No.854790

孤高の御遣い 北郷流無刀術阿修羅伝 君の真名を呼ぶ 25

Seigouさん

北郷の理想

2016-06-23 14:02:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5879   閲覧ユーザー数:3963

于吉「・・・・・では、そのようによろしくお願いいたします」

 

神農「うむ、承ろう」

 

現在、泰山の神殿の奥では于吉と神農が秘密の密談をしていた

 

于吉「左慈の分の品は、私が直に彼に渡しますので、お構いなく」

 

神農「うむ、その方が良かろうて・・・・・しかし、良いのか?ワシの手を借りた事があ奴に知れれば、お主、あ奴に何をされるか分からんぞ」

 

于吉「構いません、これは私が勝手にやった事、後に要求をするのであれば私に言いつけ下さいませ」

 

神農「最初に言ったであろう、ワシは好意でお主達に力を貸していると、後にお主達をどうしようなどと考えてはおらぬ」

 

于吉「寛大な処置、誠にありがとうございます」

 

神農「・・・・・それにしても、お主も好き物よのう、あのような者にそこまで入れ込んで、なにか思い入れがあるのかのう?」

 

于吉「そう、ですね・・・・・確かに長いこと行動を共にしてきましたし、思い入れがあるのは否定しません」

 

神農「それでも、あの頭の固い短気者によくこれまで付いてこれたものよ」

 

于吉「そこが左慈の良いところであり、魅力でもあります・・・・・そんな左慈が私は愛おしくて仕方ないのですよ♪」

 

神農「・・・・・お主も変わり者よのう」

 

どうにも于吉の好みが理解できない

 

見捨てようと思えばいくらでも見捨てることが出来たにもかかわらず、ここまで付いてきたという事は、かなり左慈に心酔している証拠であろう

 

神農「しかし、お主達もかなりの修羅場を潜ってきたにも拘らず浅慮よのう、始めからこうしておれば、もっと楽な方に転がっていたと思わんか?」

 

于吉「それも、我々の実力不足と不徳の致すところです・・・・・」

 

神農「謙虚なのは良い事じゃが、遅過ぎると思わんのか?今こうしている間にも、他の外史の形成は早まっておるのじゃぞ、そのように遅々としていては、お主達の自由は遠くなる一方じゃというのが分かっておるのか?」

 

于吉「ええ、ですから私は独断で貴方様にお力添えをお願いしたのですから」

 

神農「・・・・・分かった、期日中に物は届けよう、お主達の健闘に期待するぞ」

 

そして、神農は消えていった

 

于吉「・・・・・申し訳ありません左慈、全ての処遇は私が請け負います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷刀「・・・・・・・・・・」

 

天角東屋、ここに相変わらず雷刀は陣取っていた

 

目を瞑り腕を組みながら椅子に座り込み、冥想に浸っている

 

時雨「・・・・・何処からどう見ても、旦那様に瓜二つです」

 

村長「うむ、あれで一刀殿の負の塊と言うのじゃからのう・・・・・」

 

沙和「なの~・・・・・」

 

真桜「これで別人やったらまだ何とかなったんやけどな・・・・・」

 

城の柱の影から雷刀の動向を窺う4人

 

余りに一刀と酷似しているので、内心その戸惑いようは半端なものではない

 

そこに

 

刀誠「そんな所でこそこそと、行きたければ行けばよいじゃろに」

 

時雨「あ、おじい様・・・・・」

 

村長「そ、そのような事を申されましても・・・・・」

 

沙和「無茶言わないでなの~・・・・・」

 

真桜「勘忍して欲しいで、じっちゃん・・・・・」

 

刀誠「お主ら、そのような有様でこれから先一刀と上手くやっていけると思うのか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

刀誠「あの裏の一刀にでさえ気後れしているようでは、再び一刀と相見えた時にどうやって自分達の気持ちを伝えるのじゃ?」

 

時雨「・・・・・そう、ですよね」

 

村長「そうですな、その通りですじゃ!」

 

沙和「恐いけど、頑張るの~・・・・・」

 

真桜「せや、こないな所でウジウジしとったらあかん、凪かて気張っとるんや!」

 

刀誠に背中を押される形になったが、足取りをしっかりさせ、4人は東屋に向かう

 

時雨「あの、雷刀さん・・・・・お時間はよろしいでしょうか?」

 

村長「お話をさせては貰えないでしょうか?」

 

