中ってね」

 

少女の種族は火妖精族(サラマンダー)、アバター名は『アカリ』、現実世界での名前は『赤座あかり』という。

その身に赤色の忍者装束を纏い、腰元には短刀が据えられている。

(容姿は『ゆるゆり』の主人公『赤座あかり』)

 

「そろそろ叩きのめしに行くとするか。準備はいいよな、アカリ?」

「うん、いつでも行けるよ、ヤマトお兄ちゃん!」

 

仲間思いで面倒見の良い兄貴肌かつ普段は冷静で軍師的なヤマト、心優しく天真爛漫な性格のアカリ。

二人の雰囲気が変化する、ヤマトは獰猛な笑みを浮かべて加虐的な表情になり、

逆にアカリは先程までの笑顔が嘘のように消えてまったくの無表情になった。

 

「ケケケ、いい悲鳴を聞かせろよ!」

「任務開始」

 

二人は正面の集団へと突入した。

 

 

 

「どいつもこいつも遅いぜ!」

 

ヤマトは持ち前の素早さと身軽さを活かし、集団の中を自由自在に移動しながら攻撃を行っている。

素早く移動することは勿論、その身軽さは相手の武器や体を足場にしてアクロバティックな動きを行うことで攻撃を回避する。

その回避行動の流れの中で鉤爪を使い敵を斬り裂き、喉元に突き刺し、四肢を刻み、体を抉る。

自身の攻撃は確実に当て、相手の攻撃は確実に避ける、ヒット&アウェイを主としたバトルスタイル。

 

『人の言葉に乗せられて、その挙句に逆ギレするとかマジガキみてぇ(笑)』

 

嘲りを込めて英語を笑いながら発したことで挑発に乗っていくアクセス軍。

冷静さを欠くことは致命的であり、ヤマトは急所に攻撃を仕掛けていく。

いままで一撃で仕留めていたが今回に限ってはそうではない、攻撃を受けた者達は全員が麻痺状態になり倒れた。

麻痺毒による麻痺状態、彼は《調合》スキルによる調合で麻痺毒を生み出し、

それを鉤爪に付加させることで敵に状態異常を与えたのである。

 

『痛いか? 苦しいか? 当然だ、だがお前らも同じことをしていたんだから自業自得だろ?』

 

動けなくなった敵を確実に始末していくその表情はドSそのもの。

本人の加虐嗜好もあるが、その内面に隠しているのは相手に対する戒め、二度と軽率な行動を取るなという意味も含ませている。

 

「一気に終わらせてやるぜ!」

 

敵が溢れる戦場を縦横無尽に駆け回ることで助走を付け、幾人もが一列に重なっているポイントを的確に見つけそこへ突撃する。

翅を展開し、錐揉み回転を行いながら両方の鉤爪を正面に向けて突撃するOSS《スクリュードライバー》、

これによって十人以上の敵が腹部を貫かれるか抉られるようにして倒される。

さらに勢いをそのまま利用することで新たなOSSに移る、

素早く縦に回転しながら敵に突進して相手を連続で切り刻む《華中飛猿爪》を行うことで何人もの敵が刻まれたことで消滅する。

 

「ケケケ……ま、精々反省することだな。次があるかは知らねぇけど」

 

ヤマトはその場に言い残し、新たな獲物を狙って駆けだす。

現代に現れた飛猿を自称する少年、それは彼の驕りなどではない。

 

 

 

ヤマトが戦闘を開始した頃、アカリは乱戦の渦中に居た。

彼女は短刀を振るい、味方が敵と戦い相手が油断や隙を見せるか、味方が危なくなったところで敵を暗殺していく。

敵に気付かれず、一瞬かつ一撃で急所を確実に攻撃し、即死させる。

倒された者達は何が起き、何をされたのかも理解できずに凄まじい激痛に襲われながら消滅する。

この光景を見たアクセス軍は恐怖に怯え、味方のコンバート軍でさえ呆然とする。

 

「まだまだ、倒し尽くさなくちゃね」

 

その声に普段の彼女の色は無く、無色透明としか言えない冷たさしか残らない。

しかし、敵にも勿論ながらアカリの存在を見破れるスキルを持つ者達も居る。

奴らは一連の正体が彼女の仕業だと知るとすぐさま倒そうと押しかける。

向かって来る敵を認識したアカリは自身のヘアスタイルの特徴であるお団子ヘアのお団子に触れ、取り外した。

 

「「「「「え…?」」」」」

「《お団子ボム》」

 