沙和「沙和達の話を聞いて欲しいの~」

 

真桜「頼むわ、裏の隊長はん・・・・・」

 

雷刀「・・・・・話があるなら、隠れてないでさっさと来い」

 

そして、ゆっくりと目を開け、雷刀は4人に視線を移す

 

雷刀「で、なんだ?あの阿呆を殺すなと頼むなら無駄な話だぞ」

 

時雨「やはり、まだあなた様は旦那様を・・・・・」

 

村長「何故なのですじゃ、何故そこまで頑なに一刀殿を殺そうとするのですか?」

 

雷刀「何度も言っているだろう、あいつは元々この世界には存在しないと・・・・・本来であればお前達も、ここにあった村共々、あの時賊達に滅ぼされて然るべきだったんだよ」

 

沙和「そんな悲しい事言わないでなの~!」

 

真桜「せや、この世に滅ぼされて当然なもんなんてあってたまるかい!」

 

雷刀「悲しくて当然だろう、自分達が生きて来たのが乱世である事を、お前達が一番よく分かっているはずだ、人と人とが殺し合いいがみ合う、それが乱世だろうが、その中で無関係な顔をしてのんびり時を謳歌出来る者がこの大陸に何人いると思うんだ?」

 

沙和「・・・・・・・・・・」

 

真桜「・・・・・・・・・・」

 

雷刀「よってお前達は、今この瞬間に生きているはずがないんだよ、あの阿呆と同じようにお前達の存在もこの場ではあってはならないものなんだよ」

 

時雨「では、私と村長がこの場で命を絶てば、雷刀さんは旦那様を付け狙う事はしないのですね!?」

 

村長「そういう事になりますな、ワシと時雨の命で一刀殿を助けて下され!」

 

真桜「いきなり何言い出すんや!!?」

 

沙和「そんなの絶対駄目なの~!!」

 

雷刀「お前達は、俺の話を聞いていなかったみたいだな?」

 

時雨「え?」

 

村長「なんですと?」

 

雷刀「俺が滅んで然るべきと言ったのは、お前達二人だけではない、あの時村に居た住民全てだ」

 

時雨「そ、そんな!!?」

 

村長「それでは、今生き残っている当時の村の民全ての命を差し出せと言うのですかな!!?」

 

雷刀「それも今となっては意味の無い事だ・・・・・俺が今この場で村人全てを皆殺しにしたとしても全てが手遅れ、この先400年続くはずだった乱世が戻ってくるわけじゃない・・・・・よって、お前達の願いは全面的に却下だ」

 

時雨「・・・・・・・・・・」

 

村長「・・・・・・・・・・」

 

沙和「そんなの無いの~・・・・・」

 

真桜「何をどうしたって、隊長を殺す気なんかい・・・・・」

 

どうしようも無いくらいの石頭な雷刀に4人は途方に暮れる

 

刀誠「・・・・・話は終わったかの?」

 

貂蝉「また、裏のご主人様を説得していたの?・・・・・」

 

卑弥呼「止めておけい、お主達ではこの者を説得する事は不可能じゃ」

 

そして、刀誠を先頭に管理者達と龍族が入ってくる

 

龍奈「まだやってるの?いい加減諦めたら、そいつに何を言っても無駄よ無~駄」

 

管輅「あなた達には分からないでしょうけど、この雷刀は北郷一刀が奪って来た100万を超える賊達の憎悪の塊でもあるのよ、そう易々とその意思を捻じ曲げる事は無いわ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

やはり自分達では、この裏の一刀を止める事は出来ないと理解し無力感に苛まれる

 

刀誠「よし、では雷刀、もう一度ワシと勝負せい♪」

 

雷刀「はあ?何のつもりだ、じじい」

 

いきなりの刀誠の申し出に、雷刀は素っ頓狂な声を上げる

 

刀誠「じゃからの、もう一度手合わせをせんかと言っておるのじゃ♪」

 

雷刀「二度も言わなくても分かる、そんな事を聞いているんじゃないんだよ・・・・・そんなに死に急ぎたいか、くそじじい、いくらあの阿呆の負の具現化とは言っても俺も自分の祖父を手に掛けるのは気が引けるんだがな」

 

龍奈「まるで自分がおじいちゃんよりも強いみたいな言い回しね」

 

貂蝉「そうねん、ついこないだ負けちゃったことを忘れちゃったのかしら」

 

卑弥呼「聞くところによると、前居た世界でもお主らはこのお方に一度も勝ったことが無いと言うではないか」

 

管輅「そんな台詞は一度でも勝ってから言うものよ」

 

雷刀「さてな、解釈はお前らに任せる・・・・・じじいこそ、北郷流の技を外部に流出させることを望んでいないはずだろうが、同じ流派同士が戦えば、その技の対処法が如実に出るんだぞ」

 

刀誠「それは・・・・・まぁの・・・・・」

 

雷刀「あの神仙達に、北郷流の技を丸裸にするつもりか、俺は誰の味方にも敵にもならないと言った筈だぞ、自重しろ」

 

刀誠「むぅ・・・・・」

 

この言葉に刀誠は黙って頷く他なかった

 

言っている事は間違っていないし、刀誠としても一つの流派の宗家としての立場があるので理解していた

 

その時

 

雷刀&刀誠&管路&真桜&龍奈「!!??」

 

この5人が何かを感じ取り一斉に東の方に向き直る

 

時雨「え、一体どうしたんですか!?」

 

沙和「なになに、どうしちゃったの、真桜ちゃん!?」

 

村長「何かありますのでしょうか!?」

 

三人も何事かと思い同じ方向を振り向くが、何も変わったものは無かった

 

真桜「この氣・・・・・凪や!」

 

龍奈「みたいね」

 

刀誠「これは紛れも無く戦闘の時に使う氣の波長じゃのう」

 

雷刀「何かと戦っているようだな」

 

管輅「っ!」

 

目を瞑り意識を集中させる管輅

 

暗闇の中に映し出された光景は

 

管輅「・・・・・楽進と戦っているのは、左慈ね」

 

時雨「何ですって!!?」

 

村長「真ですか!!?」

 

思いもよらない展開に二人は度肝を抜く

 

卑弥呼「むぅ、どの様な経緯かは分からんが、面白い事になっていそうだな」

 

貂蝉「左慈ちゃんと楽進ちゃん、二人とも似た系統の戦闘術の使い手ですからね」

 

村長「しかし、このまま凪様が左慈を倒してくれれば!!」

 

時雨「はい、旦那様はきっとここに帰って来て下さいます!!」

 

龍奈「どうかしらね、そう簡単にいくかしら?」

 

刀誠「うむ、相手は神仙じゃぞ、いかに天の加護を受けているからと言ってものう」

 

雷刀「そうだな、いくら腕を上げようと、この世界を支配する者を相手に勝てるとは思えないがな」

 

管輅「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

左慈「うおっ!!!??」

 

ドゴオオオオオオオオオン!!!!

 

左慈の姿を目視するなり、いきなり氣弾をぶっ放す凪

 

反射的に左慈はその氣弾を躱すが、小川は大きく抉れ、後から流れてくる水が水溜りを作っていく

 

左慈「楽進か・・・・・いきなりご挨拶だな、少しは礼儀というものを学んだらどうだ?」

 

凪「隊長を陥れた貴様等に、礼儀だのなんだの言われてたまるか!!!」

 

左慈「北郷を追い出したのは貴様らだろう、責任転嫁されてはたまったものではないな」

 

凪「その原因を作った張本人が偉そうにほざくな!!!」

 

ズドオオオオオオオオオオン!!!!

 

左慈「ぐうおっ!!??・・・・・威力だけは大したものだな」

 

凪「ここであったが百年目、これまでのツケを全て払ってもらうぞ!!!」

 

全身に氣を纏い鋭い縮地法で突貫する

 

左慈「ちっ!」

 

襲い掛かる右拳を紙一重で躱し、右蹴りを叩き込む

 

ガシィッ!!

 

凪「はあっ!!!」

 

ズシンッ!!

 

左慈「ぐっ!!」

 

右蹴りを左腕で防御し、そのまま左拳を脇腹に叩き込む

 

充分に氣の乗った一撃は左慈を吹っ飛ばすには充分だったが

 

左慈「なるほど、少しはやるようだな」

 

この男もこれまで幾人もの北郷一刀と戦って来た者である

 

この外史の一刀が異常に強いだけで、左慈も紛れも無い立派な達人の一人なのだ

 

元々氣の練度は常人を遥かに逸している上に、この外史に来てからの基礎訓練で更にその練度は向上している為、凪の発勁が体の内部に浸透する事は無かった

 

凪「隊長の手を煩わせることも無い、ここで私が貴様を殺せば、全てが終わる!!」

 

左慈「ふん、確かにあの北郷の訓練を受けているだけあって多少は出来るようだが、所詮は外史のファクターの一人に過ぎん・・・・・人形風情がこの世界の支配者に敵うと思うなよ!!」

 

ズギャギャギャギャギャギャギャ!!!!