その光景に敵も味方も驚くがアカリは一言告げながら驚く敵に投げつける。

直後、投げつけられたお団子が爆発し、複数のプレイヤーを弾け飛ばした。

実はこれ、名前の通り爆弾である。

お団子ヘアに見せかけた爆弾アイテムを込めたものであり、着脱可能で投擲後に爆発する仕掛けになっている。

だからといって全員の動きが止まるわけでもなく、アカリの背後から凶刃が迫る。

 

「これ、別に隙とかじゃないから」

 

背後から迫る剣をバック宙で避け、攻撃してきた敵の頭上を越えながら背後に回り込み、

着地前に脚部に隠していた暗器の手裏剣を足指に挟み込んでそのまま敵の延髄に蹴りを行った、OSS《背転田楽刺し》。

凄まじい衝撃と激痛に悶えながら消滅していった。

 

「ヤマトお兄ちゃんみたいに虐めないけど、遊びもしないから」

 

冷徹に言い放った女学生とは思えない声音で告げ、アカリは再び戦場の陰で暗殺を行う。

暗部の一族たる彼女は今、必殺の仕事人だ。

 

 

 

 

タンク達の間から狙撃を行っている者は他にも数多くおり、彼もまたその一人。

短髪で気難しい顔をしており外見は三十代前後ほどで上下青の迷彩服を着用している。

狙撃に使用しているのは『64式7.62mm狙撃銃』であり、本来の『64式7.62mm』を狙撃銃仕様に改造しているのである。

 

「ふぅ、今のところは一発も外さずに命中させることが出来ているが、終わりが見えんな」

 

男性の名は『ミツナリ』といい、装備から分かる通りGGOから参加している。

彼の言うとおり、GGOのプレイヤーは銃火器類がメインであり、当然だが弾倉などの残弾数には限りがある。

だからと言って、彼も他のプレイヤー達も負けるつもりなど毛頭無い。

ミツナリはGGOのスキルで射撃や狙撃の命中率を上げる《サーチショット》を装備することで、

狙撃銃仕様の主武装の命中を確実のものにしている。

 

「これだけ多いと味方の援護も難しいものだ」

 

そう言いながらも冷静沈着を体現しているかのように難しい援護狙撃をこなしていく。

冷静でなければ中々こうはいかないだろう、これだけでも彼の腕前がかなりのものだと窺い知れる。

しかし、そんな時だった。

 

「む、アレは……いかんな」

 

ミツナリの視線の先では一人の少女が囲まれることで苦戦している。

タンク達を跳び越え、ミツナリは苦戦している少女の許へ向けて駆けだした。

冷静沈着な彼だが、味方の危機になると居ても立ってもいられなくなり、近距離戦闘に移ってしまうのだ。

だが装備を『64式銃剣』に変えることで近距離戦闘もこなせるようになり、

敵に接近しながら銃撃を行い、至近距離に到達すると刃の部分で突き刺した。

 

「無事か?」

「うん、ありがとう! あたしはリン、よかったら援護してもらっても?」

「任されよう」

 

助けられた少女、『リン』の姿はALOのようなファンタジーチックなものでなければ、GGOの未来的なものでもない。

焦げ茶色の髪と同じく焦げ茶色の瞳で髪の長さは腰元まであり熊耳のような髪型をしていて、

防具は軽装でスカートにスパッツを穿いている。

 

そのスタイルはSAOでよく見られたもの…そう、リンは『SAO生還者』であり、そのデータでこのUWにコンバートした者である。

 

「さっきはよくもやってくれたわね! ま、体も温まってきたし、本気でやってあげる!」

 

リンは己の得物である短剣を構えると即座に動きだした、援護してくれる者がいるお陰で気にせずに戦える。

自由奔放な彼女にとって任せられる者がいることは本気を出し易く、戦闘好きでもあるために戦いを楽しみ易くもなるのだ。

 

「それなりに場数は踏んできたの、楽しませてよね!」

 

やや吼え気味に言ったリンは直後に短剣による連撃を繰り出した。

一撃が重くはなく威力も高いとは言えないが、SAOを生き抜いたそのステータスは並みではなく、

相手の防具の隙間を縫って連撃を繋いでいく。

走っては跳んで相手の頭上に回るとそのまま短剣を突き刺し、また走って跳んで頭上に回ると頭部を斬り裂き、

さらに走って跳んで回っては骨髄部分から背中を引き裂く。

 

短剣のソードスキル《ラピッド・バイト》による先制を初手とし、

《トライ・ピアース》《ファッド・エッジ》《インフィニット》《シャドウ・ステッチ》《エターナル・サイクロン》など、

他の短剣ソードスキルで連撃を行っていく。

それぞれの技後遅延時間(スキルディレイ)の間は援護射撃によって守られ、さらにスキルを使用していくのだ。

 

「最大技、決めちゃおうか!」

 