 

そして、お互いに激しい乱打を繰り出す

 

凪「しいっ!!!はああっ!!!どりゃああああああ!!!」

 

左慈「ぜえあっ!!!ふんっ!!!でえええええいい!!!」

 

当身、蹴り当て、膝蹴り、肘鉄、時には頭突き、考えられる限りの殴打の押収

 

左慈「(何だこいつは!!?あの北郷程ではないが、それでも虎の様な強さだぞ!!)」

 

これまでの外史でも楽進というファクターを相手にした事はあったが、ここまでの強さを有している凪に会った事は流石の左慈も無かった

 

左慈「ぐっ!!くそっ!!」

 

凪「っ!」

 

乱撃による殴り合いを嫌い、手の平を突出し法術で凪を突き放す

 

しかし

 

凪「つあっ!!」

 

左慈「何っ!!?」

 

ドゴンッ!!

 

法術で突き飛ばされながらも、凪は右足を振り抜き氣弾を発射する

 

まさか法術を受けながら反撃されるとは思いもしなかった左慈は、その氣弾をまともに受けてしまった

 

この術は于吉に仕掛けられていたため、左慈も使えるであろうことは予測していた

 

しかし、凪も体勢が悪かったので最大の4分の1程度の氣弾しか打てなかった

 

これくらいの氣弾ではダメージに入るはずがないため、凪は更なる追撃を仕掛ける

 

凪「くらえ、猛虎紫電光翼破!!!!」

 

自身が持つ最大最強の技で一気に仕留めようと試みる

 

凪「(よし、これは当たる!!)」

 

先程の氣弾により怯んだ左慈に強大な氣の波は真っ直ぐ向かっていく

 

完全に凪は捕らえたと思った

 

しかし

 

バシュウウウウウウウウン!!!

 

凪「なっ!!!??」

 

確かに氣の波は左慈を捉えた

 

しかし、その氣が左慈に直撃した瞬間に霧散したのである

 

左慈「・・・・・くそっ!まさか貴様如きにこいつを使う羽目になるとはな!」

 

その手には二つのトンファーが握られていた

 

凪「一体何をしたんだ、そのトンファーは何なんだ!!?」

 

左慈「答える筋合いはない」

 

そして、そのトンファーは光の粒子となり消えていった

 

凪「(まるで、隊長の龍滅金剛刀のようだ)」

 

左慈「(まったく、こいつを出し続けると氣と体力の消耗が激しいんだよ、とっとと終わらせるか)」

 

そして、今度は左慈から仕掛ける

 

シュバッ!!

 

凪「くっ!!」

 

左慈「どうした、さっきの勢いがないぞ!!」

 

先程のトンファーが気になり距離を置く凪

 

凪「(ならば!!)」

 

ブゥン!!

 

左慈「お?」

 

一刀直伝、縮地法子の型分歩

 

計8体の分身体が左慈を取り囲み、一斉に襲い掛かる

 

左慈「・・・・・甘い!!」

 

ドゴン!!

 

凪「ぐはっ!!!??」

 

分身体の一つに左前蹴りを放つと、凪の腹に直撃した

 

凪「ごほっ、ごほっ!!・・・・・どうして、分かったんだ・・・・・」

 

左慈「未熟だな、北郷と比べればまだまだ粗削りだ、それに俺は神仙だぞ、氣を読む事にかけては右に出る者は居ない」

 

凪「くうっ!!」

 

かつての于吉が言っていた事を思い出し、気を引き締める

 

凪「(さっきのトンファーの事も気になる、少し様子を見るか!!)」

 

シュバッ!

 

左慈「おいおい、もう逃げの一手か?・・・・・ん?」

 

酉の型蔦歩で木に飛び移り、木々の間を飛び回る凪

 

現在凪が使える縮地法は、分歩、苑歩、蔦歩、この三つだけである

 

おまけにそのどれもが、一刀の干支の型には遠く及ばない

 

精々10メートル飛べればいい方である

 

左慈「器用な奴だ、北郷流と言うものが分かってきた気がするぞ」

 

縮地法だけでなく、忍術の基礎も一刀から教えてもらっている為、こういった事でそれが物凄く役に立っていた

 

凪「・・・・・ふっ!」

 

ドゴンッ!!

 

左慈「おっと!」

 

そして、飛び回りながら左慈に向けて氣弾を放つ

 

ドドンッ!!ズドンッ!!ドカドカドカン!!

 

左慈「くっ!うおっ!ちっ!」

 

木々の間から次々と氣弾を発射する

 

360°全方向から飛んでくる氣弾には流石の左慈も躱し切れなくなってくる

 

左慈「(なるほど、常に俺から距離を置き細かい氣弾で嬲り殺しにするか、随分とえげつない事をするじゃないか)」

 

凪「(このまま攻撃を続けて奴が弱ったところを狙う、幸い奴には遠距離の攻撃法は無いようだ、これで決める!)」

 

ちょっと前の凪であったなら、このような戦法など決して取らなかったであろう

 

えげつないとは言っても左慈も十二分にえげつない事をして来たし、凪も刀誠の稽古によって様々な戦い方を学んでいる

 

もとより、ここで左慈を逃すつもりなどさらさら無い、卑怯者と言われようと凪は左慈を殺せるならなんだってするつもりである

 

しかし

 

左慈「・・・・・・・・・そこだっ!!」

 

ドゴンッ!!!

 

凪「なっ!!?がはっ!!!」

 

なんと、左慈も氣弾を撃って来た

 

その氣弾は正確に凪を捉え、撃ち落とした

 

左慈「氣弾が貴様や北郷の専売特許だとでも思ったか?」

 

凪「ぐううう!」

 

思いもしない攻撃に地面に落下してしまったが、なんとか受け身を取りダメージを最小限とする

 

凪「(やはり、慣れない事はするべきではないな)」

 

ゆっくりと起き上がり、再び構えを取る

 

凪「はあああああああああ!!!」

 

左慈「ぬっ!!」

 

そして、再び全身に氣を纏い、最初の打ち合いを始める

 

凪「私らしくも無かった、やはり真っ向勝負で貴様を倒す!!!」

 

左慈「面白いな、正直俺もそっちの方が性に合っている、返り討ちにしてやろう!!!」

 

バシッ!!!ズガッ!!!バチィッ!!!

 

全身から氣を放出する凪、内功で内側に氣を集中させる左慈

 

この場合、凪は攻撃には向いているが、その分消耗が激しい、左慈は防御に向いていて力を温存できる

 

左慈「どうした、こんなものか!!?このままでは貴様の方が先に精根尽き果てるぞ!!」

 

凪「っ!!そんな事は、貴様に言われずとも分かっている!!」

 

ガシッ!

 

左慈「なにっ!?」

 

防御に専念する左慈の右腕を掴み自分に引き寄せる

 

そして、足払いで左慈の体を宙に浮かせ、左慈の髪を掴んだ

 

凪「もらった!!!」

 

左慈「ぐおっ!!?」

 

後ろの岩肌に向けてそのまま倒れ込むと同時に、膝を顔に合わせる

 

凪「(これでこいつの頭を割る!!!)」

 

無刀術訃の楔、太刀風

 

かつて一刀に教えてもらった技で止めを刺しに行く

 

左慈「ちぃっ!!!」

 

ドシンッ!!

 

凪「ぐふっ!!」

 

宙に浮いた状態で、左慈は凪の右脇腹に膝蹴りを入れる

 

左慈「どはあっ!!!」

 

凪「ぐああ!!!」

 

衝撃により、顔に合わせた膝が外れてしまい、凪は左慈の横を転がり左慈は頭を押さえながら凪を睨み付ける

 

左慈「いって~~な・・・・・人の髪を掴みやがって!」

 

凪「くそっ!あとちょっとだったのに!」

 

即死コースの技を躱され凪も左慈を睨む

 

左慈「(今のは危なかった、これが北郷流か)」

 

躱したとはいっても、左慈も後頭部を僅かながらにうっているのでダメージが無いわけではない

 

しかし、精神的に見れば凪の消耗の方が大きい、なにせ本来であれば必殺の技なのだ

 

今回しくじった原因は、技を仕掛けた時の流れの速度にあった

 

使い慣れていない事もあったが、一刀、雷刀、刀誠であれば今のは確実に決まっていた

 