一人の敵プレイヤーの前に降り立ったリンは短剣を構えてからスキルを放つ。

《アクセル・レイド》、短剣系では最高連撃数を誇るソードスキルでその連撃回数は九連撃である。

その身を刻まれた敵は叫びながら消えていった。

 

「まだまだいるけど、一先ずは大勝利ってね!」

 

余裕そうなことを言いながらも既に短剣を構えなおして次の獲物へと向かおうとするリン。

そんな彼女の前に集まっていた敵が着弾した何かによって爆散した。

 

「おぉ、汚い花火…」

「あそこからか」

 

リンの援護にきたミツナリが見つけたのは『ロケットランチャー』を構え、

次弾を装着し再び敵を爆破処理…もとい、倒していく男の姿。

そのロケットランチャーは単発式のようだが一撃の威力がかなり高いらしく、敵の装備の防御性能を無視して全て吹き飛ばす。

ロケットランチャーを背負い、武器を『AK47(アーカーヨンナナ)』というアサルトライフルに変え、連射しながら二人の許にきた。

 

「援護は不要だったかな?」

「そんなことないよ、ありがとうね」「感謝する」

 

やってきた黒眼の黒髪短髪で中年の男性だが筋肉の付きは良い男は『アサシン』と名乗り、そんな彼にリンとミツナリは感謝を述べた。

そこへ再び集結してくる敵、アサシンは二人よりも早くそれを察知すると即座に動きだした。

 

「二人とも伏せろ、ふっ!」

 

アサシンの言葉を聞いた二人は瞬時にその場にしゃがみ込み、注意した彼はその場で回りAK47を乱射した。

スキルと合わせることで即座に装填される銃弾、一分に六百発もの銃弾を乱射したことにより、

周囲の敵は激痛とダメージによって一人残らず倒れ伏していた。

 

「上手く生き延びていたようだが、止めだ」

 

残っていた一団に向け、背中のロケットランチャーをぶっ放し、再び爆散させて倒す。

 

「ふむ、こんなところかな」

「凄い凄い! この辺の敵を一掃しちゃったよ」

「やるな、相当の練度がなければ乱射の全弾命中など出来ないのだがな」

 

楽しそうにしながら称賛するリン、ミツナリは同じGGOプレイヤーとして学ぶところもあったようだ。

そんな三人だが倒れ伏している敵に自然に止めを刺しているのはツッコまない方がいいだろう。

 

 

 

 

「ハァァァッ、アタァァァッ!」

 

戦場の中央、敵に囲まれながらも一人で敵を討ち倒していく者がいる。

黒髪のツンツンヘア、瞳は右が黒色で左が金色のオッドアイで耳が長いことからALOのプレイヤーであることが窺える。

『シオン』というこの青年、その手に武器は無く、腕と脚のみで敵を倒しているのだ。

 

「どうしたどうした! この程度か!」

 

《拳術》のスキルによる打撃、《体術》のスキルにより無手での攻撃、《カウンター》のスキルによる反撃の打撃。

特に《鎧通し》のスキルは彼にとってかなり有効的なものだ、相手の装備や防御力を無視して直接ダメージを与えるのだから。

拳だけでなく、掌底や肘打ち、蹴りだけでなく、膝蹴りや踵落としなどの攻撃も行う。

 

「悪いが俺はスキルだけじゃないぞ!」

 

強化魔法を自身に掛けることで各ステータスを上昇させ、幾つか受けていた傷を回復魔法で回復させる。

その直後、いままでとは格段に違う動きを見せる。

それは日本ではあまり見られないもの、中国武術の一派の八卦掌と八極拳である。

基本でありながも特殊な歩法を中心とし、後世においてから八卦思想による影響を受けた八卦掌。

八方の極遠にまで達する威力で敵の防御を打ち破るという八極拳。

 

この二つの武術は特殊故にUSAの者達ではついていくことができない。

舞踊のような流麗な動きのままに繰り出される攻撃の威力の元は大きくないが、

強化魔法によるステータスの上昇により威力も増しており確実に一撃が決まっていく。

八極拳による攻撃に関してはとにかく一撃の威力があまりにも大きく、

一撃で敵の防具や武器を砕き、敵の体を吹き飛ばしてしまうほどだ。

その強烈な攻撃の衝撃波で後方の敵までダメージを受けるほどに。

 

「攻撃は力だけじゃないんだぜ?」

 

再びいままでの戦い方を変え、今度は鉄扇をその手に構える。

敵が振り下ろしてくる剣を一瞬だけ鉄扇で受けるとそのまま力の流れを変えて下に逸らす。

バランスを崩した敵は前のめりになり、シオンが僅かにかけた小さな力だけで地面に叩きつけられた。

鉄扇の仕込み刃に急所を斬られて消滅する敵、

他のアクセス軍も次々に跳びかかるがその全てを僅かな力だけで受け流され、バランスを崩されてから倒されてしまう。

相手の力を利用し、自身の力を最小限にしながら相手に合わせる戦い方、合気道である。

 