せっかくの必殺技も100%相手に決めることが出来なければ効果は半減してしまう

 

左慈「(待てよ、こいつからなら・・・・・もう少し付き合ってやるか)」

 

そして、怪しい笑みを浮かべ左慈は手招きをしながら立ち上がる

 

左慈「そらどうした?俺を殺すんじゃなかったのか?そんな様では北郷の一番弟子が泣くぞ」

 

凪「くっ!!舐めるなああああああああ!!!!」

 

そして、その挑発に乗る形で氣を全開にし再び左慈に向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「うう・・・・・ぐううう・・・・・くそぉ・・・・・」

 

左慈「はぁはぁ・・・・・ようやく大人しくなったか・・・・・」

 

お互いに傷だらけになりながらも、凪は左慈を倒す事叶わなかった

 

最初の最大最強の技を無効化された事が大きく響いてしまったようだ

 

スタミナが先に切れた凪は地面に大きく寝そべっていた

 

凪「私を倒したからと言って、いい気になるなよ・・・・・私は、隊長の足元にも及ばない・・・・・貴様は、隊長には絶対に勝てないんだ・・・・・」

 

最後の強がり、見得を張り左慈を罵倒する

 

しかし

 

左慈「くくくく・・・・・は~~~~~っはっはっはっはっは、あはははははははは♪♪♪」

 

その言葉をあざ笑うかのように、盛大に笑い出す左慈

 

凪「な、何がおかしいんだ!?」

 

左慈「礼を言うぞ、楽進♪」

 

凪「な、礼だと?」

 

左慈「貴様のおかげで、北郷流の神髄が大分掴みかけて来た♪」

 

凪「な、何だと!?」

 

左慈「半端に北郷流を会得していたのが失敗だったな、貴様は俺を殺すどころか色々と北郷流攻略の助言をしてしまったという事だよ♪」

 

凪「な、なな・・・・・」

 

その言葉に、凪はショックの余り一気に体から血の気が引いていく

 

左慈「確かに貴様の技の練度は北郷に劣るだろう、だが貴様は様々な技の型を俺に見せ過ぎたんだよ、これだけ見ることが出来ればその武術がどのように構成されているかを想像するのは容易い事だ♪」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

左慈「では、稽古に付き合ってくれた礼だ、楽に殺してやるよ♪」

 

そして、凪の胸倉を掴み右手を振りかぶる

 

凪「(申し訳ありません、隊長・・・・・私は、最後の最後まで、隊長の役に立てませんでした・・・・・)」

 

情けなさの余り、目から滝の様に涙が溢れ出す

 

タダでさえ一刀を自分達の手で貶めてしまった罪悪感を抱いていたのに、この上みすみす敵を強くしてしまったなど論外もいいところである

 

凪「(もう嫌だ、死にたい、早く殺してくれ・・・・・)」

 

自身への嫌悪感と不快感に耐え切れず、左慈の止めを今か今かと待つ

 

もう自分なんて居ない方がいいと、目の前の死を受け入れ目をゆっくりと閉じた

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

管輅「待ちなさい、左慈!!!」

 

 

 

 

 

 

 

左慈「ぬっ!!?」

 

ドゴンッ!!

 

転移の術でいきなり現れた管輅の分裂した水晶玉が左慈を襲う

 

これを躱した左慈が凪から距離を取る

 

管輅「その子を殺させる訳にはいかないわ!」

 

左慈「ちっ!流石に消耗した状態で貴様を相手には出来んな!・・・・・楽進、稽古に付き合ってくれた最大の礼だ、生かしておいてやろう、その目で俺が北郷を殺す所をしかと見届けるがいい、はははははははは♪♪♪」

 

そして、この外史に来てから一番機嫌の良い高笑いと共に左慈は消えていった

 

管輅「左慈、どうしてそこまで捻じ曲がることが出来るの・・・・・」

 

管理者としての実力は十分に備えているにも拘らず、それを生かす事をしない左慈の姿勢に管輅は理解が及ばないでいた

 

管輅「・・・・・大丈夫、楽進?私が天角まで送り届けるわ」

 

そして、怪我をした凪と共に天角に転移をしようとするが

 

凪「・・・・・もう、放っておいてください」

 

管輅「?・・・・・どうしたの?」

 

涙を流しながら、その申し出を断る凪

 

凪「私は、隊長に謝罪をするどころか・・・・・足を引っ張ってばかりで・・・・・役に立てなくて・・・・・最後まで、隊長の足枷にしかなれなくて・・・・・」

 

管輅「・・・・・・・・・・」

 

凪「隊長の為にも・・・・・もう、私は居なくなった方がいいんです・・・・・死んで隊長に詫びるしかないんです・・・・・」

 

無力感と罪悪感の余り、死を渇望する凪

 

管輅「・・・・・そう、貴方がそう望むのであれば、止めはしないわ」

 

その姿を見かねて、管輅は背を向ける

 

しかし

 

管輅「でも、いいのかしら?」

 

凪「え?」

 

背中で問いかけるように、管輅は凪に言葉を掛けた

 

管輅「貴方の体、心、命は、誰のものなの?」

 

凪「それは・・・・・・・・・・隊長の、ものです・・・・・」

 

管輅「その通り、貴方の全ては北郷一刀のものよね、そんな貴方は彼の許可なしに死ぬことが許されるのかしら?」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

管輅「こんな誰も居ない所で野たれ死ぬ、おまけに彼に何の謝罪の言葉も無く、それで彼は納得するのかしら?そして貴方は、それで満足するのかしら?」

 

凪「・・・・・そんな・・・・・」

 

この管輅の言葉に、凪の目に生気が戻っていく

 

凪「そんなはず有りません!!!まだ隊長に謝ってもいないのに、死ぬ事なんて出来ません!!!」

 

管輅「・・・・・なら、生きていない事には始まらないわよね」

 

凪「はい!!!私を連れて行ってください!!!」

 

もう死ぬことなんて考えない、一刀に謝るまでは、その意思が凪の目にはしっかり宿っていた

 

そして、天角に帰り着いた凪は、華佗の治療を受けたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左慈「ふふふふふ、あははははは、は~~~っははははははは♪♪♪」

 

于吉「ご機嫌ですね、何かいい事でもあったのですか?」

 

左慈「ああ、かなりの収穫があったぞ♪」

 

神殿に帰って来るなり、大声で高笑いをする左慈に于吉は何事かと思ってしまう

 

于吉「南の方で左慈が何者かと戦っているのは感じ取っていましたが・・・・・」

 

左慈「そうとも、この外史の楽進と一戦交えて来た♪」

 

于吉「楽進・・・・・この世界の楽進と言えば、北郷の一番弟子を自負していましたが」

 

左慈「おうよ、一番弟子を名乗るだけあって様々な北郷の技を見せてくれたよ、これであの北郷も恐るるに足らん♪」

 

于吉「それは素晴らしい、これで我々の悲願に一歩近づいたという事ですね」

 

左慈「ああ、礼を言うぞ于吉、お前のおかげでこの外史の破壊が早く済みそうだ♪」

 

この男が于吉に礼を言うと言う事はよほどの事である

 

自信を付け、打倒一刀に意欲を燃やす左慈であったが

 

左慈「・・・・・だがな、あと一つ、あと一歩届かないんだ」

 

于吉「と、言いますと?」

 

左慈「北郷流の攻略は、俺の中で大体構築されているんだが、楽進が見せたのは完全な北郷流の技ではない」

 

于吉「つまり、もっと熟練した北郷流の技が見たいと言う事ですか?」

 

左慈「ああ、何かきっかけがあればな・・・・・何か、北郷か裏の北郷がその技を如何なく発揮している所が見られればな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀誠「・・・・・そろそろかのう」

 

寝室にて就寝していた刀誠は、唐突に目を見開き起き上がる

 

無刀術の戦闘装束に袖を通し部屋を退出し城門にまで来た

 

刀誠「世話になったのう、娘達よ・・・・・一刀の事をよろしく頼むぞ」

 

そして、天角の城に向けて一礼する

 

雷刀「・・・・・・・・・・」

 

その姿を天角の城壁から見下ろす者が一人

 

その夜、天角から刀誠と雷刀の姿は消えたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「そっちはどう!!?」

 

明命「駄目です、何処にも居ません!!」

 

凪「もう一度、一から鍛え直してもらおうと思ったのに、何処に行ってしまったんですか、刀誠様!!」

 

菖蒲「雷刀様も、何処にもいらっしゃいません!」

 

桂花「もう、揃いも揃って北郷の一族って勝手なんだから!!」

 