さらに細かい回避により敵に張り付くように接敵すると相手の腕を掴み、それを引き千切るかのようにして折る。

腕だけではなく脚の時もあり、最も悲惨なのは頭を掴まれて首を捩じられたものだろう。

忍者体術によるその光景に周囲の敵は恐れ慄く。

 

「そろそろ決めさせてもらう!」

 

武器を鉄扇から変え、その手に構えるのは棒の『雷龍棒』である。

強烈な薙ぎ払いを行い、その攻撃を受けた敵に黒い球体が襲いかかり、追加のダメージを与える。

それは重力の球体であり、地面に着くまで対象にダメージを与え続けるのだ。

ダメージから逃れるにはその場から逃げるしかないが、ゲームとは違いUWでは重力そのものが襲うため逃れられない。

振り回される棒から逃げる術はなく、一度攻撃を受けた者達は潰されて命尽きるのを待つしかないが、

どのみち悲惨なものでしかないだろう。

大きく振るわれた最後の一撃、それによって彼の周囲から敵は消えた。

 

「一丁上がりってな!」

 

重力を操る棒術の使い手は次なる戦場へと向かった。

 

 

 

 

槍によって貫かれ、剣によって斬り裂かれるアクセス軍がおり、その中心では一人の青年が槍と剣を振るっていた。

 

「戦争であり、戦場である以上、一対多という状況も、あらゆる武装や手段も許される。

 だが、それでも私は正々堂々と戦わせてもらいます!」

 

高らかに己の信条を述べたのは風妖精族(シルフ)の青年、『カイル』。

彼が右手に持つのは古代級武器の槍『ロンゴミアント』であり、伝説級武器『聖槍ロンギヌス』のレプリカだ。

左手には愛剣である片手剣の『クラレント』を持つ。

(容姿は『Fate/Zero』の『ディルムッド・オディナ』)

 

「ふぅっ、はぁっ!」

 

気合いの篭った声と共にロンゴミアントによる鋭い突きが放たれ、敵の鎧などお構いなしに防具ごと貫く。

さらに槍を引き寄せ、槍に刺さったままの敵をクラレントで斬り裂く。

続けざまに近づいてきていた敵を槍で薙ぎ払い、倒し損ねた敵は剣で確実に止めを刺す。

 

「まだまだこの程度ではないでしょう?」

 

槍の連撃と剣の連撃、彼もそれだけでは済まさず、槍のソードスキルと剣のソードスキルを使っていく。

システム外スキルである《剣技連携(スキルコネクト)》を用い、

槍と剣のソードスキルを同じ武器種ではないもので連携させる荒業をやってのける。

その硬直時間(ディレイ)でダメージを負うことはあれども、痛みを物ともせずに再び攻撃を行う。

 

「我が奥義、お見せしましょう!」

 

構えた槍と剣からソードスキルの輝きが発せられ、OSSが発動する。

ロンゴミアントによる最速の二連突き、次いで三撃目の薙ぎ払い、最後に四撃目のクラレントによる斬りつけが行われた。

槍のOSSだが、最後の動きに斬りつけのモーションを加えることで槍と剣の二種武装攻撃が可能となっている、

これがOSS《スピーア・アングリフ》だ。

この強烈なOSSにより、攻撃を受けたアクセス軍の上級プレイヤーは為す術も無くやられた。

 

「さぁ、我が槍と剣を恐れぬならば、何人でもかかってきなさい!」

 

槍と剣を振るう英雄に似た青年は己が信条を掲げ、戦場を跋扈する。

 

 

コンバート軍に所属する彼らの戦いは次の幕に移る。

 

No Side Out

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

あとがき

 

またも遅れてしまいまして申し訳ないです、アバター戦というだけあって纏めるのが大変でして。

 

さて、今回登場したアバターを送ってくださった皆様、ありがとうございます。

 

まだ登場していないアバターは次回と次々回で登場いたしますのでご安心を。

 

なお、一部設定やスキル等で不可能なものなどが存在する場合があり、作者の判断で改変しておりますのでご理解ください。

 

そして原作とは違う展開なのは皆さんご存じの通りなので予告をしておこうと思います。

 

あと6,7話で終わります、UWの最終決戦と現実での最後の様子なのでエピローグ含めてもあと7,8話ですね。

 

ある程度の筋書きは出来ているので頑張って内容を書いていこうと思います。

 

ではまた次回のアバター戦をお楽しみに・・・。

 

 

 

 


 
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