天角では、早朝から行方不明になった刀誠と雷刀の捜索が行われていた

 

しかし、一同は二人の手がかりすら掴めずにいた

 

鈴々「・・・・・そういえば、おじいちゃんがこの世界に来てから」

 

星「そうだな、そろそろ十日になるぞ」

 

月「まさか、ご自身の最後を悟って・・・・・」

 

時雨「止めて下さい、月様!!」

 

麗羽「そうですわよ、そのような不吉な事を言わないで下さいまし!!」

 

雫「しかし、十日を過ぎれば、あのお方はこの世界には居られなくなるのは事実ですし!」

 

零「そうね、二人揃って良くない事を考えてなければいいけど・・・・・」

 

どうにか二人の情報を得ようと躍起になる一同

 

その時

 

管輅「私は知っているわよ、刀誠の居場所を」

 

愛紗「本当なのか!!?」

 

管輅「ええ、北郷一刀もそこに向かっているわ」

 

桃香「ご主人様が!!?」

 

龍奈「それは何処なの!!?」

 

管輅「焦らないで、今見せるわ」

 

そして、懐から水晶玉を取出し力を集中させる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは楊州、廬陵に広がる荒野

 

刀誠「・・・・・・・・・・」

 

この広大な荒野に一人佇む老人

 

腕を組み、目を瞑り、何かをひたすらに待つ

 

まるで不動明王の様にその場を一ミリたりとも動かなかった

 

刀誠「・・・・・待っていたぞ、一刀よ」

 

一刀「じいちゃん・・・・・」

 

そして、刀誠の前に一刀が現れる

 

刀誠「で、どうじゃ?己を見直すには足る時間じゃったか?」

 

一刀「どうだろう、見直したからって、それで俺のやって来た事が帳消しになる訳じゃないし」

 

刀誠「それは、その通りじゃのう」

 

一刀「じいちゃんと会う前に、会っておきたかった人物がいたんだけど、この際仕方ないか・・・・・なぁ、じいちゃん、俺が小さい頃じいちゃんが教えてくれた事なんだけど・・・・・」

 

刀誠「うむ、北郷の一族が長年追い求めてきた侍の理想じゃな、ワシも北郷流宗家を長いこと務めてきたが未だにその答えに辿り着かん」

 

一刀「何も斬らずして全てを斬る・・・・・俺は、賊達を斬る事によって何も斬らなくて済むようにする、そんな世の中を作る、それが侍の理想なんじゃないかと思っていた・・・・・だけど、斬っても斬っても一向に減らなかった賊達を思うと、俺は只単に弱い者を見限って、彼らを一方的に切り捨てていただけだったんだ・・・・・」

 

刀誠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「俺も、じいちゃんから教えてもらった理想に対する答えを未だに見出せない、でも・・・・・もしかしたら、じいちゃんと戦えば何かヒントが得られるかもしれない」

 

刀誠「・・・・・そうか、ならばもはや何も言う事はあるまい・・・・・一刀よ、ワシを超えられるか?」

 

一刀「超えて見せる、じいちゃんを」

 

そして、二人の北郷流の使い手が構えを取る

 

その時、荒野に一陣の風が吹いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

この物語の構成なんですが、序盤に、ある意味左慈が主人公と言いましたよね

 

敢えて敵を極端に弱く見せる事によって、主人公よりも敵役に感情移入させる誘導法

 

野球の試合で自分の県の球団が勝っていても相手チームが極端に失点していた時、相手が可愛そうになって知らないうちに相手チームの応援をしている、そういったストックホルム症候群的なものをやってみたかったんです

 

結果は上々といったところですかね、コメントを見ても左慈を応援する人が幾分か出て来たみたいですし

 

さて、今書いている阿修羅伝と鎮魂の修羅なんですが、鎮魂の修羅の方がかなり長いことをこの場で声明として出しておきます

 

二つの物語のバランスを考えながら書いていくと、どうしても鎮魂の修羅の頻度が高くなってしまうのです、まだ拠点が序盤しか終わっていない事もありますが

 

コメントや支援数を見る限り阿修羅伝の方が人気があるのは明白なので、そちらの方には大変心苦しいのですが、この後はかなり長いこと鎮魂の修羅の方を連続でアップしていきたいと思います

 

重要な局面で申し訳ありませんが、阿修羅伝スーパー焦らしタイムに突入です・・・・・かなり待て!!!次回!!!


 
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